エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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第35話 共闘する仲間

『オーガキラー』の奴らは最後にやってきた。

……なんで、生傷が増えてるんだ。

まだダンジョン突入前だぞ。

 

「アンタはいつも怪我してるねぇ……」

「おお! フーディー! 久しいな! どうだ調子は!」

「いたって普通だよ、アンタみたいな元気はないね」

「ははは! そう褒めるな、私だって近くの森でレッドベアと遊んできたから少し浮かれてるだけだ!」

 

D級の魔物じゃねーか。

これから戦いに行くのに戦闘するなよ。

つか知り合いなのか?

 

「相変わらずだね……。まあいいさ、全員揃ったし今回の説明をするよ!」

 

 

これで全員か。

……聞いていたより少ない気がするな?

 

「ちょっと待て! バレッタ領からはもう一つチームがくるはずだ!」

 

むさいヒゲのオッサンが声を荒らげる。

やっぱ少ねえか。

それに返したのは先ほどの眼帯女だった。

 

「それがねぇ。バレッタ伯爵のトコが跡継ぎ問題やら嫁ぎ先の問題で荒れていてね。色々きな臭いのさ。裏稼業の奴らも動き回ってるね。その鎮圧に駆り出されちまった」

 

バレッタ領か。

エリーを見てみる。

目があうと互いに小さく頷いた。

その目に不安や心配はない。

 

……エリーの中ではバレッタ伯爵の事は割り切れているらしいな。

 

「まあそういうわけで来れなくなっちまったよ。すまないね」

「しかし、『力』の方はルビー殿といえども……」

「ここにいるメンバーでも何とかなるはずさ。本来C級相当のダンジョンでB級が二チーム、戦力としては十分だろう? 」

「しかし……」

 

ヒゲオッサンが渋っているな。

現状このメンバーしかいねえんだ、諦めろ。

 

「フーディーよ、戦力なら安心しろ! ここにいるマリーは条件付きだが私に勝ったことがあるぞ、条件付きだがな!」

 

条件付きを連呼するな。

そんなに負けたのが悔しいか。

そもそも筋肉女と真っ向勝負とか徹頭徹尾お前に有利な条件だったじゃねえか。

 

だがルビーのおかげで周囲の見る目が変わったのが分かる。

 

「へぇ……、伊達に推薦されるだけのことはあるね。じゃあ決まりだ。お嬢ちゃんたちは力の門に行ってくれ」

「力の門? なんだそれは?」

 

脳筋女と一緒にされそうで嫌な名前なんだが。

 

「おっと説明をすっとばしちしまった、すまないね。アタシも軽く潜ってきたから説明するよ。ここのダンジョンだが、途中から道が三つに分かれてる」

 

ギルド員が資料を読みながら説明しようとしていたが、フーディーがそれを制すると説明してくれる。

実際に調べた奴から説明を受けたほうが分かりやすいだろうな。

 

「三階層に魔物は出ない。代わりに祭壇と、下に降りる入り口があるのさ。入り口の前には門があって、それぞれ文字が書かれてるね。『技』と『知』、そして最後の一つは『力』と書かれているね。このダンジョンはそのすべてを攻略しないといけないのさ」

 

ダンジョンには探索して力任せに殴り飛ばしていれば、いずれ攻略できる奴がほとんどだ。

今回の謎解き型のダンジョンは初めてだな。

 

「謎解き型のダンジョンはいつもこう複雑なのか?」

「ダンジョンに潜ったことがあるのかい? それがいつもより手が込んでてね、厄介さ。このダンジョンはそれぞれの道を進んでいって、攻略した先にあるお宝を手に入れるんだ。その後戻って来て、お宝を祭壇におけば門が開く……。たぶんだけどね」

 

そこでフーディーは話を打ち切り、ヒゲおっさんが話を引き継ぐ。

 

「俺は技の門を何度か攻略した。手に入れたお宝は炎や余分な熱を消し去り、魔力に変えるマントだったが、ダンジョンの外に持ち出そうとした瞬間に消えて無くなってしまった」

 

もったいねえな。

しかし変わったダンジョンだ。

 

「それで専門の冒険者を連れて色々調べたんだが、外に持ち出すと崩壊する、祭壇の鍵として使う道具のようだな」

「……つか、そんな面倒くさいダンジョンって生成されるもんなのか?」

「前例がない訳ではない。そういうダンジョンは階層が浅くなる代わりに謎が複雑だ」

 

なんか釈然としねえが……。

まあいいや。

 

「ダンジョンでは他にアイテムらしいアイテムは出ない。『技』では一番奥の扉を開いたときに分かりやすい形で置いてあった」

 

ヒゲのおっさんが補足してくれる。

……ギルドで聞いてた話と違うな。

アイテムが手に入らないのにアイテム私有可って詐欺かよ。

ポン子、クレーム入れるからお前今月の給料はゼロな。

 

いや、敵も自動生成されるなら、魔道具を核にしてる事もあるか。

それに期待しよう。

 

