【WR】戦姫絶唱シンフォギア S.O.N.G. of Valkyries 全員生存RTA【22:04:21,87】 作:REALGOLD
XMH-012 リリクス・アズリィ・マサクゥル。
本来、生まれることのなかったはずの番外躯体。
計画遂行のために用意された4体のオートスコアラーや、雑務用に生み出されたエルフナインとは異なり、彼女は「完全なる趣味嗜好」によって作られた人形だ。
テストを請け負ったミカやレイアはのちにこう語る。
「パワーバランス狂ってるゾ!制作陣に交渉もやむなしだゾ!」
「……アイツは派手すぎる。まさか空中戦までこなすとは」
オートスコアラーの中でトップクラスのミカが言うのだから、彼女の実力にも箔が付くというもの。
キャロル本人も会心の出来だと少々浮かれていたらしい。
さて、そんな彼女のお披露目会は存外に遅かった。
いかんせん出来は良くても、ミカ以上のエネルギーが必要になるのでそこら中から『想い出』をかき集める必要が出てきたからである。
担当したガリィはコメントを控えたが、彼女の名前を出した瞬間の「うっげぇ……」と言いたげな引き攣った表情が答えだろう。
エネルギーの供給役を兼ねている故に、彼女との絡みは多く、また大飯食らいのミカの分も合わせて『想い出』収集に勤しまなければならなかったからだ。
ファラも似た機能を持ってはいるが供給は出来ないため、必然的に彼女の出撃率は跳ね上がってしまう。更には世話の焼けるミカに絡まれる毎日。
毎度装者を煽り倒してストレス発散せねばやってられないという。
そして、彼女を制作したキャロルはこう語る。
「奴を作り出せたのは僥倖だった。シンフォギアと敵対して少し経った頃、奴は果敢にもオートスコアラー全機を相手取った。作戦通りだったとはいえ、まんまと乗ってくれたので少なからず面食らったよ」
そして、当然のように敗れたその装者は儚い命を散らした。
だが仮にもオートスコアラーを相手に一歩も引かず、背後からの一撃でしか倒せなかったのを評価したキャロルは、その遺体を回収。
魂を躯体に転写し、新たな記憶と
内容はごく単純。
「オレを守れ、オレのために戦え、オレのために死ね、オレのために何もかもを捧げろ」
そして、彼女は稼働を始めた。
「はい、私のマスター」
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
都庁上空に現れた世界解剖の要、チフォージュ・シャトーを止めるべく装者一行は奇跡の力を纏って見せた。
街中にばら撒かれた大量のアルカ・ノイズを見事に打ち取り、ついにキャロルの喉元へと手が届くかと思われた時。
錬金術師は動じることなく、次の手を打った。
そして、そいつは現れた。
死を告げる大天使が、戦場に降り立った。
「おい……なんの冗談だよありゃ!?」
「なんで……」
「錬金術師、どこまでも外道か!」
装者たちは口々に罵倒を浴びせるが、当の本人はどこ吹く風。戯言なりとせせら嗤う。
キャロルは臆することなく、命令を下した。
「やれ」
ほんの一言。
彼女にはそれで十分。
瞬間、地獄が始まった。
突貫した黒い光が、白銀の少女の腸を抉る。
その勢いのままリリクスは手に持った鎖をぶん回し、他の装者たちを一気に絡め取って地面に叩きつけた。
体内の空気を強制的に吐き出された装者たちは一瞬硬直するが、その隙をリリクスは見逃さない。
鎖の先端につけられた重鈍な錨が、回転によるエネルギーを合わせて剣の少女に落とし込まれ、致命傷を喰らわせた。
「まず一人」
淡々と、リリクスはキャロルへ報告する。
激昂した槍の少女と弓の少女が向かってくるが、彼女は鋼鉄の如く動じない。
向かってきた槍の刃先を軽くいなし、弓の少女の駆る巨大武装に取り付いた。弓の少女は捕らえたとほくそ笑んだが、その表情は一瞬で反転した。
