デモンスレイヤー【鬼滅×忍殺】   作:hynobius

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パーガトリー=サンの名前の意味は「煉獄」なので、白々しく言い訳をしながら無限列車に向かわない炎柱パーガトリー=サンを思い浮かべてしまいました。行かれぬから!


#2

日が沈み、木々の隙間から僅かに細い月が覗いている。誘われるように一人の男がフラフラと隠れ家から彷徨い出た。日の光を浴びれぬ鬼の身体では夜に食い物を探すしかない。それも人肉などは到底望めぬ。ネズミか、運が良くてもウサギを捕まえて食うしかない。どちらも大して足しにならないが。

 

昔一度だけ食った人肉の味が懐かしい。そんなことを思っていたからだろうか、人間のような匂いを嗅いだ気がした。立ち止まり、鬼になってからいやに効くようになった鼻をひくつかせる。「アー…ウーン?」気のせいではない。人間の匂いだ。

 

男がこの山に放り込まれて何日が経つか分からないが、人が来るのは初めてだ。ロクな食い物も、他の楽しみもない。外に出ようにも麓は藤の花の吐き気のするような臭いだらけ。もう我慢の限界だ。男は走り出す。人の肉が、食いたい!「オオオーッ!」

 

見えた。己より遥かに体格の小さい女。刀を携えてはいるが、彼を捕らえた男と違っていかにも弱そうだ。「アーッ!肉!肉だ!肉だ!」男は身の丈に倍する高さで跳躍し飛びかかる!ナムサン!鬼の力は子供一人を惨殺することなど容易い!少女は哀れネギトロめいて挽き潰されてしまうのか?

 

男の視界の中で、少女が一回転した。「アレ?」訝しみながら手を伸ばすが、目の前にいるはずの少女には一向に触れない。「ナンデ?」否。手がない。首から下がない。「ナンデ…アバッ」疑問を顔に浮かべたまま、一回転して地に落ちていた男の首は塵に還った。

 

刀の血を軽く払い、真菰は息を整える。水の呼吸・壱ノ型、水面斬り。彼女の育手から教わった技は、違わず鬼の頸を刎ねていた。「…うん。ちゃんとできてる」真菰は己に言い聞かせるように呟く。まずは一体、自分の力で鬼を殺せたのだ。

 

真菰が森に踏み入った時、そこには既に暴風めいた破壊の跡があった。鬼のものと思しき血の染みが、山を東から巻くように続いている。真菰は数秒の逡巡ののち、その痕跡とは逆へと進んだ。選別を生き残るだけでは駄目だ。鬼殺隊士として、鬼を狩れる事を確かめなければならない。

 

最初の一体は容易く屠れたが、他の鬼はどうか?単なるビギナーズ・ラックでない事を証すため、真菰は次の鬼を求めて走り出した。微かに感じられる鬼の気配を探りながら、慎重かつ素早く脚を動かす。

 

しばらく走ると木々の奥から女鬼が現れた。「キェーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!?」樹上から飛びかかった女鬼の両腕が粉砕!水の呼吸最速の突き技、雫波紋突きだ!「イヤーッ!」「アバーッ!」流れるような壱ノ型が頸部切断!

 

「テメッコラー!」さらに木々の奥から鬼が現れる!ヨタモノ鬼だ!丸太めいて膨れ上がった右腕を振り上げる!「ナンオラー!」「イヤーッ!」「グワーッ!」弐ノ型、水車が右腕破壊!「イヤーッ!」「アバーッ!」流れるような壱ノ型が頸部切断!ワザマエ!

 

「スッゾコラー!」さらに木々の奥から鬼が現れる!ヤクザ鬼だ!ドスめいた形に変形した両腕を振り上げる!「スッゾスッゾオラー!」「イヤーッ!」「グワーッ!」肆ノ型、打ち潮が両腕切断!「イヤーッ!」「アバーッ!」流れるような壱ノ型が頸部切断!タツジン!

 

「ドッソイオラー!」さらに木々の奥から鬼が現れる!スモトリ鬼だ!タタミめいて巨大化した掌を突き出す!「ドッソイドッソイオラー!」「イヤーッ!」「グワーッ!」参ノ型が両手指切断!「イヤーッ!」「アバーッ!」流れるような壱ノ型が頸部切断!首は木の洞に飛び込み消滅!ポイント倍点!

