異世界帰りの異能持ち超能力者、『魔法少女』のパイロットに誘われてしまう。 作:αラッブ
ある学校にけたたましく鳴り響くサイレンの音。黒と黄のテープにより関係者以外立ち入り禁止となっていた。
ニュースでは○○県内の高校で事故が発生し、幸いにも怪我人は居ないと報道していた。
しかし、何故かそれは全国的に波紋を呼んだ。無論ただの事故ではここまでの波紋を呼ぶには至らなかっただろう。テープで塞がれた校門の前にはカメラを持った報道陣が百、二百と押し寄せていた。
この事故がここまでの波紋を呼んだ理由は大きく分けて四つ。
1つは単純に学校の校舎の壁が崩れたという大事故。
手抜き工事だとか生徒の暴走だとか議論されたが、もちろんそれだけではない。
2つ目は崩れた教室の壁から大量の血痕が発見された事。続いて3つ目は、その血痕がDNA鑑定によるとカラスのものに近かったというもの。
4つ目は直接的な関係も無ければネットで噂になっているだけだ。だがネットという様々な人々が繋がることが出来る環境において、この話題はとびきり大きなものだった。突飛なオカルト染みた推測から巨大財閥の陰謀論など、テレビとは違った盛り上がりを見せていた。
だが、その中でも"災害"と呼ばれた巨大な怪獣とそれを駆逐した"魔法少女"と名乗る2機··········いや、3機の巨大ロボットの出現。これとの関連性を見出す者も少なくなかった·············································
ここは日本のどこかにある秘密基地。会議室にゴト、という鈍い音が響いた。鴉をホルマリン漬けにした瓶が机に置かれ、よく見るとその鴉には全身に刺し傷があった。
「見つかる前に死体は回収してきたが··········なんだよこの死に方」
そう話したのは安いジャージを着た美形の凛とした顔立ちの女だった。
女と机を挟んだ向こうにあるオフィスチェアには、白衣の男が座っている。
「ひとつ良いかい?」
彼は顔の辺りで天井を指さすような仕草を見せ、舞台役者のように少し大袈裟にその指を死体に向けた。
「君が到着した頃には既に死んでいたこの鴉。何故死んでいたのか、そして·········」
と怪しむような目線を死体に向けた。
女はその言葉に腕の足らなさを感じ、拳をグッと握りしめる。それを察し彼は言った。
「いやいや、あれはしょうがないよ。怪我人も居なかったみたいだしね」
「··········だけど血痕の処理が!」
「いいよいいよそんなこと」
彼女は台を叩いて声を張り上げるも、何度も軽く流された。
「そして、それを殺したヤツは一体何者なのか。我々の科学力、魔法技術力を持ってしても発見する足がかりを見つけることすらできていない。データが少なすぎるんだ··········。
なんで、そいつが我々の敵か否かさえも不明だ」
と淡々と状況を説明しつつ、足を浮かして椅子をクルクルとゆっくり回転させ始めた。
「一見すると我々と目的は同じである様に見える·····」
言葉に反して期待を一切含まない声色で呟いた。さらに椅子をクルっと180度回転し、
「ただ··········」
と言い、回転を止めた。そのまま地面を蹴って近くのPCまで滑り、カタカタと弄りはじめた。少し経ってタンッと大袈裟にEnterキーを弾いて見せると、ある画像が部屋にある大きなディスプレイに映し出された。
「これはこの鴉の解析結果だ。こいつの身体、見た目に反して謎の鉱物らしきもので出来ていてな··········そのくせしてなぜか我々動物と同じく血を身体の内に流している。
··········もっとも、その血もその鉱物で出来てるものの魔法無しじゃ気づけない精巧な偽物だけどね」
と言いながら画面に映し出されたのは精巧に作られた鴉の3Dデータと成分表だった。
「··········まあ、こういうタイプは研究材料としてとても優秀だし、歓迎しなくもないんだけどね。我々の使う魔法技術だって"ヤツら"を元にしてるからね··········ってこの話は置いといて··········
問題はここだ」
とマウスをクリックすると、ある部分が拡大された。
「傷口? ··········変な傷でもついてるのか?」
「いや? 普通の刺し傷さ」
「じゃあ一体何が··········」
彼女が言い終わる前に彼はこう言った。
「魔力だよ」
「は?」
「魔力の残滓が観測されたんだ。··········まあ、こんな死に方だ。当然っちゃ当然だわな」
と椅子で回転しながら冷静に言った。
「じゃ··········じゃあ、誰か出撃したっていうのか? 私でさえ間に合わなかっ··········」
キュッと椅子の回転を止めて彼女の方を向き、これまでの出撃報告がぎっしりと綴られたファイルを取り、直近の報告を突き出して彼女の言葉を遮った。
「まあまあ見たまえ。最近はヤツらが出現したという報告は無い」
パタン、とこめかみを抑えながらファイルを閉じて
