自殺したと思ったらオルフェノクになっていた。   作:地支 辰巳

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親友を同族にしたいのは当然の思いだろう

私と淡路さんは阿波さんに連れられて生徒会室にやって来た。

阿波さんは私たちに適当な椅子に座るように促すと、一番奥にあるいかにも生徒会長な席に座った。

 

「えーと、どこまで話したっけ?」

 

「まだオリジナルと使徒再生っていうのがあることしか‥」

 

「そうだったね。まずオリジナルは使徒再生で覚醒したオルフェノクより強い

能力を持っている。さっき少し言ったが、使徒再生でオルフェノクになる確率は低いが、それ以上にオリジナルで覚醒する確率はもっと低いんだ」

 

「あと、オルフェノクは人間の状態でも他の人よりも耐久力が上がっていて、

オルフェノク同士の戦い以外ではそうそう死ぬことはない。病気にはかかるけど」

 

「じゃあ次に説明することは、あれだね、スマートブレインについてだ」

 

「え?スマートブレインってあの大企業のスマートブレインについてですか?」

 

「ああ、そうだよ。君たちは知らないと思うけどスマートブレインっていう

会社は今いるオルフェノクのほとんどを支援していて、しかも勤めている社員はオルフェノクなんだよ」

 

「そうだったんですか……確かに知りませんでした。

でもスマートブレインがオルフェノクを支援しているとしたら、阿波さんもオルフェノクなんですよね?支援はされていないんですか?」

 

「もちろん、私もオルフェノクだよ。見せる機会はまた追々ね。そして私は

スマートブレインには支援されていない。

あいつら強制的に会社の意向に従わせるらしいからね、私は今の所行く気はないよ」

 

「え、強制的に従わなきゃいないの……。せっかく自由になったと思ったのに」

 

「私も、あんまり強制的に従うのは好きじゃありません……」

 

「そうか。なら明日の放課後ここにもう一度来てくれ。

提案したいことがあるんだ。それまでは普通に過ごしてくれて構わないけど、念のため教えてくれない?」

 

「私は親友をオルフェノクにしたいです。私の能力があればそれも可能だと思うから。それから家に帰って、……家族を殺したいです」

 

「そうか伊予はそうしたいのか。じゃあ親友もオルフェノクになったら放課後にここに連れて来てくれ」

 

「そして家族を殺した後のことについては、明日来てくれた時に話すことにするよ。ちょうどいいからな」

 

「分かりました。言ったこと以外は目立ったことはせず、明日ここに親友と来たいと思います」

 

「次に淡路だが、お前はどうするんだ?」

 

「私はとくに目立ったことはしない予定ですよ?私のじゃまをする人がしたら

殺すだけですよ」

 

「そうかそうか、まぁその程度であれば大丈夫だから、気にしないが明日は

ここに淡路も来てくれよ」

 

「もちろんですよ、二人にはオルフェノクにしてもらった恩があるんだから」

 

私達は少しの談話を楽しんだ後、今日の所は解散することになった。

私は時計を見てまだ5時になっていない事を確認すると、風紀委員室に向かって歩き始めた。

私の親友紀伊かすみは、一言で言ってしまうといい子だ。

正義を信じていてそれに恥じない生き方をしている。

でもだからこそ、かすみは色々溜め込んでしまっている。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

私、紀伊かすみは今いつものように風紀委員室で日誌を残していた。

小さい頃から両親に教えられてきた正義を全う出来ているそう思うと、不思議とこの仕事が楽しくて仕方なく思えてくる。

でも色んなところで自分の正義だと思うことをしたり世間のニュースを見ていたりすると、それがダメだと分かっているのに罪を起こしている人々をよく見る。私はそれを見るたびに人間って醜くなと思ってしまう。

 

そんな事もあってか私は普通の人とは違う憧れを持っている。

ズレていると自分で分かっているが私は人外への憧れがやめられないのだ。

人魚、吸血鬼、鬼、天使など、人間の形をしていてそれでいて自由に正義とか悪とかに縛られていないそれが私に憧れや興奮を与えてくれた。

親が普通を望む中こんな普通では無い思いを持つのは間違っている。

だから親にも話せず、最近連絡とれていない親友にしか話せなかった。

 