理由は単純。
捕らえたはずの敵が、自身の乗る武装を粉々にしたからだ。
素手で握りつぶすことで、粉々にしたからだ。
「嘘だろ!?」
「二人目」
弓の少女の首根っこを掴み取ると、容赦なく顔面に一撃を叩き込む。墜落した周りがクレーターになっていることから、少女にどれだけの衝撃が加えられたかは想像に難くない。
返す刀で突貫した槍の少女は下から迫っていた錨に気づかず直撃し、また墜落していった。
「三人目」
戦果を目視確認すると、すぐさま次の標的に移る。地上でヨロヨロと立ち上がった銀腕の少女は、倒れた仲間のもとに駆け寄るがリリクスは容赦しない。
地を這う蛇のように忍び寄る鎖によって拘束された少女を、ハンマー投げの要領で振りまわしてビル壁に磔にし、錨でもってトドメを刺す。
気を失った少女はそのまま地面へと堕ち、無機質な声で四人目と呟いた。
残された拳の少女も、鎌の少女も、鋸の少女も、ただ呆然と地獄を眺めていた。
否、動けなかったが正しいだろうか。
足はすくみ、冷や汗は滝のように流れて、体の中を恐怖が染め上げている。この現実から目を背けられたらどれだけ楽になれるか。
鋸の少女はあまりの絶望で立つこともできない。鎌の少女がそれを庇うが、涙目で震え上がった彼女では守ることさえままならないだろう。
残された拳の少女、立花 響は
「何してるんですか詞さん!」
「五、六人目は戦闘放棄。残り一人」
聞く耳持たず。
対話は成立せず、言葉は意味を成さず。
リリクス出現からわずか5分で、S.O.N.G.シンフォギア一行は壊滅した。
この瞬間、世界の敗北が確定された。
最早止めるものなどおらず、世界解剖のメスは正しく執刀される。
この日、文字通りに世界は滅亡した。
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全てが終わった後の事。
地球上の全生命体が世界解剖により分解され、大地も海もバラバラになり、命の営みが消えてしばらくの頃。
あの日以来、元都庁上空に聳え続けているワールドデストラクター『チフォージュ・シャトー』にて唯一存命している知的生命体が一人。
彼女こそ世界解剖の執刀医。
キャロル・マールス・ディーンハイムその人である。
かつて実父を焼かれた憎しみを世界へと向け、歪んだ命題を見事に達成してしまった彼女。
全てを終えた今、一種の燃え尽き症候群を患い、玉座に座り続けている。
そんな彼女の傍には、いついかなる時でも控える忠実な騎士が一人。否、一体が正しいか。
ことが終わってはや数年。命令を出すことがなくなった主人の側を離れることなく、彼女はそばに居続けるだろう。
それこそ、自身が朽ちるその日まで彼女は命令を守り続けるのだ。
主人のために守り、主人のために戦い、主人のために死に、主人のために全てを捧げる。
再び命令が下るまであと何年だろうか。
いや、何十年何百年だろうと自分は待とう。主人が立ち直るその日まで自分は傍で守り続けよう。
何故なら、自分の主人はこんな所で目的を見失うような人ではないからだ。そうだという確信すらあるからだ。
主人の記憶を分けられた時に理解したのだ。
この人は努力を惜しまず、挫けず、絶えず前に進もうとする人だ、と。
進む方向は歪んでいるが、頑張れる人だと。
そうしてまた幾ばくかの時が流れて、彼女の関節が錆び付いて来た頃。
その時は訪れた。
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いつまでそうしているつもりだ
いつまでも。マスターからの命令ですので
律儀な奴め……何年経った?
1000年と、7ヶ月13日です
そうか、随分と長く眠ったものだ……その手のものは?
誕生日プレゼントですよ。今日は貴方の誕生日です。
あたり一面に転がってるの全部それか?!
