真・百錬の覇王と誓約の戦乙女と鉄血のオルガ   作:海色 桜斗

1 / 4
異世界オルガシリーズを作るのは、初投稿です。

百錬オルガだけだと用語の意味とか分からないかもしれないので、作中での用語解説、頑張ります。原作は……コミカライズ版なら、読んでます。アニメも全話視聴済み。リネーアは可愛いぞ。

改めて、鉄血のオルフェンズ5周年、おめでとうございます。

劇場版まで、止まるんじゃねぇぞ……

偉大なるウィンター氏の動画元はコチラ↓
https://www.nicovideo.jp/watch/sm33510292

2020/10/24 再編集更新
※終盤のジークルーネの情報間違ってたんで修正しました。そういや、この時まだマーナガルム継承してなかったですね。申し訳ない。


第一章『百錬の覇王と誓約の戦乙女と鉄血のオルガ』
第一話「遥か遠き北欧の地にて」


――時に諸君らは、《スルト》という名前に聞き覚えはないだろうか。北欧神話が好きな者、或いはアニメやゲーム、小説等といった創作物を好む方なら大体は聞いたことがあるはずだ。《神々の黄昏》とも呼ばれる神と巨人が戦ったとされるラグナロク大戦中に登場する炎の巨人、それが彼だ。世界を焼き尽くすと言われた彼の力は、どの作品群においても一際強大なものとして描かれる。

そして一方、《世界の破壊者》……時にそう揶揄される男、オルガ・イツカがこの物語にどう関わってくるのか。それは見てのお楽しみである。

 

 

「……っ!?」

 

次元の狭間。普段なら決して迷い込むことはないであろうその空間に、この少年、周防勇人はいた。近所に古くから語り継がれる伝承、その真意を暴くため、幼馴染の少女とその舞台となる神社を訪ねていた。そして、彼は伝承通りに好奇心で鏡を覗き込んだ。いつも通りなら何も起こるはずのない極普通の鏡。しかし、その日だけは違ったのだ。次の瞬間、彼の身体は鏡に吸い込まれるようにその場から姿を消し、目を開けた時にはもうこの空間内を漂っていたのである。

 

「あれからオレはどうなったんだ……というかここは何処なんだ?」

 

視界に移る不可解な現象を前に彼は真っ先に単純な疑問を呟いた。だが、ここは彼以外誰もいない空間、その問いに答えられる者は存在しない。

 

「オレは一体何処に向かってるんだ、まさか訳も分からないうちに死んだわけじゃないよな!?」

 

「さぁな、アンタが何処のどいつなのか、俺は知らねぇしな」

 

思考が混乱し、不安に心が押しつぶされかけたその時、不意に自分の問いに答える者が突如として空間内に現れた。周防勇斗がその声のした方に向くと、褐色肌の、自分とは背丈が比べ物にならないくらい大柄で厳つい目をした赤いスーツを纏った男がそこにいた。

 

「だが、行き先位なら大体は見当がついてる。俺とアンタが元いた世界とは異なる世界、異世界だ」

 

「はぁ!?」

 

根拠がなく、現実離れした男の発言に思わず疑問を唱えてしまう。だが、その返答を聞いてさえもその男は真剣な眼差しでこう続けた。

 

「理解できねぇ気持ちはわかる。だが、そうじゃねぇなら今俺達がいる空間はどう説明がつく?」

 

「それは……そうですけど」

 

正直、まだ混乱していることに変わりはない。だが、そんな自分に対してその男はあまりにも冷静すぎたのだ。もしかすると、この現象もこの男が発生させたものなのか。ふと、そう思ったがその疑念は男の次の発言で解消された。

 

「俺は訳あって異世界の旅をしている、アンタもその調子じゃ訳アリのようだな」

 

「何がどうなってんだか、さっぱり理解できてないですけどね」

 

よく分からないが、この男といると妙に心強いというかそういうものを感じて、此方の不安とか緊張を和らげてくれている……そんな気がした。

 

「そういや、自己紹介がまだでしたね。オレは周防勇斗って言います、貴方は?」

 

「俺か?俺は、鉄華団団長のオルガ・イツカだ」

 

鉄華団。なんか、何処ぞの組織の役職持ちだったのだろうか。その言葉の意味は分からずとも、それくらいの情報を理解するのは容易かった。そして、オルガ・イツカという名前。異世界転移と聞いたときにもしかしたら小説などでよくあるようなかつての偉人か何かが時を越えてきたのかと思ったが、その名前は全く聞いたことがない名前だった。

