異世界帰りの異能持ち超能力者、『魔法少女』のパイロットに誘われてしまう。   作:‪α‬ラッブ

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このタイトルを急に思いついたので、思いつきで始めたシリーズですが、よろしくお願いします


1話 隣の出会い

 俺は猫屋敷 來兎(ねこやしき らいと)。普通より背がちょっと高いだけの、人と話すのも苦手で、内気でコミュ障。要するに普通よりも劣っている一般人だ。

 なぜ、こんなつまらないことを考えているのかというと、目の前に尋常ではない生物? 生物であろうと思われる何かが目の前に居るからだ。夢じゃない……よな。これ。

「ケケケケ……なんだ、男か。ケケケケケ……しかし、餌程度にはなるか……ケケケケケケケ」

 お、俺は美味しくないです……よ? 多分。なんてベタにベタを重ねてベタッベタになったセリフなんか出てくるはずはなく、膝がガクガクと震え、今にも漏らしそうだ。トイレ行きたい。

 ──が、実際出てきたセリフはこうだった。

「うわっなんだコイツ」

 自分でも驚くほどに冷めた反応だった。それは子供向けアニメにツッコミを入れる(入れた気になっている)弱小ユーチューバーのようだった。そう考えると俺は思ったより冷静なようだ。不本意だけど。更に言うと漏れそうだけど! 

 なんで今日に限ってこんな目に……6時から朝の補習があるのに。全く、朝の補習ってなんだよ。

 だが心のツッコミも虚しく、さっきのセリフがこの状況で言うべき言葉でないのは火を見るより明らかだった。

 実際、この触手生物はめちゃくちゃキレた。

「ケッ……まだそんな台詞を吐く余裕があるとは……」

 と触手を束ね、さっきまでタコみたいに柔らかそうだった身体が、見た感じではあるがみるみると束ねた部分だけ鉄の塊のような質感になっていった。それはスーパーロボットのようなドリルみたいな感じではなく、触手の束は、確実に殺すという殺意に満ち満ちた大型のメイスになっていた。そんなに怒るようなセリフだっただろうか。いや、そうだったかもしれない。

 それでも命の危機には変わりない。謝るとしよう。まずは深呼吸をして、

「お、俺は心に余裕を持って生きるのが信条なんでね」

 ……? えっ? 何を言っているんだ俺は!? 謝る気でいたのにマジ何やってんの。ああ、俺、死ぬんだ……

 お母さん、その他家族のみんな、学校の先生、数少ない友達のみんな。俺は訳のわからん触手生物に下手な口聞いて死にます。今までありがとう。お母さん、お父さん。親不孝な息子でごめんなさい。そして我が妹よ。構ってやれんでごめんな。これからは俺の部屋のトカゲのタローちゃんを俺だと思って可愛がってくれ。……兄ちゃん、気づいたよ。失って初めて気づく愛ってやつを。この場合失われるのは俺だけどな。ハハ……

 イキリ散らした俺のセリフが俺の運命を決定したのは目に見えていた。

「ケケケ! 死にたいならそう言え!」

 鋼鉄の塊が振り上げられ、後ずさろうとするも足が鉛の様に動かず転び、転んだ痛みと目の前の恐怖にあてられて咄嗟に目を塞いだ。ダメだ、終わった。

 と思った瞬間。

「猫屋敷君!? こんな所で寝て何して……ってうわぁ、でたわね。めんどくさいなあ」

 と甲高くてかわいらしい女の子の声。こんな状況なのに先生にプリントを職員室に持ってきてと頼まれて面倒くさがるJKのような声色だった。

 恐る恐る目を開けてみると、確か……シノ、シノ……まあ名前は覚えてないが確か隣の席のクラスメイトの人だった。

 まさかこの怪物に気づいていないのだろうか。俺が助けなくては。柄にもなく人を助ける気になった。

「助けようとしなくていいから寝てて」

「え?」

 と心でも読まれたかのように行動を遮られた。超能力者か? 触手生物もいることだしありえなくは無い気がしてきた。

「正解。でも正解とは言えないかも」

 同時に手のひらを向けてきた。ついでに眠くなってきたし。俺はどこまで不甲斐ないのだろうか。

 ……俺は重い目蓋を開くことは出来なかった。

 

