【WR】戦姫絶唱シンフォギア S.O.N.G. of Valkyries 全員生存RTA【22:04:21,87】   作:REALGOLD

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本当に、本当にありがとうございました。





エピローグ

詞ちゃんはいつもそう。

私の背中を睨みつけながら、必死に追いかけてきた。

 

私が容易く出来ることが、あの子にとっては大変なこと。

私が片手間にできることが、あの子にとってはしんどいこと。

私がこなすだけのことが、あの子にとっては楽しいこと。

 

私が持ってないものを、あの子はずっと待ち続けていた。

 

とてもとても眩しい、私の、たった1人の妹。

努力とか、達成感とか、私が持つことを禁じられたそれらを持っている。

 

私だって、それがほしかった。

 

みっともなく嫉妬して、一度キツく当たったことがある。

でも、それでもあの子は諦めず、私に執着し続けた。

 

どれだけ頑張っても、私たちは風鳴の道具にされるだけなのに。

結局、全て利用されるだけなのに。

 

それでも、と。

あの子は。

 

嗚呼、なんて、なんて……。

 

 

なんて愛らしいのだろう!

 

 

私ができることが、あの子には出来ない。

だから必死になって努力する。

 

私に見て欲しいから?お父さんに認めて欲しいから?誰かに頼って欲しいから?

 

理由は多々あるだろうけど、どうでもいい。

私は、あの子が頑張る姿がとても美しくて。初めて何かに憧れたんだ。

 

だからこそ、あの子はこんな家にいてはいけない。

だからこそ、あの子の未来を切り開かなければならない。

 

私はあの子の、最上 詞のお姉ちゃんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神は一人の少女の手によって屠られた。

地球を覆っていた大樹もすべてが取り払われ、人々が待ち望んだ朝日が昇る。多くの犠牲を出しながらも戦いが終結し、世界中が歓喜と安堵にあふれている。

そう、日常が帰ってくるのだ。

 

ただ一人を置き去りにして。

 

ユグドラシルシステム解体から帰還した一行を待っていたのは、絶望した兵士たちの表情。

その輪の中心には見慣れた戦闘服に、浅黒い肌、黒い髪。血まみれの顔に、体に、光を失った瞳。

 

彼女は、そこで眠っていた。

 

「……どいて!!」

 

セレナや錬金術師たちがすぐさま治療へと入るが、キャロルとプレラーティは動かなかった。

命を取り扱ってきた彼女らだからこそわかる。分かってしまう事実が、そこにあるからだ。

 

錬金術といえど、失われたものは戻せない。

 

「何してるんですか手を動かしてください」

 

「……セレナ、ツカサはもう」

 

「動かしてって言ってるでしょ!!!」

 

頭では分かっている。しかし心は納得しない。

セレナが懸命に治療を施し、傷をふさいでいく。サンジェルマンやカリオストロもそれに倣うが、プレラーティは冷静だった。

 

「死んだ命は戻らない、理解しているワケダろう」

 

その言葉が彼女らの限界だった。

最上 詞は死んだのだ、とその事実を頭が受け入れてしまった。心の防波堤にひときわ大きなひびが入り、あふれてきた大波に潰されそうになる。

 

「傷をふさげば……まだ希望はあるでしょう」

 

「傷じゃない。単純な出血多量なワケダ。よしんば呼吸が戻っても血液量が圧倒的に足りていない」

 

「輸血パックならかき集めれば―――」

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

呼吸が浅く、早くなる。

自分の体をとても大きな渦が呑み込んでいく感覚。そして意識がどんどん遠くなり、水底へと引き込まれていく。

パニックを引き起こす者、膝から崩れ落ちる者、呆然と立ち尽くして涙する者。それぞれが徐々に感情の波にのまれていく。

 

「国内の輸血センターは訃堂の手が回っている。国外から取り寄せるにしても、ジェムが無くなった今では時間がかかりすぎる」

 

「誰かいるでしょう、これだけの人間がいるんですよ。一人くらいは」

 

キャロルたちに諭されてもなお、セレナは諦めなかった。

衛生兵に声をかけ、各兵士の血液型を確認するが

 

「……もう確認したんだ。ここには、Rhソイル式の血液を持つ人間はいないんだ!」

 

彼らとて何もせず絶望していたわけではない。

懸命な応急処置、輸血の用意、心肺蘇生。多くの手を尽くしたものの、たった一つの要因がそのすべてをひっくり返していた。

 

ここには、彼女と同じ血液型の人間は存在しない。

この一点で、彼女の治療は詰んでいた。

 

セレナの心は、現実を受け入れ始めている。

自分では詞を救えない。もう彼女はいないという事実を、受け入れ始めている。

 

「ふざけんなよ」

 

ただ一人、受け入れられないと涙ながらに吠える者が一人。

詞の体につかみかかり、叫ぶ。

 

「終わっただろ!全部終わったんだよ!戦いは終わったんだぞ!これからはお前の人生を始めるってそう言ったよな!何してんだよお前は!?戻って来いよ、こんな終わり方ないだろ!!!」

 

