死神と不死鳥と時々天才   作:しろねぎ

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1年半振りだぞ……?

生きてました。ウマにハマったり、惑星テラに居たり、エルドリッチしたりしてました。意欲沸いたので、ちょこちょこ更新させて頂きます。


知らない天井……いや、知ってる

目を覚ましたらあるのは染み1つ無い綺麗な天井だった。最早見慣れた医務室の天井である。

 

「知らない天井……じゃないんだなぁこれが!!」

「起きて早々に元気だなお前は」

 

おっ、近くに居るのはアズズか。身体が動かないし、枯渇現象にやられたなこれは。あ、ヤバイ……頭痛と吐き気が……助けてアズえもん。

 

「助けてアズえもん!身体が一切動きません!!それに頭痛と吐き気するんだけど、嘔吐袋ある?あと、ちゃんと点滴刺さってる!?」

「吐くならこの袋に吐け。あと、点滴は右腕に刺さってる。他に質問は?」

 

アズえもんをスルーされた。いつもなら何か言うんだが、結構ショックな事があったか?もしかして、最悪の予想が当たったか?

 

「もしかしてオーディンは敵だった!?」

「……お前、予想してたのか?」

「そりゃ怪しいし……他には、オーディンは複数人居た!?説とか。赤髪複数人説並に有力だなぁ!」

「変なのを混ぜんな……って複数人か。良いオーディンと悪いオーディンって?ハッ、それだったらどれだけウチの気が楽だったか」

 

溜め息を吐くアズズ。これは相当厄介な事になってるな。目の下の隈が凄いし。また寝てないな。

 

「それにしても結局敵だったんだなアレ。神様ってのも信じる物じゃ無いな?」

「全くだ。非科学的な物を真面目に考察してたウチがバカみたいだ」

「お前がバカだったら俺はどうなるんだろうな」

「学力たったの5……ゴミめ」

「よっしゃ表に出ろ!!」

「動けないだろお前」

「うん」

「…………」

 

これはアズズ相当参ってますねぇ……あんなノリには普段は付き合わないし。もしかして宮古と喧嘩でもしたか?

 

「喧嘩したならさっさと仲直りしろよ?」

「誰があんなバカと喧嘩するか」

 

反応的に当たりだなこれは。

 

「喧嘩じゃなければ倦怠期か」

「絞め殺すぞ」

「ワタシビョウニン、イタワル」

「お前はあのバカと違って話が分かってる癖に茶化すから疲れる……」

 

結局それは喧嘩したと認めた様な物だぞアズズよ。言ったらマジで絞め殺されるから言わんけど。しかしマジの喧嘩とは珍しい。明日は雨か?

 

「でもまぁお前らなら勝手に仲直りするだろうから良いや。他の奴等は?グラサンとか金髪とかロン毛とか鹿達とか」

「3人と同格なのか、あの鹿達は」

「鹿達の方が上まである」

「それは流石にウチでも同情する」

 

どうやら鹿の偉大さはアズズには理解出来なかった様だ。鹿の方が可愛いから当然の帰結だと思うのになぁ。おかしいなぁ。

 

「ここまで話を脱線させた俺が話を戻すけど、これからの行動指針は?オーディンが敵だったとして、どうするんだ?」

「幸いと言って良いのかは分からないけど、ウチ達の能力……ワルキューレとしての力は残ってる」

「わざわざ力を残す理由が分からんな……舐めてるのか、甘く見てるのか、見下してるかのどれかだな」

「それ全部同じ意味だろ」

「実際めっちゃ煽られてる様な物だしな。倒せるものなら倒してみろって」

 

でも余裕があるのは相手の方だ。前回の大規模作戦で疲弊してるのは御互い様で互角の条件に思えるかもしれないが、相手は人間と違って恐怖を知らない存在だ。自爆特攻上等で来れる。

 

「オーディンの居場所は?」

「富士のプライマリーピラーの内部だ」

「あのハンマーのピラー倒さないとならんのか……何故かアレ見た時から寒気が止まらんのだが」

「……あのピラーの名前はトールだそうだ」

 

何か盾投げられて首チョンパされそうな名前だな。

 

「てか何でピラーの名前知ってんの?」

「オーディンと沖田司令の会話記録から聞いた」

「……空将補も色々探りを入れてたからな。優秀な人を失った」

「そうだな。指揮官としてはかなり優秀だった……失ったと言えば、ウチの造った機体壊したらしいな?」

 

おっと流れ弾が!!何とかしなければ!!