 

「アアアアアア」さらに木々の奥から鬼が現れる!不気味な異形鬼だ!「イヤーッ!」「グワーッ!」陸ノ型、ねじれ渦が腕五本同時切断!「イヤーッ!」「ヌウゥーッ!」流れるような壱ノ型が…腕に阻まれる!「来たな…俺の可愛いキツネが」無数の腕を絡み付かせた塊から二つの眼が真菰を睨む!

 

ナムサン!何たる異常成長肉体か!他の鬼達とは比べ物にならない数の人間を喰ってきた証左である!油断ならぬ強敵に、しかし真菰は自ら仕掛ける!「イヤーッ!」「オォォ!」肆ノ型が腕複数切断!しかし足りぬ!腕が回り込むようにして真菰に掴みかかる。「イヤーッ!」参ノ型で回避!

 

「小娘。今は明治何年だ?」やや離れた場所に着地した真菰に鬼が問う。奇妙な質問をする鬼だ。無論答えてやる義理もない、手を止めた隙に斬る!参ノ型から壱ノ型へ。体格で劣るが素早さで勝る真菰の優位を生かす見事なカラテだ!融合巨大化した腕を掻い潜り、流水を纏う刀が鬼の頸に喰い込む!

 

「イヤーッ!」だが斬れぬ!多く人を喰らった鬼の頸部は硬くなる。真菰の壱ノ型だけでは斬り飛ばすほどの力がないのだ!「弱いなぁ、鱗滝の弟子ぃ」敬愛する師の名前を何故目の前の鬼が?動揺し、動きの止まった真菰に腕が迫る。真菰は鬼の頭部を足蹴に再跳躍!

 

地面に降り立った真菰に追撃は来ない。「なんで分かったかって顔だなあ。そのキツネの面が目印なんだ。アイツの弟子は皆付けてる」茫然と立つ真菰に鬼はクスクスと笑う。「そのせいで食われる。俺を捕まえやがったお返しに、弟子は全部俺が食ってやるんだ」

 

蒼白な真菰の指が厄除の面に触れる。これのせい?彼女はこれを渡した鱗滝の心を知っている。理不尽ともいえるほどの高い試練を課した気持ちを知っている。全て、弟子に生きてほしいが故の行動だ。そのせいで死んだと言うのか?「目印までつけて、アイツが殺したようなもんだ。違うか?」

 

瞬間、真菰のニューロンは怒りで焼き切れた。「バカハドッチダー!」自分でも驚くほどの口汚い罵倒が口をつく。過剰分泌されたアドレナリンに突き動かされ、真菰は地面を蹴った!「鱗滝さんを!馬鹿にするな!」玖ノ型が哄笑とともに伸ばされてきた鬼の手を斬る!斬る!斬る!

 

そして、見よ!真菰の取った構えは水の呼吸最後の型にして、最大威力を誇るヒサツ・ワザ、生生流転!台風めいて荒れ狂う呼吸音と共に、真菰の体が回転を始める!「イヤーッ!」腕一本切断!「イヤーッ!」腕二本切断!「イヤーッ!」腕四本切断!回転の度、真菰の日輪刀が加速する!

 

このまま加速すれば、あるいはこの鬼の頸すらも断ち切れるかもしれぬ!だが、ああ、読者の皆さんはお気づきだろうか?鋭く研ぎ澄まされていなければならぬ真菰の呼吸音が、濁流のごとき雑音に満ちていることに!技が乱れる。四撃目は僅かに外れて鬼の肩を穿った。関係ない、五撃目で必ず殺す!

 

殺意で狭まった真菰の視界に、上から薄ら白いなにかが映りこんだ。木を目隠しに潜んでいた、細長く引き伸ばされた鬼の腕。(…ユーレイ?)馬鹿げた連想。だが、捕らわれたものが送られる先を思えば、変わりはないのかもしれなかった。…一瞬自失した真菰を、無数の腕が掴んでいた。

 

(「レック・ザ・ロングタイム・オブセッション」#2 おわり。#3に続く)

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