天羽 奏の魂からの慟哭。

しかし、掴みかかった彼女自身が詞の冷たさを強く体感している。目に生気はなく、瞳孔は開いていた。血にまみれながらもうっすらと笑みを浮かべた詞は、とても穏やかに、安らかに眠っている。

 

涙でぐしゃぐしゃになったのを気にも留めずに、彼女は。

 

「…………全部終わって、落ち着いたらさ。アタシのステージに、お前を招待したかったんだ。アタシらのライブ、観客としてまともに見たことなかっただろ?だからさ……翼にも声かけて、マリアも呼んで、ちゃんと聞かせてやりたいなって……それがアタシの夢だったんだ……」

 

大粒の涙をこぼしながらも、彼女は語る。

これからの自分たちの未来を。

 

ツヴァイウィングの歌が好きだと、初めてできた好きなものだと言ってくれた親友に贈りたかった。

これまで多くの血を流し続け、傷を負い続けてきたヒーローに感謝を伝えたかった。

 

「だから……お前がいないと意味ないんだよ……なぁ、だから…………」

 

 

 

「生きるのを諦めるなァああああ!!!」

 

 

 

虚空に、少女の咆哮が木霊する。

届かないと知ってなお、少女は叫ばずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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戦場全域が悲しみに暮れる中、うごめく影がある。

巨大な刃が落ちたその戦場跡で、地面を這いずる音と共に人影がうごめいている。

およそ生きているとは思えないそれは、悲しみの坩堝たる少女のもとへと真っすぐに向かっていた。

 

左腕はなかった。

鋭利な刃物で切り落とされたらしく、断面は黒く変色している。立つことも叶わぬほど衰弱したそれは、故に右腕一本で這い寄っている。

 

(ギロチンが落ちる直前に突き飛ばしたけど、もともと弱ってた体にあんな負荷をかけたらそうなるわよね)

 

それは、渦の中心にいる少女。最上 詞が死亡したことに気づいていた。

だからこそ、こうして腕一本で彼女のもとまではせ参じているのだが。

 

(こんなところで、こんな終わり方……私は認めないんだから。絶対に引きずり戻してあげる)

 

最上 詞に酷似した容姿を持つ、彼女の名は―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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一部の人類軍兵士がおびえた声を上げた。

彼らは一様にある方向を指さして、叫び続けている。

 

あの野郎、まだくたばってないのか

 

地面を這いずる何かのシルエットが見えてくる。

短く整えられた黒髪、仄暗い瞳、死体を思わせる白い肌。土埃と生傷で汚れ切った着物から鮮血が滴り続けている。

それは、依り代と呼ばれた少女。

 

「モガミ ユカリがなぜここに!?」

 

キャロルが警戒態勢を取る。

失意の中にいた雷光(アステリオス)の仲間たちも次々に立ち上がり、憎悪の炎を宿した眼で睨んだ。

最早戦う力もないのは明白だが、接近する敵を放ってはおけない。

それが自分たちの隊長の仇にして、怨敵であればなおさらだ。

 

セレナがひとりで接近する。

ぼろ雑巾のような少女の見てくれに、かつての師匠の姿を思い起こした。縁はセレナの姿を見ると、うっすらと微笑みながら何かつぶやき始めた。

 

「あの子の……お弟子さん、ね」

 

「まさか話す機会があるとは思ってませんでしたよ」

 

「そうね……でも、あんまり時間ないから、手短に」

 

動かない体を叩き起こして、縁はその場に膝立ちとなった。

そして、片腕を差し出してセレナに問いかける。

 

「あの子の同じ血液型がここにいるわよ……死に体だけどね」

 

それを聞いたとたんにセレナの目が輝きを取り戻した。

 

しかし彼女は冷静だ。

詞に必要な輸血量は相当なもので、人体からの直接の輸血は問題も多い。後者は錬金術的なアプローチで対応できるかもしれないが、前者はそうはいかない。

 

目の前の提供者は今にも倒れそうだ。

そんな状態の彼女から必要量の血液を抜き取るのは、とどめを刺すのと同義。そんな判断が下せるものがこの場にいるのか。

一人の少女の為に、一人の少女を殺すことが出来るのか。

 

 

「優先順位をはき違えないで。貴方は医者でしょう、責務を果たしなさい」

 

 

セレナの瞳を真っすぐとらえる縁の姿に、我らが隊長の姿が見えた。

そこからの彼女たちの行動は早かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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輸血は即座に始まった。

横になった彼女から伸びた管がマシンへと続き、そこへ錬金術のアプローチを通して詞の体へと流れ込んでいく。

 

命の源が徐々に抜け落ちていく縁の体は、みるみる青くなっていった。

だが彼女の表情は穏やかなものだ。

 

「さて、死ぬまで時間もあるらしいし……お話ししましょうか。お弟子さん」

 

「なぜ、生きてるんですか。詞さんの話では村を焼いたときに死亡したと」

 

「それは、あの子の勘違いよ。村を焼きに来た風鳴機関を蹴散らしたとき、訃堂もいてね。片腕吹っ飛ばされて、そのまま意識を失って、冷凍保存されてたの」

 

