敏腕(感)男、マネージャーするってよ   作:如水くん

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みなさんお久しぶりです、如水です。投稿また休んで本当に申し訳ありません。この度私、マニュアル普通車の免許を取得致しました。これで堂々と友人の家に車で突っ込む事ができます。後はもう予定が入ることはありませんので、全てを投稿し終えた後にハーメルンを引退します。


緊張の大勝負

天「••••••••••••」

 

ライブ当日。Photon Maiden+俺で控室に待機していた。どうにも落ち着かない俺は、何も言葉を発さずに、不自然にキョロキョロしていた。

 

衣舞紀「そーらっ。緊張し過ぎよ?」

天「うおぉ!!?」

 

突然衣舞紀さんの手が俺の肩に乗っかる。それに驚いた俺は無様に身体を跳ね上げた。

 

衣舞紀「ごめんごめん。ビックリさせちゃった」

天「マ、マジで勘弁してくださいよ•••!心臓に悪い•••!」

 

呼吸も荒くなり、自然と衣舞紀さんを睨みつけてしまう。それでも彼女は普段の態度を一切崩さずに笑っていた。

 

乙和「天くんも緊張してるの?私もだよ〜」

 

ちょうど緊張している仲間がいて、少しだけ安心する。俺は少し嬉しくなって、乙和さんの手を取った。

 

天「乙和さん、頑張ってください!俺の分まで!」

乙和「えっ!?う、うん!乙和ちゃん頑張っちゃうぞー!!」

 

俺からこんなセリフが出てくるとは思わなかったのだろう。困惑しながらも、力強い意志を感じる表情で乙和さんは頷いた。

 

咲姫「天くん、緊張し過ぎてる•••」

天「ギクッ!」

 

咲姫の言葉に、俺は青ざめながら反応してしまう。ゆっくりとした動作で、長い白髪を揺らす彼女の方へ顔を向けた。

 

天「俺はこの通りへ、平然だが•••?」

ノア「隠せてないよ、ガチガチじゃん」

 

ノアさんがクスクス笑いながら俺を見ていたが、俺は見逃していなかった。

 

天「そういうノアさんこそ、震えてますよ?」

ノア「ギクギクッ!」

衣舞紀「ノアも大概ね•••」

乙和「というか本番前の空気じゃないよね•••」

 

言われてみればその通りだ。本番直前にこんなわちゃわちゃとした雰囲気になるはずがない。余程余裕なのか俺らは。

 

衣舞紀「それにみんな緊張してるものよ。私だってそうなんだから」

咲姫「私も、ドキドキしてる••••••」

天「緊張から解放される為に一足先に帰りまーす」

衣舞紀「待ちなさい」

 

逃げようとしたが簡単に止められてしまう。いや止められて当然だが。

 

衣舞紀「勝手に帰るのはダメよ?」

天「アッハイ」

衣舞紀「なんだか天らしくないわね•••何かあったの?」

天「••••••リミックスなんて初めての事をするんですよ。直接関わっただけに、変に意識してしまうというか••••••」

 

変に弱気になって鼓動が早いのはその所為だった。もし失敗したら、もし観客にウケなかったら。そう考えると怖くてたまらなかった。

更に言うなら事務所の曲作りやダンスを担当しているスタッフたちに頭が上がらない。よくもまぁ平然とこんな仕事ができるな、と感心する。

 

衣舞紀「大丈夫よ。私たちで仕上げて見せるから」

 

そう言い切った衣舞紀さんの顔はとても輝いていて、その自信に満ち溢れた心は美しかった。それだけでも、なんだか安心することができた。

 

天「••••••頼みます」

 

今はもう、これくらいしか言葉に表せなかった。余計な言葉など必要ない。彼女たちを信用して、俺はその行く末を見ていよう、そう決めた。

 

咲姫「もうすぐ始まる••••••」

乙和「衣舞紀、行くよ?」

衣舞紀「えぇ、わかってるわ。それじゃあ天、頑張ってくるわね」

天「••••••はい」

 

最後に、最後の最後に悪あがきで衣舞紀さんの背中を軽く押した。ほんの少しだけよろけたが、すぐに体勢を立て直した彼女は俺の方へ振り向く。

 

天「いつも通りで」

衣舞紀「••••••えぇ!」

 

ほんの少しの一言で、全ての意味を汲み取った衣舞紀さんは、力強く頷いた。他の三人もなんとなくだがわかっていたようで、笑みを俺に向ける。この時だけは、俺も流石に笑えていたと、そう願いたい。

 

ため息混じりに会場の関係者席に移動する。体重を掛けながら座ると、椅子から少し鈍い音が鳴った。

 

天「(大丈夫だろうか•••)」

 

もう見送った後なのに、俺はまだ引きずっていた。我ながら情けなくて泣きそうである。

 

天「(••••••いや、あのステージに立つみんなの方がよっぽど不安だろ)」

 

冷静になって考えれば、このたくさんの観客たちの視線を一つに浴びながら歌って踊るのだ。不安とかそんなレベルの話じゃ済まないだろう。

 

天「•••やっぱり、住む世界が違うな••••••」

 

裏方としてのマネージャーの仕事ばかりで見ることができなかった分、彼女たちの凄さを再確認させられた。それに毎日毎日練習を頑張っているんだ。むしろ成功してもらわないと困る。

自然と不安は拭えた。それどころか、大丈夫だろうという根拠のない自信すら湧いてきた。

 

天「•••頼むぞ」

 

