死神と不死鳥と時々天才   作:しろねぎ

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下巻の内容辛すぎん?

お気に入り100越えありがとうございます!!これからも宜しくお願い致します!

※今回は桜の下巻のネタバレを含みます。



信用と親愛

数々の英霊機達が並ぶ壮観な光景。骨董品と言われるレベルの古い機体の見た目をした物をこれだけ大量に見ると、何かの式典か催し物かと思えてくるが、残念な事に楽しい事の為に集まった訳じゃない。富士プライマリー・ピラーの攻略が目的で集まっている、重要な戦力だ。

 

その中でも目に着いたのは……

 

「おっ、“ランカスター Mk.IS”じゃん。あいつ来てるのか。確かにプライマリーにダメージ与えられそうなのって、こいつの“グランドスラム”かクラウディアの魔弾くらいだよな」

 

勇者砲は火力が足りないと思う。プライマリーになると、英霊機の戦略兵器って感じのじゃないと無理そうだ。

 

「……不死鳥が何の用?今は私達の盾じゃないのに」

 

不意に後ろから声が聞こえ振り返ると、ランカスター Mk.ISの持ち主である、ネームドワルキューレの一人“アルマ・コントーロ”が居た。盾呼ばわりとはシールド隊冥利に尽きるね。

 

「盾ね……ビッグシールドガードナーを召喚するぜ」

「シールドクラッシュ発動」

 

アルマが俺の腹にパンチを入れようとする。避けたけど。

 

「流石に出撃前に味方に殴られて出撃不能は嫌なんだけど?」

「真面目にしないから」

「お前も大概マイペースやろがい」

「私は良いの」

「何でや」

 

昔と変わらないな……ナタリー居らんとイライラやん。

 

「ナタリーは来てないん?」

「……物資の配給やってる。やらなくて良いって言ったのに」

「やれる事をやりたいんだろ。オーディンの加護があるとは言え、ナタリーは本当にギリギリだったからな。そのナタリーと一緒に、英霊機まで回収は流石にムリだった」

 

 

英霊機の替えは効かない。完全に木っ端微塵となれば、もう修復は不可能だった。残骸の回収すら出来なかったし。

 

「それにしても、ナタリーと同じくらいギリギリだった貴方と整備長が無事なのは納得いかない。オーディンの加護も無しに」

「俺も不思議だわ。俺は生命力に定評あるけど、ロジャーは何でだろうな。オカマ強いのか?」

「あら、あたしの話?嬉しいじゃないの」

 

後ろからまた声がしたので振り返ると、ロジャーが居た。後ろに立つのがブームなのか?

 

「お前も来てたのか?マジでオールスターじゃん。お前、おやっさんには会ったか?」

「あぁ!!館山の班長さんね!?勿論会ったわよ!!もうあれぞ職人ね!!すっごいわ!!」

「テンション高っ……」

 

凄腕整備士として惹かれる部分が有るって事か。しかし、二人が揃えば機体の整備は問題ないな。勝ったわ。

 

「それにしても貴方の機体……誰が改造案出したのかしら?」

「アズズだよ」

「あら!噂の天才ワルキューレ!?通りで奇抜ながらも理論的な改造してる訳ね。ただ、コストを無視し過ぎね。整備士泣かせよ」

「しょうがないだろ、俺の要望も取り入れたし」

「ロボットのトマホーク付けてとか言ってないわよね?」

「言った。一瞬で却下された」

「当たり前よ……貴方変わらないわねぇ」

 

感慨に耽っている様なロジャー。いや、そこで再認識されても困るんだけど?

 

「アズズにドリル付けてって言ったら悩んでたけど」

「そこ悩むのね!?」

「弾頭をドリルにするか悩んでたみたいだな」

「……そう言われると一考の価値アリかも」

「マジか」

 

アズズの英霊機を改造するなんて型破りな発想は、高度な技術者にとっては興味の対象だ。実際の所、試験的な特殊武器の運用は少しずつだが始まっているらしい。ビームとか出ないかな?あとは可変機。

 

「可変機とか作れないのか?」

「もうそれ英霊機って言えないわよ。それに普通の戦闘機を可変にしても意味無いわよ?」

「近接戦闘出来るだけでも多分変わるぞ」

「あれは自殺行為の代償って聞いてる」

「アルマは凄い言い方するな……」

 