まるで鮮魚ね、と縁は鼻で笑う。

そうして風鳴機関に回収された彼女は、冷凍されたまま今日まで生かされていた。

全ては神稚児計画の為に。二人の少女の人生だけでなく、数多の最上家の人間がこの計画に利用されてきたのだ。

 

「戦い始めて、シェム・ハが私の意識を浮上させたスキをついた。体は戻らなかったけど、心だけは戻せたから……あとはアイツがくたばる直前で、体も奪い返して……詞ちゃんも一緒にギロチンを回避した」

 

詞の体にギロチンの切り傷がなかったのはこのためか、とセレナは納得する。

徐々にだが縁の呼吸が浅く、早くなっているのが見受けられる。詞と同程度の大怪我の上での血液提供だ。

もう時間がない。セレナはそう判断した。

 

故に彼女は、詞の根幹を紐解くために問うた。

詞の奥深くにいまだこびりつく闇の真相を暴くために。

 

「何故あの人に辛く当たったんですか、何故詞さんはああまで姉妹を憎まなければいけなかったんですか?!」

 

「……そうね。それは、言っとかないとね」

 

縁は視線をそらさず、自身の罪を告白しだす。

 

「最上の家は、神稚児計画のために辺境の村へと押し込められた。当然計画が終われば、隠滅されるのは分かってたから……巻き込む前に脱出させなきゃね」

 

「なら一緒に脱出すればよかったのでは?それに、そのためにあの人がトラウマになるまで追い詰めていい理由にはなりませんよ」

 

「村に火をつけた風鳴機関と、訃堂を押さえなきゃいけなかったし……あの頃にはもう私たちの亀裂は直せなかった。まぁ、そもそも()()()()のは……あの子に自発的に家を出てほしかったから……まぁ、私が詞ちゃんを嫌いだったのは、事実だし」

 

あぁ、この姉妹はすでに終わっていたのだ。と、セレナはそう感じ取った。

お互いがお互いを嫌いあう姉妹。世間一般ではどうなのか定かではないが、少なくとも自身の経験では想像できないセレナは、やるせなさを抱えながらも質問を続ける。

 

「……なら何故輸血を提案したんですか。わざわざ嫌いな相手を、それも自分の命を犠牲にしてまで」

 

それを問いかけたとき、縁は一瞬考えるようなそぶりを見せた。

そしてすぐに微笑みかけて答える。

 

「たとえ嫌ってても、姉は妹のこと考えちゃうものよ。貴方も、そんな経験あるでしょ……?」

 

「私の姉さんは嫌ってなんかいないし、ひどい傷付け方もしませんよ」

 

「そうよね……シェム・ハの中から見てたからわかるわ。貴方たちみたいに、普通の姉妹になれていれば、素直に気持ちを……伝えられたかしらね……」

 

発言がおぼろになってきた。限界が近いのだ。

彼女の命は、今にもかき消えそうなほどにか細くなっている。しかし、彼女は止めない。

それが己の贖罪であると言わんばかりに、続けた。

 

「神稚児として、余分なものをそぎ落としてきた。それが、正しいと疑わずに……。でも、あの子はそうじゃなかった。見向きもされない予備だって……だからこそ、ヒトとして、感情を育めたのね」

 

初めからヒトでないことを望まれた縁、初めから何も期待されていない詞。両者を分けたのは単なる実力か、はたまた運命なのか。それは分からない。

しかし、それが要因となって今の詞があることは事実である。

セレナは、憤る気持ちを押し殺して聴き続けた。

 

「家に縛られた私には、あの子の自由があまりにも眩しかった……私だってほしかったのにって……でも、なにより奇麗だったから……!あんな化け物の掃き溜めに、あの子を置いとけない……」

 

呼吸が浅くなり、ついに瞼が落ちる。

 

それと共に落ちた涙は、哀愁か悔恨か。

はたまた今まで押し殺してきた、縁の後悔の表れなのか。彼女自身答えは出せないままだろう。

 

「貴方たちのおかげで……あの子は本当にヒトになれた。私のような、心の無い化け物にならずに済んだ……。あり、がとう……」

 

「私の目には、貴方もヒトに見えますよ」

 

思いがけないセレナの言葉に、縁は薄く目を開きながら笑った。

そして、詞の頬へと手を伸ばして最期の言葉を伝え始める。

 

「詞ちゃん……。いいお弟子さんに、恵まれたね……。友達も、たくさん出来たんだね……全部見てたよ…………でも、あんまり泣かせたらダメだからね……?」

 

縁の言葉は、詞に届いているのか。

否、たとえ彼女に届いていなくても周りの仲間たちは聞いている。聞き届けてくれている。

きっと彼女にも伝わるだろう。

 

「全部が終わった今日を、貴方はヒトとして生きて……そして、私たちの分まで、幸せをつかみなさい。もう戦いは終わった、もう武器を置いていい、貴方がつかみ取った平穏を…………誰より楽しんで……………………そしていつか」

 

触れていた手が、力なく滑り落ちる。

その時が来た。

 

 

「誰よりも幸せになって、満足して、楽しかったと言える想い出に囲まれたとき…………向こうで会えたら、その話を……聞かせ……………………」

 

 

あいしてる。

それが、最上 縁の最期の言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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それから、1か月が経過した。