 

「よろしくな、ユウト。俺のことはオルガでも団長でも好きに呼んでくれ」

 

「じゃあ、初対面であれだけど兄貴って呼んでいいですか?」

 

「へっ、まさか俺がそう呼ばれるようになるなんてな……いいぜ」

 

褐色の肌をした大男、オルガ・イツカは、何だか感慨深いような表情を浮かべてニヒルに笑う。その瞬間、今までいた謎の空間の先に切れ目が走り、気付いた時には見慣れぬ天井のある屋内へと転がり落ちていた。

 

「■■■■■■■■■■■■?」

 

「■■■■■■■!■■■■■■■■■■■■!?」

 

そして、オレの耳に飛び込んできたのは、聞いたこともないような言語で喋る人々の声だった。日本語でも英語でも、中国語やフランス語でもない。ただ、その人々が総じて身に纏っている衣装は、何と言うか、オレの住んでいた現代よりも遥か前に栄えたとされる古代文明のような服装であることは博識ではないにしろ、理解はできた。

 

「なぁ、ユウト、一ついいか。お前には今の言葉がどう聞こえてんだ」

 

不意に、オレの隣に立つオルガが険しい表情をしながらそんな事を聞いてきた。どう聞こえるも何も何を言ってるのかすら分からない、そう伝えると、彼はオレの代弁をするかのように、言い放った。

 

「悪ぃが、この中に翻訳の出来る奴はいないか?俺の連れがアンタ達の言葉を、理解で来てねぇみたいなんでな」

 

「■■■■、■■■■■■■■■■■■?」

 

「■■■■■■■」

 

俺の連れが理解できない、と言ったという事は少なくともオルガはこの人々の言葉を理解できているという事だろうか。その言葉を受けて、何やら周囲の人々が、ざわつき始める。

 

暫らくして、その様子を一番近くで眺めていた一人の女性が、オルガに話しかけてきた。身長は俺より少し小さいけれど、身体的な発育は立派なもので、古代的な衣服も相まって、その服から胸部に付いた二つの双丘が今にも躍り出そうであった。オレは当然、目のやり場に困った。

 

「■■■■■■■■■■?」 

 

「アンタが翻訳出来るのか、早速で悪いが頼めるか、お嬢さん」

 

「■■■■、■■■■■■■!!」

 

その少女がオルガと一言二言会話を交わすと、その場で何か歌のようなものを歌い出す。一瞬、何か不思議な力が自分の体の中に作用したような奇妙な感覚に包まれる。しかし、次第にそれも収まり、同時に周辺の人々の声がはっきりとした意味を持った言語として、オレの耳に伝わってきた。

 

「わたくしの言葉が分かりますか、『勝利の御子(グレイブジーク)』様。わたくしはフェリシア、と申します」

 

そして、少女の声もはっきりと聞き取れた。何処か落ち着きのある、透き通った声の持ち主だった。オレは、言葉が理解できた嬉しさのあまり、最後に聞こえた『勝利の御子(グレイブジーク)』という言葉の意味を深く尋ねないまま、その子へ詰め寄った。傍から見れば完全に不審者である。

 

「き……君、日本語がわかるのか!?」

 

「いえ、天上の国の言葉は、わたくしには分かりません」

 

一縷の望みを抱いてかけた言葉だったが、意外にもあっさりと否定される。しかし、此方側の言葉を彼女は完全に理解できている様子。これは一体、どういう事なのだろうか。

 

「え……でも、今だってオレの言葉に答えてくれてるじゃないか」

 

「あ、これは《交渉》の呪歌(ガルドル)でございます」

 

言葉には自然とその人の意思、即ち言霊というものが宿る。その原理を用いて、たとえ自分が理解できないような言語を使う相手だったとしても、この歌を聞いた者にはその言霊を発し受け取る力が一時的に高まるのだという。確かに、よく聞いてみれば日本語とは明らかに違う。しかし、言葉の意味は不思議と分かるようになっていた。

 

「如何やら理解できたみてぇだな、ユウト」

 

「兄貴、アンタはこの子の歌を聞く前から分かっていたのか?」

 

「あー、まぁ、何つーかな……慣れだ、慣れ」

 

果たして、自分の世界と全く原理が違う世界の言葉を、慣れだけで克服できるものだろうか。異世界転移なるものが初めての俺にとっては良く分からない感覚だった。

 

「……にしても、此処は一体、何処なんだ?」

 

「分からねぇよ。俺も異世界には何度も行ってるが、この世界に来たのは初めてだからな」

 

何度も異世界を旅していると言っていたオルガなら、この世界の事情も知っているかと思ったのだが、そうでもないらしい。やっぱり、異世界ってくらいだから地球じゃないのかな?

