異世界帰りの異能持ち超能力者、『魔法少女』のパイロットに誘われてしまう。   作:‪α‬ラッブ

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2話 東雲 遥

 バッと開かれた廊下と教室の境である扉の向こう側にはクラスメイトの猫屋敷君。距離が近い·····

「入らないの?」

 顔が紅潮していくのが感じ取れる。

「は、入らないの、ってここあなたの家じゃないんだから·····

 ·····遅くなったわね」

 と恥ずかし紛れに言う。彼は何でもなさげに

「あー、そうだね。うーん·····じゃあこう言おうか。

 やっと来たね……」

 ──ー東雲さん、と微笑みながら付け足して言った。

 うっ·····コイツはこういうことを平気で言う人間なのかしら。それとも狙って言ってるの? 

 ただ、そのセリフも彼が茜色の空をバックに言ってなければこの扉を勢いよく閉めていた。普通に聞いたらウザいセリフだ。

「·····」

 不覚にも見とれてしまった。コイツって意外と顔は整ってるのね。

「どうしたの?」

「え? あ、ああ! ごめんね、なんでもない! 

 ·····で、で? 要件って?」

 と慌てて返す。

「き、聞きたい事があるんだ·····馬鹿な質問だとは自分でもわかってるけど·····」

 と今度は彼が赤面する。こっちまで恥ずかしくなってくるわ。

「な、なに?」

 大動脈が破裂しそうな程、心臓がバクバクする。

「東雲さんは·····」

「私は?」

「東雲さんは·····」

「私は、何?」

「スゥ──ーッ」

 と1呼吸置いてこう言った。

「東雲さんは、魔法少女なんですか?」

「は?」

 驚いた。予想だにしない質問だ。私にまたひとつ、属性がついてしまった。

「ち、違いますよね·····」

 ここは、そうだよと言ってあげるのが魔法少女モノ的に定石なのだろうが、違うものは違うのだ。

「ちょっと違うかな·····」

「そ、そうですよね」

 

 

 一方、質問をした猫屋敷は──ー

 終わったナリ·····俺の学校生活終わったナリ。告白してフラれるより恥ずかしいナリ。告白したことないけど。

「へ、変な事聞いちゃってごめんね·····」

 終わった。これが学校中に広まって俺は不登校になるんだ·····さよなら、学園生活。ビバ、引きこもり。エビバディ、引きこもり。

 と、心の中で泣きながら俯いていると、彼女が口を開いた。

「でも·····」

 と何かを言いかけた瞬間。ドンと大きい何かが激しく衝突する音が響いた。

「危ない!」

 咄嗟に彼女を庇おうとした。·····が空を切った。それどころか勢い余って一回転してしまった。それどころかもう半回転して上下逆に着地した·····いや、転んだ。

「優しいのね、猫屋敷君。大丈夫? ·····ほら、立てる?」

 と手を差しのべてくれる彼女。見蕩れそうにもなるが、それより彼女の後ろにいる"何か"に目がいった。その"何か"は教室の壁を破壊して入って来た様に見えた。しかも人の顔の2倍はあった。

 ·····って東雲さんの後ろ? でかい音がしたのは俺の後ろで、今の今まで俺が教室側に居たはずじゃ·····しかも俺の後ろにはちゃんと壁があるし···············東雲さんはいつ教室に入ったんだろう。俺がドアを塞ぐ形に立っていたし扉と俺の隙間は多少あったが、そこを通った感じは無かったんだけどな。あの爆音の一瞬で俺の後ろ(爆音のした方向)に行くなんて芸当が出来るのか? なんて事を考えていると、

「へぇ·····今朝もそうだったけど、こんな状況でも冷静なのね」

 意味深に言い俺の手を掴んで転んだ俺を引き起こした。··········そうだ。今朝も彼女に助けられていた。あんな事をなぜ今の今まで忘れていた? 

 と、彼女の後ろの"何か"がドクン、と鼓動を鳴らし、ぐにゃぐにゃとコネられた粘土の様に姿を変えて大きな鴉となった。鴉はかァァァと咆哮した。鴉が大暴れし、今にも床や天井が崩れ落ちそうになってガラガラと危なげな音が教室中に響いた。

 大暴れと共に鴉は次第に巨大化していき、鴉の大きさは最初の球の状態の2倍どころの大きさでは無く、すでに人の大きさを超えていた。

「危な·····」

「大丈夫だよ」

 ──ー何が!!! と叫び覆いかぶさって彼女を守ろうとした。

 が、彼女の"大丈夫だよ"というその言葉には不思議な説得力があった。それと共に鴉は青白い光の箱に閉じ込められ、鴉はそれを食い破ろうと藻掻く。だが箱に傷1つ付かなかった。

「ほら。大丈夫じゃん」

「え?」

 一体何が·····起きたんだ。やっぱり彼女は魔法少女なのか? と、思考をフルに回していると、こちらを見ている彼女の目が妖しく光った。

 "魔法少女じゃない"

「え?」

 彼女は喋っていないはずだ。口を動かしていない。腹話術か? いや音は聞こえていない。·····まるで空耳のような·····

「私は魔法少女じゃない」

 "だけど普通の人間かと言われれば·····"

 彼女は首を振った。

「残念ながらね」

 "私は異世界の勇者"

 また聞こえた。聞こえたと表現していいものか悩んだが、結局分からない。言っている意味も。

 彼女の手に光り輝く剣が現れた。

 "私は超能力者"