 

世界は徐々に復興している。

世界樹が付けた爪痕は大きいが、世界が繋がった今ならば容易いことだろう。現に大国は立て直しが早く、同盟国の援助へ人員を割けるほどに余裕ができ始めている。

 

この機に乗じて。という悪辣な人間たちも多くいたが、大抵はどこかから現れた武装集団に鎮圧されている。

 

大きな事件もなく、世界は平穏を取り戻していった。

勇気ある人々の活躍によって救われた世界は、今日も朝を迎える。

 

そんな朝焼けの中を2台のバイクが駆ける。

涼しい風が肌を撫でながらも、顔をのぞかせた日の光が熱を伝えてくる。絶好のツーリング日和という奴である。

 

復興工事の現場、崩れ落ちた建物の瓦礫、退去した避難所の片づけ跡。そんな復興の光景を流し見ながら、二人は愛車を走らせていく。

 

目的地は、かつての決戦場。

 

早朝の静けさの中、しばらく単車を走らせて到着した。

かつての戦いの跡がまざまざと残るそこは、今後は特異災害の被災者を弔うための公園になるそうだ。

そして、その中央には決戦における功労者を称える石像が経つのだそうだ。

 

そんな戦場跡の中央あたりに、ポツンと一人。

アメリカンバイクを背に缶コーヒーを啜る女がいた。

 

「よう、脳みそいじった割には元気そうだな」

 

愛車から降りた少女は、先客へと声をかける。

それに追従して連れの少女も、ヘルメットを外しながら声をかけた

 

「わざわざこんなとこに呼ばなくてもいいんじゃないの?」

 

答えるように先客は振り返り、薄ら笑いしながら答えた。

 

「ここがいいのよ。誰もいないし」

 

飲み干した缶コーヒーをしまい込み、先客は二人へと歩み寄る。

 

短く整えた黒髪に、少し焼けた肌。背丈は二人と同じくらい。

しかし彼女の目は澄んでいて、まるで真夜中の空のように黒と藍色を掛け合わせたような、そんな瞳の少女。

 

その頭部にかつての呪いの証()は無く、目の下の隈も無い。

不健康そうな顔つきはどこへやら、すっかり全快した彼女は親友2人の前に立つ。

 

 

最上 詞は、完全復活を遂げていた。

 

 

「体直ったら途端にコレかよ」

 

「でも奏、この日を待ち望んでたでしょ」

 

「病み上がり一週間でお誘い来るとは思わないだろ。ライブのリハだって近いってのに」

 

にぎやかにおしゃべりする二人を見て、詞はほほえましく思う。

やはりこの二人は、こうあるべきなのだ。としみじみ実感しながらも、かつての自分の所業を恥じた。

一時的にとは言え、この二人の間を引き裂いてしまった己を恥じた。

 

「なんだよ、またモヤモヤタイムか?」

 

「うっさいわね……。奏の所属は移して元通りにしたんだから、その件はもう済んだわよ」

 

「小日向もS.O.N.G.に移籍してたけど、そっちの人手は大丈夫なの?」

 

「S.O.N.G.の下請けから国連の独立暴力装置になったからね。今や世界中から入隊希望者が続出中よ」

 

雷光(アステリオス)は日本政府の手を離れ、S.O.N.G.同様に国連の管轄となった。しかし、国連部隊として都合良く利用されることを忌避した各国首脳陣の提案により、国連の旗の下に特異災害に応対する救護面担当なS.O.N.G.とは異なり、主に暴力面を担当する部隊として再編。

 

世界中の異端技術による火種をつぶして回る、極秘部隊としての活動が決定された。

 

「まぁ、私は矢面に立てないし。育成に専念しろって副官(セレナ)から釘刺されてるしね」

 

「あったりまえだ。またお前がギアを使うような事態にさせないって条件で納得したんだからな。じゃなきゃさっさと引退させてるよ」

 

「日常に戻れ、って言って聞く詞じゃないだろうし。いい落としどころだとは思うけど……心配だよ、私は」

 

相変わらず親友2人に気をもませている事実に、詞はバツが悪そうに頬を掻く。

自身の首元に掛けられているシンフォギアが、自身の異変の原因であることを自覚している。

しかし脳内のイバラを取り除き、完治した今になっても捨てられなかった。

 

このギアを手放したとき、もし身内に危機が迫ったら。

 

一抹の不安がいまだに彼女の内をくすぶる。

実際に事変終息後のいざこざには、彼女が出張る事はないもののヒヤヒヤした場面が少なからずあったのだから。

 

かつて弦十郎が、自身の義父が感じていたもどかしさを味わうことになるとは思ってもみなかった。と彼女はたびたび愚痴をこぼしている。

 

故に。

彼女は親友2人を呼び出したのだが。

 

「心残りを、解消しておこうと思ってね」

 

すん、と。詞の纏う雰囲気が張り詰める。

それを察した奏と翼も表情が引き締まり、詞の言葉を待った。

 

「お互いがお互いに思うところも多かったし、それが原因でいさかいが起きてたわけだし。全部ひっくるめてここで片を付けようと思うのよね」

 

