自殺したと思ったらオルフェノクになっていた。   作:地支 辰巳

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オープニング オルフェノクの仲間
私と彼女がオルフェノクになるまで


 今日もいつもと同じ何もない日常が繰り返されるはずだった。

 

今日は家庭科の調理実習だ。

私はいつもと同じように同じグループの女子が喜ぶ言葉を探しながら会話をしていた。いつもいつもそうだった。

 

「ねぇー梓ちゃん、うちこのお鍋見ておくからさ、包丁で野菜切って置いてくれへんかな?」

 

 グループのリーダー格の子が頼んできた。私みたいに何の取り柄も無い奴が断ったら、教室で普通にいることは難しくなるだろうな。そんな事分かっていた私は笑顔を向けて「わかりましたー」と明るい声で引き受けた。

 

 そんなことを高校に入ってからずっと続けてきたからだろうか、私は包丁を手に持つと諦め・才能を持つ人への憧れ、そして自分をもっと見てほしい。そんな自分の奥底に眠るような思いがどんどんと出てきて、自分のことが嫌になってしまってきていた。

 

「おーい梓ちゃんどうしたん?包丁持ったまま突っ立って。みんな不思議そうに見てるで、まさか自殺でもしようと思ったん?いや、冗談やで。はよ料理終わらしてしまおうや」

 

 私はその時の彼女の冗談がああ、そうなんだろうなと不思議と納得していた。その後、調理実習が終わったからも私の頭の中から包丁のことは頭から離れなくなっていた。

 

 放課後になってグループの女子達がそれぞれ部活に行く中、部活をやっていない私はいつもならぶらぶらして時間をつぶす所だったけど、今の私はもう一度包丁を持って死のうと思っている。

 

 私は嘘をついて職員室で鍵を借りて、そのまま包丁のあった料理室に向かった鍵を開けた。中に入ると、一直線に包丁が入っている所を開けて、そこから一本の包丁を取り出した。まだ包丁を持っただけだったのに、家のことや今の自分について考えてしまった。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

 私の家はなんてことはない母、父、弟の普通の家だった。

でも小学校4年ぐらいかな、勉強をやらしても普通、運動はほとんど出来ない、それに加えて何も才能もなくてダメダメの私を見て母が「お前にはがっかりした、失望したよ」それから母は私を無視するようになっていった。食事もくれる、洗濯もしてくれるなのに、無視され続けた。一、二年はあきらめずに話かけたりした。でも中学に上がる頃にはあきらめていた。

 最初は話をしてくれてた父もだんだんと無視するようになっていった。弟はそんな私を下に見て、罵り、殴って蹴る。兄弟ではなくただの不満の捌け口、弟は私をそんな風に見ていた。そして父も母も優等生で才能のある弟ばかりをかわいがるようになっていた。今でもそれが続いている。家族は私を見てはくれない、もっと私を見て欲しいのに。

 

 高校に入るとそれまでずっと一緒だった親友とクラスが離れてしまった。だから何の取り柄もない私が高校で普通に暮らしていくためには相手の顔色を伺い、相手の欲しい言葉を言って好感度を上げていくことだった。

 だけどそれは思った以上に辛かった、段々とストレスが溜まっていった。そんな私とは違って楽しそうに誰に気を使うこともなく話をしている日向の慕われてる人達が羨ましくて仕方がなかった。

 

 そんな人生最後の振り返りを終えると私は実感してしまった。

自分がずっとギリギリで生きて来ていたところだったことを。

すぐ死ねる包丁を手に持ったら、

なんだかもう諦めてしまってもいい気がしてしまったことも。

そしてもうこんな人生いやだと思ってしまったことを。

私はゆっくりと包丁を持ち直すと来世はもう少しましな人生を送りたいと

ささやかに思った。

そして包丁を胸に突き刺した。

 

 

 

私は目を覚ましたでも、不思議な感覚だった。

確かに胸に突き刺したはずなのに痛みはない、しかも自分の体を見ると

服は破けてるのにそこに血は流れてなく傷もない。

包丁も刺す前と変わらない状態で床に落ちている。

私はよく分からなかった。何が起きたのかも自分がどうなっているのかも。

夢でもない、それに地獄でもない。だって声が聞こえるから。

声が‥聞こえる?

