エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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第112話 襲撃

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「あらあら、せっかく楽しんでたのにごめんなさい。今日はここまでと言うことで」

「ああ、ちょうど体も暖まってるし手伝うぜ」

「客人に手伝ってもらうのも……。娘たちをお願いしますね」

「ええっ! 私たちも一緒に……。行っちゃった」

 

母リラはルルリラとウルルを渡すと、有無を言わさず駆け出して行った。 

 

ふう、振り返ってみれば中々に楽しかったな。

魔法を使わず純粋に肉体だけで戦うのもいいもんだ。

 

「まったく楽しんでたのに野暮な奴もいるもんだな。あの強さなら問題ないと思うがせっかくだから……どうしたエリー?」

「……別になんでもないですよ。クルルさんと楽しそうだなと思っただけです」

 

なんかエリーがふくれっ面をしている。

なんでヤキモチ焼いてんだ?

まあ可愛いからいいや。

抱きついて耳たぶをぷにぷにしとこう。

 

「悪かったな。許せ」

「んっ……。もう、しょうがないですね」

 

耳たぶをぷにぷにしてると機嫌を直してくれた。

後でお詫びにマッサージしてやるか。

 

「お楽しみの最中悪いけど、里のことが気になるから手伝って欲しいじゃんよ」

「そうですよ。こんなのは初めてです」

 

ん? そうなのか?

さっきみたいに獣が紛れ込んできたとかじゃないのか。

 

「……それなら確かに気になるな。ちょっと行ってみるか」

 

その時、別の方向から爆発音が聞こえた。

 

「なんだ?」

「あそこは……ララの里の方向です!」

「! マリー姉。ちょっと行ってくるじゃんよ!」

「待て、アタシも行く」

 

ちびっ子たちを頼まれているからな。

 

 

アタシが爆発音のした場所にたどり着くと、巨大な蜂が空を飛んでいた。サイズは人ほどもある。

爆音はコイツの仕業か?

にしてはなんか変な気配だ。魔物の攻撃性じゃないような……。

 

「何だコイツ? 魔物の匂いじゃないじゃんよ!?」

 

ウルルが混乱している。

という事はやはり普通の野生生物なのか?

 

「ララの皆さん! だいじょーぶですか?」

「おう、コッチは無事だ! 子供たちを隠してるから出られない! お前たちも逃げてくれ!」

 

アチコチから反響するような声が聞こえる。

微妙に位置を把握するのが難しいが……隠れるスキルかなんかを使ってるんだろうな。

 

アタシの存在に気がついた蜂が顎をカチカチと鳴らしながらこちらへ飛んでくる。

 

「さっさと終わらせるぞ。ファイアローズ」

 

炎を直撃させると、簡単に燃え上がり崩れていく。

やけに脆いな。やはり魔物じゃないのか、

 

「すげー。一発かよ。やっぱり魔物だったじゃん?」

「……いや、普通の蜂だな。何故か大きくなってるがそれ以外は普通の蜂と変わらない」

 

むしろ普通の蜂より脆いかもしれない。

……なんでこんな大きな蜂がいるんだ?

それにさっきの爆発音はコイツじゃないな。

コイツは刺すくらいしかできないはずだ。

だとすると――。

 

「ウルル! 危ないぞ!」

 

フードを被った黒い影がウルルを目掛けて飛び込んで来た。

アタシは慌ててウルルを突き飛ばす。

黒い影が振るった武器はウルルには当たらずアタシの腕を傷つけるだけで終わった。

 

慌ててエリーが回復をかけてくれる。

フードの下には入れ墨の様な模様が描かれた顔が覗いている。

……虫みたいな顔に目が四つ、腕も四つある。

 

「何だてめえ? 魔族か?」

「お前人間か。何故人間がこんなところにいる?」

「質問しているのはこっちだ」

「まあいい。この毒は人間にも効く。お前はじきに死ぬ」

 

男はアタシを無視してほかの奴らへと視線を向ける。

質問に答える気はないのか。

 