近距離の攻撃ならピラーに有効って噂は事実かどうか。答えとしては事実だ。近距離の攻撃は有効である。だけど、それは危険な行為なのは言う迄もない。自殺行為とまでは言わないが、実力が無ければ唯の無駄死にだ。あれ?やっぱりこれ自殺行為だわ。

 

「そもそも可変機なんて作れないわよ。もし作れても数機かしらね……量産はムリよ。安く見積もっても普通の機体の十倍以上の値段はするわよ」

「国庫壊れそうだな」

 

一から全部作る様な物だしな。パイロット養成なんてしてる時間も人員も無いし、やはり絵空事で終わりそうだな。

 

「可変機乗りたかったな……」

「平和になったら作って貰いなさいよ。それくらいの我が儘は許される筈よ。何ならあたしが貴方の機体を整備したいわ」

「ワルキューレでもない俺に許される我が儘なのかねぇ……」

「悔しいけど、功績は多い。特別な機体くらいは、くれると思う」

「おい何で悔しがる?」

 

人の功績くらいは素直に喜んでくれませんかねアルマさん?

 

「でも、それもこれも、平和になってから」

「……その為の今回の富士プライマリー攻略だ。乗り気はしないけどな」

「あら?どうして?」

「作戦の発端がオーディンってのが気に食わん。どうせ何か企んでるだろ」

「不死鳥は信用してないの?」

「してないな。あいつ怪しすぎるだろ」

 

少なくとも素直に信用して良いとは思えない。神の考えなんて分かる訳も無いが……

 

「ま、私達は言われた通りに仕事するだけよ。空は貴方達に任せるから、私達は機体が万全に飛べる様にしておくわ」

「おう、そろそろ俺は館山の連中と合流してくるわ」

「……またね、不死鳥」

「あぁ、また空で」

 

アルマ達と別れて館山基地の奴らの所へ向かった。

 

☆☆☆☆

 

「おっ、みんな発見。リズベットとレイリーも居るのか。久しぶりだな」

「おっ、飛鳥久しぶり!元気してたか?」

「何とか生きてるよ。レイリーも元気そうだな」

「ええ、お陰様でね」

 

久しぶり再会したネームドワルキューレの二人“リズベット・クラウン”と“レイリー・ハルティア”に声を掛ける。この作戦にネームド四人居るのか。元ネームドの天塚を含めればネームド経験者五人……確かに、この作戦に対しての本気度は高いみたいだ。

 

「お前も怖いもの知らずか……ってお前はこの三人とは付き合い長いんだっけか……」

「おう、アズズ。そうだな、結構な長さだな。それにしても……有名人ってのも大変そうだな?」

 

アズズはネームドに気安く話し掛ける俺に少し驚いた様だが、まぁ付き合い長いし、納得はしたみたいだ。しかし遠巻きに見てる連中はネームドのクラウディア達に萎縮してるみたいだ。グラサン達は除いて。

 

「貴方も結構な有名人だぞ飛鳥。ほら、何人かは飛鳥をじっと見ている」

「男に熱い視線を向けられても嬉しくないわ」

 

小声で不死鳥だとかボソボソ聞こえてくる。それを聞いて宮古が声を上げた。

 

「クラウにはカッコいい渾名とか無いの?」

「死神以外にか?」

「それは可愛くない!」

「そうだそうだ!!」

 

三バカ達が抗議の声を出す。でも死神カッコいいやん?

 

「じゃあアタシ達が考える!!」

「お姫様!!」

「女神!!」

「食いしん坊!!」

「欧州不敗」

 

誰だ今マスター・アジアみたいなの言ったの。

 

「渾名は置いといて……何か変わった奴らだな」

 

リズベットが呆れた様子で言った。確かにどう考えても他の奴らとは違うよな。

 

「ああ、自慢の仲間達だ」

「……」

 

クラウディアの笑顔での発言にリズベットが拗ねた。嫉妬が分かりやすい。

 

「お前達もクラウディアの大切な友達だろう。胸を張れよ」

「そうだぞ。大切な友人だ」

「い、いきなりそんな事言われてもなぁ!!」

 

反応が本当に分かりやすい。うーん、アズズと違う方面でチョロい。大丈夫かワルキューレ。

 

「あんたら、そろそろ時間だよ」

「もう時間か。さて、どんな作戦で行くのか楽しみだ」

 

天塚に言われてミーティングルームに向かう……これだけの戦力が居るのに不安が全く消えない。

 

☆☆☆☆

 