「……『3人でデートしましょう』ってメールはそういうことかよ」

 

「結局、戦いから離れられてないじゃない」

 

呆れた様子の二人に、詞は決意の表情で続ける。

 

 

「私の引退試合、付き合ってくれないの?」

 

 

信じられない言葉を聞いた二人は、目を見開いて硬直した。

それを置き去りにして、詞はさらに続ける。

 

「何も全部やめるわけじゃないよ、装者を引退するってだけ……みんなが私を心配してるのは良く分かったし。今後ミノタロスを使えばまた融合しちゃうから、今日を最後に封印措置して、誰も触れられない所へ隠される。二度と私は、ギアを纏うことはなくなる」

 

少しだけ寂しそうに、コンバーターを撫でながら詞は告げた。

 

胸の歌を封じ、彼女は先へと進もうというのだ。

優しさゆえに力を求め、姉への劣等感故に自分だけの唯一を求めた詞が、それを手放そうというのだ。

2人はかつての詞では考えられない行動に、驚きを隠せないとともに成長を喜んだ。

 

そして、そこまでの覚悟を決めたのならば応えなければならない。と、気を引き締めた。

 

「……まぁ、アタシも白黒付けたかったしな」

 

「……そうだね。お互いに因縁を残したままじゃ気が晴れないし」

 

「せっかくのライブだもの、全部片付いた状態の方が楽しめるでしょ……だから」

 

別に、目の前にいる人を恨んでいるわけじゃない。

違う出会い方ならこうはなっていなかった。でも、あの時出会ってしまった。

だから戻れない。

 

ただ上に行きたい。白黒はっきりさせたい。心に区切りをつけたい。

 

目の前にいる人は壁、相容れぬ存在。

 

ああ、すべては前に歩くために。すべては前に進むために。

 

そう、そう思っているはず。

 

 

 

「「「あなたと私、戦いましょうか」」」

 

 

 

すべてが終わり、体と心を蝕むイバラも祓われて。収束と復興が進みつつある今日に、かつて神と争った戦場にて戦姫たちは再び相対する。親友であり、好敵手であり、仇でもある彼女たちとの決着。

 

もはや語る言葉もなく、語るべき相手もいない。乙女はただ前を向き、ただ前に進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日の昇る戦場に風が吹く。

正面に立つのは、想いあった親友にして、永遠の好敵手。

 

開戦の合図などなく、しかして同時に、彼女たちは臨戦態勢に入った。

 

「じゃあ、始めますか」

 

聖詠が三重奏(トリオ)を奏で、戦場へと満ちる。

それが唱え終わると同時に、3つの光の柱が築かれて、戦姫が顕現した。

 

今までで最高の状態。仕上がっていると言っていいポテンシャル。

持てる肉体、技術、精神を、世界も何も関係ないただの『決着』のために振るう。この事実に自然と口角が上がっていくのが分かった。

 

どちらともなく、歩み始める。

徐々に、徐々に、踏みしめるように歩き始め、逸る気持ちのままに駆け出す。

 

そして。

 

「行くぞ、ツヴァイウィング!!」

 

「「来い!詞ァ!!」」

 

 

 ツヴァイウィング 対 貪斧 最上 詞 開戦。

 

 

初撃は最速で、最短で。

駆ける速度をそのままに突撃し、刃を交え、しかしお互いにそれを受け流してすれ違う。

 

2対1。数的不利だというのに詞はものともせず、不敵に笑うだけだった。

彼女のこれまでを振り返れば、多数敵との戦闘なぞ何度もあった。それゆえの自信の表れなのだ。

 

しかし、相対するは自身の背を追い続けた友たち。

追い越すために。勝つために。彼女らもまた半端な気持ちで追いかけてきたわけではない。

最上 詞は、それを身をもって知ることになる。

 

「さあ、初手はこれから行こうか!」

 

両手で構えた戦斧が双斧の変形し、詞はギアのブースターを吹かす。

九九式双重刃。彼女の初手は決まってこれだ。初手から奥義を叩きこむことで一気に流れを呼び込み、その勢いのままねじ伏せる。

 

ゴリ押しという言葉がこうも似合う装者は多くない。

野蛮だの品がないだのと散々言われてきた彼女だが、事実その野蛮さが世界を救い、友の命を救ってきたのだ。

 

無論それを二人も知っているのだが。

 

「逃げるか!」

 

奏の槍が回転し、暴風を生み出す。その合間に翼は剣を大剣に変形させて気をうかがう。

槍の暴風は、突撃してきた詞を正面からとらえた。しかしその程度では詞は止まらない。と、二人はわかり切っていたように次の行動に移る。

 

飛び出してきた詞を、翼の大剣が薙ぎ払う。

流石の詞も避けに徹し、九九式双重刃は不発に終わった。しかしただで転ぶ詞ではなく、双斧の片割れを突き立てることで薙ぎ払いを回避し、上空からの叩きつけに入った。

 

(マズイ……とっさに防御したけど、詞相手に正面から受け止めるのは……!)

