エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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第19話 封印開放

アタシ達は館の裏へ来ていた。

裏には山の上に続く道が一本通っている。

 

(封印は三つに別れています。 一つは既に破壊されましたが、もう一つは山の中腹にある洞窟の奥深くに、もう一つは…… 戻ってきてからお話します)

 

お化けたちは封印には近寄れないらしい。

さらにお化けの本体は主人と一緒に封印されていて、遠くまで動けないんだとか。

まあ近づけるなら既に壊してるだろうな。

 

 

「マリー、良かったんですか? 封印を解く約束をしてしまって」

「まあ悪い奴らには見えなかったし。それに山はどのみち調査で登らなくちゃいけねえさ」

 

封印を解けばお化け達に館から出ていって貰う理由にもなるしな。

 

そもそもどんな奴が封印されてるか分からんが、とんでもない化物なら知らんぷりして領主にすべて押し付けよう。

 

 

アタシたちは山の洞窟があるところまで移動する。

 

 

「あら、久しぶりじゃない。お元気?」

「え!? コリンさん? どうしてここに?」

 

そこには一人で立っているコリンがいた。

あー…… コイツか。

アタシはエリーを庇うように一歩前へ出る。

 

「おう、コリン。この包丁役に立ってるぜ、ありがとな」

「いいわよ、別に」

「そう言えば、この包丁の代金まだ支払ってなかったよな」

「……えぇ、そうね」

「なら今払うぜ」

 

アタシは『魔女の刃』をコイツの腹に突き刺した。

 

「えっ!?」

「落ち着けエリー。コイツは偽モンだ」

 

すると、コリンの姿が溶けていき、両手を広げたより大きな蝶々の死体が姿を見せる。

 

「コイツはC級モンスターのファントムバタフライだ。幻覚を見せて仲違いさせたりするモンスターだな」

「こんなモンスターが……」

「羽は素材で売れるから回収しておくぞ」

 

同士討ちをさせて死体に群がるモンスター。

別名『盗賊の狩人』

外に根城を置く盗賊団の最大の敵だ。

盗賊団を退治しに根城に向かったら、既にコイツラの餌になってたのは冒険者の酒の上での鉄板ネタだ。

 

「質問するとボロを出すから判断はできる。とりあえず質問して見ることだ」

「ああ、それで…… おかしいと思ったんです。コリンさん、悪魔退治の報酬としてこの刃物をくれたはずなのにって」

「悪魔退治の報酬としては安すぎたけどな」

「マリーがゴネて、コリンさん困ってましたね……」

 

実際、悪魔退治の報酬で訳ありナイフ一つじゃ安いからな。

貰えるものは貰っとかねーと。

最終的に化粧品とかアクセサリーまで貰えたんだから良いじゃねーか。

 

「あそこの木のところに女の人が居ますよ」

「ドリアードだな。E級の魔物だ」

 

少し進むと、木の根元で半裸の魔物がボンヤリと座っている。

あいつは男を見ると見境なく攻撃してくるが、女ならある程度会話できる相手だ。

さらに近くまで行かないと敵対対象にならないので、攻撃力は高いがランクは低い。

うまく交渉できればドリアードが育てている果実をもらえたりすることもある。

 

たまに敷地内の植物に住み着いたりするときは危ないので討伐するが、ソレ以外で戦うのはスケベな見習い冒険者の野郎共だけだ。

 

アタシは敵対しない程度にドリアードの所まで近づいていく。

 

「よう、ドリアード。ちょっと聞きたいことがあるんだが」

「……女、の子?」

 

なぜ疑問形なんだ。

どっからどう見ても女の子だろ。

 

「……うん、女の子、だね。なに、かな」

「……まあいい。この辺になにか封印してる遺跡とかないか? アタシ達はそこへ行きたいんだ」

「遺跡……? ある、よ。あっち」

 

指差した方向は少し遠くの崖の方だった。

 

「ありがとな、ちょっくら行ってくるわ」

「バイバイ、男の子の魔法が使える、お姉ちゃん」

 