沖田空将補の演説が終わり、モニターに写し出された画像は、沖田・桜……オルトリンデの顔だった。

 

「悪趣味だなオーディン」

「……今から君達に激励を贈ろうと言うのに、随分と言うではないか?」

「飛鳥、抑えろ。今は突っ掛かる時じゃ無いだろ」

「……悪かった」

「気にするな。作戦前で気が立ってるのだろう?赦そう」

 

アズズに諌められ、謝罪した。

 

しかし、オーディンの演説を聞いても、やはり信用する気にはならなかった。

 

その後、作戦説明になり、将校達の話し合いとなっていた。

 

「……沖田空将補、一つ宜しいですか?」

「不死鳥……志摩・飛鳥大尉か、何だ?」

「差し出がましいかも知れませんが、予備の司令部を用意して頂けませんか?」

「理由は?」

「……未知のピラーが来る時は、決まって司令部が攻撃を受けます。狙われているんでしょう」

 

ギリシャの時は将校だけを狙った雷撃で。ハンブルクの時は空間の断絶を用いた攻撃で基地が真っ二つ。明らかに狙われている。

 

「分かった、ピラー戦に長く携わっていた貴官の言葉だ。用意しよう。しかし、どのタイミングで予備の司令部に移るつもりだ?」

「戦闘が始まって三十分。もしくは未知のピラーが居て、何かしら動き出したら即座に」

「分かった。予備司令部に行く人員はこちらで決めよう」

「ありがとうございます」

 

とにかく最低限の保険は出来た。指揮系統の断絶は、これだけの大規模作戦では致命的だ。ラミアの奇跡はアレハンドロ司令が人間を辞めたから出来た事だ。

 

「では、作戦開始まで待機とする、解散。……志摩大尉、少し良いか?」

「はい、何でしょうか?」

 

皆がミーティングルームを出ていく中、俺だけ沖田空将補に呼び止められた。やだ怖い。って言っても、伝えないといけない情報もあるから、丁度良いや、話を聞いてから伝えよう。

 

「……娘の桜についてだ」

「桜……オルトリンデですか?」

「そうだ。貴官は桜に心構えを教えたと聞いている。娘は……桜は君にとってどう見えていた?」

 

どう見えていた?……確かに思い出そうとすると、少し何か引っ掛かるな。何かが抜け落ちている様な感覚だ。だけど、今の思いを正直に言おう。

 

「最初は良く出来た人だと思いましたよ。平和な時代なら、非の打ち所が無いくらいには」

「平和な時代なら、か」

「はい。戦時下なら、危なっかしいなと思いました。自分の命を省みない性格……覚悟をしていましたので。自己犠牲に躊躇いが無かった」

 

すぐに思い直した辺り、素直な性格でもあったが。

 

「それを思い直させて尚、桜は死んだ……貴官はその事については」

「怒ってますよ、そりゃもう。約束したんですよ?生き残りますって。だから純粋に怒ってます。約束破りやがって」

「……そうか。やはり貴官は桜の言っていた通り、変わった人間らしい」

 

えっ、何て言ってたの沖田さん?えっ?聞くしかないじゃん。

 

「……何て言ってました?」

「常識破りな奴だと。軍人としての規律は守らず、しかし、人は守る人間だと」

「高評価なのか、低評価なのか分かりませんね」

「規律を守る事が人を守る手段だと信じていたからな。その考えを根本から覆されたんだ。良い意味でな」

「なら、高評価って事ですね。良かった」

 

沖田空将補が少し笑った気がした。

 

「貴官は愛とは何だと思う?」

「……すみません。空将補の気持ちには答えられません。自分はノーマルなんです」

「何を言っている?」

「申し訳ありませんでした。自分が汚い思考してるだけでした」

 

マジで分かってない感じだこれ。そりゃそうだよね!?俺疲れてるのかな?