 情けない話だが、これが俺と彼女との出会いだった。

 

 

 

 

 

 日が昇り切らない朝、ある少女が怪物と対峙していた。隣に長身の男を携えて。

「ケケケケ……女ァ! 女如きがこの俺様に歯向かうとは.ケケケケ.余程死にたがりに見えるぜ? そんな死にたがりのお前には、この俺様が直々に……ケケケケ.ケッ!?」

 少女がそれに手のひらを見せるように手をかざすと、ギリギリまで絞った雑巾のように怪物の身体が上半身と下半身が逆向きに捻られていた。ケケッ! と捕えられた蛙の様に啼く光景はまさにグロデスクだった。どのくらいグロデスクかと言うと、言うと……まあ、身体の至る所から血や肉、内蔵等その他諸々が吹き出ている。めちゃくちゃ痛そうだ。

「うわっ、汚たなっ。全く……最近増えてるのよね、こういうの。最近何かあったのかな?」

 と、彼女は歩き出し、一旦家に帰ることにした。怪物が居たその場所には飛び散った血も肉も、怪物が居た所には皮1枚さえ残っていなかった。

 

 

 私の名は東雲 遥。普通の女子高生! ……数ヶ月前までは。っていうか生まれた頃から普通ではない。少なくともそれが私にとっての普通だった。

 で、その数ヶ月前、色々あって更に私は普通から遠ざかる事になった。マジで色々あった.マジで。もうやめて欲しい。

 今朝も触手の怪物を1匹殺ったけど、ほんとに増えてるのよね。ああいうの。異界の扉的な何かが開いたのかな。はあ.後片付けめんどくさいんだから.全く。やめて欲しいわね。とそんな事を考えていると、

「……め! ……の…め! ……東雲!」

 チョークが飛んできたが、かすりもしない。まあ私が軌道を逸らしたんだけど。

「あ、はい! で、何でしょうか?」

 ぼーっとしてたせいで何も話を聞いていなかった私は焦って返事をすると、どっと笑いが起こった。そんなに笑うことないじゃない。恥ずかし過ぎて、急に笑いが冷める暗示を教室中にかけてしまった。

 やってしまった.

「何でしょうかじゃない、続きだ、続き」

 続き? 何だそれは。ああ、そういえば今は国語の授業だった。今どこを読んでるんだろう。肩をつついて右隣の人に小声で聞いてみる。

「ねぇ、どこ?」

 隣の席の猫屋敷君は、呆れながらも指さして教えてくれた。その表情には怠惰以外に疲れも見えた。

 まあ、朝からあんな事があればしょうがないよね。

「はぁ、ここ」

「ありがと」

 と礼を言って読み始めた。朗読は得意じゃないんだけどなぁ……

 ……一通り読み終えたあと、今度は逆に肩をつつかれた。猫屋敷君だ。何故かとても言いずらそう。顔を真っ赤に染め上げ、目を泳がせている。ゆっくりと口を開け、小声で言った。

「なあ、東雲、放課後、いいか?」

 一瞬思考が固まる程に衝撃的なセリフ。私にもモテ期が来たのかしら。

「告白? それともカツアゲ?」

 とウキウキしながら調子に乗ってそう言うと、上擦った声で言った。

「ち、ちげぇし……」

 正直ちょっとドキッとした。いつもクールで普段表情を表に出さない猫屋敷君が目の前で照れている。これがギャップ萌えというやつだろうか。まさかそれをリアルで拝めるとは。

 お陰でその後の授業に身が入らなかった。後で思い出してみると上の空だったのだろう。

 

 全ての授業を終えて放課後、私は用事があると言っているのに紙束を携えた先生に呼び止められてしまった。

「東雲。このプリント職員室に持って行ってくれないか。よろしく」

 有無を言わさずプリントを差し出してくる先生。

「えっ……ちょ…用事が……」

 意外と押しに弱かったらしい私はそれを受け取ってしまった。先生はよろしくと右手を上げながらそそくさと立ち去った。

「あ……」

 こんなに押しに弱かったのか……私。しょうがない、歩いて持って行くか。このプリントを楽に職員室に持って行く方法なんて私にはいくらでもある。例えば転移とか。

 だけど学校だと能力が使えない……というか使いたくないというか……とにかく、人にバレると厄介な事になりそうなのでよほどのことがない限り、人目がありそうな所では極力使わない事にしている。

 逆に言うと、人目が無い所じゃ使うということでもある。使わない訳無くない? 

