死神と不死鳥と時々天才   作:しろねぎ

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シリアス難しい。


背負う物

慌ただしい管制塔。行き交う焦燥感を孕んだ声。いつ聞いても嫌になる。

 

「セカンダリが現れたのは海ほたる周辺。枯渇現象のせいで民間人が危ない状態。敵は水の障壁で防御している。偵察隊に被害多数。現状こんな感じか?」

「ああ、バカの割には理解が早いな。そんでもって、機体が届く前日だからお前はまだ待機って言われてたよな?」

「少しでも知恵は要るだろ?」

「お前に思い付く事がウチに思い付かないとでも?」

「そうは言わんが視点は違うだろ?」

「意地でもここに居るつもりだな!!」

 

だって居場所無いんだもん。機体が届いてれば少しは戦えたけど、前日に襲撃とは……ピラーって毎回タイミング悪いよな。やっぱり狙ってるのか?

 

「……居るなら何か案出せ。お前ならどうする?」

「そうだな……水の障壁の範囲内に何があるかだな。内側からの侵入経路でもあるか?」

「……ここは何だ?」

 

クラウディアが指を指したのは海底トンネルの入り口……ドンピシャじゃないか?

 

「アズズ、行けそうだな?」

「ああ、お手柄だ」

「もっと褒めろ。バカ呼ばわりしたんだからもっと誠意を込めて褒めろ!!さぁ!!」

「調子に乗るな!!」

 

アズズを煽ったらローキックを食らった。痛くないんだけど?

 

「っ~!!」

「蹴ったお前がダメージ受けてるのはクソザコ過ぎでは?」

「う、うるひゃい……」

 

運動神経より耐久性が無いの?ヤバい煽るセリフが湯水の如く出てくる。抑えねば。

 

「……で、毎度の如く作戦名は?」

「はい!チンアナゴ作戦!!」

 

宮古が元気に声を出す。えっ、チン……

 

「フンッ!!」

「いった!!物で殴るのは卑怯だろ!!」

「お前が変な事考えるからだろ!!」

「何も言ってないし!!変な事って何だよ?なぁ?」

「ぬぐっ……」

 

墓穴を掘ったな!このまま恥をかかせてやるわ!!

 

「飛鳥さん、あんまりアズちゃんを虐めたらダメだよ?」

「反省してまーす」

「絶対反省してないだろ!?」

「後悔はしてませーん」

「ムカつく!!」

「時間が無いんだから早くしろよ」

「誰のせいだ!!誰の!!」

 

息も絶え絶えなアズズ。本当に面白いな。

 

「飛鳥はよくアズズをからかうな」

「面白いからな」

「あまり虐めては可哀想だぞ?」

「何だかんだ言っても反応してくれるからなぁ……面倒見が良いんだよなアズズって」

「分かる!!何かあったら、めんどくさそうにしてても話は聞いてくれるもん!!」

 

宮古も俺の意見に同意してくれた。本当に面倒見が良いんだよ。何だかんだ言うけど。

 

「何だかんだ言うねぇ……」

「だが面倒見は良いのか」

「何だかんだ言うけどなぁ……」

「だが話は聞いてくれるのか」

「何だかんだ言うけど」

「実は優しいのだなアズズは」

「「「優しいなぁアズズ(アズ)(アズちゃん)は」」」

「お前ら本当にやめろ!!」

 

さて、作戦前のおふざけはこのくらいにして、本題に入ろうか。

 

「障壁で敵の姿は見えない。セカンダリって事は周りに小型のピラーも居るんだよな?海底トンネルに居る可能性は?」

「急に真面目になるなよ……小ピラーだけど、恐らくは居るだろう。でも侵入経路はそこしか無い、だからかなり無理はする」

「それだと先行するならクラウディアだな。勘は鋭いからな」

「任されよう」

「次にシールド隊には海底トンネル付近の海面ギリギリを飛行して貰う様に」

「……小ピラーの注意を惹くんだな?」

 

アズズの言葉に頷く。トンネルなんて狭い場所でシールド隊の出番は無い。だったらそれくらいしか出来ないだろう。それに……

 

