エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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エピローグ 日常

空間の歪みが元に戻るとチビっ子魔族や勇者達が駆け寄ってくる。

時間も元に戻ったようだ。

アタシ達はあの空間から戻ってこれたんだな。

 

 

「マリー姉! 魔王を倒したじゃんよ!」

「凄いのです! ……でも何故か一瞬で怪我が増えたように見えるのですよ?」

「アタシの事は気にするな」

 

一応、空間が完全に消えるまでタイムラグがあったから三人にスキルを使って回復したが、アタシまでは時間が足りなかった。

 

勇者ちゃん達は真の魔王の存在に気がついてすらいないようだ。

……おとぎ話の相手と戦って勝ったとか、誰かに言っても信じてもらえそうにねえな。

 

「あら? その子供はどなたですの」

「ん? ああ……。リッちゃんの隠し子だ」

「え!? えええ!?」

 

アタシのセリフに周りが騒然となる。

……なんでリッちゃんも驚いてんだ。

 

「ま、まさか本当に……?」

「うそ、相手はだれ……?」

「お、お母様……?」

 

近くにいたのが獣人と吸血鬼達ってのも不味かったか。

創造主だもんな。

 

アタシが言った事だけど予想以上に大問題になりそうだから早くリッちゃんは訂正してくれ。

 

お、メイも目が覚めて動けるようになったのかこっちに来たな。

よし、訂正を……。

 

「……ご主人様。私というものがありながらこのような隠し子を作っていたなんて」

「ええ!? 隠してないよ! この子は正真正銘ウチの子です!」

 

……周りが一気に騒がしくなった。

おいおい、どうすんだコレ?

 

「な、名前! 名前は何ですの!?」

「名前? それはファウ……。ううん、この子はファル! 名前はファルでファーちゃんだよ!」

「……っ! そうですか。お姉……ファーちゃんですね。随分と小さくなられて。ふふっ。可愛いものです」

 

名前を告げた事でメイも色々と察したようだ。

吸血鬼やエルフ達の喧騒は収まらないが……。

説明責任はリッちゃんに移ったしまあいいか。

 

やがて、他の冒険者や兵士達も集まってくる。

 

「よくぞ魔王を倒した。王国を代表して礼を言うぞ。魔族たちも無理やり戦わされていた者は次々に投降しているぞい」

 

宰相のおっさんがいつの間にか近くに来ていた。

……コイツらが言うのは魔王デルラの事だな。

 

アタシ達が本当に戦ったのは神話の片隅から這い出てきた真の魔王だが……。

 

まあ良いか。

説明するのも面倒だ。

 

アタシはエリーとリッちゃんに支えられて街へ戻る。

街では歓声と共にアタシ達を迎え入れてくれた。

 

「見ろ! マリーだ!」

「あれが勇者と共に魔王を討ちとった冒険者か!」

「はぁ……僕も討ち取られたい」

 

「よっしゃ! 酒だよ酒!」

「勝利を祝って英雄『エリーマリー』に!」

「生ぎでだんだね…… お兄ちゃん、嬉じぐで涙が……」

 

たくさんの歓声がアタシ達を包み込んでくれる。

ああ、やっと実感してきたぜ。

 

アタシ達は勝ったんだな。

 

「マリー。何か挨拶でもした方がいいでしょうか?」

「そうだな……。アタシもボロボロだしな」

 

とりあえず、拳を高くあげてポーズだけしておく。

アタシが腕を上げると、街が歓声で震えた。

 

 

---

 

 

……あの戦いから一ヶ月が経った。

 

そしてアタシ達は――。

 

「おかあさまー!」

「んー、どうしたのかなファーちゃん?」

 

リッちゃんをおかあさまと呼んだのは元ファウストことファルちゃんだ。

ファルちゃんは核が傷ついていたため記憶が完全に戻せなかったらしい。

また肉体に引っ張られる形で精神も幼くなっていたた。

 

だが辛い記憶もある。

無理に戻さずにそのまま新しい記憶をたくさん与えようと言う事になった。

 

「その、おこらないでね? まほうを山にブワァッーってしたら穴があいちゃって……」

 

見ると山にキレイな穴が開いていた。

……やべえな。威力がおかしい。

 

「うわあ! 凄いよファーちゃん! もうあんな魔力放出できるんだね! 混沌の力を得た影響かな! ファーちゃんは凄い!」

「リッちゃん? ちょっと今後の教育方針について話そうか?」

 

まったく、叱るときは叱らないとだめだろうが。

 

「ファルちゃん。力の加減ができないうちはお空に打つと良いですよ」

「わかったー!」

 