「……やっぱり歩いて行くか」

 そこそこ活気に溢れた教室郡を抜けてスタスタと職員室に向けて歩みを進め、ものの数分で到着した。でもやっぱりアイツが自分で持っていった方が早かったくね? なんでわざわざ私に頼んだんだろ。そう考えるとイライラしてきた。

 職員室のトビラをノックして学年とクラス、名前と用事を言い、職員室に入室する。

 担任の先生にプリントを渡し、ちょっと世間話をして、用が終わり帰ろうとすると呼び止められた。

「なんですか」

 多少イライラしてたのもあってぶっきらぼうな言い方になったかもしれない。

「なんですかって……お前最近授業中にボーっとしてるだろ。なんかあったか?」

 うっ……無いことも無い……が、間違えても『最近化けモンが増えてて……』なんて素っ頓狂な事が言えるわけが無い。

「何も無いですけど……」

 先生は一瞬押し黙り、言った。

「……まあ……とにかく、何も無いに越したことはないが、何かあれば先生に相談するんだぞ?」

 はい、と空返事をし、失礼しました、と職員室を出た。時間が過ぎるのは意外と早く、そこを出る頃には空が金色に染まっていた。

「もう夕方か……ってそんな事より!」

 そう、次は猫屋敷君だ。なんの用だろう。授業中はああ言ったものの、あの人とはあまり話した事が無いからまさかアレではないわよね。

 なんて考えながら廊下をスタスタ歩いていると、ある事を思い出した。

 ……っていうかどこに居るか聞いてないじゃん! 私が教室を出るまでは教室に居たけど、今も教室にいるとは限らないし……

 まさかドジっ子属性も持ってるのか? あの猫は。

 ……仕方ない。あれを使うか。

 じゃあ、ここじゃ不味いから他に移動するか。

 トイレ行こ

 女子トイレの個室に入り、かちゃりと鍵をかけて閉じたトイレの蓋の上に座る。目を閉じ集中して唱える

「"探知魔法(サーチ)"」

 と。

 潜水艦のレーダーのぐるぐる回る緑のアレみたいなのをイメージするといいのかもしれない。レーダーの効果範囲を5m、10m、50mと徐々に広げていく。しかし、そうするとレーダーに入る人も増え、背丈とか体格で判断するしかなくなってくる。幸い猫屋敷君は身長が高くて細身だからレーダーに入ったらすぐに見つける事ができると思う。ある地点から100mぐらいのところでイメージ通りの背丈体格の人物を発見した。

「見つけた」

 すぐさま千里眼と呼んでいる遠視の能力で当たった場所を視る。見つけた。

「どれどれ……ってゃあ!?」

 思わず奇声をあげてしまった。視たのが猫屋敷君で居るのは教室だということも分かった。だけどそれどころではない。視た瞬間、猫屋敷君の予想外に精悍な顔が度アップで頭の中に映し出された。心臓の鼓動が聞こえる様で、耳の先が熱くなっていくのが自分でもわかる。急いで視点を離し距離をとった。

「ち、ちょっとびっくりしただけで決して……」

 ぶつぶつと誰に向けてでもなく虚空に反論をする。そして反論しながら能力を解除し、トイレを出て猫屋敷君のいる教室へとそそくさと足を向ける。5分もかからず教室の前まで着いた。

 このドアを開けると猫屋敷君が居るんだと思うと、ドキドキせざるを得なかった。

 もしかして告白かしら。いやいや全然話した事無いし……いやいやもしかするとその可能性も……

 ガラッ! と音がし、気がつくと目の前に彼が居た。

「入らないの?」




ここまで読んでくださってありがとうございます!
次回もお楽しみに!
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