オフの日に、俺はPhoton Maidenの面々を家に呼んだ。理由は少し前に話した焼肉の事である。
せっかく大量の肉が送られてきたのだから、みんなで食べた方が美味いだろう、と衣舞紀さんからの意見があったので、早速集めたわけだ。
月「皆さんいらっしゃいませ!ごゆっくりどうぞー!」
乙和「ありがとー月ちゃん!お邪魔しまーす!」
ノア「ヤバイ•••!エプロン姿の月ちゃん、最っ高にカワイイ•••!鼻血出ちゃいそう•••!」
今のあなたは最っ高にヤバいけど、決して口には出さない。出した瞬間死ぬ。だから俺は生温い視線だけを送っておくのだ。
天「これでも多分無くなりませんよね••••••」
衣舞紀「一応ずっと私も消化を手伝ってきたけど•••本当に多いわね」
ここ毎日、衣舞紀さんは佐々木さんから送られた肉の処理に参加していた。が、それでも肉が減ることは全然なかった。もしかしたらいつもより多い量を送りつけてきてる可能性がある。勘弁してくれよ。
衣舞紀「とりあえず今日が勝負よ。どれくらい消費できるかが今後に関わってくる」
いや、そんなに壮大な事するわけじゃないでしょ•••変に張り切り過ぎだ。
天「というか、もう準備は終わってるんだっけか」
月「後は焼くだけだよー。お兄ちゃんも手伝ってよね」
天「へいへい•••」
俺は立ち上がって、物置まで移動する。中から炭を入れるアレ(名前を忘れた)と、炭、そして金網を取り出す。まだ新品が残っていて良かった。
庭にそれを乱雑に置いて、炭をドバーッ!とブチ込む。その上に金網を敷いて、火をぶっかける。
天「月、座るもの忘れたからそっち頼むわ」
月「りょーかーい」
家の中から声だけが聞こえたので、俺は炭を焼く方に専念した。
咲姫「私も何か手伝う事、ない?」
天「いや、座ってていいぞ。お前は客だからな」
咲姫「うん••••••」
月「はい!椅子!」
タイミングよく月が座るものを持ってきたので、咲姫に座るよう促した。彼女は頷いて、大人しく腰掛ける。
月「ほら、早く炭燃やしてよ」
天「はいはい待ってろ。あっつ•••」
外が暑いのに加えて、目の前で炭を燃やしているのだ。汗がダラダラ出てきて気持ち悪いったらありゃしない。モチベーションの低下がかなり激しいぞこれ。
衣舞紀「天、代わろうか?」
天「いえ、大丈夫です」
衣舞紀さんが俺を見かねて提案を掛けたが、俺は首を横に振った。こういうのは男がやらなければ、と本能的に感じているのだろう。
腕で乱暴に額の汗を拭って、炭にバーナーの火を吹き続ける。
少しして、炭が赤い光を放ちながらパチパチと音を鳴らし始めた。そこで火を止めて、俺はその炭を真ん中に置く。次第に周りにも火が移り始めて、更に熱さが増した。
天「よし、後は肉を焼くだけだな」
月「はいお肉!」
乙和「たくさん持ってきたよ〜」
そばに置いていた大きなテーブルに、ドンドンと大量の肉が盛られた皿が置かれる。あまりの重さに、テーブルの足が少しガタついていた。
天「よし、じゃあ焼いていくか」
月「じゃんじゃんいくよー!」
トングを持った月が、適当に肉を取って金網の上に置いて行く。じゅうー、と焼ける音が鳴り始めて空腹が加速する。
月「はー美味しそう」
天「まだ赤いままじゃねぇか」
お腹がペコペコの月にとっては、まだ焼けてない肉というだけでも、食欲を促していたらしい。よくわからん。
ノア「咲姫ちゃん、何か食べたいものとかある?」
咲姫「私は焼けたのを持って行くから大丈夫••••••」
衣舞紀「高級な肉だけど、部位も色々あるからどれから焼けばいいか迷うわね」
乙和「どれがどの部位とかわかんないから適当に焼こうよー」
天「めっちゃ大雑把な人いるんだけど••••••」
どうせなら一つの種類の肉が尽きるまで焼いた方が、焼けたタイミングとか掴みやすい。変に焦がすこともないから、その方がいいだろう。
月「はい、カルビドーン!」
大きなカルビを、惜しみなく金網に投入する月。油が炭に落ちて、火が激しくなる。