そういえば最近どうしてるかな梓。

高校に入ってクラスが離れちゃって、溜め込んでいなか心配だな。

家族関係も少しは良くなっていると良いんだけど……。

そんな事を考えているとドアがノックがされた。誰だろうとは思うけど用件も

聞かずに追い返すのはどうかと思うので中に入れることにした。

 

「いいですよ。入ってください」

 

そしてドアが開いて入ってきたのは今しがた考えていた親友梓だった。

 

「やっほー久しぶりに会いにきたよかすみ」

 

梓は笑顔で話しかけて来てくれた。

私に会いにわざわざ来てくれたのは素直に嬉しかった。

 

「お〜どうしたの梓、こんな所までわざわざ来てくれて。なにか話したいことでもあったの?」

 

「うん、そうなんだ話したいことがあるんだ。でもその前に質問してもいいかな?」

 

どうしたんだろすこし神妙な顔立ちになってるけど。

でも梓からの質問ならなんでも答えないわけにはいかないよね。

 

「もちろんだよ。梓からの質問ならなんでも答えるよ」

 

「かすみならそういってくれると思ってたよ!それで質問なんだけど、かすみってまだ正義と憧れどっちも持ってる?」

 

いきなりそんな事を聞いてきてどうしたんだろ梓。確かに梓に話してから結構経ったし私が変わったんじゃないかって心配したのかな?

でも心配なんてしなくていいのに、私が梓の見ていない所で変わるわけないのに。

 

「うん、まだ正義も憧れも持っているよ。そしてまだ二つの間で悩んでるよ」

 

「それを聞いて安心したよかすみ、変わってなさそうでさ」

 

「でね話したいことって言うのはね、私ちょっと前に死んでねオルフェノクとして蘇ったんだよ〜」

 

私は梓の言葉を聞いて理解するまでに時間がかかっていた。

梓が死んだの?オルフェノク?として蘇った?意味が分からなかった。

冗談にしか聞こえなかった。

 

「梓、死んだって‥冗談でしょ?」

 

「違うよ、冗談なんかじゃないよ。私ね、かすみとクラスが離れてから普通に日常を送るために頑張ってたの、でも家族との関係も変わらなく、クラスの人と会話するのが疲れちゃって自殺したの。そしたら蘇ったんだよオルフェノクとして」

 

笑っていた、笑いながら私の知らない苦労を話していた。少し恐怖も感じたけど、それ以上にこんな笑顔な梓見たことがなくて。

それが嬉しいけど、自分は何も出来なかったんだと思い知らされて。

どこか冗談であってほしいと願っていて、ただただ複雑な思いだった。

 

「まだ、冗談だと思ってるでしょ?いいよ証拠を見してあげる、かすみ」

 

そういった梓の体は灰色の姿へと変化していった。これがオルフェノクなんだ‥。その存在は私の心に人外のオルフェノクへの憧れと興奮が溢れてしまった。だけど私はオルフェノクが正義の存在ではないと直感していた。

それが私の心にある種のストッパーをかけていた。

そんな中オルフェノクの影が梓の姿に変わっていった。

 

「信じてくれた?それでね本題なんだけど、かすみもオルフェノクにならない?一緒にさ新しい人生を始めない?」

 

梓は良い笑顔で私に手を伸ばしてきた。ああ、だから梓は私が変わっていないことを確かめたんだな。私が正義を信じるのならば断るべきなのだろう、梓なら私のことを信じてくれて逃してくれるだろうから。

でも、梓の読み通り私は正義よりも憧れと興奮が止まらないようになっていて、それに今の梓の笑顔は昔よりも輝いていたから。

私はオルフェノクの姿をした梓の手を取った。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

私の思った通りかすみは私の手を取ってくれた。ただただ素直に嬉しかった。

私は淡路さんにしたようにかすみをそのまま抱き寄せると耳に囁いた。

すると、かすみは床に倒れた。

ああ〜これでかすみも私と同族なんだね嬉しいよ。

これからは親友としてオルフェノクの仲間としてずっと一緒だね。

少し時間が経つとかすみが動き、立ち上がった。

 

「う〜ん。ねぇ梓、私ってオルフェノクになれたかな?」

 

