衣舞紀さんも交えて食べる夕食も、なんだかいつもの事のように感じられた。月がニコニコ笑いながら俺たちを眺める視線が、なんだか温かい。
月「••••••はぁ〜、なんだか雰囲気がそれっぽくなったね」
衣舞紀「?どういう事?」
月「恋人っぽいんですよ!この空気がすごく!」
天「いや、事実付き合ってるんだけど俺たち•••」
衣舞紀さんに目を合わせると、彼女は苦笑を返した。多少ながら反応には困っているご様子だ。
月「もうセックスはしたんでしょ?」
衣舞紀「ぶふっ!?」
天「あのさぁ•••(呆れ)」
やはりこいつは相変わらずだった。ついにはため息が漏れて、力のない瞳で妹を見つめる。
月「え?してないの?」
衣舞紀「そ、そそそそそれは〜••••••」
月「おやおや〜?その反応はさてはヤりましたな?」
天「•••中々にひっでぇなこれは••••••」
衣舞紀さんの反応によってバレバレな上に、それを月が察してめちゃくちゃニヤニヤしている。衣舞紀さんの顔は真っ赤に染まっており、湯気が出ていた。
月「お兄ちゃんもついに童貞を卒業しちゃったかぁ。いやーめでたい!今日はお赤飯だね!」
天「そんなつまらん事で赤飯を炊くな。赤飯に失礼だろ」
月「ほぉ?つまり童貞を捨てることはお兄ちゃんにとっては当然の事だと?」
天「生きてりゃいずれある事だ。後変に解釈するな」
煽ってくる月に俺はただただ冷静に返答を繰り返す。面白くなくなったのか、月はつまらなそうに息を吐いて食事に戻った。
月「なんか最近お兄ちゃんの反応が悪くてつまんなーい!」
天「お前は俺をなんだと思ってるんだ••••••。衣舞紀さんからのイジりが多くなったから変に慣れてんだよ」
月「全く余計なことをしてくれましたね衣舞紀さん!」
衣舞紀「え、えぇ•••?私が悪いの•••?」
突然矛先が衣舞紀さんに向けられ、彼女は困惑した表情を浮かべた。それでも衣舞紀さんからは大した反応は得られないと悟っているので、視線は俺へと移る。
月「そういえば最近お父さんとお母さん帰ってこないね」
天「母さんは一応深夜あたりに帰ってきてはいるが、父さんは全くだな。何やってんだあいつ•••」
どうせまたあの中で遊んでんだろうなぁ••••••変に女遊びをしていないだけマシだが、遊び過ぎも良くないだろう。
全くPhoton Maidenを見習いやがれ。毎日毎日真面目にレッスンを続けてるんだぞ?クソ偉いじゃん。
天「そうそうリミックスの件なんだが、しのぶに頼んだ」
月「しのぶさん!?」
ガタンッ!と音を立てながら月が立ち上がった。
月「え、お兄ちゃんしのぶさんの家行ってたの?絶対行きたがらないのに•••」
天「Photon Maidenの為だ。致し方ない•••」
本当は俺だってあんなチビガキに頼むのはごめんだったさ。でも他に頼る相手がいないんだから仕方ないだろ。
月「えぇ〜•••ちゃんと失礼のないようにした?」
天「悪いめちゃくちゃ失礼な発言しまくった」
月「やっぱりか••••••」
俺がしのぶに対して口が悪いのは、月は嫌になる程知っている。だってよく罵倒し合いながらゲームするし。結局俺が負けるのがオチなのだが。
衣舞紀「知り合いってピキピキのDJの事だったんだ。意外と顔が広いわね、天は」
天「まぁあいつと知り合ったのは月関係ですけどね。ゲーム仲間なんですよ、二人は」
衣舞紀「へぇー、ゲームかぁ。あれ?でも月ってすごく頭が良かったのよね?それでもゲームをする余裕があるの?」
天「こいつ覚えが頭おかしいレベルにいいので、勉強少しやったらほとんどゲームに打ち込んでますよ」
勉強なんてその日に学校でやったやつの復習しかしていなかった気がする。月はドヤ顔でダブルピースをキメていた。いい顔するじゃねぇかお前。
月「えっへん!これでも学年一位なんですからね!」
天「東◯行けよ?」
月「頭いい=東◯って考えやめない?そもそもそこ高校じゃなくて大学じゃん。まず高校から考えて?」
天「ウチくるか?」
月「DJには興味ナッシングなので遠慮します!でも私やりたい事があるし•••でも学校は近い方がいいなぁ•••有栖川学園とかどうかな?」
天「お嬢様学校じゃねぇか!?いや、月が行きたいなら金は出すから遠慮はしなくていい」
衣舞紀「••••••?月の学費って天が払ってるの?」
さっきまで話を聞いているだけだった衣舞紀さんが、俺に顔を向けてそう問う。俺は小さく笑いながら、頷いた。