「ピラーを倒せば直ぐに市民の救助に向かえる筈だ」

「よし、配置はそれで決まりだ。直ぐに行くぞ!!」

「おー!!」

 

アズズ達は出撃準備に向かい、俺は管制塔に残った。

 

「出撃出来ないのは歯痒いかい?」

 

里見さんに声を掛けられる。結構真面目な声色だ。

 

「そりゃ俺が出れば効率が良い時もありますからね。でもあの四人なら大丈夫って安心感があるんで、歯痒くは無いですよ。グラサンや他の奴等も付いてますし」

「そりゃ良かった。お前さんの機体も届くの遅くなってるから申し訳なくってね」

「いつもより時間がかかってますよね。何かあったんですか?」

「あー、どうやらかなりの数の機体が生産されてな。デカい基地に優先的に回してるらしい。お前さんの名前出して特別に早めに仕上げて貰っても、この状況だ」

 

かなりの数の機体が……英霊機ではなく通常の?妙だな。

 

「何かするつもりなんですかね?」

「恐らくな。その内通達が来るだろうけど、楽な内容じゃ無いよなぁ……」

「内容じゃ無いよなって駄洒落ですか?」

「今のは完全ナチュラルだよ……!!」

 

知ってた。しかし十中八九反抗戦だろう。目標は富士か?ここ最近セカンダリも増えてるし早期の決着が必要と思ったのか。

 

「しかしそれだけ何かあるなら、アズズに頼んでめっちゃ改造して貰うか」

「駒込の改造……爆発しない?」

「現状俺の機体の改造だけで三敗してますね」

「流石に機体の予備とか無理だからね?」

「爆発しないのを祈るしか無いですね」

 

不死鳥の渾名の理由の半分はアズズによる改造の爆発からの生還だと思うのは気のせいだろうか?

 

「他の改造もたまに爆発してるし、正直心配なんだよねぇ」

「って言ってもアズズの改造無かったら前回の欧州での戦闘で死んでますからね」

「爆発するか成功するかの二択ってのも凄い話だ」

「それは思いますね」

 

いや本当に何で爆発するんだろうな?

 

「さて、そろそろトンネルに入る頃だ。駒込達は上手く行くか……」

「大丈夫ですって。里見さんって判断力高いのに心配性ですね」

「最悪を考えるのも指揮官の務めだからさ。本当に嫌になる」

「俺絶対指揮官ムリだなぁ……最悪とか考えるのもムリだ。死んだ後とかどうしようもないし」

 

基本的に“後は野となれ山となれ”って感じで生きてるからな。なんて考えているとクラウディアがトンネルを抜けてピラーと対面した。

 

「っと、トンネル抜けましたね。……今回はクリオネか。クリオネの捕食シーンって怖いんですよね」

「今回それが敵の攻撃手段だと?」

「……見た目だけで真似した生物のそれっぽい攻撃ってしてこないですよね、ピラーって。人型とか、あからさまに武器を持った生物じゃない限り。何の為に見た目を真似てるのやら」

 

トビウオがビーム撃って、ヒトデが空飛んで、ウニが針を追尾機能付きで飛ばす……蟷螂は流石に鎌を使ったが、本命は空間をねじ曲げる能力でそっちが驚異だ。

 

「その辺りを考えるのは専門家の仕事さ。俺達はピラーと戦うだけ」

「専門家なんて居るのか疑問ですけどね。……あれ?何かクリオネ赤くなってますね」

「高熱の反応あり!!鉄も溶かす程の高温です!!」

 

オペレーターの本庄が知らせる。鉄も溶かすって、とんでもない高温だな。映像見た感じだと軽く蒸発してるみたいだし並の弾薬ではヴァンドランデに届く前に溶けるな。それに……

 

「鉄の融点が1538℃だったか?弾が蒸発してるし沸点の2862℃より上かもな。そうなると周辺の温度もヤバくないか?」

「それが、周辺の温度は普通なの。普通なら焦熱地獄よ」

「触れない限りは問題ないって事か?本当に良く分からんな」

 

本庄がサーモグラフィの映像を見せてくれた。確かにクリオネだけが高温になってる。

 