 

「違うんです!!壊すつもりは無かったんです!!いやごめんなさい普通に天塚が突っ込んで行ったのが悪いんです!俺は悪くねぇ!!俺は悪くねぇぞ!」

 

いやでも本当に冷静になれば大丈夫だったと思うんだけど。あの機体凄かったし。

 

「あっ、そう言えば映像は?見たか?」

「露骨に話を逸らすな。映像は見た。幾つか仮説も立てれたし、そこは合格点だ。それで機体の話を……」

「見ろよアズズ、空気だぜ」

「これ以上無いくらいに雑な話の逸らし方だな!!しかも空気は目に見えない!」

「空気って何なんだろうな……目に見えないし、実は存在しないのでは……?」

「試しにお前の呼吸を絶ってみるか。空気が存在しないなら死にはしないだろ?」

「空気は無くても酸素が必要!何言ってんだろうか俺は?」

 

ヤバいこのままでは病室で御臨終してしまう。流石に悪ふざけが過ぎた。

 

「…………話を戻す。機体の件だが、もう流石に予備も無い。最後の作戦にはお前は参加出来ない。それは理解しておけ」

 

アズズから告げられたのは最悪の通告だった。

 

「っ……ここまで来てお留守番は無いだろ?何とかならないか?」

「無理だ」

「そこを何とか」

「無理だ」

「どうしても?」

「しつこい」

「いやいや」

「……もしも機体があってもお前は乗せない。お前の身体はもう限界だ。枯渇現象からの負荷は深刻なんだよ。1ヶ月は安静にしてないと駄目なんだ」

「マジかよ」

 

まぁ身体の感覚的に相当ヤバイのは感じていた。ヤドリギの時と同じ感じがしている。

 

「だから休んでろ。ウチ達が全部終わらせてやるから」

「分かった。後は頼んだ!」

「え?」

「ん?」

 

俺の言葉にキョトンとするアズズ。カメラがあったら激写してたわ。

 

「意外だな?もっと喰い下がると思ってた」

「いや結構喰い下がったと思うわ。そもそも俺死にたくないし……そこは一貫してるし」

「そう言えばそうだったな……まぁウチも簡単に諦めてくれて助かるけどな」

「お前達を信頼してるから任せるんだからな?他の奴等に任せろって言われても信じないからな」

「そ、そうか。その、なんだ……ありがと」

 

これまたカメラがあったら激写したくなる可愛さだ。

 

「と、取り敢えずウチの話は終わりだ。またすぐ他の奴等が見舞いに来ると思うが、なるべく安静にしてろよ」

「ああ、ありがとうな。身体動かないし安静にしてるさ。あと、宮古と仲直りして、しっかり寝るんだぞ?」

「うるさいバカ」

 

最後に俺を罵って、アズズは病室を出て行った。

 

「さて……留守番とは言え、やる事は多いだろう。さっきは安静にとは言ったが、タダ飯食える状況でも無さそうだし」

 

でも身体は動かないんですよね-。どうしようかな。と考えていると、また扉が開いた。アズズが忘れ物でもしたか?

 

「失礼するぞ。飛鳥、起きてるか?」

 

今度はクラウディアが入ってきた。外用の服装をしている。

 

「さっき起きたぞ。お前は今日は外回りの仕事か?」

「ああ、オーディンと戦う為の広告塔の役割だ。それにしても元気そうで良かった」

「さっきアズズにも言われたけど、そんなに元気に見える?結構重症に見えない?」

「いつもと変わらないくらい元気そうだ」

「嘘やん??」

 

俺はどうやら口だけ動けば良いみたいだ。存在意義が減らず口だけとは悲しくなってきた。

 

「今は動けないのか?」

「動けないけど???」

「少しもか?」

「えっ、うん……」

 

何だクラウディアよ。何か俺に悪戯でもするつもりか?俺、恨まれる様な事をしたか?