 勇者? 超能力者? なんだそれは·····

 その手から剣が離れ空中に留まった。同時に箱の中の鴉が浮き、動きを止めた。鴉はブルブルと何かに抗っているように見える。

 "私は異能力者"

 剣が増えた。全てが箱を全体を覆うように移動し、剣先が鴉に固定される。

「そして私は·····」

 剣が勢いよく撃ち込まれる。さながらマジシャンの串刺しマジックだ。

「東雲 遥」

 君のクラスメイトだよ。と口を開かずに言い、剣が霧散するように消えると、その傷からたらたらと緋(あか)い血が垂れ、箱の下部に血溜まりが出来ていた。

 要は勇者で超能力者で異能力者って事なのか? と呆然としたまま考えていると、

「端的に言えばそうね」

 ──ーすると、ダダダダと大きな足音を立てて大人数が走ってくる音がする。··········何だ? 

「先生よ」

 ··········それはそうだ。あんなでかい音がしたんだから。

 すると彼女が、あ··········と言った。同時に箱が崩れてベチャとかグチャとか形容し難いグロい音が聞こえた。

 うわ··········見ないようにしよう。

 しかもここに来て初めて焦るような顔を見せた東雲がいきなり俺の両手をがっしり掴んでこう言った。

「不味いわね。逃げるわよ、猫屋敷君」

「え?」

 ひゅん

 とびっくりして目を閉じる直前には見知らぬ場所に居た。

「目閉じるの遅くない? 猫屋敷君。ギリギリ見えてたでしょ」

 う、うん。確かにそうだ。

 ジト目をこちらに向けてくる。ちょっとこわい。

「やっぱり」

「すみません·····ってここ何処!?」

 と大袈裟に驚いて見せると、彼女はフフっと微笑し

「あら、良いノリツッコミね」

 夕日に照らされた綺麗な髪をなびかせながら言った。なんかいつもと雰囲気違くね? 何かいつもよりクールビューティって感じがするな。外見は何も変わらない筈なのに不思議なもんだ。

「これはノリツッコミなのか? ·····」

 と率直な疑問を投げつける。

「ここは学校の屋上よ」

「そこは無視する方向でいくのね··········まあいいけど。

 ···············で、なんで屋上なんだ?」

 うちの学校は屋上に行くのを禁止されている。先生に許可を得ないと屋上の鍵を貰えないのだが、殆どの場合貰えないのだ。

 よって実質屋上は開かずの間(一般の生徒にとっては)となっている。

 噂によると天文部だか同好会だかが、夜な夜な屋上に集まって色々やってるらしい。なので実際の所はあんまり開かずの間となっている。

 そんなあんまり開かずの間に来るのはもちろん初めてである。

「················································································もうじき分かるわ」

「今の長い間は何だよ!? 何も思いつかないからって今考えたじゃんそのセリフ!」

 と、咄嗟にツッコんでしまった。·····ってあれ? 俺のキャラってこんなだっけか? ちょっとやそっとではツッコんだりしないと思ってたんだが·····

「そういう魔法よ」

「そんな魔法があってたまるか!」

 心読まれたのに普通にツッコんでしまった。

 ··········いや、もしかしたらあるのかもしれない。そういう魔法が。

「そう、あるのよ」

「あるのか··········」

 なんかショボいな。ツッコませる魔法とか。

「そうよ、あるんだもの。仕方ないわ」

 ある訳なさそうな上に使い道が無い魔法の存在を示唆された上で開き直られてしまった。どうしようかこのカオス··········っていうか勝手に人に使うなよ! そんなの! 

 と口に出さない様に気をつけながら心の中でツッコむと、彼女は汗をダラダラかいて震えながらヒューヒューと口笛を吹いてそっぽを向いた··········あっ、逃げた。

 っていうかこの人心読めるんだっけ··········

 と考えると、ぎこちなく彼女は頷いた。

 じゃあ、勝手に人の心読むの辞めて貰えないで頂けますかね··········

 彼女は髪を振り回しながら首をブンブンと勢いよく振った。横に。

「えぇ··········」

「嫌···············じゃなかった···············無理よ」

「嫌って言いかけたな! 今! っていうかバッチリ嫌って言ったな! 強制的に聞こえてくる感を装ってももう訂正は無理だよ!」

 と思わずツッコむと、

「あら········································そうかしら?」

 と言ってさっきみたいに目を光らせた。

「怖いよ!」

「ふふっ」

「ふふっってなに!? めっちゃ怖いよ!」

「うふふふふふ·····」

「怖すぎるよ! 逃げる! 俺超逃げる!」

 とダッシュでドアまで駆け込んだ所、ドアに手を掛けた直後に何者かによって腕を掴まれ、後ろに強く引っ張られた。

「痛っ!」

「行かないで··········って··········きゃぁ!」

 直後に何かに当たり、尻から転んでしまった。

 とても可愛らしい声とフニフニと柔らかい感触が手元にあった。

 そんなお約束··········あるのか? と恐る恐る手元を見てみると、彼女の決して大きくはないがそこにしゃんと存在を主張する胸があった。更には彼女に跨るように下敷きにしていた。

 俺は咄嗟に横に転がり、運動を不得意とする俺史上最高の動きで流れるように土下座を敢行した。

「す··········すみませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」




ここまで読んで下さってありがとうございます!
次回もお楽しみき!
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