エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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第七章 魔族砦攻略編
第89話 試合前


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翌日。

館で休んだアタシ達は訓練所に来ている。

朝に獣っ娘達にも一緒についてくるか聞いたが、どうやら料理店巡りをしたいらしい。

ロリコン宰相の付き添いで。

 

ロリコン宰相は不安要素だが、ああいう悪い大人と付き合うのも経験だからな。

しっかりおねだりして財布の中身を空っぽにするよう伝えておいた。

 

ロリコンと言う名前の財布から甘えテクでしっかり有り金を巻き上げるんだぞ。

 

 

「おはよう! マリーちゃん達はしっかり眠れた?」

「ああ、あったかいベッドでゆっくり眠れたぜ」

 

ポリーナが元気に挨拶をしてくる。

こちらもリッちゃんやエリーと共に挨拶を返した。

 

「色々とゴタゴタに巻き込まれちまったが、やっと護衛の任務に移れそうだ。遅れちまったが支障はないか?」

「ふむふむ。確かに遅れたのでいささか厄介。しかしのしかし、さほどの問題はなし」

「時間は、まだ……ある程度余裕、ある……、だから大丈夫……」

 

地味子と細目が詳しく話をするところによると、毎年の調査の結果、攻撃に狙い目となる時期があるらしい。

 

それまでに勇者ちゃんことリュクシーちゃんの戦闘技術も高めたいそうだ。

 

「でも戦ってばかりだとリュクシーちゃんも大変だと思ってね、気晴らしにカジノを勧めたのよ」

 

実際には気晴らしどころか、神経を張り詰めさせた上に金を散らして……金以外に大事なものも散らしかけてたが深くは追求しないでおこう。

 

「ところでそろそろ任務について教えてくれないか?」

「本来なら宰相様が説明してくれる予定だったんだけどねえ。どうしても外せない用事があるらしくて、今日は来れないんだってさ」

「外せない用事ねえ……」

 

獣っ娘と遊びに行くほうが勇者の任務より大事か。

あのロリコン野郎、仕事ほっぽりだして遊びにいくとか意識が足りねえ、なめてんな。

アタシ達の生活を豊かにするためにもっと国のために働いて過労死しろ。

 

「ま、宰相さんがいなくても私達だけで説明するから大丈夫。そこは安心しててよ」

「宰相は責任者の肩書をつけただけなのです。私を強化するプランも含めて『ラストダンサー』がやってくれてるから安心なのですよ」

 

宰相はあくまでも責任者で実行するアタシ等は別ってことか。

ふつう、宰相クラスの肩書なら責任者には本人じゃなくて育てている後進なするもんだが。

 

勇者育成というポジションの特異性かね。

 

「状況を説明するね。まず勇者ことリュクシーちゃんは魔王討伐のため訓練を積んでいるわ。最近は魔族がヤンチャしたから、相手の砦内部……敵陣に殴り込んで舐めてるとぶっ潰すぞーって事をやりたいの。ここまでは大丈夫?」

「ああ、前に説明を受けてたとおりだな。随分と俗っぽい理由だが分かるぜ。だが勇者ってのは秘密兵器としての扱いじゃないのか?」

 

勇者ってのは本来魔王のところに単身忍び込んで心臓に刃を突き立てる役割のはずだ。

 

おとぎ話に倣った勇者という役職だが実際にはただの魔王専用暗殺者だな。成功率低めの。

だからこそ表の場に勇者という存在をお披露目するなんてのは趣旨が変わってくる。

 

「魔王は、代替わり……する。力は、強大でも、振るわない……振るえない理由、あるはず。だったら力を、無理やり使わ、せる……。消耗、狙い」

 

どもりながら答えてくれたのは地味子だ。

確かに魔王が直接力をふるうなんてのはあまり聞かないな。

おとぎ話でも奥にドンと構えて、追い詰められた時だけしぶしぶ力を発動してる感じだ。

 

「つまり、今回から勇者ちゃんは殴り込んで制圧していくヒーローって事だね。何回か攻めて魔王を引きずり出して力の秘密を暴けば上々かな?」

「要するに少数精鋭の遊撃部隊って事か」

 

要はゲリラ戦だな。

ある意味、秘密を探り出す事が本当の任務だ。

 

しかしこの重要なポジションを冒険者にやらせるって事は……最悪トカゲの尻尾切りもありうるな。

失敗しないように気をつけないと。

 

「あくまのあくまでも戦闘は勇者メイン。勇者が存分に戦える環境を作って暴れてもらい、勇者を回収して帰還するのが拙者達の役目である」

「勇者の回収、失敗すると……勇者は自決、必要」

 

その言葉を聞いてアタシ達に一瞬張り詰めた空気が漂う。

……情報を漏らさないためとはいえ、勇者ってのはキツいな。

 

