朝になると、俺は陽の光によって目を覚ます。まだ眠たい目を擦りながら身体を起こして、辺りを見渡した。
天「•••どこだ?ここ••••••」
見慣れない部屋の中に俺の身体はその存在を示していた。その謎の場所に困惑しながら、俺は立ち上がる。
天「おっ、とと••••••。あっぶね」
が、視界はぐるぐると回っていて、足下があまりおぼつかない。
少し時間が経って、ようやく今の状況を思い出す事ができた。
昨日は咲姫の部屋でリミックスをやってからそのまま寝落ちしたんだった。
天「咲姫は•••」
ベッドの方に目を向けると、彼女は静かな寝息を立てて眠っていた。
天「••••••今のうちに帰っておくか」
仮に咲姫が寝坊して遅れてもいいように俺が早めに事務所に向かっておこう。今日からが夏休みで良かった。
天「それじゃ、お邪魔しました」
そっと玄関のドアを閉めて、鍵をかけて下から中に鍵を投入する。大きな欠伸をしながら、俺は自分の家に向かって歩き始めた。••••••あ、リミックスのデータ回収すんの忘れた。とりあえず咲姫に持ってくるようラ◯ンだけ入れておこうそうしよう。
これ程までに咲姫の家と自分の家が近いことを幸運に思ったことはないだろう。歩いてたらすぐに着くのは本当にありがたい。立地に感謝。
あまり大きな音を立てないように玄関を開けて、そーっと忍び足で家の中を歩く。
月「おかえりー」
天「うおぉぉぉ!!?」
リビングから月が顔を出してきて、俺は飛び上がってしまう。月も俺の反応があまりにも意外だったのか、ぽかん、と口を開けている。
月「そ、そこまで驚くかな••••••?」
天「い、いや、いきなり出てくるから•••」
月「それで、咲姫さんのお家行ってどうだったの?何かあった?」
天「そんな大したことはなかったぞ。普通に曲作りして寝た」
月「一緒のベッドで!?」
天「俺は床で寝たわアホ!」
頬を赤らめながら両手を口の前に運ぶ月に、俺は必死な声音で叫ぶ。あらぬ疑いをかけるな。
月「何も面白い事はないのか〜?」
天「ないない。そんなもんには一切期待するな」
月「つまんないな〜•••もっとこう、面白い話題とかないの?」
天「えぇ•••何が目的なんだお前は。しかもさっきと同じこと訊いてるし」
月「咲姫さんに浮気してないか調べてる」
天「しねぇよ」
浮気なんて死んでもしねぇわ。少し睨みつけるように月に目を向けるが、当のこいつはニヤニヤと笑っているだけでいつも通りだった。
月「朝ご飯できてるよ。どうせ今日も仕事なんでしょ?ぱぱっとお食べ」
天「んー」
短く返して、俺は席に着く。いつも通りの朝食に舌鼓を打ちながら、俺は今後の事を考える。
天「(さて•••リミックスの方はできたし、後はライブの準備だけだな•••。カバーの話も出てたが•••リミックスだけでいいだろ。ウチのユニットのオリ曲はまぁまぁあるから、今更カバーなんてしなくても変わらん)」
月「おーにーいーちゃーんー?」
天「•••••••••ッ!?な、なんだ•••?」
月に声を掛けられた事にすぐに気がつかず、数秒の間を置いて俺は反応した。
月「何考えてるの?ご飯全く進んでないんだけど」
天「••••••悪い」
考えることが多すぎて手が止まっていた。軽い謝罪だけをして、すぐに口と手を動かす。
月「•••大丈夫だよ。お兄ちゃんとみんななら」
天「•••彼女たちの心配はハナっからしてない」
月「お?言いますな〜。やっぱり長い期間一緒にいると信頼しちゃう?」
天「ぶっちゃけまだ三ヶ月行ってない程の付き合いだがな•••。まぁでも、Photon Maidenのパフォーマンスを一回でも見た事あるお前なら、納得行くんじゃないか?」
微笑みながら月にそう問うと、妹はにんまりと笑った。
月「あんなレベルの高い曲、完璧なカッコいいダンスを見せられたらねぇー。そんな大物を担当してるお兄ちゃんも立派だゾ!」
