エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜 作:SHノーマル
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「とりあえずポン子をおやっさんに送り届けるか」
「では詳細を伝えた紙を書きますね」
「じゃあ僕が魔法で縛るね」
「え? ちょっと! ちょっとぉ〜! やめて下さい! ……へぶぅっ!」
アタシ達のコンビネーションプレイでポン子を縛り上げた。
調子に乗ったとはいえ、サラッと人の貞操を賭けようとしたやつだからな。
かける慈悲はゴブリンより少ない。
とりあえずはおやっさん送りだ。
あとは借金の分だけ館でコキ使っても良いが……ひよっ子達に悪い影響を与えそうだから却下だな。
「そ、それじゃあオネーさんはギルド本部経由でポン子ちゃんをみんなの街に送り届けて……皆の怒りが収まったころ城に戻るね!」
アタシが頷くと、ポリーナはそのまま反対方向にポン子を連れて行った。
……これでギルド経由でおやっさんの所に届くだろ。
さて、あとは勇者ちゃんだが……。
「ううっ、ありがとう。助かって良かったのです。この借りは一山当てて返すから少しだけ待っててほしいのです」
駄目だコイツ、全然反省してねえ。
酒場の冒険者と同じ思考してやがる。
「うん! きっと勇者くんならできるよ!」
「リッちゃん、そっちの方向に応援するんじゃない」
駄目な子がますます駄目になるだろうが。
「紹介が遅れたな。アタシ達は冒険者『エリーマリー』の三人だ。今回は護衛を任されている。よろしくな」
「え? あ、ああ! こちらこそよろしくお願いするのです! 今代の勇者をやっている、リュクシーです。よろしくなのです」
「僕はリッちゃんだよ! ふつつか者だけどよろしくね!」
「うん、リッちゃんよろしくなのです!」
その後、アタシとエリーも自己紹介をしてから王城に向かう。
なんでも王城の一室に部屋を借りて住んでいるらしい。
「私は勇者の選定試験で選ばれてたのですよ。それからは王城の隅っこで暮らしているのです」
「選定試験ねえ……。勇者に選ばれる条件ってのはなんだ?」
「スキルとか若さとか……色々なのです! 私、色々あるのですよ!」
ちょっと顔を赤らめながら言うリュクシー。
それに食いついて来たのはリッちゃんだ。
「やっぱりドラゴン退治とか大魔法とか条件なのかな? 魔王と戦うんだもんね!」
「えっと、戦闘訓練はあったけどそこまでじゃないのです……」
相変わらずリッちゃんはずれた事を話している。
だが仲良くなってくれて何よりだ。
「でも冒険者の皆さんが良い人で良かったのです。私もこの戦いが終わったら冒険者になるのですよ……」
まるで今から死ぬような発言をするんじゃねえ。
「おう、なりたかったら色々教えてやるよ。ただアホな奴らが多いからな、悪い奴もいる。気をつけるんだ」
「でも皆を見た限りいい人だと思うのです。スキルの副次効果でなんとなくわかるのですよ」
そういえば宰相のおっさんが人を見る目があるとか言ってたな。
「特にリッちゃんは子供のように純粋で、凄く良い人なのです」
「えへへ……。褒めても魔法しか出ないよー」
お、認められたか。
仲良くなってくれて良かった良かった。
「なかなか面白いスキルじゃないか」
「私のスキルは、『吸魔』と言うスキルなのです。そのスキルのオマケで纏っている魔力の色みたいなもの、それがなんとなくわかるのです」
「それはすごい能力……だな?」
「言葉だけじゃ伝わらないのです。今度模擬戦をする時にでもお見せするのです」
『吸魔』ねえ。
聞いたことないスキルだな。
レア系か?