「そんな、リューちゃんはそれでいいの?」

「ふふふ、私は大丈夫なのです。リッちゃんや他の皆を信じているのです。一度はカジノから救ってくれたから命を預けるのですよ」

 

リッちゃんが心配そうに訪ねるが、元気にリュクシーは笑い飛ばしている。

いつのまに愛称呼びするくらい仲良くなったんだ。

 

何はともあれ、やられそうなら全力で救い出さねーとな。

 

「案ずるなかれ。拙者のスキルで回収し移動させるのみ。それだけで事足りる」

「そうだね、ストルスのスキルはこういうのにうってつけだよ。マリーちゃんは万が一に備えてくれればいいよー」

 

なるほど。

細目なら一瞬で移動させられる。

暴れるだけ暴れまわった後はスキルでおさらばするってわけか。

やられる方は溜まったもんじゃないな。

 

「ここで気の気をやらねばならぬのが直属の魔王軍戦闘部隊。辺境伯と一進一退の攻防を繰り広げている。私もまだ戦った事はないが、凄腕がいるとは聞いている」

「その魔王軍の戦闘部隊に勇者ちゃんがドカンと重い一撃を食らわせるのが目的だよ」

「王国は……あわよくば、領地を奪い、たい。それは、勇者……次第」

 

兵士ねえ……。

アタシ達が作戦を実行した後に何食わぬ顔して便乗するってわけか。

なんだかんだ言っても今回は戦争の駒だな。

 

まあいいさ。

いい加減魔族の奴らにはお返しをしたいと思ってたからな。

 

「厄介な依頼だな。アタシ達は直接戦闘に関わらないとはいえ、万が一にも顔バレするようなら報復されてしまいそうだ」

「でも私達『ラストダンサー』も護衛するし、案外直接の戦闘には関わらないかもだよ?」

「……ありえねえな」

 

アタシたちに限って、そんな都合のいいことがあるか。

 

コッチだって学んでるんだ。

経験則から言って確実に強いやつとぶつかるに決まってる。

 

「辺境伯の領地まで距離があるが馬車を使うのか?」

「こちらにも秘策の秘策あり。王都のとある秘された場所に魔王が千年前に作った隠し通路がある。今では失われた伝説の空間魔法で創られしその通路。それを使えば辺境伯領地までひとっ飛び」

 

それを聞いたリッちゃんがぽんと手をつく。

 

「ああ! 昔作った試作品だね。あれまだ使えるんだ、すごい!」

「……一応聞くが心当たりはあるのか?」

「うん! 今作ってる奴みたいに複雑な機能はないけど……、作りはシンプルだから魔力を注ぐだけで維持できるはずだよ」

 

さらに話を詳しく聞いてみる。

今でいう魔族領で探索をしていた頃、中継地点として作ったポータルがあったとのことだ。

 

通す人を選別するようなオプション的な機能は付いておらず、定期的に魔力を注がないと自然と壊れてしまうようだが、魔力を注ぎさえすればかなり長持ちするらしい。

 

「もう全部壊れてると思っていたのに、残ってるなんて嬉しいね」

「魔王……。裁判の話、聞いた、ときは……まさかと思った……けど」

「ジーニィちゃん、その話はそこまでにしよっか。裁きはくだって特別奉仕だっけ? それも終わったみたいだから今の『エリーマリー』は罪を償ったキレイな体だよ」

「そう、だね。特別……奉仕……えっち」

 

地味子め、頬を染めるな。

お前が想像しているような事は起きてねえよ。

ちょっと王様と写真を撮っただけだ。

 

「いい加減に話を戻すぜ。殴り込むのは分かった、次はどうする?」

「そこからは拙者が担当する。最前線には兵士、傭兵部隊、冒険者が混在する宿場町……通称開拓村がある。そこを拠点として近くの敵陣まで移動、拙者のスキルで勇者殿を送り込み暴れてもらう」

 

細目は拾った小石を転移させながらそう伝える。

 

「回収もさっき言ったとおりストルスがやるよー。私達は行きと帰りで勇者ちゃんが消耗しないように護りつつ、少し後ろで場を固めて迅速に逃げられる環境づくりだね」

「奇襲と撤退の対策要員ってわけか」

「そんなとこー。何か質問ある?」

「前に言っていたな。勇者の不安要因ってのは何だ?」

 

そこまで作戦建てして準備できているならもう万全だろう。

不安要因なんてないはずだが……。

 

それに答えたのは勇者ちゃんだ。

 

「それは私が使うスキルの副作用によるものなのです。説明するより体験して貰ったほうがいいのですよ。実際にちょっと模擬試合をするのです」

「構わねえぜ。アタシが戦えばいいのか?」

「いえ三人で来て欲しいのです。その方が分かりやすいのですよ」

 

ほう、アタシ達相手に三対一とはいい根性だ。

それだけ自信があるのか?

 

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