 

「地球……暗い混沌の中に浮かぶ青い星ですか?」

 

「そこが勝利の御子(グレイブジーク)様のお住まいになっていた世界なのでございますね」

 

急にフェリシアがそんな事を言い出すもので、オレは驚いた。いや、詳しく説明すると、この時のオレは無意識に自分の考えを思い切り口に出して言ってしまっていたようで、フェリシアにはそれを聞いた瞬間に言霊から情報や映像を伝えられたのだろう。なんて、便利な。

 

「わたくしたちの世界とはまるで異なります……」

 

「!?」

 

そう言うなり、彼女はその綺麗な瞳に涙を滲ませ、感極まって、オレの手を両手で握りしめた。

 

「ああっ!やはり貴方様は、我らが守護神アングルボダ様が天上より遣わして下さった勝利の御子(グレイブジーク)様なのですね!」

 

「……は?」

 

「……」

 

いきなりの事に困惑するオレを置いて、隣にいるオルガが何だか終始無言で険しい表情をしていた。非常におっかないが、彼女はどうもその視線に気づいていないようだ。しかし、神の遣いと来たか、これはもしかして。試しにオレは今想像したことをそのまま彼女に伝えてみた。

 

「つまり、悪者みたいなのがいて、そいつをオレに倒してほしいのか……?」

 

何らかの魔物の侵攻によって、危機に瀕した人々が異世界から勇者を召喚する。オレが何時か何処かで見た異世界ファンタジー系のお約束ともいえる展開だ。そんなまさかな、と思いつつ発した言葉だったが、現実は小説より奇なり。まさにその通りだったらしく、彼女は力強く頷いた。

 

「はい!!我ら《狼》は現在、東は《爪》、西は《角》の民族に脅かされて、存亡の危機に瀕しております」

 

「今、この時も侵攻を受けており、戦勝の祈願をしておりましたところ、突如貴方様と隣のお連れ様が何処からともなく現れた次第でございます。どうか、そのお力で我ら《狼》をお救い下さいませ!」

 

「おおっ、まさにだー!!」

 

ちょっと憧れていた世界への扉を自分が開いたみたいで、その言葉を聞いたとき、オレはワクワクが抑えられなくなって、つい叫んでしまう。これはつまり、オレにも何か隠された特殊能力があるってことなのか、燃えてくるぜ!!

 

「では、わたくし達にお力をお貸しいただけるのですね、勝利の御子(グレイブジーク)様」

 

彼女がキラキラと目を輝かせて、オレを見つめてくる。そりゃあ、もう!男として此処まで心躍る展開を与えてくれたんだもの、とことんやってやろうじゃないか!……と、その前に一つ気になる事が。

 

「あ~、えっと、その勝利の御子ってのはやめてくれ。オレは勇斗、周防勇斗だ」

 

「はい、スオウユウト様とおっしゃるのですね」

 

様、と呼ばれるのは悪くないが、流石に最初からだと箔が付きすぎてて、何だか恐れ多い。まぁ、そこら辺は後で訂正させてもらうとしよう。オレの名前を復唱した後、漸く彼女は隣のオルガと正面から向き合った。意外と度胸あるんだな、この子。

 

「それで、ユウト様のお連れの方は……何とおっしゃられるのですか?」

 

「……俺か。俺は、鉄華団団長のオルガ・イツカだ。よろしくな、お嬢さん」

 

「はい、オルガ・イツカ様」

 

オルガとフェリシアががっしりと握手を交わす。しかし、そんな無事に終わろうとした自己紹介も、オルガの名前を聞いた一人の女剣士の呟きがきっかけで大きく荒れることになった。

 

「……何、オルガ・イツカ、だと……!?」

 

「フェリシア、此れは一体どういう事だ!勝利の御子(グレイブジーク)様だけを呼び出したならまだしも、奴まで召喚してしまうとは聞いてないぞ!」

 

「おのれ、『世界の破壊者』め……今ここで断罪してくれようぞ!」

 

そして、怒号を上げた人々が次々に、腰にぶら下げた剣を引き抜き、オルガの方へ向かって距離を詰めていく。あれ……もしかしなくても俺、とんでもない指名手配犯と一緒にいるのか!?