エリーがファルちゃんを諭している。

うん、平凡な日常だな。

 

 

王城の奴らもそうだが、他の奴らも色々と忙しいらしい。

 

『オーガキラー』のルビーは前に戦った首なし魔族と仲良くなり、今でも定期的に戦いをしていると聞いた。

 

ギルドも魔族と人間が仲良くできる証としてルビーや獣っ娘の一族を推して行くようだ。

……あいつらは喧嘩が好きなだけで友好とかそう言うのからは遠いと思うけどな。

 

他にも『パンナコッタ』と『ラストダンサー』は男爵領で依頼を請けている。

魔族に領地がボロボロに破壊された名残で色々と仕事が増えているそうだ。

 

勇者ちゃんは一旦王都へ戻った。しばらく様子を見て、次の魔王が出てこなければそのまま冒険者へ転向する事を希望している。

……まあ元凶は倒したし問題ないだろ。

 

おやっさん達や宰相のおっさん達は味方として参戦した魔族っ娘達の対処で忙しそうだ。

なんか今後のことを踏まえて情報面で様々な工作をやっているらしい。

 

チビっ子魔族達も落ち着いたら戻ってくると言ってたが、もう少しは無理だろうな。

ファルちゃんと遊べなくて残念そうにしていた。

まああの超魔力を何とかしないと遊べないけど。

 

「マリー。お待たせしました。」

「お、準備できたか。これからエリーとちょっとでかけてくる。後は適当に頼むぜ」

「またですかマリーさん! A級冒険者になったんですからもっと落ち着いて私を楽にさせて下さい」

 

ポン子がうるさい。

A級だろうとなんだろうと知ったことか。

アタシ達は好きにやるっての。

 

「悪いがポン子、お前が借金を返すまでアタシはお前のお金を搾り取らなきゃならないんだ。死んで楽になるのはちょっと待ってくれ」

「そっちの楽じゃありません! もっと自由を! 週休四日! 一日三時間労働の自由を!」

 

ポン子がなんか言ってる。

寝言は放置するにかぎるな。

 

「そんな事よりアタシ達はこれから出産祝いに行くんだ。後処理は頼んだぞ」

「ちょっとマリーさん!? これから王城へ来るように連絡が……」

 

騒ぐポン子を無視して、アタシ達は支度を整えていく。

 

向かうのはコリンの所だ。

王城なんかよりこれから生まれてくる子供のほうが重要だからな。

 

 

「よう。調子はどうだ」

「あ、マリーちゃんにエリーちゃん! 見てみて。こんなに可愛いんだよ」

 

コリンが赤ん坊を見せてくる。

予定日より早く生まれたが元気らしい。

 

「大きくなったら聞かせてやるよ。お前の父親は顔のいい男だった――」

「いや死んでないからね? ここにいるから」

 

なんだよ。

いたのなら父親ですって額にでも書いとけよ。

間男と間違えてうっかり攻撃したらどうするんだ。

 

 

コリンへ祝いも終えて、アタシ達は館から少し外れた場所にある高い丘の上に来ている。

 

「風が気持ち良いですね……」

「ああ、そうだな……。なあエリー、渡したいものがあるんだ」

 

アタシは指輪を取り出してみせる。

 

「本当はもっと早く渡すつもりだったんだが……。色々と忙しくなって今になっちまった」

「え? それって……」

 

ああ、そうだ。

こういう事はちゃんと伝えとかねえとな。

改めていうと恥ずかしいぜ。

 

顔が赤くなってそうだ。

 

「愛してるぜ、エリー。結婚してくれ」

 

そういって指輪を薬指にはめる。

 

「……私もですよ、マリー。ちょっと目を閉じてもらってもいいですか?」

「ん? なんだ? 別に構わねえが……」

 

目を閉じていると左手の薬指に何かが嵌められる。

目を開けると、アタシの指のサイズに合わせた指輪が嵌められていた。

 

「実は私もマリーに渡そうと思っていたのです。改めて私からも……マリー。愛していますよ。結婚してください」

 

勿論だ。

アタシは返事の代わりに唇を重ねて抱きしめあう。

 

遠くでファーちゃんが撃つ魔法が聞こえる。

まるで祝砲のようだな。

 

「ふふっ私達も子供が欲しいですね」

「ああ、そうだな」

 

エリーにそこまで言われちゃ仕方ない。

近いウチに作る……。

 

あれ? どっちが作ればいいんだ?

 

……まあいいか。

その場の流れで決まるだろ。

 

 

アタシはエリーと、そしてリッちゃん達と共に歩んでいこう。

 

これからも、これまでもな。

 

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