 

「えっと、愛とは……ですか?」

「……抽象的で悪いがな。どうも皆、桜への印象が薄いのだ。周囲から親密な関係と言われていた、友人や生徒達に話を聞いてもな、反応があまりにも無いのだ。桜に対しては悪印象を抱いている訳では無いのだが、どうもな」

「……確かに、沖田の写真が写し出された時、リズベットが怒らなかったのは少し意外でしたね。沖田の訃報を聞いた時に泣いてたくらいには仲が良かったみたいですし、それにしては反応が薄かった」

 

愛……友愛の気持ちが薄かった?あの義理堅いリズベットが?それに、俺も沖田に対しては違和感を感じている。悪趣味だとオーディンには突っ掛かったが、今はそんなに怒る事では無かったとすら思える。おかしい。何かが“失われている”気がする。

 

それに記憶が正しければ、沖田と一番仲が良かったのは園香と天塚だ。その二人も写真には対して反応が最早殆んど無かった。まさか……

 

「沖田に対する好印象……愛おしく思う感情が消えている?」

「やはり、そう思うか?」

「そんな事が出来るのは……オーディンくらいだよなぁ……」

 

やはりオーディンは信用に値しない。どんな理由があれ、気に食わない。

 

「待て志摩大尉、どこへ行く?」

「オーディンに会います。少なくとも話は聞きたい」

「……私が聞いた時は“桜の望みを叶えた”と言っていた」

「っ……本人が望んだ事だと?」

「……そうだ。認めたくはなかったが、桜はそういう娘だった。自分の事で大勢の人が悲しむのなら、恐らくは」

 

じゃあ沖田は最期に、人の心の負担を減らす為の“自己犠牲”をしたのか。そうか。じゃあ遠慮は要らないな。

 

「……すみません沖田空将補……娘さんの事、すっごく嫌いになりました。人の心に残る事すら否定するか普通。俺は誰かの思いを乗せて飛ぶのは嫌いだけど、それを糧に出来る人が多いのも事実だろうに。他人の“好き”を否定したんだ」

 

確か、沖田の遺体は回収されてないよな?つまり、あの情報通りなら……

 

「……本当に貴官は変わっている。話せて良かった」

「待って下さい」

 

沖田空将補は俺の肩に手を置いてから、部屋を出ようとする。それを俺は引き留めた。さっきとは逆だ。士気に関わるが、大規模作戦なんだし、やはりこの情報は伝えておこう。元々確実な情報では無いが、念頭には置いて貰わなければならない。

 

「今回の作戦……死人が襲ってくる可能性があります」

「どう言う事だ?」

「“ピラーの勢力圏で遺体を回収されなかったワルキューレは向こうの手駒になる”って話です」

「っ!?何だその話は!?聞いた事が無いぞ!!」

 

沖田空将補が声を荒げる。そりゃそうだよな。俺だって初めて聞いた時は驚いたし、何よりそんな敵に遭遇した事は今まで一度も無いしな。

 

「情報の出所は何処だ!?」

「ラミアの奇跡を成し遂げたアレハンドロ・オストレイからの情報です」

「ギリシャの!?……そうか、貴官は欧州に居たな?しかし何故今まで黙っていた?」

「正直、眉唾物だとは思ってます。長いことピラーと戦ってますが、そんな敵と遭遇した事は一度も無いんですよ」

「なら何故今になって話す?」

 

そりゃ気になるよな。元々話すつもりだったんだけど……

 

「大規模作戦だから士気に関わるし、元々話すつもりではあったんですけどね?今話してて、もしも情報が本当だったら……もしも沖田・桜が出てきたら、容赦なく潰す決意をしてしまったのが、最大の理由になってしまいましたね」

「貴官は」

「眉唾物ですよ。本当に噂レベルのね。でも、もしも事実なら……」

「……分かった。任せる」

 

俺、普通なら殴られても文句無い状況なんだけどなぁ。

 

「しかし、その情報が間違っていたら……二度と空は飛ばさん」

「情報眉唾物だって言いましたよね!?今回も出てくる可能性は低いですよ!?」

「親の前で娘を散々言ったんだ。覚悟しろ」

 

めっちゃ怒ってました。えっ?高確率でクビ?

 

「冗談だ」

「何だ冗談か……って、軍の司令って冗談分かりにくいのがデフォなんですか?」

 

ルサルカとかルサルカとかルサルカとか。冗談分かりにくいんだよな。

 

「……本当に出てきたら頼むぞ志摩大尉」

「はい。死なない程度に頑張ります」

「それで良い。では、貴官も出撃まで待機していろ」

「はい。失礼します」

 

決意を新たに、俺はミーティングルームを後にした。この戦い、やはり一筋縄じゃあ行かなさそうだ。




下巻で叙翼式前に英霊機出すなって結構念を押されてましたね。笑いました。しかも突発的だから許されてる感じでしたね?こっちは故意に出してますからね。そりゃめちゃくちゃ怒られて館山行きになりますわ。

姉御生かしとくと、園香覚醒イベント起きなさそうだなぁ……


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