 

ふとそう思ったが、謎の空間から現在に至るまで彼を見てきて、そうは見えなかったというか。逆に何者かに悪役に仕立て上げられて、悲痛な最期を遂げさせられた……みたいなそんな感じだ。

 

「ま、待ってください、ルーネ!彼は勝利の御子(グレイブジーク)様のお連れ様なのですよ!?」

 

「退け、フェリシア。奴は危険すぎる……私のルーンがそう訴えている」

 

フェリシアが銀髪の少女を止めようとするが、彼女に応じる気は全くなさそうだった。そして、そんな彼女が勇斗の方にも目を向けて、こう発言した。

 

「それに、お前が召喚した勝利の御子(グレイブジーク)とやら、私には奴からは何の危険も感じなかった。本当は奴は勝利の御子(グレイブジーク)などではなく『世界の破壊者』の僕なのではないか?」

 

「失礼ですよ、ルーネ!この方こそ間違いなく勝利の御子(グレイブジーク)様に相違ありません!」

 

「ふん、どうだか。兎に角、ここは離れていろ。奴だけは確実に仕留める……!」

 

オレに向けた容疑を撤回しないまま、フェリシアの静止を振り払い、そのままオルガの元へ向かうルーネと呼ばれた少女。

 

「随分と人に勝手に気安く呼び名をつけてくれるな、おっさん達。この落とし前、どう付ける気だ?」

 

「黙れ、『世界の破壊者』なぞに我が祖国を滅ぼされてなるものか!皆の者、かかれぃ!」

 

号令を合図に、その場にいた全員(フェリシア除く)がオルガに刃を向けて飛び掛かっていく。当人のオルガはそんな危機的状況を目の当たりにしながら、余裕しゃくしゃくという感じで笑っていた。

 

「覚悟ッ……!!」

 

「ぐうっ……!」

 

当然、武器も何も構えなかったオルガの身体に兵士の剣が深く突き刺さる。それを合図に他の兵士達も次々とオルガの身体へ剣を突き立てる。オルガは苦悶の表所を浮かべ、そのまま床に倒れる。刺された個所からどくどくと鮮血が溢れ出す。と、オルガは片手を上に掲げたポーズを取り……。

 

「だからよ、止まるんじゃねぇぞ……!」

 

そのまま硬直して動かなくなる。え、もしかしなくても死んだ?そんなまさか……幾等なんでもこれは呆気なさすぎる。その前に何でオルガは何も抵抗をしなかったんだ!?

 

「おい、お前ら!何で無抵抗の人間を平気で殺すような真似が出来んだよ!?」

 

勝利の御子(グレイブジーク)様、誠に恐れながら申し上げます。奴は様々な世界を渡航する犯罪者でございます。そのような危険な輩を貴方様に近づけさせるわけにはいかないと思い、こうしたまでです」

 

オレが檄を飛ばすと、一人の兵士が此方に近づいてきて、今の状況をオレに伝えた。だが、それを理解できるほどオレはまだ人間が落ちぶれてはいない。

 

「だからって……そんなやり方じゃあ納得できる訳――」

 

「へッ、落ち着けよ、勇斗ォ……!俺はまだ死んじゃいねぇぜ」

 

「うるせぇ、邪魔すんな……って、はぁ!?」

 

「な、何ッ……!?」

 

オレが怒りに身を任せて、目の前の兵士に掴みかかろうとすると、背後から聞きなれた声が響いてきたので思わず振り向く。そこには、さっき血を大量に流して死んだはずのオルガが、無傷の状態で平然と立っていた。これには、オレだけでなく、その場にいる兵士達も驚きの声を上げた。

 

「貴様、確かに死んだはず……なら、何故!?」

 

「悪ィな、今の俺はちょっとした事情で死ねない体になってるもんでな」

 

「ふ、不死身だとでもいうのか!?ば、化け物め……!」

 

オルガの言葉を聞いて、恐怖に震え上がる兵士達。中には腰を抜かして立てなくなる者もいた。そんな中、オルガはお得意の余裕に満ちた笑みを浮かべ、その場で力強く立ち塞がった。

 

「さっきは良くもやってくれたな。この落とし前、相当高くつくぜ?」

 

「くッ……おのれ、これ以上祖国を危機に追いやれるものか。皆の者、突撃ー!」

 

あの現状を見ても、今だ立ち向かおうとする猛者達が再び立ち上がり、先程と同じように攻撃を仕掛けようとする。しかし、この時彼らには感じられなかった。オルガの背後から徐々に此方に近づいてくる悪魔の足音が。

 

「フへッ、本当ならお前の力は後に取って置きたかったんだけどよォ、こうなりゃ仕方ねぇよな」

 

「そうだろ……ミカァ!!

