目が覚めたら、目の前にオーディンが居た。何だこの状況。それにここ何処だ?木の檻の中?
「目が覚めたか」
「オーちゃん、何か用か?でかここ何処?植物の中身みたいな感じ……あっ」
ヤドリギの中にそっくりじゃん!つまりオーディンに捕まったのか。医務室で寝てただけなのに!?
「ああ、貴様の予想通り、プライマリーの内部だ」
「枯渇現象の感じは無いけど、何かしてるのか?」
「今はお前から生命力を吸収していない。そんな事をすれば、すぐに貴様は死ぬだろう」
「…………」
俺に対する呼び方が定まっていない。これは完全に焦っているな?しかし外がどうなっているか分からない。作戦はどうなった?アイツ等は?
「心配するな。今、外の様子を見せてやる」
オーディンが外の様子を映像に出した。黒い英霊機と交戦するシールド隊や、ワルキューレの様子が写し出されていた。
「おー、これどうなってるんだ?」
「プリズスキャリヴの応用だ。しかし、焦る素振りも無いとは些か拍子抜けだな」
「アイツ等が勝つって信じてるからな」
「神相手に勝てるとでも?」
オーディンの鋭い視線が俺に向けられた。威圧感が半端じゃないな。
「勝算無いまま戦う程、うちの頭脳担当は馬鹿じゃないんで」
「頭脳……駒込・アズズか」
「正解。アイツが作戦決行した以上、俺は信じて待つだけだよ。それにしても暇だな。オーちゃん、何か面白い話し無い?」
「ならばクラウディアについて話をしよう。我が愛しの娘の話しをな」
「そう、それだよ。何でクラウディアに矢鱈と拘るんだ?ネームドなら、リズベットとかレイリーとか居るだろ。クラウディアだけ扱い違うよな」
あからさまな特別扱いだ。ワルキューレは全て自分の娘だと言ってはいるが、クラウディアだけは違う。
「クラウディアは私の娘だからな」
「ワルキューレは全員だろ?」
「いや、クラウディアは私の血を引いている」
「はぁ?」
じゃあ何か?クラウディアは神の一族って事か?
「エイミー、シーリーン、クラウディア。皆、私の血を引いている」
「つまりブラフォード家とオストレイ家は親戚って事か。だからアレハンドロ司令もエインへリアルとやらに?……いや、俺も誘われたよな。まさか俺も!?」
「貴様は私が作り出した人工生命体だ」
「何かやべぇ話しされてる!?」
嘘だろ!?なら俺は今まで家族だと思っていた人達は?幼少期の記憶は?
「おかしいとは思わないか?今まで前線に居て、あれだけ墜落や敗北を経験し、生きているのが。何故死なないのか。ギリギリの所で助かるのか。貴様は私によって生かされていたのだ。娘の盾になる人員を増やすには、同じ人間の成功談が有効だったからな。奇跡の不死鳥……中々良い筋書きだろう?」
「確かに俺だけ不自然に生き残っている……だが俺は確かにお袋や親父との記憶が……」
「私が植え付けた偽りの記憶だよ」
そんな……
「幼稚園の時に結婚の約束をした幼馴染みの遥ちゃんは!?中学まで一緒だった!!」
「その記憶も偽りだ」
「何……だと!?そんな……俺の青春の記憶が偽り……?」
「実に憐れだな。だがそれも終わる。ここで数多の魂をヴァルハラへと導き、ラグナロクを乗り越えるのだ!!」
「いや俺遥ちゃんとか知らんし。そんなリア充イベント無かったし。人工生命体とか嘘やんけ。何だよ結婚の約束をした幼馴染みって。羨ましいわ」
「……貴様」
どんだけ追い詰められてるんだオーディンは。バレる嘘を吐いて……何らかの洗脳でもしようとしたのか?
「まぁどうでも良いけどさぁ……よっぽど余裕無いのなお前。今のお前、かなり悲惨だぞ。狂った目をしてる。狂った奴の相手って大変なんだよなぁ」
「何処までも神を愚弄するつもりか?」
「お前個人をバカにしてるんだよ。お分かり?」
「今すぐ殺しても構わないんだぞ?」
「わざわざ俺を此処に連れて来ておいて、簡単に殺すのか?」
「貴様を連れて来たのは戯れに過ぎない。先ほどの人工生命体、確かに虚言だ。貴様はちゃんと人間だ」
「知ってるって」
何か意味深な言い方だな?