 

昨日さー彼氏がさ一年にぶつかったらその男子すぐにペコペコ謝りだしたんだよ〜

 

えーなにそれ男なのに情けないねー

 

でね彼氏が冗談で二千で許すって言うと、すぐー出したんだよー

なんか生きるのに必死って感じがするよねー

 

ほんとだよね、そんなんで人生楽しいのかな〜って感じだね

 

だね、そうだよね。

 

 

ああ、声が聞こえた。

声を追ってきたら、それなりに離れていた図書室だった。

図書室でうるさくするのはダメなのに。生きるのに必死で何が悪いんだ。

私は自分のことでも無いのになぜかそんな気持ちが湧いてきていた。

入ると一瞬こちら見たその女子ら三人だったがすぐに会話に戻っていた。

なんでそうやって見てくれないの、私をもっと見てよ、ねえ、ねえ、ね……。

 

気がつくと近くで知らない女子が私を見つめていた。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

私、淡路紫乃は今日も図書委員として図書室にいる。

図書室は好きだ。静かで本がいっぱいあって本を読むのに適してるいる。

そんな図書室が好きだから私は図書委員になっていた。

でも、そんな私だからかみんなは私をいじめてきた。

ただ教室で本を読んで静かにしているだけなのに、ただ好きなことをしているだけなのに。

みんなは私を根暗で本ばっか読んでるくせにいい点ばっかり取りやがってと言っていじめてきた。

最初は平気だったけどだんだん辛くなってきて、図書委員を言い訳にして、

図書室に逃げ込むことも多くなっていた。

 

今日もいつものようにいじめられて図書委員として図書室にいた。

でも、今日は運悪く不良の先輩方が大声で会話をしていた。

集中出来ないけど、我慢、我慢と思っていると。

図書室に制服が少し切れた、同学年の女子が入ってきた。

 

先輩方は気にしてなかったみたいだけど、私からしたら彼女は何か変だった。

でも、次の瞬間その変が確信に変わった。

彼女は一瞬顔に模様が浮かんだと思うと、

全身が魚?いや人魚?のような造形を持つ灰色の化け物になっていた。

その化け物は私に目にくれることもなく、不良達の元に近づいていった。

 

 

いや、こないでよ、私たちが何をしたっていうのよ

 

け、警察に通報するわよ

 

こ、こんなことをしてただですむと思わないで

 

 

そんな言葉目のくれず、その人魚の化け物は手に三叉の槍をもつと、

それで順番に不良達を刺して行った。

刺された不良達は少し動いたかと思ったら、すぐ灰になってしまった。

 

私はそんな化け物を見て、なぜか感動してしまっていた。

私は私の趣味を邪魔する人、いじめてきた人らに復讐するためにあの力が

欲しいと思いながら、その所業を見ていた。

ただ知識を得るのが好きで本を読んでた。

自由に何かがしたくてあの力が欲しいと思った。

あんな圧倒的な力を見せられたらあの力を欲さざる負えなかった。

不思議と私は人間に戻った彼女の元へ近づいていっていた。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

見たところ図書委員であろう彼女は私のことを見つめていた。

不良達は見たところいなくなって、居たはずの場所には灰があった。

私自身がやったわけではないので彼女が何かしたのかなと思っていたら

彼女はいきなり膝を床につけて私の顔を見て口を開いた。

 

「お願いします。私に不良の先輩達を消したあの力をくれないでしょうか?

もちろん何をされてもいい覚悟は出来ています。

私は自由になりたいです。お願いします」

 

何を言っているのか分からなかった。

私が……私があの不良を消したのか?しかも何なんだあの力って。

私はわからないことだらけで記憶も自分も信用出来なくなっていき、頭が混乱してきてしまった。

でもその時図書室のドアがいきおいよく開いてそこから見覚えのある先輩が入ってきた。

まともそうな人が来てくれて私は正直助かったと思った。

 

「おおー、なんか化け物って言う声が聞こえたから来てみれば、どう言う状況だこれは?……うーん灰の山が3つか、それで跪いている女子が一人で、

呆然と立ち尽くしている女子が一人か。

うん、これは期待してた通りの展開だね。まず跪いている君の名前は?あと君は人間なのかな?そして何故跪いているのかな?」

 

入ってきた彼女の声を聞いて思い出した。彼女は確か生徒会長の阿波璃々さんだ。しかも彼女の顔は嬉しそうな、疑っているような顔をしていた。

そして跪いていた彼女は質問に答え始めた。

 

「私の名前は淡路紫乃です。図書委員をしています。人間です。

彼女にお願いがあって跪いています」

 

「うんうん、大体分かった。確信を得るために聞くけど立っている君の名前は?そして君はなぜ灰の山があるのか説明できるかい?最後に君がここにいる前にいた場所は?」

 

生徒会長の質問に私は冷静に頭の中で答えを整理して答えた。

 

「私の名前は伊予梓です。何故灰の山があるのかは分かりません。

私はここに来る前は‥家庭科室にいました」

 

私の答えに満足したのか、生徒会長は嬉しそうな顔をすると

 

「分かった。伊予、君自身に起きている状況を説明してあげよう。

そして淡路、君も一緒に来てくれ、君に残っている道を説明してあげよう。

ここじゃああれだし、家庭科室で話そうか」

 