 

オルガが声高らかにそう叫んだかと思うと、オルガの背後の地面が割れ、中から人間サイズの小柄なロボットのようなものが彼らの方へ跳んでくる。

 

――白く輝くボディと、特徴的な黄色い二つの角。

 

――意志を持っているかのように光る、緑色の眼。

 

――両手に持った、超特大のメイス。

 

そう、『異世界オルガ』シリーズ及び『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』のファンの読者ならすぐに理解できたはずだ。彼こそが『世界の破壊者』オルガ・イツカを守る一柱。その名も――

 

「今回は、すぐに俺の出番だったね、オルガ」

 

「勘弁してくれよ、ミカ。耐久力の低い俺じゃ相手に出来なさそうだったし、な」

 

ガンダムバルバトスと三日月・オーガス……鉄華団の白い悪魔が今ここに降臨した。

 

「ひ、ひいっ、出たぁ!し、白い悪魔だ!!」

 

「ち、畜生!何でだ、体が動きやがらねぇ!?」

 

「小柄だというのに、何という気迫の持ち主か。この私が気圧されてしまうとは……」

 

見ると、先程まで復活したオルガを見ても戦意に溢れていた猛者達が次々と根を上げ、戦意喪失していく様が映る。それは勇ましく戦おうとしていた銀髪の髪の少女……ルーネでさえも例外ではなかった。それ程までに目の前の彼は一際異彩を放っていたのである。

 

「で、アンタ達はどうすんの?」

 

「言っとくけど。()()()()()()()()()()、面倒くさいから、今度は確実に殺すよ」

 

次の獲物は何処だ、と言わんばかりに彼のモノアイが緑色に光り輝く。すると、ルーネは何を思ったか彼の目の前に姿をさらして、首を垂れた。

 

「ここまでの差を見せつけれれば、この際、どんな力だろうと構わない。頼む、我が祖国を守る為、その力、貸してくれないだろうか……!?」

 

そこで兵士達は、又もや驚愕の表情を見せる。《狼》の氏族内で最強と謳われた『最も強き銀狼(マーナ・ガルム)』の次代を継ぐとまで言われたルーネが、得体の知れない相手に頭を下げて頼みこんでいる。恐らく、そんな彼女の内には悔しさが滲んでいたに違いない。そんな思いをしてまで、彼女は必死に頼み込んでいるのだ。例えそれが歴戦の化け物であったとしても、自身の祖国を守るためならば悪魔に魂を売る事さえも厭わない、国に最も忠誠を尽くすべき騎士の姿勢を貫いたのだった。

 

「……だってさ、オルガ。どうする?」

 

「決まってんだろ、ミカ。俺達の目的を果たすためにはどうするべきか、最初から決まってんだろ」

 

「そっか、うん。ちょっと聞いてみたかっただけだ」

 

彼女の真摯なに頼み込む姿を見て、白い悪魔は構えたメイスを下ろす。直後、持っていたそのメイスは光の粒子となってその手から消え去った。そして、それは白い悪魔の戦闘行動終了を周囲に知らせる事となった。

 

「そこのお嬢さん、顔を上げな」

 

「……ッ」

 

「あぁ、分かった。鉄華団はアンタの側に乗ってやる」

 

こうして、原作主人公・周防勇斗を巻き込んだ、オルガ・イツカ及び鉄華団の面々が繰り広げる、何度目かの異世界の旅が始まった。

 

 

                               第一話・完

 

 

 

~次回予告~

強大な勢力が蔓延るこの世界で、《狼》の氏族と鉄華団は晴れて協力関係となった。そんな中、『勝利の御子(グレイブジーク)』として呼ばれた周防勇斗に最初の試練が襲い掛かる。

 

次回、「真・百錬の覇王と誓約の戦乙女と鉄血のオルガ」第2話「勝利の御子(グレイブジーク)、覚醒」

 

全てを破壊し、全てを繋げ。




コミカライズ版読んでみて、思ったんですが……ルーネの持ってる剣、あれ見た目完全にFateのエクスカリバーですよね。どういうこっちゃ。

月一更新になります。次回もお楽しみに。

今後の展開について

  • 動画本編辺りまで、早よ
  • このまま主人公の掘り下げで

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。