エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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第34話 顔合わせ

「うう……、牛さんの治療費と修理費で赤字なんよ」

「安心するのだサファイ! 姉ちゃんが魔物を狩り尽くしてやる!」

「魔物じゃないのを狩ろうとしたからこうなってるんよ……」

 

筋肉バカ二人が騒々しい。

少し距離をとるか。

仲間だと思われたくない。

 

「その、うちのメンバーが迷惑お掛けしてすみません」

 

『オーガキラー』のメンバーらしき人物から声をかけられた。

二人ほどではないがやはり、ガタイが良い。

中性的な顔だが、女……だよな?

 

「そういえば自己紹介がまだでした。私ラズリーと申します。『オーガキラー』に入ってからまだ日が浅い新参者ですが、よろしくお願いします」

 

何だコイツ……?

うそだろ、まさか……。

 

「お前、まさか常識人なのか……?」

「何が常識かは分かりかねますが、人に迷惑をかけぬようにということは気をつけているつもりです」

 

やべえ、こいつマトモだぞ。

こんなやつが『オーガキラー』にいて、心壊さずにいられるのか……?

 

「お前、やっていけてるのか……?」

「ご心配ありがとうございます。このチームは入団条件が一人でオーガを倒す事という厳しい条件でしたので、苦労こそしておりますが、なんとかやっております」

 

オーガって確かC級の魔物だよな。

基本的にチームで狩るもんだ。

そいつを一人で狩るのが試験とか、頭おかしい奴らだ。

 

「まああんたが常識人でよかったよ。よろしく頼む」

「はい、こちらこそ。よろしくお願いいたしますマリー様」

「ところで他のメンバーはどうしたんだ?」

 

すると、彼女?の目の色が変わる。

 

「他のメンバー……ですか?」

「そうだ。他に二、三人いただろ」

「そのような方々はおりません」

「いやいただろ、前の祭りの時に……」

 

なんか目が血走ってきてるが大丈夫か?

 

「……もしかしてルビー様を悪し様に言った下衆どもの話をしているのでしょうか!?」

「は?」

 

「いいですか? ルビー様は至高にて偉大なる力をその身に秘めた御方でございます。筋肉で競り負けている分際でルビー様の事を悪しざま様に言う資格などありません! ましてや先の敗北は事実上の魔法戦! たかが一度の敗北でルビー様の筋肉が問われるはずは無くそれにケチをつけたゲス共は粛正されるべきです!!」

「お、おう……」

 

コイツまさか、いややっぱりあれか?

筋肉姉妹と方向性の違う同類か?

 

「妹のサファイ様と組手をしてる時のなんと美しいことか! 飛び散る汗の匂い! 筋肉の脈動! 私、彼女達を見たいがためこのチームに入ったと言っても過言ではありません!」

 

そうか、そうだよな。

『オーガキラー』のメンバーだもんな。

最初から壊れてたらもう壊れねーよな。

 

「毎日毎日ベッドの下から眺めるお二人の姿! 女冥利に尽きるというものでございます!」

 

えっと、本当に女だよね?

男だったら犯罪だよ?

女でも犯罪だけど。

 

「あ、ご安心を。これはあくまでもチーム内での出来事。何が常識かは分かりかねますが、人に迷惑をかけぬようにということは気をつけているつもりですので」

 

いや頼むから常識を理解してくれ。

 

「女性としての最高峰であるあの筋肉、ハリツヤ! 素晴らしい! あ、申し遅れました。『オーガキラー』ファンクラブ会員No.1を務めさせて頂いております。よろしくお願いしますね」

「ああ、よろしくな。出来れば街ではあまり話しかけない方向で頼む」

 

正直あまり関わりたくない。

だが良かった、コイツがナンバー2とかだったら怖くて『オーガキラー』には近寄れなかった。

とりあえずコイツがワーストで良いんだな。

 

……なんだか疲れた。

エリー達と合流しよう。

 

 

エリー達は食事の真っ最中だ。

リッちゃんが食事をガツガツ食っているのを見るとなんだかホッとする。

 