はい。1000と1回分の誕生日プレゼントです
…………大馬鹿め。そもそもオレの誕生日なぞ教えた覚えがないが
記憶から勝手に引き出しましたが、何か?
勝手に人の記憶を漁るな!全く……中身は宝石に、木彫りの置物、純金のオブジェに、絵画か
僭越ながら時間だけはあったので、オートスコアラーの皆とマスターのいるシャトーを想像で描きました。ご不快ならば焼却します
……ご丁寧にエルフナインまで描きやがって……良い、これまでの忠義に免じてシャトーのどこかに飾ってやる
ありがとうございます
世界は解剖したが、結局命題の答えなんぞ出なかった。パパの残した命題だけがオレの本懐だったのに
では、新たな命題を作るというのはどうでしょうか
これ以上何をどうしろという。何もかもが滅んだこの世界で
では世界を創りましょう。分解が出来るならば再構成も容易なはず
もう一度人間の歴史を辿れと?パパを否定した世界をもう一度再開しろというのか!?
いいえ、今度は貴方が創造者になれば良い。誰も否定されない、平等な世界を。人間の悪意で家族を失った貴方なら、二度とそれを起こさない生命を創れるはずです
お前はオレに何を見ているんだ?オレはそんな柄じゃ
いいえ、少なくとも命題の答えが出なかったからと1000年も不貞寝しているよりは遥かに有意義かと
不貞寝などしとらんわ失敬な!まぁいい、そこまで言うなら貴様にも付き合ってもらうからな!
はい。この身が砕ける日まで、貴方のそばに
フン!
あぁ、拾い物ですが
……あと四、いや六体ほと人手を増やす。躯体の用意から始めるぞ、手伝え
はい、マスター。どこまでも、貴方の隣におります
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その昔、世界は一つの大陸だった。
地球の地殻変動により、世界は分裂し、別々の場所で生まれた人々はそれぞれの文化を築いていたが、それは同時に諍いを生むことになる。
価値観の違い、倫理の違い、色の違い、性別の違い、頭脳の出来の違いなど他者と違う部分をひどく嫌った人間たちは、お互いを殺し始めた。
そうして世界中の人間がバラバラになった頃、理解できないものに恐怖した人間たちによってまた一人。男が殺された。
その男の一人娘は大層怒り、後に世界をとことんまで分解してみせた。
結果、人類の長い歴史はたった5分の出来事により幕を閉じた。
人の歴史が終わり幾星霜。
再び統合された地球には、新たな知的生命体が歴史を紡ぎ始めている。
それは、一人の錬金術師を主と仰ぎ、価値観を統一させた世界。
争うことはないが、自ら変革することもない世界。
破壊も、争いもないが、進化も、前進もない世界。
遺伝子レベルで
たった一人(と七体)の例外を除いて、日々の平穏を謳歌し続ける世界である。
そして、その例外というのが
「やっぱり剣キャラが至高ね、これで1228勝目よ」
「あっぶね!お前そのキャラしか使えねェのかよ!」
「またバーストだゾ!そのキャラいい加減修正するべきだゾ!」
「……地味に退場、だがまだ妹がいる」
「ちょっと邪魔」
「はうぅ!妹さんのついでに僕まで巻き添えです!」
「おいオレを盾にするんじゃないお前ら!」
と、このように下僕たちと仲良く大乱闘している錬金術師。
キャロル・マールス・ディーンハイムその人なのだった。
かつて孤独だった少女は、一つの
もう彼女は、一人ぼっちではない。
推しキャラに作り替えられて、推しキャラ陣営と共に暮らす生活。
控えめに言って極楽では?(なお世界は滅んだ模様)
余談ですが、おそらく詞ちゃんにとっては最高のメリーバッドエンドだと思います。
ほんへの詞ちゃんがどうなるか……待て、しかして希望せよ!
アンケートの票が飛び抜けてたので先んじて投稿します。
残り2つも書いてるからほんへは遅れるけど許してヒヤシンス!