「っ!!渡来機、冷却材を投下!!クリオネピラー凍結!!」

「あんだけ高温で冷却材が効くのかよ!?周辺が高温だったら本体に届く前に蒸発してるぞ……しかも普通に砕いたし……」

 

園香が冷却材をクリオネに投下する。それを受けてクリオネピラーが凍り、後は砕いてヴァンドランデを撃ち抜くだけで終わった。

 

☆☆☆☆

 

クリオネピラーを倒した後日、クラウディア達は回復調査と称して海ほたるへ遊びに行った。クラウディアは本気で調査と思ってるみたいだけど。後は宮古が行くのを若干渋った。結局行ったけど。

 

「で、お前は届いた機体の調整で行かなかったと。行きたかったか?」

 

機体の調整作業中にアズズが声を掛けてきた。“治療室”の様子見からの帰りみたいだ。

 

「別に良いよ。海ほたるにはいつでも行ける。それに……」

「それに?」

「お前が心配なんだよ。あんまり好きじゃないだろ、治療室の様子見」

「……ウチの心配なんかしなくて良い。それにお前も好きじゃないだろ、あれ」

 

アズズに言われて頷く。そりゃ好きじゃないさ、他人を見送るのは。

 

「それをわざわざ付き合う宮古は凄いと思うがね」

「あのバカはそれで救われると思ってるからな」

「ワルキューレに見送られれば、死後の魂は救われる、か?俺は信じてないけどな」

「ウチもだ。でも……」

 

アズズが俯く。本当に口では何だかんだ言ってるが、優しい奴だ。

 

「まぁ宮古がやりたくてしてるんだから、俺は止めないけどな。見送る事で“宮古自身”も救われてるんだろうし」

「あのバカは、やれる事は全部やろうとするからな」

「凄いとは思うな。あれだけ全力なのは」

「少しは手を抜くって事を覚えろっての」

「そりゃ不可能だろう。宮古だぞ?」

 

残念だけど性格的にムリだろうな。自分に出来ない事があるのを理解してるから、出来る事は全て全力で、って考え方なんだろうし。

 

「俺としては損な生き方だと思うけどな」

「お前、そう言う所は冷めてるよな」

「そりゃ弔う気持ちもあるし、悲しいとも思うけど、わざわざ自分から重い物を背負う気にはならんなぁ」

「重い物か……ウチが死んだら……」

「それは絶対に言うな。死なせない為に俺達が居るんだよ。それ言ったら怒るぞ」

「……ゴメン」

 

こりゃ相当参ってるな。ワルキューレって死に対して重い考えの奴が多すぎる。メンタルケアもしてやらないと。

 

「悪いと思うなら調整手伝ってくれ。かなり細かく調整するから面倒なんだよ」

「あぁ、分かった」

 

アズズと二人で調整作業に入る。ついでに改造に関しても聞いておき、プランを建てる。建てたのだが……

 

「このディバイディングドライバーって何だ?」

「ガオガイガーの武器」

「そんなもん作れるか!!」

「えー……」

「ったく。じゃあこのファントムリングってのは?」

「ガオガイガーの」

「……このウィルナイフって」

「ガオガイガー」

「このダブルトマホークは」

「ゲッターロボ」

「ガオガイガーじゃないのかよ!!そもそも戦闘機じゃ使えなさそうなのしか無い!」

 

そこは腕を生やして貰うしか……いっそマクロスみたいにするしかないな。よし。

 

「腕を生やせとか言ったら怒るからな?」

「バレたかー!!」

「あちゃー。みたいな顔すんな!!そんなもん作れたら苦労してないだろ!!」

 

作れたら天才通り越して化け物よな。

 

「でもあれだよな。俺はピラーが現れた時、秘密裏に開発してたスーパーロボットが戦うんじゃないのかと期待はしてた」

「……その代わりがワルキューレなんだろ」

 

ピラーから救ってくれる全身タイツのヒーローは現れなかった。と里見さんは言っていた。その通りで、実際戦うのはワルキューレ。しかも英霊機から降りれば普通の人間だ。本当に世知辛い。

