死神と不死鳥と時々天才   作:しろねぎ

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アニメ本編は終わります。


選択肢

オーディンを倒してすぐに司令室に呼び出された俺は、里見さんにお説教を受けていた。解せぬ。

 

「お前さんの奇行、じゃなくて突拍子もない事をするのには慣れたつもりだったんだけどねぇ……これはダメでしょ」

「これ、今回は俺のせいじゃないですけど!?しかも今、奇行って言った??」

《誰が生めと頼んだ!誰が造ってくれと頼んだ……!!私は私を生んだ全てを恨む……!だからこれは攻撃でもなく、宣戦布告でもなく、私を生んだお前達への逆襲だ!》

「こんなのお前さんが何とかするしか無いでしょ?」

「こんなの扱い!?」

 

俺のクローンを見て、こんなの呼ばわりする里見さんに対して、若干の哀しみを感じながら、俺はこの状況をどうするか思案する。

 

「おーい、頼まれた資料持ってきたぞ……って、まだソイツ居たのか……」

 

アズえもん入室。何とかして貰おう。

 

「アズえもん!!」

「その呼び方やめろ!」

《こ、殺さないで!!》

「何でお前が怯えてるんだ!!……お前がクローンの方だよな?」

「実は俺がクローン」

《オリジナルです》

「ウチ間違えたのか!!」

《本当はクローン》

「本当はオリジナル」

「ここに資料置いとくな。じゃあウチ帰るから……」

「駒込をあんまり苛めるなよ……」

 

アズえもんが帰っちゃう!悪巫山戯が過ぎた!

 

「アズえもん何とかして!?」

「こんなの何とか出来るか!お前が何とかしろ!専門外だ!」

《俺、もうすぐ消えるで?》

「「「は??」」」

 

クローンの突然の言葉に声を揃える俺達。消える?マジで?

 

《マジマジ。流石にオーディンの力無しで生きられんし》

「……そっか。なら最期はウチが看てやる。オーディン撃ったのはウチだし、それくらいの責任は取る」

《それなんだけどさ。もう一人の俺よ》

「何だAIBO……?」

《お前の身体、元の健康な身体に治してやる》

「「「は??」」」

 

また声を揃える俺達。アズズに至っては開いた口が一向に閉じない。

 

「治すって、どうやって治すん?」

《簡単だよ。もう一人の俺、俺の胸に手をかざせ……》

「分かった」

 

クローンの胸に向けて手をかざす。すると……何か発光しだした。

 

「お前光ってない!?こわっ!」

《今の世界に必要なのは神ではない……強者なのだ》

「えっ、ピッコロの同化!?」

「懐かしいなぁ」

 

里見さん世代だっけ。いや、そんなことよりも、クローンが光の粒子になって俺に吸収されていく。怖いんだが……でも、身体の重さや苦しさが無くなっていくのが分かる。

 

《……じゃあな!》

「AIBOOOOO!!」

「大体の映画とかだと、感動的な別れの筈なんだけど、お前さんが関わると緊張感無くなるよね……って駒込、泣いてるの?」

「な、泣いてないし!!」

 

アズズは感受性豊かだから泣いてくれた。里見さんは冷たかった。しかし、何はともあれ身体の調子が完全に治った……筈だ。

 

「今俺は、究極のパワーを手に入れたのだー!!」

「ウチの涙返せ!」

「あの後ボコボコに負けたよね」

「戦闘力数万程度がいきなり百万超えたら調子乗りますって、誰でも」

 

アレはしゃーない。話が逸れた、閑話休題。

 

「少なくとも、オーディンの造ったクローンが役に立った訳だが……お前さん、本当に大丈夫なの?」

「絶好調ですね」

「じゃあ事後処理の仕事手伝って貰うよ」

「よっしゃ!何からします?」

「取材の対応。基地の前に取材陣来てるから、適当に対応してくれる?ワルキューレ達は後日って事で」

「分かりました!ある事無い事言っときます!」

「ウチめっちゃ心配になってきた……」

 

アズズの愚痴を余所に、意気揚々と部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って訳で、グラサン達は名誉の戦死を……良い仲間を失いました……」

「なる程、それはお辛い戦いでしたね……ワルキューレだけでは無く、貴方達の様な方々のお陰で我々は生きていられるのだと改めて認識させられます」

「ええ……忘れないであげて下さい!!」

「はい!本日はありがとう御座いました!」

 

ふぅ、これで最後の取材陣か。長く険しい戦いだった。

 

「ん?」

 

携帯が鳴った。相手はグラサンだった。

 