まあいいや、後で見せてくれるならその時に教えてもらおう。
城に戻る頃にはすっかり日も落ちていた。
門番に挨拶をして、中へ入れてもらう。
勇者のおかげで顔パスで入ることができた。
勇者って便利だな。
ポリーナも同じタイミングで戻ってきており、明日護衛任務の詳細を説明してくれるらしい。
「やっと依頼か。普通に仕事をしに来ただけなのに裁判にギャンブルにと忙しかったな」
「ええ、ウルル達も心配しているでしょうし、早く安心させてあげましょう」
そうだな。
ウルル達がいる部屋は……ここか。
「お前ら、心配させたな、無事だったか?」
アタシは扉を開けると同時に声をかける。
そこにはひよっ子達二人のほかにもう一人別の人物がいた。
「宰相さま! この料理美味しいです!」
「フォッフォッフォ、あとでこっそりレシピをもらってやるぞい」
「宰相さん、お仕事は良いのか? 忙しいじゃんよ?」
「フォッフォッフォ……。可愛い子供達の面倒を見ることが何よりも癒しになるんじゃよ」
宰相がひよっ子達を相手にお菓子やらを上げて微笑んでいた。
何やってんだこのオッサン。
「オッサン、ロリコンは良いが手を出すなよ? 宰相は忙しいんだろ?」
「おや、マリーではないか。ロリコンとは失礼じゃのう。手を出したりなどせんよ。子供というのはな、遠くから眺めておるのが一番なのじゃ。滾るわい」
普通は眺めてるだけで滾らねえよ。
心の中に燃え上がる衝動があるならそれをロリコンと言うんだ。
「ところで随分といい部屋だな。アタシ達の部屋はどこだ?」
「ふむ? そんなものなどないわ。なぜ元とはいえ魔王一派を好き好んで王城に入れなければならんのじゃ」
なんだと……?
確かに依頼を受ける時の条件には何も書いてなかったが酷え。
「アタシ達が魔族の関係者だからか」
「それだけじゃないわい。王城は宿屋ではないんじゃ。ポリーナ達も任務の都合上、詰所と訓練所は開けておるがそれ以外の立ち入りは禁止しておる。あ、ウルルちゃんとルルリラちゃんはいいんじゃよ。子供は無害で可愛いからのう」
このロリコン宰相め。差別が酷い。
お前が愛でてる奴らは魔族だぞ。
……そういえばポリーナが最初宿に案内しようとしてたな。
本来は宿屋で生活する予定だったわけだ。
「宰相さま……。お姉さん達を泊めて上げちゃ駄目ですか……?」
「そうだぜ。こんな時間から宿を探すのも大変だし、アタシからも頼むじゃんよ」
「むむ……」
おうひよっ子達。アタシ達の事を気遣ってくれるとは可愛い奴らだ。
「気にするな。アタシ達は他にアテがあるからな」
「ホントですか? 無理しないで言ってくださいね。こっそり三人くらいは止められますから!」
「ず、随分と堂々と言うのう……。ワシ、この城の宰相なんじゃが……」
ロリコン宰相は無視するとして、気持ちは嬉しいが遠慮しておく。
流石にこっそり飼われている犬や猫みたいな真似をすると面倒くさそうだ。
「とりあえず安心しな。なんとかするから、お前らはまた明日な」
「ふん、貴様らは野宿でもするんじゃ! 牢屋なら貸してやるわい。あ、ウルルちゃんとルルリラちゃんはここで良いんじゃよ」
牢屋とかいらんわ。
こっちにはリッちゃん製ワープゲートがあるんだ。
館でのんびりさせてもらうぜ。
館に戻ると、『森林浴』の三人と会った。
「あらあら? お帰りなさいませ。お姉さま」
「あれ? マリー姉ちゃん達は仕事終えて戻ってきたのか?」
「早かったね。ウルルちゃんとルルリラちゃんは?」
三者三様に挨拶を交わしてくれる。
「いや、まだまだだ。護衛の任務すら始まってねえ。ちょっと訳ありで一時的に戻ってきただけだな」
「これから私たちは本格的に護衛活動を始めます。場合によっては他の魔族と戦わなければならないかもしれません」
「そうだね、ちょっと大変な戦いになるよ」
魔族。
その言葉に吸血鬼のフィールとエルフのアルマ、二人が反応する。
「魔族……。戦うんですのね。マリー姉さま、ひとつだけお願いがあります。私の同族と戦う事がもしありましたら……」
「なんだ? 命はたすけてやれってか?」
悪いがそれは聞けねえな。
正直魔族は強い。
こっちも戦力を強化して、切り札も増やしたがそれでも舐めていい相手じゃない。
「いいえ! 命を助けるなんてとんでもございませんわ! そもそも魔王に付く者たちは、始祖ダルクールの不戦の言いつけを破り、血も薄くなった半端者たちですの! ギタギタのボコボコにしてくださいませ」
お、おう……。
思ってたのとちょっと違うがまあいいや。
もし敵が出たなら容赦なくボコボコにしよう。
「あの半端者共、これからの時代は力があるやつについていくだの、お前で最後の純血だの散々言いたい放題言ってくれましたわ! できることならこの手でギタンギタンに……」
なんだか吸血鬼っ娘が息巻いている。
こんなに熱くなる性格だったっけ?