天「お褒めの言葉をどうも。つまりはそういうこった。変に心配する方がバカバカしいんだよ」
月「•••やけに淡白だな〜。なんかきょうのお兄ちゃん冷たくない?」
天「至って普通だ。お前こそ、今日はやたらと突っかかってくるな?」
月「ん〜?さぁ〜て何でだろうねー?気になる?気になっちゃう?」
天「ウッザ•••」
月「マジトーンで言わないで!?」
心底嫌悪感に塗れた顔を月に向けると、即座に必死そうな掠れ気味の大声を上げた。
天「ごちそうさん、じゃ行くわ」
月「歯磨き」
天「おっと」
急いでいた所為で身の回りの事を完全に忘れていた。すぐに踵を返して洗面台へと歩を進めた。
欠伸をしながら、俺は呑気に事務所へと向かっていく。一際ドデカいビルが構えているのもあってか、寝ぼけ目でもしっかりと視認することができた。
いつもの調子で入っていき、俺は仕事部屋に直行する。椅子に座って、俺は目を閉じた。仕事に入る前に仮眠を取ろう。でないと仕事中に寝てしまいそうだった。
コンコン。
天「•••••••••」
コンコンコン。
天「••••••••••••••••••」
コンコンコンコン。
天「••••••すぅー••••••」
衣舞紀「朝から寝ない!」
天「うおおっ!?」
バンッ!と勢いよくドアが開けられ、腰に両手を当てた衣舞紀さんが入ってきた。俺は驚いて飛び起き、自然と姿勢が真っ直ぐになる。
天「な、何ですか•••!?」
衣舞紀「リミックスの方、一緒に確認するよ!」
天「俺関係なくないですか!?」
衣舞紀「それが関係あるの!ほら!」
天「少しは寝かせてくれ•••」
衣舞紀さんに強引に手を引かれて、俺は涙ちょちょぎれ状態で引きずり回されてしまった。泣けるぜ。
そのままレッスン部屋に連れ込まれた俺は、首をカクンカクンと揺らしながら座っていた。
乙和「ちょっと衣舞紀。天くん今にも寝ちゃいそうだよ?」
衣舞紀「咲姫、昨日何かあったの?」
全員の視線が咲姫に集まる。彼女は表情を一切変えることなく、口を開いた。
咲姫「昨日はリミックスが終わった後にそのまま倒れて寝ちゃった•••」
ノア「仕事漬けの疲れが回ってきたのかな•••クマとかはないけどくたびれてる感じは残ってるしね」
天「••••••ぐぅ•••ーーッ!」
一際強く首が動くと、ハッとなって目の前に顔を勢いよく向ける。そして口の端から涎が垂れていた事に気がつき、ハンカチで拭き取る。
天「あークソ、眠い•••」
乙和「しかもいつもより口が悪いと。これはかなりお疲れちゃんかな?」
ノア「確認は後にしてまずは天くんを寝させた方がいいと思う」
衣舞紀「しょうがないわね•••天、寝ていいから場所を変えましょう?」
天「•••••••••」
応答がない俺を見て、全員が首を傾げる。衣舞紀さんがそっと覗き込んできて•••。
衣舞紀「•••寝ちゃってる」
座ったまま、俺は夢の世界へと旅立っていた。周りが苦笑いをする中、呑気に俺は眠り続ける。
ノア「端っこに移動させて寝かせておこっか。っと•••その前に•••」
ノアさんは何かを思い出したかのように携帯を取り出し、俺の顔を写真に収めた。意識はないのでシャッター音は聞こえない。
ノア「激レアな天くんの寝顔ゲットしちゃったー!」
乙和「天くんが知ったら怒りそうだね•••」
咲姫「私はいつも見てるから平気•••」
衣舞紀「そういえば天、授業中よく寝てるって言ってたわね•••」
ノア「ということは天くんと一緒のクラスになれば寝顔をずっと見られるって事!?•••••••••留年しようかな」
乙和「マジトーンで言ってるよノア•••」
寝ている俺を他所に、四人はかなりの盛り上がりを見せていた。この場に混ざれないのは少し残念な気がするが、今の俺には到底無理な話なので諦めた。
ちなみに起きた後にちゃんとリミックスの確認を行って、正式にライブに織り混ぜる事が決定した。仕事が増える()
明日は投稿難しいですけど本当にできたら投稿します!それではまた来週!