なんか気になることを言った気がする。

まあいいや。

さっさと向かおう。

 

途中ユニコーンが遠くに見える。

清らかな乙女を見つけるとすり寄ってきて、遊び半分で角で攻撃してくる厄介な魔物だ。

今ここには清らかな乙女であるアタシとエリーしかいない。

戦わざるを得ないだろう。

 

アタシは武器を構える。

……すぐに逃げてしまった。

おかしいな。

 

スキルは昨夜使ったばかりだし、清らかな乙女で間違いないはずだ。

アタシもエリーも心まで清らかだから逃げる理由が無いんだが。

 

まあいい。

今度見かけたら馬刺しだな。

 

 

 

崖の方を探っていると洞窟があった。

岩と生い茂った草の影になっている場所に小さな洞窟が隠れていた。

 

普通だと見つかりそうにない。

森をよく知るドリアードのお陰だな。

 

アタシは中を覗くが、暗くて奥がよく見えない。

 

「任せてください。〈光源〉」

 

エリーの詠唱と共に光の玉が飛び出す。

ふよふよと漂う光の球は私たちの頭上を照らした。

 

エリーはアタシのスキルを使ってから基礎魔法が強化された。

ついでに魔力の消費を多くすれば短縮詠唱ができるようになったらしい。

アタシの時は魔法を唱えてもショボい威力だったのによく分からんな。

男から女になるのと女から男になるのとでは違いがあるんだろうか。

 

洞窟の中には何枚かの鏡があった。

 

「少し調べてみるか。エリー、念のために離れていてくれ」

「わかりました。気をつけてください」

 

私はそっと鏡に手を触れてみる。

すると鏡が煌めいて、気がつくと別の場所へと飛ばされていた。

 

……同じ洞窟の中のようだ。

また数枚の鏡が置いてある。

転移装置のようなものだろうか?

 

うざったいな。

とりあえず地面に絵を描いて目印にする。

……兎の絵でいいか。

 

そしてまた別の鏡を触る。

また転移したので同じく絵を描く。

ループして同じ場所にたどり着けば、猫やリスなど、また別の絵を描いて別の鏡をさわる。

 

これを何度か繰り返し、謎の石碑がある場所に辿り着いた。

これが封印だろうか。

 

石碑に触った瞬間、石碑が砕け散る。

これで封印が解けたのだろうか。

 

再び転移を繰り返し、エリーのいる場所に戻る。

 

「マリー、心配しました。大丈夫でしたか?」

「大丈夫だ。ただの転移装置みたいだ。封印は何もしてないのに壊れた」

「そうですか、良かった ……あっ!」

 

急に何かひらめいたような顔してどうしたんだ。

 

「マリー、あなたに質問です。私のことをどう思っていますか?」

「いきなりどうしたんだ? 言わなくてもわかるだろ」

「いいえ。貴方がファントムバタフライかもしれませんからね、念のための確認です」

 

その質問でファントムバタフライかどうかは分からないだろ。

あとここには魔物は出ないはずだ。多分。

 

おのれエリー。

好きだとか愛してるとか、その手のセリフを言わせようとしているな。

ふふ、その手には乗らないぜ。

 

「そういうエリーこそどうかな。ファントムバタフライじゃないのか? アタシのことどう思ってるんだ?」

 

「大好きですよ、マリー。あなたの寝ている顔も、あなたが敵と戦っているその姿も、夜にほんのり赤い顔をしているあなたも、全部大好きです」

 

真っ直ぐにアタシを見つめながらエリーは言う。

……ヤバイ。

カウンター食らった。

顔が熱い。

 

「……私も、エリーのこと、好きだぞ」

「え? よく聞こえませんでした。こっちを向いて、もう1回お願いします」

「私の負けだ。勘弁してくれ」

「ちなみに、具体的にはどこが好きですか?」

「聞こえてんじゃねーか!」

 

くすくすと笑うエリー。

アタシは完全に負けたみたいだ。

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