 

「日本にはこんな諺があるらしいな。“天井のシミを数えていれば終わる”と」

「おいバカ誰だそんな事を教えたのは」

「シミを数えている内に身体も動く様になるだろうから少しの間だけ辛抱するんだ」

 

あ、意味を勘違いしてるみたいだ。良かった。

 

「動ける様になったらまた戦うのか?」

「1ヶ月は安静らしいから、オーディンとの決戦は出れないな。そもそも新しい機体が無いし……本当に良い機体を亡くした……初飛行で失うのは辛い」

「だが、それのお陰でリズもリリーも、天塚弥生も生きて帰って来れた。皆を救ったんだ。リズとリリーは帰還して、すぐに泥のように眠ってたが、健康その物だ。だから感謝している」

「そりゃ良かった。まぁ天塚に関しては俺と同じで機体を失ってるから戦力とは言えないが、出来る事もあるだろうしな」

 

天塚のシールド隊の士気も落ちずに済むだろうし。動ける人間は多い方が良い。

 

「ああ、彼女が生き延びたお陰で園香も喜んでいたぞ。涙ながらにな」

「結局お姉ちゃん離れはまだ先になりそうだな。いや、どっちかと言うと、天塚の妹離れ……かもしれんが」

「本当に姉妹の様だからな、あの2人は」

「……そうだな」

 

そう言えばクラウディアにも妹が居た……が、記憶に無いんだよな。オーディンの手によって、あのギャラルホルンになった。その際にクラウディアは妹に関する記憶を失った、らしい。俺も記憶がある訳じゃないし、その妹である“シーリーン・ブラフォード”の事を唯一覚えているルサルカから聞いた話だ。

 

「お前さ、妹が居たら……どんな感じだと思う?」

「妹か?そうだな……」

 

クラウディアは、ふむ、と思案する仕草をして暫く考えていた。

 

「私に妹が居たら、とてもしっかりした妹になるだろうな。もしかしたら姉の私が世話を焼かれるかもしれない」

「……」

「ああでも、だから私はそのお返しに、沢山愛を注ぐと思う。不器用な私に出来るのは、それくらいだからな」

「……そっか。そんなに愛して貰えるなら、お前の妹は幸せなんだろうな」

「そうだな……家族なら幸せにしたいと思う」

 

クラウディアは優しい笑みを浮かべている。ああ、こんなに優しい笑みを受け取る相手が、愛情を与える相手が本当は居たんだよな。

 

「クラウディアに妹が居たら、俺にとっても妹みたいな物だよな……」

「ちょっと何言ってるか分からないな」

「何で分かんないんだよ」

 

コイツ最近お笑い番組観たな?

 

「日本のコメディ番組は面白いな。何人も次々に違う事をしてくれる」

「その分、流行り廃りが早い業界でもあるな」

「夫婦漫才と言うのがあるらしいな?」

「一応あるな。珍しい部類ではあるが」

 

変わった言葉を覚えたな。最近のテレビでは全く見ないが。

 

「私と貴方でやらないか?」

「えっ、何を?」

「夫婦漫才だ」

「夫婦の意味分かってるか?ただのコンビじゃないぞ?」

「結婚しよう」

 

わーお、イケメン……じゃなくて、コイツ今何て言った?

 

「結婚しよう」

「聞き間違えじゃなかった……!!」

「因みにアズズから告白されたのは知っている」

「それ知ってて言えるの、メンタル強すぎるだろう……」

 

いつの間にこんなに心臓強くなったんだ。いや、そう言えば昔らか覚悟決まってる奴だった。

 

「この戦いが終わったら、どちらかを選んで貰う」

「マジで心臓強くなり過ぎでは!?究極の選択を強いて来た!!」

「私を選べばアズズが泣くな。そしてアズズを選べば私が……死ぬ」

「海馬社長かお前は!!」

「初恋に敗れて死ぬなら本望だ!!」

「まんまじゃねーか!めっちゃ卑怯だと思うぞ!メンヘラか!!」

「メンヘラ……とは何だ?メンタルがヘラクレスの様に強いと言う意味か?」

 

ギリシャ神話の英雄並のメンタルだと?今のクラウディアは確かに強いけども。

 

「違う、メンヘラってのは、メンタルヘルスの略だ。ってそんな話は置いとけ。脳が追い付かん」

「結婚しよう」

「だから待てって!!何、いつから好きなの!?違う、聞きたいのはそれじゃない!お前は正気なのか!?」

「少なくとも、今の貴方よりは落ち着いている」

「混乱させてる奴が言うの、すげぇムカつくんだが!?」

 

一旦深呼吸して落ち着くんだ……クールになるんだ。

 

「すーはー……すーはー……」

「落ち着いたか?」

「誰のせいだと思ってるんだ?」

「私のせいだな、うん。責任を取るから結婚しよう」

「いや、マジでどうした?」

 