「てめえアタシを無視するとはいい度胸だ……。くっ!」

 

傷がついたところから力が抜ける。

クソッ、毒が回るのが早いな。

 

筋肉を弛緩させるタイプの毒か。

戦闘中に食らいたくない毒の一つだ。

 

急いで肩付近を縛って水魔法で血を抜いた。

 

「……ほう。貴様、戦いなれているな」

「ちょっとは見直したかクソ野郎」

 

ちっ、駄目だ。

しばらく片手は使えないな。

 

「私は魔王軍の今回は我らの障害となりそうな獣共を殺しに来た。そのための手駒も揃えてある」

 

そう言うと懐から小さな瓶を取り出した。

中に入っているのは……蜂の巣のミニチュアか?

……違う、本物だ。

 

「この瓶には我ら魔王軍の使い手により、小さくした蜂どもの巣が入っている」

 

蓋を開けると、数匹の蜂が飛び出し段々と大きくなってくる。

……先ほどと同じくらいのサイズまでデカくなりやがった。

 

これは魔法じゃないな……。

 

「てめえのスキルか?」

「否。この使い手は魔王軍本部にいる」

 

つまり、コイツは瓶を持ってきただけと。

遠くでも効果が発動するとか厄介なスキル持ちがいたもんだ。

 

「元より魔王様はこの土地を懸念していた。敵にもならず、味方にもならずのこの土地をな。今回は魔王様が珍しく攻めの姿勢を取る以上、服従か死かを迫るのみ」

 

野郎は武器を構える。

フードの下から出てきたのは目と同じで四本の腕だ。

カッコつけてるがたいして強くなさそうだし、さっさと片付けて――。

 

「マリー姉さんはやらせません!」

「そうじゃんよ。俺たちの地元を荒らされて黙ってられるわけねーじゃんよ」

 

ウルルとルルリラがアタシを庇うように前へ出てきた。

おお……。立派になったなあ。

育てたかいがあるってもんだ。

 

この魔族を瞬殺しても二人に悪いから黙って引っ込んでよう。

 

「……ほう。人質が向こうからやってくるとはな。手間が省けた」

「てめえ! 俺っちの里を滅茶苦茶にしやがって! 覚悟しろよ!」

「そうですよ! 【ドロリンネトネトベットベト!】〈ウォーターボール〉」

 

ルルリラが魔法を唱えると水の玉が相手に向かって飛んでいく。

 

「ふん。くだらぬ……、むっ!?」

「これでその瓶は開けませんよ!」

 

四つ目野郎が腕で払おうとして弾くと、水球が崩れて飛び散り四つ目の体にかかる。

かかった液体はどうやら粘性があるようだな。

瓶の蓋にもかかっているから簡単には開かないだろう。

 

ただの水の玉だと思って甘く見たな。

ルルリラのナイスアタックだ。

 

「むう……子供がふざけた真似を!」

「俺を無視するんじゃにゃ!」

 

いつの間にかモフモフ度を上げたウルルが近くまで詰め寄っている。

 

鋭く変化した爪で思い切り敵を切り裂くと、魔族の体から血が溢れた。

 

「おのれ! 『ア爆ク者』!」

「うわっ!?」

「きゃっ!」

 

四つ目野郎を中心に周囲が爆発する。

ウルルとルルリラは……無事なようだな。

大きな怪我もないようだ。

 

「貴様等……舐めた真似をしたな……」

 

四つ目野郎はいつの間にか四本の腕にそれぞれ道具を構えている。

下の腕で剣を両手持ちに、上の腕で盾を片手にそれぞれ構えているな。

 

魔道具かスキルで隠し持ってたのか。

こりゃ獣っ娘にはちょっと荷が重そうだ。

 

「お前ら良くやったな。アタシが変わって――」

「一回飛ばされただけでまだまだじゃんよ。マリー姉はもう少し休んでるんじゃん?」

「そうですよ! 私たち怒ってるんです! 里をこんな風にしたこの人に!」

 

ふむ……。

本来ならアタシが叩き潰したのが確実で早いんだが……

どうしたもんか。

そこでエリーが優しく語りかけてくる。

 