「はい、もしもし」

『もしもし!?お前、俺達死んだ扱いにしてんじゃねーよ!!!病院でテレビ中継観てて、飯吹き出したわ!!』

「バカな……死んだ筈では!?悪霊退散!!頭髪四散!!」

『頭髪は元々ねーよ!!』

「そうだった。じゃあそろそろ電話切るわ」

『何も解決してねぇ!!』

 

グラサン達は生きていた。天塚のシールド隊との連携によって、何とか生き延びたらしい。俺並みに悪運が強いな。マジで死にかけたらしいけど。

 

『さっき縁さんから心配の電話来たわ!殉職されたんですか?って!!』

「え、お前あの人と知り合いなの?電話するくらい仲良いの?」

『昔、一緒に戦ったんだよ……部屋にサインあったろ?』

「あの飾ってあるやつ、縁さんのだったのかよ」

 

グラサンの部屋にあったサイン色紙の謎が解けた。孫娘の方のサイン欲しがる辺り、グラサンらしいよな。

 

『とにかく!退院したら覚えとけよ!!』

『酒奢れ!!』

『ルサルカさんの生写真くれ!!』

 

ロン毛と金髪も居るらしい。

 

『『『姉御のキスまだ貰ってない!!』』』

 

天塚のシールド隊も居るのか……悲惨な病室だな。

 

「天塚のキスは知らん。今は園香にべったりだろうし、邪魔したら、トドメ刺されるぞ。じゃあ、マジで切るからな」

『おう、お前も頑張れよ』

「ああ、またな……さてと、今度は英霊機の整備でも手伝うか」

 

電話を切り、ハンガーへ向かった。

 

「おっす、何か手伝える事あるか?」

「お、飛鳥さん!手伝ってくれるんすか?」

「おう、体調回復したし、人手足りないだろ?」

「あざっす。班長ー!!飛鳥さんが手伝ってくれるって!!」

 

若い整備士が、おやっさんに声を掛ける。するとおやっさんは俺の顔を見るなり、不機嫌そうな顔をした。いつも不機嫌だけど。

 

「オメェ、体調は良いのか?」

「諸事情で全快しました。今の俺は無敵よ」

「……そうか、なら手伝え。但し半端な仕事したら許さねぇからな!」

「分かってるって。で、どうすりゃ良い?」

「P-51Dのメンテしろ」

「P-51D?そんな英霊機使うの、うちに居たか?」

 

おやっさんの指を指した方を見ると、確かにP-51Dが二機あった。どっかで見たな?

 

「新入りの小娘達の機体だよ。さっさと始めろぃ!」

「あー、あの二人か。了解」

 

プライマリー攻略戦の時に助けた新人、ここに来たんだな。さて、まずは外部の目立つ部分の損傷確認から始めようか。

 

「あら、貴方が整備の手伝い?嬉しい誤算だわぁ!!」

「うわでた」

「何よ、人を化け物みたいに!失礼しちゃうわ!!」

「並みの化け物じゃなくて怪物じゃねーか。ロジャー」

 

まだこっちに残ってたんだな。てっきり欧州に帰ったと思ってたが。

 

「リズベットとレイリーは先に帰ったけどね。私はまだまだ班長さんの仕事を見ていたいから残ったのよ。あと、ルサルカから貴方宛に伝言預かったわよ」

「伝言?メールでも送りゃ良いのに」

「貴方、たまにメール溜め込むでしょ……」

「バレた」

 

流石に仕事用で分けてるけど、プライベートは結構溜めてるな。

 

「んで、伝言って?」

「日本での催事や事後処理が終わったら、また欧州に来るようにって。クラウディアも連れて。ですって」

 

クラウディアを連れてか。

 

「まぁ日本のプライマリーが消えた以上、ネームドをずっと置いとく訳にもいかんか……」

 

となると、クラウディアは館山基地とはお別れになるのか?うわ、ワルキューレの皆が泣きそうだわ。

 

「その辺りの采配はルサルカに頼むしか無いわね。何だかんだでクラウディアには甘いから、館山から引き離すって事は無いと思うわよ?」

「どうだろうな。オーディン消えても、英霊機の加護もピラーもそのままだからな。アイツも色々決めかねてるんじゃないか?」

「……貴方、まだルサルカの事好きなの?」

「…………こっちはフラれてんだよ!!五月蝿いな!!」

「天才ワルキューレちゃんにも、あのクラウディアちゃんにも好かれてるのに、罪な男」

「何でこうなるかね?」

 

人生設計壊れていく。全てオーディンのせいだ。

 

