エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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第4話 ギルド

朝が来た。

 

近くで用を足し、近くの水場から水を汲んでくる。

……用を足すとき困ったのは墓まで持っていく秘密だ。

 

「わあ、新鮮な木の実ですね!」

 

マルベリーが生えていたので採ってエリーにあげると素直に喜ばれた。

うん、こんな程度で喜んでもらえて嬉しいよ。

そんなこんなで諸々の支度をしてから歩きだし、街に到着したのは昼を少し過ぎた頃だった。

 

「ちょっと君たち、少し止まってくれるかな?」

 

街へ戻ると門番に停められる。

やはりこの服装ではマズかったか。

 

よく見るとこの門番、顔見知り程度には知っている仲だ。

正直に話してもいいが、色々と面倒ごとになりそうだ。

少なくとも酒の肴にされるのは間違いない。

冒険者の面子的にあまり良くない。

 

アタシはマリーに目配せをすると話を作ることにする。

 

「あー、アタシは冒険者をやろうと思ってバレッタ地方からこの街に来たマリーだ。こっちはエリー、村から出る途中にウマがあってな、一緒に冒険者をやる事にした」

「えっと、その格好で……?」

 

だよな。普通に考えてツッコむよな。

 

「あの森が腕試しに良いって聞いていたからゴブリンの首でも土産がてらギルドに持って行こうと思ったんだがな、迷子になって2日ほどさまよってたんだ。エリーの荷物も川に流されてしまうし、しょうがないから二人で服を分けたんだ」

 

門番は訝しむようにこちらを見ている。

少し厳しいか?

 

「うーん、まあ良いや。とりあえず話を通しとくから最初にギルドによって行ってね。入関税持ってる?」

「ああ、一人銅貨八枚だったな」

 

あらかじめ用意してあった銀貨と銅貨を渡して中へ入る。

どうやらバレずに切り抜けられそうだ。

 

「あ! ちょっと待って!」

 

急に呼び止められた。

なんかマズい所でもあっただろうか。

 

「そんな野生児みたいな格好じゃみんなの目の毒だから、これ着ていきなよ」

 

そう言うと、少し古めの上着を二着渡してくる。

夜勤の着替えのようだ。

 

お前……気持ちがわかるぞ。

エリーは美人だから恩を売ってあわよくば……って考えてるんだよな。

ありがたくいただくぜ。

 

「ありがとうございます、門番さん」

 

エリーがニッコリと笑顔でお礼を言う。

おっさんもニンマリ笑顔だ。

良くやったぞエリー、アタシも真似してお礼を言っておくか。

 

「オッサンありがとうな」

 

上目遣いでほんの少しだけ胸を見せるように頭を下げておく。

うん、目線が下に下がった。

 

娼婦のやり方だがどうやら効果があったらしい。

こいつへのお礼は元男であるアタシの胸の谷間で十分だろう。

 

……ちょっと恥ずかしいな。

 

「コホン、えっと、オッサンじゃなくてお兄さんと呼びなさい」

「ありがと、お兄ちゃん!」

「がはっ!」

 

軽く咳をしてごまかしている門番をお兄ちゃん呼びしてやる。

これはサービスだが、かなり効いたようだな。

 

門番は小さくお兄ちゃん……お兄ちゃん……と繰り返している。

 

……新しい扉を開いてしまったらしい。

まあ、これでバレても酒の肴にされる事はないだろう。

最悪の場合は正体をバラして逆にネタにしてやる。

冒険者はメンツが大事だからな、死なばもろともよ。

 

よく状況が分かっていないエリーを引き連れて俺はギルドへと足を運んだ。

 

「エリー、悪いけどしばらくここで待っていて貰えるか」

「わかりました」

 

エリーにはギルドの横に備え付けた酒場で待っていて貰い、俺はいつものおやっさんの所へ向う。

 

「おやっさん。一日ぶりだな。元気だったか? ちょいと困った事になってな」

「誰だお前? ガキの遊び場じゃねえぞ?」

 

おやっさんがギロリと俺を睨みつける。

 

「そっか分かんねえよな。アタシ…… 俺だよ俺」

 

アタシは首にぶら下げているギルドの証明タグを渡した。

それを見たおやっさんの目が大きく開かれる。

 

「お前…… どこでこれを?」

「どこでって、元から俺のだ」

「あの馬鹿野郎…… こんなガキをかばって逝っちまいやがったのか……」

「おやっさん? なんか勘違いしてない? つか話聞けよ」

 

それから誤解を解くのにしばらく時間がかかった。

今はスキルの詳細聞き取りのために特別室に案内されている。

 

「って事はお前がアレクか? ホントに?」

「いや、納品した魔物からお気にいりの娼婦まで全部洗いざらい吐いただろ。なにを疑ってんだよ」

 

「いや、プフッ…… だってよそりゃナニが無くなって帰ってきたらナニを疑うよなあ!」

「こっちは笑い事じゃねーんだよ!」

「いや、プフッ、すまねえ。 しかしこんなユニークなスキルがあるとはなあ! 美少女だぜ?お前」

 