「··········それどころか、ファルコンとスネークが出た、こないだの特大のヤツ以降数週間は出撃さえしてないよ。
もちろん、この鴉の時も君以外は出ていない」
パタン、とファイルを閉じた。
「なら··········、一体誰が··········」
女は悔しさ以上に違和感を言葉に孕ませながら呟いた。
「さあ、ねぇ···············」
男の目も一層険しさが増した。
──数時間前。
「す··········すみませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
流れるような美しい土下座。こんな綺麗な土下座、見たことない。これぞクールジャパンと言ったところかしら。
──ここまでされたら、許さない訳にはいかないじゃない。
「··········はあ、··········いいわよ。わざとじゃなさそうだし」
もし、あの状況でわざとだとして··········そうすると相当な性格と反射神経の持ち主よね。それはそれですごいけど。と納得して殴りたい衝動を抑え、彼を見るとほっとした表情で再三謝ってくる。
その度に
「過ぎたことよ。いつまでも気にするんじゃないの」
と言い返している。
いっその事、今朝みたいに記憶を消してしまおうか。それもいいかもしれない。その方が早いかもしれない。
と思い彼の頭に手をかざそうとした瞬間、ガチャと音が鳴った。
やっば··········!
彼を連れて瞬間移動をした。移動先は猫屋敷家の玄関前。すぐ透明化してコソコソと帰ることにする。
「詫びはちゃんとs··········って俺の家!? 東雲さんは!?」
彼が混乱しているうちに帰ろうとした瞬間、玄関がガラガラと開いた。そこからは猫屋敷君に顔が似ている女性が出てきた。
「··········うるさいのよ来兎、近所迷惑よ」
と一言威圧感のある静かな声で言った後、戸を閉めた。閉めるんかい。
「ごめんって! それに閉めないでよくない!?」
と反論しながら戸を開けた。
あれって猫屋敷君のお母さんかな? かっこいい人··········。と見とれていると、ふとやることを思い出した。口止めだ。例え記憶を消しても、また思い出した時に厄介な事になりそうな気がするからだ。
家に入ろうとする猫屋敷君の背後に近づき、コソッと呟いた。
「特別に記憶は消さないでおいてあげる··········今日のことは誰にも言わないでね」
「ふわぁっ!」
誰もいないはずの背後から私に声を掛けられて、ドサッと盛大に奇声を上げて彼は盛大にコケた。
「うるさい!」
家の奥から怒鳴り声が響き、開け放たれた扉から高速回転する円盤が飛んできて彼の眼前に深く突き刺さった。
「ヒィッ!」
怖っわ··········。猫屋敷君のお母さん怖っわ! いくら最強(多分)の私と言えど生身でここまではできないかも。
「驚かせてごめん。逆に私がびっくりしたわよ」
「いや、ごめん」
うつ伏せの姿勢まま顔を真っ赤にして言った。それを余所に念には念入れて釘を刺しておく。
記憶消去だとか記憶封印だとか、わざわざそんなことしなくたっていいならそれに越したことはないよね。記憶をいじるのって私、好きじゃないから。
「どうってことないわよ。それより絶対言わないでね?」
「わ、わかってる」
所詮は何の効力もない口約束ではあるものの、猫屋敷くんの了解を得たところで立ち去っておく。
「ありがとう、猫屋敷くん。貴方を信じるわ」
「あ、ありがとう」
と転んだままの姿勢で言った。
「それじゃあ猫屋敷君、また明日」
「ま、また明日」
情けない状態の彼を尻目に帰る事にした。透明化してるんでそのまま直接帰ればいいが、化け物も数匹いるようだし、そいつらを潰しながらにするか。
1匹目、路地裏。朝のキモいアイツに似てるタイプの触手のヤツ。気づかれる事無くミンチ。もちろん掃除も完璧。
2匹目、小さい公園にあった次元の裂け目の中。むちゃくちゃに足が生えた蛇みたいなヤツ。透明化してる私のいる方向に違和感を覚えつつミンチ。やるじゃん。異世界でだって神話級の魔物しか気付かなかったぞ。
掃除をしつつ次元の裂け目を閉じて終わり。
3匹目、神田スーパー辺りの上空。天使みたいなの。
一丁前に人っぽい頭をつけてるんで人の幻影を見せつつ会話を試みるも失敗。形が似ているだけだった。ミンチ。
4匹目、他人の家の庭。ミミズ型のヤツ。
失礼します、と庭に侵入。細切れにするも再生したため空間ごと消し飛ばした。荒らしたり消したりした分の土は直す。詫びに土の小精霊を召喚し庭を守護させる。
5匹目、昔事故があったらしい交差点。怨霊。
些細なきっかけで復活し怨霊化。異空間に引きずり込んで浄化。
順調に作業を進めていき、ラスト1匹というところで簡易探知魔法で化け物以外の何かがそこに向かっている事に気づいた。人の波長で間違いはないが、魔力を感じる。
「
この前ちょっと話題になっていた魔法少女ってヤツ? 私は魔法少女じゃないけどね。まあ、化け物退治って意味では同業者かな?