……カリンに傷つけられた時もキレて暴走してたな。意外と熱い奴なのかもしれない。
「フィーちゃんストーップ。暴走しかけてるよ。マリー姉さん、多分いないと思うけど私達の仲間がいたら、『友人は森の手元と共にあり』って伝えて貰っていい?」
「戦うかどうかも今はわかってねえんだ。ま、できるなら伝えてみるさ」
「今はルルリラ達も王都にいるんだろ? いいなー。俺、王都に行ったことねえんだよな」
「安心しなよ! 今はまだ秘密だけど一瞬で移動できる裏技があるからさ! みんなまとめて王都で遊ぼうよ」
羨ましがるカリンと、それをなだめるリッちゃん。
確かに一区切りついたら王都で観光するのもいいかもな。
……でもさすがに大所帯で城からゾロゾロ出てくるのはまずいだろう。
転移魔法のゲート位置は変えてもらわないとな。
できるのかは知らないけど。
「ま、その辺りはおいおいだな。悪いようにはしねえから、今は冒険者としての腕を磨いてるんだ」
獣っ娘達は王都で宰相に甘やかされているが、さすがにそれは伝えないことにする。
……落ち着いたらコイツらも宰相のトコにおくりこんで魔族との親交を深めてもらおう。
ガッツリ入れ込んだ所で魔族ってのをバラしてやるから覚悟してろよ。
「さて、明日は忙しいからな。アタシたちは先に休むぜ。もし面白いお土産があったら買ってきてやるよ」
「もう休むのか? しょーがねーな。お土産楽しみにしてるぜ」
「任せろ。伝説になる予定のカッコいい木の枝とかで良いか?」
「ただの木の枝ではありませんか! 言い訳ありませんわ。そんなガラクタよりもっと素敵なものにして下さいませ!」
そんなに全力で否定するなよ。
お前の敬愛する魔王様ことリッちゃんが地味にショックを受けてるぞ。
しかし木の枝は駄目か。
獣っ娘達が喜んで……いや、喜んでたのはリッちゃんとルルリラだけだったな。
お土産は悩むな。
倒した魔族の首とか持ってきてもトラウマだろうし。
「まあ、適当に考えとくぜ。期待しないで待っていてくれ」
アタシ達は明日が早いからと伝え、早めの休みに入る。
リッちゃんはメイと就寝だ。
アタシ達も自室で二人っきりだ。
「エリー。なんか王都についてから色々あったな」
「ええ、まだ数日しか経っていないのが嘘のようですね」
「まったくだ。冒険者ってのは退屈しねえな」
「ええ……」
なんだ?
エリーの様子がおかしいな。
なんだか元気がない。
「どうした?なにか気になる事があったか?」
「いえ、私のスキルでこの依頼を受けることを選んだのに、結局王都で裁判を受けるまで問題が起こってしまったので……」
そんな事を気にしてたのか。
まったく、リッちゃんが迷惑かけてくるのは今更だろ。
アタシはエリーの頭を撫でてやる。
髪がすべすべして気持ちいい。
「なに言ってるんだ。エリーはトラブルが起きるって分かってたろ? それに最終的に王都に行くことを選んだのはアタシだぜ。なにより大元の原因はリッちゃんだ」
「リッちゃんも次々と過去が出てきて驚きました……」
「まあリッちゃんらしくていいさ」
それから他愛もない話をアタシ達はつづける。
気がつけばエリーもアタシの髪を撫でていた。
互いの話が途切れた一瞬、エリーが額をアタシの額にそっと当てる。
「うふふ。熱がありますね? 風邪ですか?」
「……ああ、いつも熱を上げてるからな」
「それはいけません、寒くすると大変ですからね。明日に備えて体を温めましょう」
ふふっ、そうだな。
明日も大変だ。
元気出さねえとな。
アタシはエリーの背中に手を回すと、明日に備えて眠りについた。
これで第六部は終了となります。
お盆中は家庭の事情でいろいろと忙しくなりますので、21日ごろから再開を予定しております。