 

「しかも戦えるってだけで、ピラーに対して“有利”では無いからなぁ。一般人は有利だと勘違いしてる人が多いけど」

「ウチがその内、有利にしてやる」

「期待してるぞ天才」

 

アズズは言い切る。本当にやってのけそうだから凄い。

 

「なぁアズズ」

「何だ?」

「今度二人で出掛けないか?」

「はぁ!?いきなり何だよ!!」

「海ほたる行けなかったし、お前最近出歩いて無いだろ。基地に籠りっきりじゃあ気分転換も出来ないだろ?」

 

どうせ俺が居ない間も引きこもりしてたんだろうし。

 

「ふ、二人で……」

「お?嫌か?」

「嫌じゃない。行くぞ」

「んじゃ今度の休みで」

「あ、あぁ」

「っと悪い、通信?……アズズ、治療室行くか」

 

約束を取り付けた所で連絡が入る。どうやら意識が戻ったらしい。

 

☆☆☆☆

 

日も傾き夕焼けに染まる治療室。奇跡的に意識を取り戻した仲間の所に俺達は居た。

 

「なぁ……何で、焼き鳥なんだ?ミコちゃん、は?」

「せっかく見に来たのに、開口一番それかよ。しばいたろうか貴様」

「容赦、ねぇな……」

「死にかけだからって優しくはしねぇよ。お前も分かってるだろ」

「違い、ねぇや」

 

死にかけなのに冗談に応えるのは意地か何かか。宮古が戻るまでは何とか繋いでやる。

 

「お前、は、死ぬな……よ」

「当たり前だ。お前らより長生きしてマウント取り続けるわ」

「皆も、死なせるな……」

「そこは知らん。守ってやるのはワルキューレだけだ。それ以上は定員オーバーだ」

 

正直自分だけでも精一杯なのに、何人も背負えるかっての。

 

「薄情な……」

「怨むか?」

「いや、お前らし、い」

「……これでも結構無理してお前に会ってるんだよ。感謝しろ」

「はは……美人だったら感謝してた、なぁ」

「なら、宮古には感謝してやれ。そろそろ来るだろ」

 

それから数分後、宮古が慌てて入ってきた。宮古に後を任せて俺は外へ出た。少し外の空気を吸おう、そう思って居ると声が聞こえた。シールド隊のロン毛の声だった。

 

「俺達は君達のおかげで飛べてるんだ……」

 

何を、誰に話している?

 

「君達に見送られる、それだけで……」

 

まさかクラウディアと話しているのか?クラウディアに言っているのか?あの噂を?根も葉もない噂を。

 

「だから俺達は……」

「やめろ。それ以上話すな」

「……飛鳥?」

「っ、焼き鳥……いや、志摩……」

 

コイツは今クラウディアに何を背負わせようとした?何を言おうとした?

 

「飛鳥?怒ってるのか?」

「クラウディア。今の話は根も葉もない噂でしか無い。お前が気にする話じゃない」

「わ、私は……」

「……志摩、誰もがお前みたいに強い訳じゃない。生きて帰れる訳じゃないんだ。だから噂にも頼っちまうんだ」

 

生きて帰れる訳じゃない?強い訳じゃない?何だそれは。

 

「ふざけるなよ?クラウディアにこれ以上背負わせるな」

「いや、私は……大丈夫だ」

「クラウちゃん……」

「っ……」

 

言われてしまった。それを言われてしまったらもう俺は何も言えない。それを否定したらただのエゴだ。

 

「……きっと後悔するぞ?」

「それでも、だ」

「分かった。なら何も言わない」

 

クラウディアの背負う物がまた増えてしまった。不甲斐ない話だ。

 

「志摩」

「五月蝿い。俺はお前らのそう言う所が嫌いだ」

 

俺はロン毛を無視して部屋に戻った。我ながら大人気ない対応だった。




お気に入りが五十を超えた……?そして評価が増えた……?ありがとうございます!

シリアスにしたけど次は伝説の水着回……本編のギャグは絶対に超えられない。

ゴルディオンハンマーはピラーに有効か否か。
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