「もちろんだよ。なろうとしたらなれるはずだよ。私オルフェノクとなったかすみを見たいな」

 

「分かったよ。なってみるよ」

 

かすみの姿は瞬く間にオルフェノクの姿となった。花の模様が少しある、花がモチーフのオルフェノクのようだった。

 

「ねぇ、どうかな梓?この姿変じゃない?似合ってるかな?」

 

「大丈夫だよ。すごく似合ってる。梓らしさが出てて……かわいいよ」

 

私の言葉を聞いたかすみはそのまま私に抱きついて来てそのまま人間態に戻ったので私も人間態に戻った。お互いに戻った後も抱き合っていた。

 

「こんな風に抱き合うなんて、久しぶりだよね。それでこれからどうするの梓?」

 

「う〜んとね。私は家族を殺しに家に帰るんだけど……かすみも一緒に来てくれたら嬉しいな」

 

「もちろんだよ。梓の家族は梓に散々な思いさせた罪人達だから、罰を与えないとね」

 

「じゃあ、私の家に帰る途中でオルフェノクについてと学園にいるオルフェノクの仲間について話すね」

 

「分かった。でもちょっとまってね日誌を書いてしまうから」

 

かすみが日誌を書き終えると、私はオルフェノクについてかすみに説明しながら私の家に向かった。

 

「いよいよだね梓。私もお母さんに遅くなるって連絡したし。覚悟は出来ているよ」

 

「うん、私も覚悟は出来てるよ。いよいよ過去との決別の時だね」

 

私とかすみは玄関のドアを開けて靴を脱ぎ廊下を歩いてリビングに直行した。

リビングには母親がいて、私をいつも通り無表情で見て、かすみがいることに

気がつくと、笑顔を作りこちらに近づいて来た。

 

「久しぶりーかすみちゃん。少し見ない内に大きくなったんじゃない?

ゆっくりしていってね。お母さんにもよろしく伝えておいて。

ねぇ梓、かすみちゃんと部屋で遊んできなさい」

 

いつもいつもそうだ。いつもは私を無視するくせに。この人は知り合いや私の友達の前だといかにも仲の良い普通の親子ように振る舞う。

そこまでしてなにを得ろうとしているのか私には分からない。

 

「ありがとうございます。母にもよろしく伝えておきますね」

 

私とかすみは二階ある私の部屋に行った。まだだ、まだ殺さない。リビングにいる母親も隣の部屋にいる弟も父親が帰って来たからまとめて殺してやる。

 

私の部屋に家族が入ってくるなんて一度もなかったので、私たちは雑談したり、抱き合ったり、お互いにオルフェノクの姿を見せ合ったりして、父親が帰って来るまでの時間を過ごした。

 

「ただいまー」

 

帰って来た。母親のことを好きなばかりで母親を習ってだんだんと私のことを

無視していった父親がついに帰ってきた。

父親がリビングの扉を開ける音が聞こえると、

私とかすみはお互いに頷いて、階段を降りて、リビングの扉を開けた。

 

「あれ、どうしたのかすみちゃん?もう帰っちゃうの?」

 

「はい、帰ろうと思いまして。でも、帰るのは私じゃありませんよ?罪深い貴方達が灰に帰るんです」

 

言い終わるとかすみはオルフェノクの姿となって、蔓のような物でリビングを覆った。

 

「お、お前はなんなんだ!、帰って来たらいきなり人を罪人だと言いやがって、そんなこけおどしの姿でビビると思ってるのか!」

 

「そ、そうよかすみちゃん。いきなり化け物の姿になんてなって。

私達が何をしたっていうの」

 

「へぇーこの姿が化け物に見えるんですか?貴方達は何も分かっていませんね。梓、この部屋は蔓で覆ったから逃げられないから思う存分やってもいいよ」

 

「ありがとねかすみ。さあ、さよならを言うよ母さん、父さん」

 

私は体をオルフェノクの姿に変化されると、まず両親の反応を楽しもうと思った。

 

「梓……あんたも化け物だったのね。やっぱりあんたみたいな出来損ないなんて周囲の目を気にせずにとっとと追い出すべきだったわ」

 

母親は諦めているような感じだった。もう殺されることを察しているのだろうが、だからといって実の親からそんな言葉を受け取ってオルフェノクの自分でも少しはショックを受けるんだけどな……。