「なあリッちゃん。お前アタシたちのファンだったりしないよな」

「え? まったくそんなつもりないけど? 僕は僕のファンさ! マリーなんて興味ないね!」

「えっと、あり……がとう?」

 

 

嘘でもファンといって欲しかった。

でも言われたらアンデッド不信になってるかも知れない。

 

複雑な乙女心のもと、リッちゃんのお陰で嬉しいような悲しいようなちょっと苦い気持ちを味わう。

私にとってマリーはかけがえのない存在ですよ、というエリーの言葉が疲れた心を癒やしてくれた。

 

 

 

翌日。

ギルドが手配してくれた宿屋を出たアタシ達は、改めて旅立つ。

 

「眠いよぉ」

 

夜ふかししていたのでリッちゃんが眠そうだ。

エリーもあくびをしている。

昨日はリッちゃんとメイの恋バナで盛り上がってしまった。

 

「こんな気の抜けた奴が今回のメンバーとはな」

 

なんか威圧するような声がかけられる。

こういうナメた態度取られるのは久しぶりだな。

 

「俺達はチーム『ライジングサンダー』、そして俺がチームリーダー、ダレスだ。C級冒険者をやっている」

 

長い髭が印象的だな。

むさ苦しい男だな。刃物で髭を切ってやろうか。

コイツ以外にも数人、後ろで控えて睨みつけてきやがる。こいつらも『ライジングサンダー』のメンバーか。

 

リッちゃんがエリーの後ろで震えてるぞ。

 

「あー、アタシは『エリーマリー』リーダーのマリーだ。今はD級だな。あっちはエリーとリッちゃん。別に覚えなくていいぞ」

「……ガキが。貴様らのようなD級を庇う身にもなれ」

「んだと?」

 

アタシは睨み返す。

 

いきなり喧嘩腰だなオッサン。

余所者にマウント取りたいのは分かるが、こっちだって出張ってきて舐められるわけにはいかねえんだ。

一戦やるか?

 

「ああっ、そういう事ですか! 気付かずにすいません。ありがとうございます!」

「はっ?」

 

エリーが深々と頭を下げる。

 

「私達を心配して庇ってくれると言ってくれてるんですよね? ですが私達も冒険者として派遣された身です。なるべく足手まといにならないよう頑張りますね」

「おっ! そういうことか! まさか気にしてくれるなんてなあ、流石だなオッサン!」

 

エリーが一触即発の空気をいい感じに壊してくれた。

ここは全力で乗っかっていくか。

 

「は? いや、言葉のアヤと言う奴で……」

「おいおい、まさか冒険者の癖に言ったことをすぐひっくり返すのか?」

「……くそっ! せいぜい足手まといになるんじゃないぞ!」

 

捨て台詞を吐いてオッサンは去っていく。

なんとか喧嘩せずに済んだようだ。

 

「荒っぽいねぇ」

「まったくだ。一時的にとはいえ、これから一緒に戦う仲間だろうが」

「即座に攻撃できるように立ち位置を調整してた奴が言うセリフじゃないね」

 

話しかけられた方を見ると、冒険者が一人立っていた。

髪はボサボサで右目には眼帯をしている。

二十代後半くらいか。

 

リッちゃんが眼帯カッコいい……とか呟いていた。

後でアイマスクでも買ってやろう。

よく温まる奴。

 

「アンタが『エリーマリー』のマリーかい? 話は聞かせて貰ったよ。私はバレッタ伯爵領で活動してる『パンナコッタ』のフーディーさ、一応B級だね。よろしく」

 

こっちはそれなりに友好的だな。

 

「おう、よろしくな。こっちがエリーとリッちゃんだ」

「あっちにいるのが、ロアとコナツ。ま、今回の作戦では直接絡まないからね。アタシらの顔だけでも覚えといてくれ」

 

アタシ達は軽く挨拶をして話を終える。

こういうので良いんだよ。

いきなり喧嘩腰とか一騎打ちとかいらねーんだ。

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