「見つからないように慎重に行ってみよ」
と透明化に加えてさらに気配遮断とか音遮断とかのアサシン系の偵察用魔法を全て起動して見つけられる危険性を減らす。
この世界にも私のような人がいると思うと、少し興奮してきた。
ラスト6匹目、隣町の大きい公園。熊サイズの狼。今度はすぐにミンチにせずに例の同業者と思しき人を待つ。
透明化をした上に完璧に気配を消した甲斐あって狼はこちらに気付く様子はない。
ただ、一般人に被害が及ばないように人払いの結界を張るが、それでも人を襲いに行くようなら先に私が始末する。こっちは安全のためにやってるからね。そっちを優先するよ。
狼は人を探し回って広い公園内あちこちを歩き回るが、既に公園内どころか町内で外出している一般人はもういない。
民家に被害が出ても嫌だし、魔力を残すのも嫌だ。
一般人かと思って一瞬ヒヤッとしたが、よく見ると右手に刀身の無い刀のようなものを持っている。
(あの魔力反応はそれか·····)
あの刀っぽいやつの魔力反応に対してジャージの女の方の魔力量は異世界の一般人と同程度。魔法技術のみでは数段劣っているのではないかと思う。
でもこの世界じゃ魔力は持ってるだけで珍しい。
彼女の魔力量少なくはないが、あの刀っぽいやつには到底及ばない。彼女の数倍は軽く上回る。
(もしかしたら起動するだけで良いタイプの魔道具なのかな。そうするとすごい技術だなぁ)
そう思考を巡らせているうちに彼女が狼を発見したようだ。狼と遊ぶのもここまでだね。
サクッ、サクッ、と青く茂った芝生を踏む音が近づき、見えない力に踊らされていた狼も音の方に体を向けた。そしてフサフサの耳がピンと立ち警戒態勢に入ったようだ。
そんな狼に対して女の方はニッと口を歪ませて笑う。
「案外デカいな、犬。首輪はどうした·····!」
煽っているのか語気が強めだ。言いながらコキコキ、と首を回す彼女。なんかかっこいい··········!
対して狼はグルルル! と威嚇する。
彼女は魔道具をグルグルと回転させながら空中に放り投げ、肩の高さで難なくキャッチして、
「行くぜ·····」
と彼女が期待の篭ったような声色で言った。
「試作型弐版 ブレード型ステッキ、
彼女がそう叫ぶと魔道具の先にピンクに輝く日本刀のような刀身が出現した。
ピンクの刀って··········、なんか似合わないなぁ。キィイイイイイインと耳鳴りのような不快な音を立てながら輝く刀があの狼も不快だったのか、咆哮を上げながら突撃する。
「この音が嫌いか? ··········私もだ」
と言って突撃をサッと華麗に避けながら頭を切り裂き、光の刀身を解除した。斬られた狼はその膨大な質量を制御する頭脳を失い、突撃時のエネルギーに従って10メートル程飛んでいった。
想定外の弱さに驚きの表情を見せた。あまりの呆気なさに唖然としながら別の魔道具を取り出した。
「結界を張れる割に弱いなお前。てっきり強い奴と戦うのが目的だとばかり··········」
はぁ、とため息をつき、右手に握っている刀の魔道具を見つめた。
(アイツ、こんなに弱いとは··········これを使ったのは失敗だったか)
狼が結界を張ったと思っているということは··········私には気づいていないか。よかった。
と一応の安堵をしたところで彼女はさっき取り出した魔道具を耳にはめた。あれは通信機かな? 盗聴してみよう。情報収集は重要だしね。ついでに通信先も特定してみよう。
「私だ··········ってなんだよ? そんなに慌てて」
情報収集開始!
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