冗談で言っているとは思わないが、違和感があるのも確かだ。

 

「……実は」

 

真面目な顔をして、クラウディアが俺を見る。

 

「貴方の命はそれ程長くないんだ」

「……あー」

「気付いていたのか?」

「何となく?普通にこのまま生活する分には問題ないって思ってたけど、見込みが甘かったか」

 

流石に次の戦いで長時間の枯渇現象に晒されたら死ぬ気はしてたが、思ったよりもダメみたいだ。

 

「……安静にしていれば本当に大丈夫だ。でも、もう戦場には行けない。行くと言うなら、私はどんな手段を使ってでも止める」

「少なくとも、次の作戦には行かねぇよ……アズズにも言われたし」

「またアズズに先を越されたな……でも、本当に大人しくしてるんだぞ?絶対だからな?」

「皆からの信用が無くて笑う」

 

俺、そんなに無茶は……してるわ。欧州の時は特にしてるわ。無い物だらけだったから、結構無茶したわ。

 

「で、私を選んだ場合、結婚はいつしようか?私はいつでも構わない」

「そのネタまだ引っ張るん?」

「本気だ」

「……なんでさ」

「私を救ってくれた」

「戦乙女に救われてるのは俺達だろう」

 

一体俺が何をしたのか。クラウディア達に比べれば、救えた命なんて僅かだ。救えなかった命の方が遥かに多いだろう。

 

「私は、貴方に救われた。死神ではなくしてくれた。勝手にいじけていた私の隣に居てくれた。それは私にとって、何よりも救いだった」

「吊り橋効果みたいな……」

「違う」

「ヒエッ」

 

否定しようした瞬間に、クラウディアの眼から感情が消えた。あれ?もしかしてメンヘラじゃなくて、ヤンデ……

 

「この気持ちに偽りは無い。何かが入り込む余地は無い。私は貴方が好きだ。愛している。だから結婚しよう」

「駄目だ」

「何故だ?私の事は嫌いか?」

「んな事ある訳無いだろ。好きだよ」

「なら……」

 

クラウディアが俺の手を握る。しかし、クラウディアの手は震えていた。

 

「情けない話だが、今の俺は気持ちの整理がついてないんだ。アズズに対しても、お前に対してもだ」

 

25過ぎたオッサンが何を言っているんだと思うかもしれないが、相手はまだ20も行ってない女の子だ。他にも幸せになれる相手が居るかもしれないのに、その選択肢を捨てさせるのは気が引ける。

 

「そもそも周りに男が俺くらいしか居ないから……」

「何度も言わせないでくれ。私の気持ちはそんなに簡単に決めた物では無いし、今は私の周りには男性は沢山居る」

「マトモなやつ居る?」

「…………居る」

「何だ今の間は」

 

俺含めてマトモなやつ居る?居ねぇよなぁ!?ぶっちゃけ一番マトモな人、里見さんだと思う。

 

「とにもかくにも!!お前達はまだ若い!色々観て!聴いて!知識を集めてから恋愛とかをしろ!」

「分かった。そこまで言うのなら……」

「分かってくれたか」

「今日は引き下がろう。だが、戦いが終わったら答えを聞かせてくれ」

 

真剣な瞳で俺を見るクラウディア。流石に茶化せんな。

 

「分かった。どうせ暇なんだ、ゆっくりと考えるよ」

「そうしてくれ。出来れば私を選んで欲しいが、結果に我が儘は言わない」

 

そう言ってクラウディアは部屋を出て行った。

 

「……マジでどうすりゃ良いんだ」

 

アズズも、クラウディアも、正直俺には勿体無いくらい良い娘なんだ。それこそ人類の希望とも言える存在なんだ。そんな娘達を俺が幸せに出来るのか?

 

「失礼します」

 

また誰か来たみたいだ。しかし聞き慣れない声……誰だ?

 

「貴方が志摩・飛鳥様ですか?」

「あっ、はい。志摩・飛鳥です……様?」

 

様なんて呼ばれた事無いから、少々面食らってしまう。しかも中々の美人さんだし。誰だろう。基地に来た民間人か?

 

「私は蛍川・縁と申します。日本国首相の孫娘です」

 

……何て?

 

俺の脳はキャパを越えたみたいだった。




これからも何卒宜しくお願い申し上げます。
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