天「はい。俺、没頭するような趣味もないんで•••自然と給料とか貯まっていくんですよ。使うにしてもメモ帳買い換えたり、万年筆買い換えたり、時たまパソコンを買い換えたりとか•••その程度ですよ。家自体にお金はたんまりありますが、基本は俺が学費を払っています。余裕があるので」
月「私は払わなくていいって言ってるんですけど、うちの兄はどうも頑固者で•••気がついたら勝手に払ってたなんてしょっちゅうですよ。私が欲しいなーって思ってるゲームとかも知らない間に買って部屋に置いてある事なんていつもですよ」
天「その話はしなくていいだろ•••!」
少し頬を赤くしながら月を睨みつける。隣に目を向けると、衣舞紀さんは優しい表情で俺を見つめていた。
衣舞紀「そう、いいお兄ちゃんね」
月「はい!自慢のお兄ちゃんです!」
天「•••••••••やめてくれ」
赤みは頬だけでなく顔全体にまで移り、俺は完全に顔を逸らした。月と衣舞紀さんの温かい視線が、今は嫌に感じてしまった。
夕食を食べ終えた後は、そのままズルズルと引きずってしまって衣舞紀さんと裸の付き合いをするハメになった。めんどくせぇ••••••。
衣舞紀「ほら、肩まで浸からないとダメよ?」
天「二人でこの湯船は狭いですよ•••」
俺も衣舞紀さんも身長があるので、二人で入るには少し窮屈だった。彼女は苦笑を漏らしながら、俺の身体に体重を預ける。
衣舞紀「もし私たちが結婚して家を建てたら、大きい湯船がいいわね」
天「え、もうそんな先の話するんですか?」
衣舞紀「あら?天はまだなにも考えてないの?」
当然、そう言ってるのが窺えた。俺は小さくくぐもった声を出して、首を傾げた。
天「漠然とし過ぎてて全く考えてないですね•••というより今が忙し過ぎて他の事を考えてられないですよ」
衣舞紀「それもそっか。まだ先の話をするよりも、今を大事にした方が良いのかも」
天「んぶっ、髪の毛•••」
頭が俺の方向に倒れて、髪が顔に埋まった。多少の息苦しさを感じて頭を移動させる。
衣舞紀「あぁ、ごめんごめん」
天「そんなに髪が長くて、鬱陶しくないんですか?」
率直な疑問を衣舞紀さんにぶつけてみる。彼女は顎に手を当てて、考えるような表情になる。
衣舞紀「特に理由はないかな。伸ばしたいから伸ばしてるだけ」
天「ふーん•••」
髪を湯から手で掬って、凝視する。綺麗な銀髪は手入れがしっかり行き届いていて、艶があった。
天「•••もう上がっていいですか?少しのぼせそうです」
衣舞紀「じゃあ私もあがろっかな。月も待ってるだろうし」
天「••••••そうですね」
ライブへの不安か、はたまた衣舞紀さんに対する感情が揺れてるのか、今の俺の気分は沈んでいた。ため息を吐いて、俺たちは風呂場を後にした。
風呂から上がった後は特にやることもなく、後は寝るだけだった。今すぐにでも寝たい気分だった俺は、すぐにベッドに潜り込んだ。
衣舞紀「もう、早いわね•••」
天「なんか眠たいんですよ•••」
衣舞紀「今日は忙しかったもんねー。会場の手伝いに行って、リミックスを教えに貰いに行って•••ずっと動き回ってたでしょ?」
天「もうこんな疲れるのはこりごりですよ•••」
衣舞紀「それはどうかしらね〜?また更に忙しくなるんじゃないかしら?」
無意識にため息が漏れる。そうだ、俺はPhoton Maidenをどんどんデカい舞台に連れていくと決めていたのだ。今後更に忙しくなってもおかしくない。いや、絶対になる。そう思うと、少しだけダルさを感じてしまった。
天「はぁ•••これもマネージャーの宿命か•••」
衣舞紀「しょうがないよ。それに私たちも頑張るんだから、一緒に頑張りましょう?」
天「そうですね•••俺一人が頑張ってるわけじゃありませんし」
ひたすらに前向きな衣舞紀さんの言葉によって、心が少し晴れた。ふっ、と小さく笑みをこぼして彼女に顔を向ける。
天「好きですよ」
衣舞紀「私も、天が大好きよ」
そのまま俺が抱きしめるのではなく、衣舞紀さんが抱きしめた。妙な安心感を憶えて、それに甘えてしまう。
衣舞紀「そういえば、さっき先の事よりも今を大事にしたいって話をしたよね?」
天「••••••?そう、ですね?」
衣舞紀「じゃあ今から•••シちゃおっか?天の裸を見てから少し我慢ができてないのよ」
天「••••••やっぱり、ここのメンツはヤバいやつしかいないな••••••」
呆れの入り混じった表情を浮かべながら、俺は衣舞紀さんの肩を抱いた。そして、そのまま唇を重ねて、服に手を掛けた。
R18も投稿するよー。見たい人向けねー。