エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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第117話 檄

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「お久しぶりです。最近は酒場に顔を出せずすいません」

「女将さんじゃねえか。どうしてこっちにいるんだ? 戦場だぞ?」

「何言ってるんだい、戦場だからここに来たんじゃないか。今でこそ酒場を切り盛りしてるけど私はね、元B級冒険者だよ」

 

マジかよ。知らなかった。

話を聞くと若い頃はおやっさんと冒険者仲間だったらしい。

 

おやっさんに馴れ初め含めて色々聞こうとしたが、仕事があるという事で別の場所に行ってしまった。

……さては照れてんな。

 

世の中アタシの知らないことがたくさんあるもんだ。

 

「なんにせよ、今回は街の危機だからね。時と場合によっちゃアタシ達も武器を持つのさ」

「……大丈夫か? 死ぬなよ」

 

アタシが心配するがワハハと笑い飛ばされた。

 

「まったく! 縁起でもないねアンタは! こういう時は仕事が終わったら飯を食べに行きますくらい言わないのかい?」

「アタシは戦場で危機感が薄れる事は言わねえんだ」

 

何よりうっかり死なれると責任を感じるからな。

ま、元B級冒険者なら大丈夫だと思うけど。

 

「相変わらずだねえ。まあこんなところだとアンタみたいなのが生き残るんだろうさ」

 

女将さんはしょうがないねえ、と言って去っていった。

なんでもこの大部隊の食事作りも手伝っているらしい。

 

そこも切り盛りしてるのかよ。

 

しかし見知った顔が多いな。

いつの間にアタシはこんなに知り合いが増えてんだ?

 

「やあマリー。君も防衛かい?」

「誰だ? 悪いけどイケメンに知り合いは居ないんだ。ナンパならコリンに言いつけるぞ」

「しばらく会わないと他人のフリをするのは何故なのかな?」

 

続けて声をかけてきたのは『幌馬車』のジクアだ。

てっきり嫁さんに付き添いになるのかと思ってたが……。

 

「お前もこの戦いに参加するのか?」

「そうだよ。予定通りなら後方支援だけの予定だったんだけど……、生まれてくる子供のためにも頑張らないとね」

「そうか! じゃあ戦いから生きて帰らないとな! そして大きくなった子供に武勇伝を聞かせるんだろ?」

「うん、その通りだけど……悪意を感じるのはなぜかな?」

「マリー……さっきと言ってることが真逆ですが……」

 

エリーが軽く引いている。

別に死んで欲しいとか思ってないから安心するんだ。

とりあえずフォローしとくか。

 

「もし万が一があった場合はコリンと子供の事は任せろ。伝えてやるさ、お前の父親は顔が良かったって……」

「顔だけじゃなくて他にもあるよね? せめて勇敢だったとか伝えてくれないかな?」

 

悪いな。正直イケメンには興味ないんだ。

コリンには買い物含めて世話になってるがお前の事は知らん。

ただ子供のために馬車馬のように働いてもらう必要があるからな。

頑張って生き延びてくれ。

 

「おう、お前ら。集まってくれた事に感謝するぞ。戦う前に少しだけ話を聞いていけ」

 

いつの間にか設置された壇上におやっさんが立っている。

音魔法で声を大きくしているようだ。

どうやら発破をかけるようだな。

おやっさんは大きく息を吸い込むと演説を開始した。

 

「良いかお前ら! 個の能力なら俺達は互角以上だ! だが組織で来てる魔族はスキルの支援もあって厄介だ! 無茶はせずに援軍が来るまでひたすら粘るぞ!」

 

爆裂魔法が爆発したような大声だ。

さすがおやっさんだ。

 

「繰り返すが個の能力は互角以上だ! 俺達は今回剣となって敵を切る! 兵士は盾だ! 必要に応じて街に戻って補給しろ! 俺達を舐め腐った魔族に冒険者の意地を見せてやれ!」

「「ウオオオオオォォォッ!!!!」」

 

おやっさんの激励に反発するように冒険者達が叫ぶ。

 

他の職員が配置やらを細々と説明をしているが誰も聞いていないようだ。

……あとでおやっさんが色々と動いてフォローするんだろうなあ。

 

おや、メイが壇上に立ったな。

さっきから姿を見ないと思ったら……何をするんだ?