そう言って笑いながら鏡を差し出してくる。

悔しいが確かに美少女だ。しかも俺の好みの。

15、16歳くらいの薄いピンク色の髪。

ショートカットの女の子がプリプリと怒っている。

その姿を見て、鏡の中の女の子がため息をつく。

 

「ムリだな。戻し方が分からん。」

「スキルなんて使いこなせばできない事もできるようになるもんさ。しばらく使い潰して見ると良いぜ」

「とは言ってもな、もうすでに発動してしまっているし…… ん、待てよ」

 

ふと、スキルを再度発動出来るような気がした。

鏡をおやっさんに返すと、試しにもう一度スキルを使って見る。

するとスキルが発動し俺の体格が変わっていくのが分かる。

 

しばらくの間、十秒くらいだろうか。

うずくまってじっとしていると変化が終わったのが分かった。

 

門番から貰った服は程よいサイズになっており、胸の脂肪はなく、筋肉のハリも戻っている。

変化が終わると俺は顔を上げた。

 

俺の顔を見たおやっさんはしばらく固まってしまう。

そんなに体の変化が不気味だっただろうか。

 

しばらくして、やがて我慢できないというように肩を震わせると……

 

「ブワッハッハッハ!!!」

 

大爆笑した。

 

「お前なあ…… 誰だよ?」

おやっさんがニヤニヤしながら鏡を再び渡してくる。

 

鏡の中には十代の若い頃の俺を百倍くらいイケメンにしたような顔が写っていた。

薄いブラウン髪に澄んだブラウンの瞳。

プチ整形を百回くらい成功させてエステに半年くらい通ったらこうなるのではないだろうか。

 

名付けてキレイな俺、女装バージョン。

俺が吹き出すと、鏡の中のイケメン野郎も吹き出す。

 

……ひとしきりおやっさんと爆笑したあと、俺は死にたくなった。

 

「つまり、どうやっても元のお前には戻れない、と」

「ああ、そうだな。ピンク髪の女、そしてキレイな俺だ。この二種類しか変化できない」

 

あのあと何度か試したが駄目だった。

というかもう自分の元の顔がわからなくなってきた。

 

ちなみに今アタシは女の姿だ。

正直男の顔は慣れるまでキツい。

服装もキツい。色んな意味で。

 

「まあいいぜ、とりあえず新しいスキルとして報告しといてやる。レアだから金貨三枚くらいは出るだろ」

 

これからゴブリン達はスキル無しの冒険者達に股間を蹴られ潰され続けるのだろう。合掌。

 

「いやー、笑った笑った。これからも冒険者として頑張ってくれよ、マリーちゃん?」

「ちゃん付けはやめろ。あともう一つ厄介事がある」

「ああん? 今度はなんだ? 魔物にでもなんのか?」

「茶化すな。実は森でだな……」

 

俺はエリーの事を話した。

ふざけていたおやっさんだったが段々と真剣な顔になっていき、魔物寄せの香の話をすると明らかに不機嫌になっている。

おやっさんは、真剣な顔をして口を開いた。

 

「実は昨日、バレッタ伯爵家からの依頼があった」

 

曰く、妾の子であるエリス・バレッタを騙る者が現れた。

本人は神官として身分を捨てて神殿にて訓練後、魔王討伐隊のメンバー選抜試験を受ける予定だったのだが、途中で魔物に襲われ亡くなってしまった。

 

一応神殿に入る事で伯爵家と無関係になっているとはいえ、名前を騙っている者がいたら故人の名誉のためにも捕まえて欲しいとの事だ。

 

これには長女から四女まで連盟で名前が書かれているという。

 

「最悪だな。徹底している。クソみたいな手際の良さだ、帰ったら捕まるのか」

「ああ。伯爵家の連名なんざ簡単にはひっくり返せねえ、少なくとも本名を名乗らせないようにしないとないけねえな」

「くそったれめ」

「とりあえず、エリーとやらの扱いは会ってから判断するさ…… アレクおめぇ、最近厄介事の神様に愛されてるんじゃねぇのか?」

 

俺は答える代わりにため息を一つついて、

肩をすくめて見せた。

 

酒場へ来てみると、なにやら騒がしい。

トラブルでもあったのか?

 

「エリーちゃん! エール三杯!」

「エリーちゃん! 俺も一杯チョーダイ!」

「さっき作ってくれた飯、また作ってくれ〜」

「はいはーい、ちょっと待っててくださいねー」

 

「おや、アンタがマリーちゃんかい? エリーちゃんと働き口を探してるっていう」

「え? いや違う。違わないけど違う。なるのは冒険者の方だ」

 

「はぁ? あんないいコを冒険者に? バカ言うんじゃないよ」

 

酒場の女将に呆れた顔をされてしまう。

 

「おいこりゃどういう事だ?」

 

おやっさんが袖を引っ張って質問してくるが、アタシにもなにがなんだか分からない。

 

女将から詳しく話を聞く。

なんでも最初は冒険者が絡みにいったことがきっかけだったらしい。

 

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