 

「悪手、よね?力押しが売りの相手にそんなことしたらさぁ!」

 

受け止めた大剣が徐々にひび割れていく。

アームドギアでさえ破壊するミノタロスの切れ味に、翼は動揺を隠せない。

 

しかし、そこへ横槍を入れる相棒がいる。

翼との競り合いに必死な詞は、視界の外で黄金の輝きが放たれていることに気づかなかった。

 

それは、本来あり得ない者同士の融合。

繋ぐ手を武器とする後輩が見出した、希望の象徴。

 

 

「忘れてんなよ、これとやったことはなかったろ!?」

 

「アマルガム……!?初手より奥義ってワケね!」

 

 

黄金の槍を構えた奏はそのまま詞の横っ腹目掛けて突貫した。

さすがの詞もアマルガムの攻撃をもろに食らっては致命傷になる。押し込んでいた斧の切っ先を大剣の刀身に滑らせ、その勢いのまま「見切り」の態勢に入った。

 

槍の穂先を踏みしめて、奏の姿勢を崩す。

瞬間、奏が焦りをあらわにしたがもう遅い。ここまで来てしまえば、あとは詞お得意のあの攻撃が来るのみである。

 

「……だが、ぬるい」

 

みぞおちに走る衝撃と痛み。

いつものように手刀で腸をえぐる攻撃ではなく、ただのカウンターであったのは詞なりの礼儀だろうか。などと吹っ飛ばされながら奏は考えていた。

ただの喧嘩に臓物は似合わない。という彼女なりの気配りと思われる攻撃は、しかし奏に大きなダメージを与えていた。

 

無論そんな隙を翼は見逃さない。

構えていた大剣を上段に据えて、一刀両断の構え。蒼ノ一閃を纏った刃は詞の脳天目掛けて振り下ろされた。

 

「殺す気満々じゃない」

 

「クッ……!読まれてた!?」

 

振り下ろす瞬間、翼の手に衝撃と鈍い痛みが走る。大剣は天高く舞い上がって遠方で突き刺さった。

詞の得意技、かち上げ斬りによる武器の排除だ。

 

両腕が上がり、胴体はがら空きにされた。

とすれば次の行動は二通り読めてくる。奏と同じく手刀による内臓攻撃か、それとも。

 

詞がかち上げの姿勢から流れるように構えを取る。

腰を落とし、拳を貯めるような独特の構え。響がよく使う八極拳に類似した、正拳突きのごとき構え。

 

八九式突貫刃。

斧の柄を杭打機のように打ち出す、詞お気に入りの奥義だ。

 

翼自身それを何度見見てきたし、味わってきている。威力も練度もけた違いな、主力兵装と言っていい攻撃だ。

まともに喰らえばタダでは済まない。この奥義で数多の猛者たちを屠り、S.O.N.G.在籍のシンフォギア装者たちさえ堕としてきたのだから。

 

翼は、その構えを見て確信を得ていた。

 

 

今だ、と。

 

 

詞の拳が自身のみぞおちへと迫る。

到達まで残り0.2秒。

 

翼には、この時間が20秒にも、2分にも感じられた。

極限の集中力が、言われもない全能感が、絶対の自信が翼を支配した。

全ては、この瞬間の為に。

 

(手本が目の前にいるんだもの……やってやれないことはない!)

 

刃が、迫った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翼の体には届いていない。

彼女は、たどり着いたのだ。

 

「……嘘でしょ」

 

「追いついたよ、詞」

 

風鳴 翼は、「見切り」を会得した。

 

姿勢を崩した詞に、渾身の突きが差し込まれる。

散々己が使ってきた動作を見事に返された詞は、乾いた笑いを浮かべつつはるか彼方へ吹っ飛ばされた。

 

集中の途切れた翼はその場に崩れ落ちるも、あの日の背中に手が届いた実感で胸がいっぱいになっていた。

無論彼女の技術を全て会得できたわけではない。しかし、届かないと思っていた目標への足掛かりができ、尚且つ一部達成したのだ。

これを喜ばずにいられようか。

 

隣へ駆け寄ってきた奏も、翼を抱き起しながら満面の笑みだ。

やったな、と肩を叩いて健闘をたたえてくれる親友の声に涙が出そうになる。

 

わずかに気を抜いた瞬間、戦場一帯に地揺れが奔る。

詞が吹っ飛ばされていった方向は土煙で覆われていたが、揺れと共に光が迸り、土煙が霧散したそこには、黄金の双大斧を突き立てた狂戦士がいた。

 

狂戦士は笑っている。

それはもう嬉しそうに、心の底から嬉しそうに笑っている。端から見れば狂っているのかと受け取られかねない笑い方で。

興奮で鼻息を荒くして、彼女は告げる。

 

「な・ま・い・き・♡」

 

わずかに恍惚を交えながら、詞は翼を称賛した。

見たこともない表情に二人は若干の怖気を感じたが、詞が跳躍の態勢を取ったのを見て再度気を引き締める。

 

だが、詞はそのままの姿勢で停止した。

怪訝な表情を浮かべる二人だが、詞は翼を顎で指し、何かを促す。

 

眉をひそめて数度瞬きを繰り返したのち、翼はあぁなるほどと苦笑いするものの、ため息も出た。

詞はこう言いたいのだろう。

 

条件を整えろ、と。

 