 

「皆様。この戦いから生き残った暁には、マリーやエリーの姿を模ったプチフィギュアを差し上げます」

 

おい、何を言って――。

 

「ウオオオオォォアァァァーーー!!!!!!」

「来た! このために俺は義勇兵として参加したんだ!」

「お兄ちゃんの名にかけて守ってあげるからね……」

 

激しい歓声が飛ぶ。

さっきよりも十倍ぐらいでかい声だな。

騒いでるのは一部の人間だけだろうに。

これが声の大きい一般人ってやつか。

 

「さあ皆様。『エリーマリー』ファンクラブ親衛隊として鍛え上げたその力で、ファンとしての意地を見せましょう!」

「流石ファンクラブ会員No1!」

「おはようからおやすみまでを見守る俺らの代弁者!」

「メイさん! 俺はアンタについてくぜ!」

 

おい、ちょっと待て。

ツッコミどころが多すぎるんだが、とりあえず会員No1ってお前かよ。

 

お前正確にはアタシ達じゃなくてリッちゃんのファンだろうが。

毎日リッちゃんの寝顔をニヤニヤ眺めているのを見てるぞ。

 

それよりもアタシ達のファンをちゃんと大事に扱ってる奴を……。

 

…………。

 

やっぱりいいや。

変に国家権力とか使ってきそうな奴がいるし。

 

むしろリッちゃん一筋の狂信者が上に立ってたほうが中立ぶった奴よりまとまる気がする。

 

「そういえばさっき『エリーマリー』のメンバーを見かけたぞ」

「なに!? どこでだ!」

「見つけて守らねば……」

「そして魔族に寝取られてるボロボロのマリーちゃんを眺めながら……はぁはぁ」

 

なんか騒がしい。

アタシ達はお前らに守られるほど弱くねーよ。

 

あとお前らの中にいる脳が破壊されてる奴。

この戦いが終わって生きてたら脳みそを綺麗に掃除してやるから期待しててくれよな。

 

 

おっと、会員がこっちに近づいてきた。

姿が見つかるとマズイな。そっと離脱するか。

 

「おまたせー」

「お、リッちゃんお疲れさま。どうだ?」

「準備はバッチリだよ」

「そうか、じゃあアタシ達も準備をしねえとな」

 

リッちゃんが宰相のトコから帰ってきた。

今回のアタシ達は奇襲と防衛を状況に合わせて行う遊撃隊だ。

他の奴らと組んで戦うこともあるかもしれないが、基本はアタシ達だけで動く事になる。

 

普通の部隊なら簡単に転戦できないが、アタシ達はリッちゃんワープでひとっ飛びだからな。

戦い方的にも自由に動いたほうが色々と都合がいい。

 

そのために偵察隊をつぶしながら簡易ポータルをたっぷり設置しておいたんだ。

 

「第一偵察隊より伝達! 魔王軍第一波! 第一陣通過! 本拠地到達まで推定一日!」

 

黄色い鳥が声を上げながら空から降りてくる。

……魔法による伝令だな。

第一陣って事は……アタシ達が簡易ポータルを置いてた場所は通過したって事か。

 

鳥の声を聞くと、冒険者達の喧騒がすっと引いていき、場に緊張と沈黙が走る。

ついに来るか。

 

「よし! これから喧嘩だ! 前もって配置を伝えているが、分からない奴は聞きに来い! 通信の魔導具を用意したから使え! 現地ではチームごとに動いて連携しろ!」

 

おやっさんが大声を上げて指揮をとる。

通信用魔導具はエリーに渡しておいた。

近くの味方限定で通信ができる奴らしい。

 

さて、アタシ達も動きますか。

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