生徒会長に連れられ、私と淡路さんは包丁を置きっぱなしにしている家庭科に

また戻ることになった。

 

「さてと、家庭科に来たが包丁は床に落ちていて血も付いていない、

伊予お前自殺をしようとしたな?」

 

私は一瞬答えることを躊躇ったが、この状況について知りたかったので、

私は正直に答えることにした。

 

「はい、自殺しようとしました。でも刺したと思ったら死んでなくて、

血が付いていない包丁が床に落ちていたんです」

 

「いや、君は死んだんだよその時に。そしてオルフェノクとして蘇ったんだ」

 

オルフェノク?意味が分からない、私が一度死んで蘇った?そんな事あるわけがない。

 

「ふふ、信じられないって顔してるな、だがしっかりと説明してやろう。

オルフェノクは人類の進化系でな、人間が死んだ時に覚醒するだよ。

可能性は少なくてオルフェノクは数が少ないんだ。

そしてオルフェノクは姿を変えることが出来る。覚醒したばかりでわからない

だろうが君もなることが出来るよ。見せてくれよ私に」

 

生徒会長は妖美に笑った。

私が人間じゃない?オルフェノクっていう化け物なの……?

いやまさかね、なろうとしてなれなかったら私は人間ってことだまだ可能性はある。

 

だけどその可能性は直ぐに裏切られることになる。

私が力を入れると私の体は灰色の体に変化していってしまった。

ああ、これがオルフェノクか、記憶をだんだん思い出してきた。

私があの不良を殺したんだな。

でもこのなんとも言えない高揚感は良いなと感じてしまう。

そして鏡に写る姿も人間態よりも自信がもてた。

 

「ああーいいな伊予その姿は人魚かな?君は自力で蘇ったオリジナルという種類、もっと自分に自信を持っていいんだよ?

さてと気を取り直して、次は淡路、君の番だ。オルフェノクには自力で蘇る他にオルフェノクの使徒再生で蘇る方法があるんだ。

君の顔を見る限りそれを望んでいるみたいだね」

 

「ええ、その通りです。あの不良達を伊予さんが殺す所を見て、私もあの力が

欲しいと思ったんです。私を使徒再生でオルフェノクにしてください」

 

「もちろん、だけど可能性が低いのには変わりないよ?しかもダメだったらあなたも灰になるけど、それでもいい?」

 

「はい、覚悟は出来ています」

 

「待ってください生徒会長、私にやらしてくれませんか?

淡路さんは多分、私と同じように人生が嫌になってるのでそれを変えるための力が欲しいと思うんです。

私が使徒再生すればそれに答えられる気がするんです」

 

「新しい力も試したいものね、もしかしたら特殊な能力があるかもしれないからいいんじゃない?あと忘れてけど私は生徒会長の阿波璃々っていうの、

好きに呼んで構わないから」

 

私は阿波さんから許可をもらうと、淡路さんに近づいていき、そのまま私は彼女に抱きついて、耳元で短く言葉を呟いた。

すると彼女はたちまちに倒れていってしまった。

 

その後数分経つと彼女は一瞬白目になったと思うとそのまま立ち上がった。

 

「ああ、分かる。言葉に出来ないよう力が湧き上がってくるのが分かります。

この高揚感もたまらない。伊予さん、阿波さん、ありがとうございます」

 

言い終わると同時に彼女はオルフェノクに体を変化させた。

その姿はカラスの特徴が見られるオルフェノクだった。

 

「さてと、とりあえず二人ともオルフェノクとしての覚醒おめでとう。

淡路は伊予の特殊能力みたいなのが効いたのかな?まぁ話したいこともいっぱいあるし生徒会室に行こうか」

 

私と淡路さんは阿波さんに連れられて生徒会室に行くことになった。

 

 




伊予 梓
私立阿波学園の高校2年生
特異な家庭環境と学校でのストレスから人生に疲れてしまう。
自殺したと思ったらオルフェノクとして覚醒した。

マーメイドオルフェノク
人魚の特徴を有したオルフェノク。
武器は三又の槍を所持していて、オルフェノクになることを受けいれている相手を確定的にオルフェノクにすることが出来る。遊泳態も存在している。
梓の自分をもっと見て欲しいや才能への嫉妬が具現化されたもの。

淡路 紫乃
私立阿波学園の高校2年生。図書委員をしている。
教室の休み時間でもずっと本を読んでいて、それが原因でいじめを受けている。マーメイドオルフェノクの力を目撃して誰からも何を言わせることなく
好きなことをするためにオルフェノクの力を欲する。
オルフェノクになるために懇願する形でオルフェノクに覚醒する。

レイブンオルフェノク
カラスの特徴を有したオルフェノク
武器はカラスの羽を模した鎌。飛翔態も存在している。
紫乃の知識への欲と、自由への強欲が具現化されたもの。

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