緊張の消えた自然な表情で、俺はステージだけを見つめる。観客だとか、周りの人間が視界から消え去った。

••••••始まった。最初からリミックス曲を出す程暴走するつもりはないが、ウチにはあの咲姫がいる。観客の反応次第ではすぐにでも持ってくる可能性が否めなかった。

だからドキドキとしながら、Photon Maidenのパフォーマンスを眺めていた。

 

数曲程流した辺りだろうか、ライトの色が変わり、雰囲気が先程と打って変わったのがわかった。そして聴き覚えのあるこの音は•••。

 

天「リミックスしたDiscover Universe•••悪くないな」

 

他にPhoton Melodiesもリミックスしてある。それもいずれ流れてくるだろうが、今はDiscover Universeが先だ。そっちの方に耳を傾ける。Discover Universeの面影はしっかり残しつつも新しく切り拓いた音は、元の音源とはかなり違って聴こえた。

 

天「はぁ〜、咲姫の技術には頭が上がらねぇな」

 

初めてのリミックスの筈なのに、ここまで完璧に仕上げやがった。万能型はいいな全く。

ダンスもリミックスしたものに合わせて変更してある。それもまた、観客を湧かせる一つの要因となっているのだろう。

俺の目から見ても、楽しそうだった。

 

天「•••頑張った甲斐があったな」

 

一番に彼女たちの楽しそうに踊る姿を見て、俺はそう感じた。自然と笑みが漏れて、まるで親のような目線でライブを眺め続けた。

 

終わった。数時間程度のライブは本当にあっという間で、一瞬だった。気がつけば観客たちは帰る準備をしていた程に、俺は今回のライブに夢中になっていたらしい。

急いで控え室に戻って、待機しておく。しばらくしてから、さっきまでステージの上で輝いていたPhoton Maidenの四人が入ってきた。まだ汗をかいていて、妙に肌がテカッている。

 

天「お疲れ様でした」

 

一度席を立ち、頭を下げる。まずは彼女たちを労うのが先だろう。

 

衣舞紀「•••天、大成功だったね」

天「えぇ。それはもう」

 

ふっ、と小さな笑いすら込み上げてしまうほどに、ライブは大成功を収めた。これならばもっと大きい舞台でも活躍できる兆しが見えて、俺は心底ホッとしている。

 

衣舞紀「ライブ前の緊張した顔が嘘みたいね」

天「••••••あんな姿見てたら緊張してるこっちが恥ずかしいですよ」

 

ステージで輝く四人のカッコよさ、それは俺の心を強く動かして、掴んで、離さない。今目の前にいるのはただの少女だが、その内なる姿を知ってる俺はなんだか誇らしかった。

 

咲姫「リミックス•••お客さん喜んでた••••••」

天「あぁ•••徹夜した甲斐があるってもんだ」

 

咲姫の穏やかな笑顔に釣られて、俺も笑みを漏らす。その横から乙和さんが割り込んでくる。

 

乙和「ねぇねぇどうだった?乙和ちゃんアイドルできてたー?」

天「そもそもPhoton Maidenはアイドルじゃないですよ••••••でも、とっても頑張ってましたよ。乙和さん」

乙和「•••••••••うん、ありがと!」

天「くっつかないでください」

 

腕に抱きついて来たので引き剥がす。頬を膨らませて怒ってたが、俺は苦笑しながら嗜める。

 

ノア「もう、乙和はがっつき過ぎだよ。天くん、ライブの準備やレッスン、ありがとう。お陰で安心してライブができたよ」

天「そう言ってもらえると、頑張ってよかったって思えます。ありがとうございます」

 

腰を折って、頭を下げる。頑張って、感謝された。それだけでも今の俺には泣きそうなくらい嬉しかった。

 

乙和「それじゃあ!ライブも終わったことだし、打ち上げしに行こうよ!」

天「あんなに動き回ったのに元気ですね•••」

 

あはは•••、と引き気味に唇を歪ませながら、俺は乙和さんに目を向ける。彼女はいつもの明るい笑顔を浮かべて、既にドアの前まで移動していた。

 

乙和「ほーらっ!早く行こうよ!」

咲姫「乙和さん、急ぎ過ぎ•••」

 

そう言いながら、咲姫は乙和さんの元へ向かう。ノアさんもため息をついて、歩を進めた。そして、三人が外へと出て行く。

 

天「はぁ•••相変わらず手に余るな••••••」

衣舞紀「仕方ないわよ。乙和はいつもあんな感じだから」

 

ため息をつきながら頭を掻きむしる俺に対して、衣舞紀さんは何処か安心した顔だった。

 

衣舞紀「天」

天「はい」

 

衣舞紀さんが俺の手を握る。それは突然の事だったので少し驚いてしまう。

 

衣舞紀「天がPhoton Maidenのマネージャーになってくれて、本当に良かった。天がいなかったら、こんな大きなところでライブなんてできなかったよ。だから、本当にありがとう」

天「••••••衣舞紀さん」

 

衣舞紀さんを抱きしめて、顔を見つめる。目を閉じたのを確認して、唇を重ねる。

 

衣舞紀「んっ、ふっ、ちゅ•••天••••••」

 

唇を離す。衣舞紀さんの瞳が、俺を一点に射抜く。俺はその身体を抱きしめた。鍛えていても、身体は柔らかかった。

 

衣舞紀「大好き•••大好きよ、天••••••」

天「えぇ、俺も大好きです。衣舞紀さん。これからもずっと•••」

 

二人でくすりと笑って、三人の後を追い始める。きっとこれからも、ライブや色々な事で忙しくなる。だが彼女の笑顔の前でなら、頑張れる。胸を張ってそう言えるだろう。




衣舞紀√次で最後だかんな!終わり!閉廷!以上解散!
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