「実際どっち取るの?天才ちゃん?それともクラウディアちゃん?」

「一生独身ってのも」

「ダメよ。それはダメ。少なくとも、女の子二人振った挙げ句に一生独身は刺されて死ぬわよ。それに贔屓目もあるけど、クラウディアちゃんを振るなら、しっかり責任取れないと許さないわよ。もし中途半端に振ったら、私が貴方の頭を叩き割るわ」

「分かってるよ。ただ、アズズもクラウディアも、俺より相応しい相手が居る気がするんだよな。アズズに関しては宮古とか……」

「貴方本当に自己肯定感低いわよね。クラウディアちゃんが惚れた相手がそんなに腰抜けでどうするのよ?それに、そんな腰抜けなら、残念ね」

「さっきから何なんだ」

 

流石にイラついて、ロジャーを睨み付けた。だがロジャーは特に気にも留めてない様子だ。

 

「煮え切らない貴方にイライラしてるのよ。そもそも本当に自己肯定感低いわよ!!何なの!?自分に対する好意に鈍感過ぎるわよ!欧州の女の子、何人落とせば気が済むの!?毎回相談される身にもなってよ!オペレーターの子とか、基地の近くのお店の子とか!!挙げ句の果てにはナタリーよ!貴方をアルマと同じくらい気に入ってるんだから!!貴方の写真、皆が毎回高値で買ってくれるけど!!」

「待て、ツッコミたい箇所は一億箇所くらいあるけどな?何だ写真って!!盗撮じゃねーか!!」

 

衝撃的な事実が滅茶苦茶出てきたが、盗撮で儲けてるのかコイツ!?

 

「一番高いのは着替え中の写真と、トレーニング中の汗だく写真よ」

「聞いてねーよ!!」

「プレミア付いてるのは、シールド隊同士で肩組んで笑ってる写真」

「腐ってやがる……」

 

二重の意味で腐ってやがる!!

 

「それで、結局はどうするの?私はクラウディアちゃんが勝つのに賭け……いえ、クラウディアちゃんが貴方と付き合うって信じてるけど」

「おい賭けって聞こえたぞ」

 

人の恋愛事情を賭けにしてんのかよ……

 

「でも、貴方が自己肯定感低いのは本当よねぇ。何でなの?」

「何でって言われてもなぁ……」

「自己肯定感高めるような想像してみなさいよ。ピラーから身を呈して皆を守るとか」

「死ぬから嫌だ」

「じゃあクラウディアちゃんをナンパから守るとか」

「その辺の男なら、何人居てもクラウディアには勝てんだろ」

 

本人はやりたがらないが、実際戦ったら秒で沈めそうだ。

 

「じゃあ天才ちゃんを守るって事にして……」

「最強警備の宮古が居るんだよなぁ……」

「じゃあピンクちゃん!!」

「園香の呼び方それ!?それに天塚が絶対守る!!」

「じゃあ私を守って!!」

「お前をナンパする奴はこの世に居ねぇ!」

 

居たらこの世の終わりだよ。そもそもナンパしてくる性別どっちだよ。多分本人は男がナンパしてくると思ってそうだけど。

 

「もう……!!でも、本当にケジメは着けないとダメよ?」

「実際今まで恋愛対象として見てなかったせいで、かなり気持ちがグチャグチャなんだよな……」

「あんなに可愛い女の子達を恋愛対象として見てなかったって、貴方もしかして、機能不全?」

「酷い言われようだな!?てか、アズズに関しては宮古が好きなのかと思ってた。恋愛に性別は関係無いし」

「あの二人、凄く仲が良いものねぇ……」

 

端から見れば完全に世話焼かれてる夫婦なんだよな。心と心で通じあってるって感じがする。

 

「あれ?俺、百合に挟まる男では?……急いで死ななきゃ!!」

「死ぬのを怖がってる貴方らしくない発言ね」

「百合に挟まるのは大罪である」

「……そう言えばワルキューレって、同性カップル多いわよね」

「そりゃ男は大体すぐ死ぬしな」

 

俺も同期なんてもう殆んど居ないし。

 

「前線行けば弾除け扱いだものね、本来は。ここの基地は凄いわよ。皆が生き生きしてるのよ。欧州の最前線なんて……」

「あの空気はいかんともし難いよな」

 

ワルキューレが居なかったら、士気なんてゼロだろうなあれは。

 

「何の話をしてるんだ?」

「……クラウディア」

「あらクラウディアちゃん!何か御用?」

「ああ、新人の二人に基地を案内していた」

 

胸を張るクラウディア。そうか、今はこの基地の先輩になるのか。

 

「鈴原・くるみです!」

「石動・萌です!」

 

新人の二人が自己紹介をする。めっちゃ緊張してるな。初々しい。

 

「俺は志摩・飛鳥。こっちが野生のオカマのロジャーで、あっちに居るのが野生の鹿だ。俺が連れてきた」

「ちょっと!?野生じゃないわよ!?」

「は、初めまして!私、野生のオカマさんは初めて見ました!」

「くるみ!?野生のオカマさんなんて居ないからね!?って何で鹿も居るの!?」

 

おっ、石動って子はツッコミ適性アリだな!これは将来有望だ。鈴原って子も天然タイプか……磨けば光る!