評価してくれているのか、単になめられているのかと疑問が浮かぶが、そこまで求めるのならば応えてやるのが世の情け。

全力でぶつかってこその引退試合か、と納得した後に自身も黄金の武装を展開した。

 

蒼炎を纏った大剣を構え、奏と共に詞の一手を待つ。

 

「そうよ。せっかくの引退試合だもの、盛り上げてくれないと寂しいじゃないの!」

 

吠えたてながらの跳躍、数拍置いてから回転をかけて斬りこんできた。

稲妻と共に突っ込んできた詞の刃は、直前まで二人が経っていた地点をえぐり取った。とっさに飛びのいた己の反射神経をほめたたえつつ、着地と同時に突貫。

 

それを待っていたかのように、詞はかち上げの構えを取っていた。

 

「そういえば、これの全力は見せた事なかったわね」

 

そうつぶやいた後、詞の斧は雷を纏って地面を再度えぐった。

斬り上げられた斧の勢いと雷が合わさり、まるで嵐のようになって二人に襲い掛かる。加えてえぐられた地面が破片となって傷を増やした。

 

風で打ち上げられた二人はそのまま地面へと叩きつけられる。

追撃が来る。と冷や汗を流したが、詞を見やると肩で呼吸をしている。どうやら相当にスタミナを持っていかれたらしい。

 

「……アイツ……どんどんおかしくなってくな」

 

「……これで引退試合って、何かの冗談?」

 

二人が態勢を立て直したころには、詞も息が整ったらしく

 

「まだいけるでしょ、アンタらなら」

 

不敵な笑みで、そう言ってのけた。

そんなだから野蛮人って言われるんだぞ、と二人とも思ったが口にはしなかった。代わりにそれなりの怒りをアームドギアに込めて、次の一手を打つ。

 

そこから先は、お互いの大技の応酬が続いた。

穿って、穿たれて。斬って、斬られて。砕いて、砕かれて。戦場跡がズタズタになっていくのもお構いなしに大技が飛び交う。

見物に来る客などいるはずもない。誰も巻き込まないが故に全力を出せる。

 

そんな天変地異が起きたかのような戦場に、似つかわしくない車両が数台やってきた。

 

「何をやってるんだお前たち!!!」

 

「ツカサ!貴方もう大人なんだから少しは大人しくしなさい!!!」

 

「怪我が治ったとたんにケンカなんて何考えてるんですか!!!」

 

車から降りてきた数名が三人に呼び掛けるも応答はない。どころか気づいてすらいないだろう。

弦十郎やマリア、響などは懸命に声掛けを続けるが、その後ろでじっくりと戦いを眺めるメンバーの方が多数を占めている。

 

切歌、調は彼女らの戦いを目に焼き付けるため。

クリスとセレナは姐貴分の最後の雄姿を見届けるため。

そして残りのメンバーは単純な興味本位と賭けの対象にするため。

 

炎と嵐、そして雷が飛び交う戦場に彼女たちは再び集った。

双翼と貪斧、果たして最強はどちらなのか。ただそれを決める戦いの為に。

 

弦十郎は義娘(むすめ)のやんちゃを止めるため懸命に声をかけ続ける。そのうち堪忍袋の緒が切れて直接介入してやると嵐の中に歩を進めるが、緒川らに咎められた。

しかし、義娘(むすめ)を想う弦十郎の心は固い。

 

「好きにさせてやれよオッサン」

 

そんな決意にクリスは待ったをかける。

冷静さを欠いた弦十郎は般若の如き顔持ちでクリスを見やるが、当の本人は戦いから一切顔を逸らさない。

この光景を一瞬とて逃すものかという確固たる意志が、その姿勢にはあった。

 

「アネキも先輩方も、この日を待ってたんだ。何のしがらみもなく純粋にやり合える日ってのをよ……それに、どっちが勝つか気になるだろ?」

 

「…………勝手にしろ」

 

弦十郎は、黙認することにした。

図星を突かれたわけではない。義娘(むすめ)の意思を尊重しただけ、ただそれだけなのだ。

決して内心の疼きを漏らすことなく、父親として彼は見守ることにした。

 

そんなやり取りなぞ露知らず、三人の決戦は苛烈を極めていく。

大技を大技で撃ち返し、怒号と咆哮が入り混じる。始まってからすでに三時間が経過しようというのに衰えることなく、傷だらけになっても撃ちあう姿は、まさに戦姫であった。

 

しかし、当人たちは戦えても武装はそうはいかない。

三人が纏うギアは、とっくの昔に限界だった。

 

幾度目かの撃ちあいの果てに、ついに刃も鎧も砕け散った。

 

「……なら」

 

「……ここからは」

 

()()、よね?二人とも」

 

刃が砕けたからなんだというのか。まだ武器ならあるじゃないか。まだやろう、もっとやろう。

お互いが納得できるまで、決着をしっかりと付けるまで。

ちゃんと、全部消化しよう。

 

三人の中には、こんな共通認識があったのかもしれない。

だから彼女たちは

 

 

「「「ぶっ倒れるまで、ぶん殴る!」」」

 

 