月「焼肉はこれが楽しいよねー!」
天「この時期だと勘弁願いたいがな•••」
ふぅ、と息を吐きながら、シャツの胸元をパタパタと扇ぐ。生温い風しか入ってこないが、何もしないよりはよっぽどマシだ。
ノア「はい、咲姫ちゃん」
咲姫「あっ、ありがとうノアさん」
ノア「いいよいいよ。欲しいお肉があったら言ってね」
咲姫の意見などガン無視して、ノアさんは彼女に焼けた肉を与えていた。俺も一つだけ焼けたカルビを取って、タレに浸ける。
ドロドロのタレが絡まった肉を口の中に運ぶと、強い旨味と肉汁が溢れ出した。
天「••••••うめぇけど、飽きたな」
月「ずっとタレだったもんねー。少し変わったので食べよっか」
何日も肉を食べてきた所為で、俺の舌は完全に慣れと飽きを同時に起こしていた。それもタレだけで食べてたのも原因の一つだろう。
月「とりあえず塩と醤油とソースとトンカツソース持ってきたよ」
天「塩はともかく他のラインナップどうにかならなかったのかお前」
月「じゃあオリーブオイルいっとく?もうこれくらいしかないよ」
天「えぇ••••••じゃあ、醤油くれ」
月「あいあいさー」
月が俺に醤油を手渡すーー訳ではなく、そのまま肉の入った皿にぶちまけた。おい、タレと混ざってんぞ。
月「手が滑っちゃった☆」
天「後で殺す」
月「目がマジだ•••!」
皿を替えて、今度は自分の手で醤油を入れる。そこに肉を浸けて食べてみたら、思いの外美味かった。
天「意外とイケるわ、これ」
月「え、本当?」
月が首を傾げていたが、すぐに醤油を入れて肉を口の中に放り込む。
月「ーーッ!美味しい!」
すぐに表情は驚愕のものへと変わり、美味しそうに咀嚼を始めた。
衣舞紀「醤油かぁ。私も試してみようかな」
乙和「私も私もー」
続々と肉に醤油を入れる文化が芽生え始めていた。咲姫とノアさんも便乗して、タレの出番が少なくなってしまった。可哀想に。
ノア「うん、合うね!」
咲姫「美味しい•••!」
そしてまぁまぁ好評なようで、醤油の株価が上昇した。しばらくはこれで肉の消費に勤しもう。
乙和「次何のお肉行くー?」
衣舞紀「次はタンにしよっか」
天「タン•••!」
月「お兄ちゃんの一番好きな部位だ」
俺は肉の中でタンが一番好きだ。塩とレモンをかけて食べるのは常識であり一番上手い食べ方だ。
カルビがほとんど食べ終えられているので、空いたスペースにタンをどんどん敷いていく。タンは薄いので、そこまで焼く時間を使わないのがいいところだ。
数分程焼いて、俺はすぐに焼けたタンを取った。塩とレモンをぶっかけて、口に運ぶ。
タン特有の食感に、レモンの酸味、そして肉の旨味がとても合っていて至高の領域に飛びそうだ。要は美味い。
天「〜〜〜!」
ノア「すごく幸せそうな顔で食べるね••••••」
月「お兄ちゃん、タン好きですから」
衣舞紀「それじゃあ天、もっとタン食べる?」
天「食べます食べます!」
衣舞紀「はい、あーん」
衣舞紀さんが唐突にタンを目の前に止める。
乙和「おぉ〜衣舞紀大胆!」
天「え、いや•••みんながいますし••••••」
衣舞紀「じゃあこれは私が食べちゃおっかなー?」
天「うぅ•••でもタンは食べたい•••!」
肉を取るか俺の精神を取るか、頭の中で喧嘩が始まっていた。
••••••よし!
天「あむっ!」
月「あっ」
ノア「食べた•••」
少しでも気を紛らわそうと、俺は勢いづけて衣舞紀さんの箸に挟まれたタンを食べた。そのまま咀嚼して、ゴクンと音を鳴らしながら飲み込む。
衣舞紀「あらー•••意外と予想外な反応だったわね」
天「いつまでもナメないでください」
月「二人とも何やってるのさ••••••」
俺と衣舞紀さんはどちらとも不敵な笑みを浮かべながら、お互いを見つめていた。
これもうわかんねぇな(作者)。
ちなみに車校でまぁまぁ忙しいのでワンチャン毎日投稿途切れる可能性がありますので、もし途切れたら忙しいと思ってください。