 

「「あ、あの!!」」

「ん?」

「「あの時は、助けてくれてありがとうございました!!」」

「ああ、どういたしまして。生き残ってくれたのが何よりの成果だな」

「「「「……」」」」

 

場が静まり返る。何やねん。

 

「そういうとこよね」

「そういう所だな」

「は?どういうとこ?」

「天然タラシって意味だな」

「私、ゲーム以外であんな台詞初めて聞きました……」

「私も……」

「そう言われたら、恥ずかしくなってくるだろうが!!」

 

言われてみれば、めっちゃ恥ずかしい発言だったわ。

 

「もしかして、俺たまにそんな感じあった?」

「息をするようにあったわよ」

「毎日だな」

「はい死にまーす」

 

俺の人生黒歴史か?

 

「そんな飛鳥も好きだぞ」

「あらあら!!」

「こ、これが大人の関係……」

「くるみ、それは違うと思う」

「もうやだ。メンテ終わったから帰る」

 

周りの整備士から、あんなに無駄口叩いてたのに終わってたの!?と声が聞こえたが、メンテ程度なら喋りながらでも余裕で出来らぁ!!と、おやっさんの一言で全てが終わった。

 

「じゃあ帰るから……」

 

聞き耳立てながら仕事している連中から逃れる為に、出ていこうとすると、クラウディアが俺の前に立った。仁王立ち似合うな。

 

「待ってくれ飛鳥、あの時の答えを聞かせてくれ。私とアズズ……どちらを選ぶんだ?」

 

クラウディアの発言を聞いていた周りの整備士全員から、殺気が飛んでくる。アズズ推しだもんなコイツ等。

 

「ここで聞くん?アズズも呼んで、部屋で話さないか?正直周りが怖い」

「……そうだな、焦っていた。アズズも一緒でなくては不公平だ。分かった、行こう」

「新人の案内終わってからな!?」

 

職務放棄はダメだぞ。

 

「「お気になさらず!!」」

「仕事は仕事だろうが。どのみちアズズを呼び出すのに時間は要るし、問題は……」

 

俺が言い切る前に、ギャラルホルンの音が鳴り響いた。間の悪い!!

 

「飛鳥、行ってくる」

「俺はまだ機体無いしな……」

「くるみ、私達も!!」

「うん!!」

「行ってきなさい!乙女達!」

 

クラウディア達が機体に乗り込んでいると、アズズ達もやってきた。

 

「機体の整備万全?」

「当たり前だ!」

「さっすが!!愛してるぅ!」

「さっさと行くぞバカ宮古!!」

「アズズ!!」

 

機体に向かうアズズに声を掛ける。

 

「何だ、用があるなら後に……」

「後で話がある。クラウディアと部屋に来てくれ」

「……分かった」

 

アズズはそのまま機体に乗り込んだ。

 

「ようやく決めたんですか?」

「……さぁ?」

「うわ~、飛鳥さんらしいと言えば飛鳥さんらしい行き当たりばったりさだ」

「まぁ答えは出すさ……あの新人の二人を頼んだぞ。物事教えるの、園香が一番上手いんだからな」

「うん。頑張るね」

 

園香も機体に乗り込んだ。

 

「飛鳥、アズを選ぶにしても、選ばないにしても、飛鳥が後悔しない方を選んでね」

「てっきりアズズを選べって言うかと思ったが」

「言わないよ~。あ、でもアズも、クラウも良い子だもん!!どっちも選んで欲しいかも!!」

「クズになれと?」

 

宮古に問い掛けると、宮古は柔らかく微笑んだ。

 

「飛鳥が二人に優劣を絶対に付けられないの知ってるもん」

 

宮古はそれだけ言って、機体に乗り込んだ。

 

「……全く、ワルキューレに勝てた試しが無いな」

 

翔んでいくワルキューレ達を見送った。空は何処までも蒼く、澄んでいた。




後日談は恋愛事情決着、慰安旅行、欧州帰還、絶対に笑ってはいけない館山基地24時(何でもありのギャグ時空)を予定してます。
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