止まらない。否、止めない。

ここで全部を終わりにするためにも、止めてはならない。

 

血が出ようが、えずこうが、吹っ飛ばされようが、殴るのを止めない。

殴り、蹴り、殴り、蹴り、殴り、蹴り、殴り、蹴り、殴り、蹴り、殴り、蹴り、殴り、蹴り、殴り、蹴り、殴り、蹴る。

痛くて泣きそうだ。いやもう涙は出ているか。

 

それでも、止めない。

 

 

私たちが、ちゃんとお互いに向き合うためにも。

 

 

「……いやいやダメでしょ!止めないと!」

 

あまりにも凄惨な光景に気が遠くなっていた響だったが、いくら何でもやりすぎだと仲裁に入るべく駆けだす。

だが、今度はセレナがそれを止めた。

無駄ですよ、と一言を添えて。

 

「いやでも、あれはダメじゃないかな!?」

 

「立花さん、今までのあの人を思い出してください。あの状態から止まると思いますか?」

 

「……………………あぁ……で、でもギアを使えば……」

 

セレナは引きつった笑みと虚無の目で首を横に振る。

後ろに視線をやれば、雷光(アステリオス)のメンバー全員とクリス、そして未来すらも同じように、一時の詞のような昏い瞳で笑っていた。

 

全員が言葉にはしなかったが、響には何が言いたいのか何となく察しがついた。

 

それで止まるなら私たちこんなに苦労してない、と。

 

響は初めて、人を助けるのを止めた。

彼女は、もう笑うしかなかった。

 

そんな大事件なぞ知らぬ存ぜぬと、肉弾戦はヒートアップを続ける。

これまでの戦い程ではないが血にまみれても、戦うことを止めない。

 

乙女の恥じらいなんて、今は邪魔でしかない。

およそ年頃の女の子がしていい顔つきではないんだろうが、だからなんだ。

 

今は、目の前の親友とケンカする方がよっぽど大事。

だって、ケンカしなきゃ仲直りもできないでしょ?

 

詞は駆けた。

先ほど吹っ飛ばした奏は復帰に時間がかかるだろうから、その間に翼をK.Oさせる。

別に積もった因縁をぶつけたいわけじゃない。ただ合理的なだけ。

 

翼は構えた。

詞の性格からして、疲弊した今なら正確に急所を狙うよりも、力技で真っすぐに来たがるはず。

なら、やるべきはこれだ。

 

詞の拳が、翼の読み通りに顔面目掛けて飛んでくる。

これでもアイドルなんだけどなぁ、などと心のうちで文句を垂れるが今は関係ない。

 

これも詞によくやられたっけ。と懐かしみながら迫る右拳を左腕全体で受け流し、力いっぱい弾き飛ば(パリィ)した。

 

「いままでの、お返し!」

 

左頬にクリーンヒットしたカウンターの勢いのまま、詞は吹っ飛んでいった。

 

しかしそれで折れてくれるわけもなく、詞はうめき声をあげながら立ち上がった。

せっかく初めて成功したんだから、そのまま倒れてくれる流れじゃないのか。と毒づいて再び構えなおす。奏も復帰した今、二人がかりではあるがこちらが有利。

 

もう終わりにしよう。

いつまでもこうしていたい気持ちはなくはないが、終わらせるための戦いなのだから。

そんな思いが通じたのか、詞は大の字の姿勢で固まった。

 

(降参?いやあの詞がするわけない。脳内会議が白熱するが、疲弊しきった頭では答えが出ない……よく見よう、何か意図があるはず)

 

 

首元で何かが輝く。

あれは、シンフォギアの輝きだ。

 

 

「いいね……おしまいにしよう」

 

「あぁ……アタシも、そろそろ限界だ」

 

輝きから行動の移管を理解した二人は、わずかに残ったフォニックゲインを集約し、無理くりにギアを稼働させる。

刃こぼれのひどい小刀、穂先の欠けた槍、そして鈍らな斧が二つ顕現。お互いの獲物を手に、呼吸を整える。

 

そして、その時が来る。

 

 

 

「アンタらの、負けよ……!」
 
「アタシらの……!」「……勝ちだ!」

 

 

 

最後の力を振り絞って生み出したアームドギアを手に、雄叫びを上げ、駆け出す。

 

 

最後に立っていたのは―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

双翼ED 詞を奏でる両翼 




はいここでタイマーストップ!
記録は22時間4分21秒87でした!

何故か走者は私一人なのでWR達成です!

では、完走した感想ですが……。

ぬわああん疲れたもおおおおおおん!!!チカレタ……。
まぁでも楽しかったからオッケーです!

見返してみると特大ガバのオンパレードすぎておっぱげましたが、完走できたからヨシ!
後進の余地を残すのも先駆者の仕事だからね、多少はね?

というわけで本作はこれにてお終いです。
え?ライブ?エンディングで流れてましたよ?
(何かの間違いて書いたとしても活動報告とかでさらっと程度ということで……)

というわけで評価をくれた皆さん、感想を送ってくれた皆さん、毎度毎度誤字報告をくれる兄貴たち、そして最後まで視聴してくださったすべての皆さん。


長い間!くそお世話になりました!!!
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