「マリー、子供の成長を止めてはいけませんよ」

「……そうだな、お前ら本当にヤバくなったら手を出すからそれまでに決めろよ」

「おう!」

「はいっ!」

「下らない茶番は終わりか……? 行くぞ」

 

四つ目が武器を構える。

 

「ガルルッ! いくにゃあ!」

「【ドクドクズキズキ、グッチャグチャ!】〈ウォーターランス〉」

 

ルルリラが水の槍を放ち、ウルルが突撃する。

 

「甘いぞガキども」

 

四つ目は盾で水の槍を弾くと、ウルルに向かって両手剣を振り下ろした。

それを慌ててジャンプして避けるうるる。

 

「うわっ! 危ないにゃんよ!」

「ほう、ギリギリでかわしたか。だがこれはどうだ?」

 

四つ目は空中に浮いて身動きが取れないウルルを盾で思いっきり殴りつけてきた。

盾は爆発してウルルを吹き飛ばす。

 

「ふぎゃああ!」

「ウルル! 良くも! 【ぷるぷるネバネバぷーるぷる】〈ウォーターボール〉」

「小癪な……」

 

ルルリラは魔法で牽制をしてウルルへの追撃を妨害する。

魔法は当然のように防がれたが、ウルルは追撃されずに逃げる事ができたようだな。

 

「ウルル、怪我は大丈夫!?」

「助かったじゃんよ……。あんがとなルルリラ!」

「さて、そろそろ雑談も終わらせよう」

 

四つ目は距離を取った二人に対し詰め寄ってくる。

このまま押し切るつもりか。

 

「ウルル、アレ試そっか」

「アレ? 未完成だけど……このままだとやばいし、やるにゃんよ!」

 

ん? 何か魔法を詠唱し始めたぞ。

何をするつもりだ?

 

「えーっと……【力は祖より受け継がれし者。毛皮は氏族の誇り、敵を倒すため我が力を高めん】〈筋力強化〉」

「【スパスパカチカチペットペト】〈ウォーターカッター〉」

 

ウルルは魔法を唱えて身体強化を施す。

そこでルルリラは水の刃を生み出すとウルルに向けて放った。

その刃をウルルは両手で受け止める。

するとウルルの両手に水の刃が張り付いた状態となった。

……なるほど、爪の刃か。

 

「痛たっ! ちょっと切ったにゃん……」

「でも成功だね! ウルル! やっちゃって!」

「任せるにゃ!」

「ふん、小賢しい真似を……」

 

四つ目は剣を振り下ろす。

ウルルは先程のように避けず、そのまま片方の水の刃で受け止めた。

そしてそのまま受け流すようにしながらもう片方にある水の爪で斬りかかる。

 

「無駄だ。俺には盾がある」

「それはもう使えないよ!」

「何を……。馬鹿なっ!」

 

ウルルは水の爪で盾ごと切り裂いていく。

慌てて回避しようとする四つ目だが、かわしきれずそのまま腕を切り裂かれた。

なんだそりゃ? すげえ威力……。いや違うな。

盾になにか細工をしたのか?

 

「さっき私の魔法で水を酸っぽく変えたの、気が付かなかった?」

「おのれ、子供が舐めたマネを……」

「残念だけどもう懐に入り込んだじゃんよ?」

「何!? 馬鹿な! いつの間に……」

 

気がつけばウルルは敵の懐に飛び込んでいた。体からはバチバチと音がする。

なんだ? 電気を帯びているのか?

 

「これが俺のスキル『雷負ライン』じゃん。まだ覚えたてでうまく使えねーけど、体内から電気を送り込んでやるじゃんよ!」

「マズい! 『ア爆ク――』があああっ!」

 

雷が水の刃を通じて敵を焦がす。

四つ目野郎はスキルを発動させることなく気絶した。

 

「へへっ、懐に入られたら細かい事考えずに殴り倒すもんだぜ。驚いて固まってたら世話ねーじゃんよ」

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