そんなことを考えている私の胸に父親が包丁を刺してきた。

 

「く、くそ、化け物が。家族を脅かすお前みたいな化け物は家族でもなんでもない。お前なんか生まれてくるべきじゃなかった」

 

娘に包丁を刺してきた父親か……。でもやっと本人の口から家族じゃないと言ってくれた。もっと前から言ってくれたら吹っ切れてどれだけ楽だったか。

何も言ってくれなかったから、本当は愛してくれてるんじゃないかと心のどこかで思っていた過去の自分がアホらしく思えてきた。

 

「やっと二人共正直に言ってくれましたね、私嬉しいですよ。そしてやっと理解出来ましたよ私と貴方達は血の繋がった他人だったということが。

そして、さようなら。最後にやっと私を見てくれましたね」

 

私は手に三叉の槍を出して母親と父親を刺した。彼らは刺された後こちらに手を伸ばすとその手は届かず灰になっていった。

その光景は実にあっけなくて、少しの悲しさがこみ上げてきた。

 

「さぁ、弟の部屋に行こうかかすみ。まだ決別は終わってないからね」

 

「うん、そうだね。梓の17年の苦しみに比べたらこんな一瞬で死ねるなんて、

本当に幸福だね」

 

私とかすみは二階に戻り、人間態の状態で弟の部屋を開けた。

 

「あーあ、やっぱり来たんですね、梓とかすみさん。まぁあんな両親が叫んでいたら何があったなんて大体察せますよ」

 

「あんたその割に全然悲しそうじゃないね。しかも聞こえていたらなんで逃げなかったの?」

 

「あの二人は自分達が他人からどう見られてるかばかり気にしていたから。

二人は梓だけじゃなくて僕も愛していなかった。

僕の評判しか愛していなかった。だから僕も両親には何も感じないよ。

なんで逃げなかったかって?それは梓への償いかな?

いままで散々なことしてきたからね、殺されるのは仕方ないかな〜って」

 

「本当に可愛げがない弟だよね。でも確かに、あんたは殺されてもおかしくないぐらいのことを私にしたもんね。仕方ないね……」

 

「そうそう、迷ってもしかたないよ……姉さん。本音を言うとね、僕は死ぬ時

ぐらい自分で決めたいと思っているだけなんだよね」

 

弟が胸を広げたので、私はオルフェノクの姿になって、

槍で胸をひとつきにした。

弟は刺された瞬間も笑っていてそのまま灰になるその時まで笑っていた。

 

「梓……全部終わったけど、大丈夫……?」

 

「うん、全然平気だよ。決別は済んだし家族がどう思っていたかも知れたからね。最後まで家族にはなれなくて悲しかったけど、最後には私のことを見てくれて嬉しかったよ」

 

そう、分かっていたことだ。

少しは悲しく感じることもこうすることで私を見てくれることも。

決別しようと思ったその時から。

 

 

 

 

 

 

 

 




紀伊かすみ
私立阿波学園の2年生。風紀委員をしている。
親から教育された正義に縛れていて。その反動で人外への強い憧れと興奮を持ってしまった。オルフェノクへの覚醒は梓の笑顔を見て、人外への強い思いが
合わさり、梓と一緒にオルフェノクとして生きることを決める。

ジェンシャンオルフェノク
竜胆の特性を有したオルフェノク。
体の至るとこに花の模様があり、所どころ角ばっている場所がある。
攻撃方法は竜胆の蔓や鋭利な花びらで攻撃する。
かすみの正義ではないオルフェノクとなっても正義を忘れられない思いが具現化した。

伊予 花見
梓の母親。子どものことを自分の評判の道具と心のどこかで思っており。
結果が出ない梓よりも弟の方を可愛がった。

伊予 大台
梓の父親。妻のことを溺愛していた。子どもたちのことも妻から生まれたから愛していただけで本人達を愛していない節がある。

伊予 賢太
梓の弟。なんでも出来る、俗に言う天才の優等生だが、生まれつき何に対しても感情を感じることが無くて。笑っている振りなど、振りしか出来なかった。
それについて悩んでいて、いつからか死ぬ時ぐらいは感情を感じれるだろうと思っていてどこか死を望んでいた。

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