「貴様のクローンは造ったがな」
「はぁ!?」
オーディンの発言に驚いていると、オーディンの隣に“俺”が現れた。本当にクローンを……
「俺もっとイケメンやろ。造り直せ」
「全くもって精巧だ。中身も貴様そっくりに造り上げた。不愉快だったが」
《うへへ……》
「待て、お前の俺のイメージ、第一声が“うへへ……”なのか?酷くないか?」
声もそっくりだから確かに精巧なんだが、中身は全然違うだろこれ。
《うへへ……オリジナルのお前を殺せば俺がオリジナルだぁ!……武器とか無いから殺せないや……狡いぞ、そんな安全な場所に居るとか!!》
「俺だわ。お前は完全に俺だわ。しかしクローンかぁ……なぁ、もう一人の俺」
《何だAIBO☆》
「思考回路を完全に再現したのは間違いだった。ここまで奴が不愉快だとは……」
「《ざまぁないぜ!!》」
いや、凄いわオーディン。自爆してるし。
「しかし、もう一人の俺が居るとなると、やることは……分かるな?」
《当たり前だろう!フュージョンするぞ!!クローンなら、完璧な動きでポーズ出来る筈だ!》
「よっしゃ!行くぜ!!」
「……勝手にやっていろ。俺はグングニルを起動する」
「《なぁにそれぇ》」
「…………」
あ、オーディン完全に無視してきた。お前が始めた物語だろうが……!!
「精々指を咥えて見ているが良い。クラウディアに会いに行く」
《俺は人差し指咥えるわ》
「じゃあ俺小指」
「で、クラウディアに負けた感想は?」
《あれだけサイズ差あって負けるとか恥ずかしくないの?サイズ差補正無視装備なんて渡すからだぞ?悔しいのう!悔しいのう!!?》
「黙れ!!」
「……ウチ、どうすれば良いんだ?」
クラウディアに負けて戻ってきた、オーディンを煽ってたら、アズズが英霊機で突入してきた。
「それは」
《自分で》
「《考えろ》」
「お前の存在が一番意味不明なんだよ!!何なんだお前!?」
「俺がオリジナル」
《クローンです。オリジナルになりたい》
「……オーディン?お前か?こんなの造ったの」
「後悔しているがな。何かしらに使えるかと思ったが、使い物にならん」
「《酷い!!》」
「飛べないコイツはただのバカだぞ」
アズズの追い討ちで、俺もクローンも黙った。みんな酷い……!!
「とにかくオーディン、ウチらの勝ちだ。潔く負けを認めろ。神なら神らしくな」
「何故貴様等は神に潔さを求める!?何故だ!!」
「喧しいな。みっともなく生きたいなら、神の立場とか捨てろよ。あーだこーだと駄々をこねるならさ、とことん生き汚くなれ」
「それが出来たら苦労しない!そもそも貴様は気に入らなかった!死を恐れて、失う事を恐れる貴様が何故こうも強く居られる!?」
泣き喚きながら、オーディンは俺に問う。
「そりゃ……信じてるからな。なぁ、アズズもそうだろ?」
「……ああ!!ウチも信じてる。ウチのヒーロー達を!」
その言葉と同時に、宮古の英霊機が壁を壊して現れた。ヴァンドランデの直上だ。
「でりゃあああああぁぁぁぁ!!」
宮古の刀がヴァンドランデを真っ二つに斬り裂いた。
「まさか、これを狙って!?」
「信頼の力だ。お前に足りない物だな」
「……何故だ、何故僕は……」
「一人で抱え込まず……相談してくれれば良かったんだよ!!」
宮古がオーディンに語り掛ける。オーディンは涙を流していた。
「愚かな娘だ。優しいお前が……僕は苦手だったよ」
オーディンは両手を広げて、アズズの英霊機の前に立った。最期の姿は、とても神らしかった。
アズズはオーディンを撃ち抜いた。その影響でピラーの崩壊が始まっている。俺を閉じ込めていた木の檻も消えた。
《さぁ、逃げるぞ!!》
「「何でお前がいの一番なんだよ!!」」
クローンが先陣を切っていた。オーディン死んでも消えないのかよ。
「あれ!?飛鳥が二人!?」
「後で説明してやる!宮古はその増えたバカを乗せろ!こっちの本物のバカはウチが乗せる!!」
「えっ!?アズズ、あれ連れてくのか!?」
「仕方無いだろ!?見殺しは流石に出来ない!何でお前の見た目なんだ!!」
「オーディンが悪い」
とにもかくにも、戦いは勝利で幕を閉じた。
次でアニメ本編完結。後日談を2回くらいやって、終わります。多分。きっと。恐らく。