「『知』の門の先は謎掛けがあった。敵もいなくはないが、雑魚だ。ゆえに隣のバレッタ領からは知恵者がいるパーティの派遣を依頼した」

 

それが『パンナコッタ』か。

あのチームの婆さんとか知恵が回りそうだしな。

 

「問題は『力』の門だ。あそこには大量の敵が召喚された。しかもスケルトンウォーリアーやらスケルトンメイジなどの上位種だ。敵の数が多すぎて俺達じゃ手に負えん」

 

ヒゲオッサンの話に続いて、再びフーディーが説明を続けてくる。

 

「本当なら『オーガキラー』の他に、バレッタ領からもう一つチームをつける予定だったんだ。だけどさっき言ったとおりさ。悪いが頼んだよ」

 

おう、ちょうどいいぜ。

新しい技を試したかった所だ。

 

「アタシは『知』のダンジョンに行く。『力』の方は戦闘能力だけなら随一のアンタらのチームに任せたよ」

「ふはは! 任せておけ! どうしたマリー? そんな心配そうな顔をせずとも私達で道を拓こうではないか!」

 

アタシが心配しているのはダンジョンじゃなくてお前らだよ。

つかフーディーとやら。戦闘能力“だけ”ってお前も分かって言ってるだろ。

 

 

ダンジョンの入り口は狭い。

全員でパーティーが一気に入ると、互いに行動を阻害してしまう可能性があるため、二つずつのチームに分かれて入っていく。

 

最初は『パンナコッタ』と『オーガキラー』のメンバーだ。

次に『ライジングサンダー』とアタシ達が入っていく。

 

心なしか『ライジングサンダー』のメンツは気まずそうだ。

 

「オッサン、ここ何回も入ったことあるんだろ? ショートカットとかねーのか」

「……ここは三階層までほぼ一本道だ。スケルトンやダンジョンバットくらいしか出てこない」

「そうか。じゃあさっさと抜けるぜ」

「おい、マリーとやら」

 

なんだよ。

ヒゲオッサンは神妙な顔でこちらを見つめてくる。

 

「……すまなかった。俺達の領地で牛を襲ったとか色々悪い噂を聞いてたもんだからな、つい突っかかってしまった」

「それはアタシ等じゃねえ」

 

「ああ、後から聞いた。まったく済まないことをした」

「……謝罪はいらねえよ、働きで返してくれ」

 

ムダに律儀なヒゲだな。

あとあの牛はモンスターに見えても仕方ねえぞ。

 

途中、砕かれた骨が見つかる。

先行しているチームの誰かがやったんだろうか。

 

近づくと砕いた骨が震えだす。

……こいつらまだ死に切れてないみたいだな。

 

震えた骨が宙に浮かび、再度骨格が構築されていく。

その数は二十を超える。

 

まあただの雑魚だ。肩慣らしにはちょうどいい。

 

「いい機会だ。おっさんたち、今回は見てな。アタシ達の力見せてやるよ」

 

アタシはエリーとリッちゃんの方を見て合図をする。

 

「では、ここは私がやります。【暗き闇に囚われたその体、願うは断鎖の業、現し世と写し夜に映る光の衣は鎖を断ち切らん】〈ホーリーカーテン〉」

 

エリーが魔法を唱えた。

光のカーテンが現れてスケルトンたちを覆う。

スケルトン達は次第に身体が動かなくなっていき、最後には崩れ落ちる。

 

エリーは元見習い神官だからな。

対アンデッドも得意さ。

 

僅かに範囲から漏れたスケルトン達は、アタシが始末する。

 

 

「あちち、……熱っつ! 燃えちゃう!」

「おい大丈夫か、リッちゃん」

「だ、大丈夫、大丈夫だけど僕をいたわって!」

 

なんかりっちゃんが火傷している。

今はまだアタシの炎で焼いてないぞ。

 

心当たりがあるとすれば、さっきのエリーの魔法だ。

……そういえばこいつもアンデッドだったな。

 

「さよならリッちゃん。さよなら……。生まれ変わったら今度は大切にするからな」

「いやまだ消えないよ! 今大切にしてよ! はい、ぎゅっとして! ぎゅっ!」

「はいはい、しょうがないな」

「今回は特別ですよ」

 

しょうがないのでエリーに合図をして、前と後ろから一緒にぎゅっとしてやる。

今回はちょっと心配したしな。

 

……スレンダー体型のわりには意外と抱き心地が良くて温いな。

ナデナデも追加しとこう。

 

「ふにゅ。……あれ、なんだか優しいね?」

「アタシたちはいつもこんなんだぞ。お前がメイとくっつくまで遠慮してただけだ」

 

あとはついつい突っ込んでしまうお前のキャラだな。

まあ、嫌いってワケじゃない。

昨夜のガールズトークでお前とメイの関係もよーくわかったしな。

 

これからはメイも含めてナデナデしてやる。

アタシはハグしたりされたりするのは好きだからな。

 

「で、なんで火傷っぽくなってたんだ?」

「僕、聖属性の魔法をランダムで別の属性に変換する陣を身体に書いてるんだけど、今回熱に変換されちゃったみたいだね」

「すいません。リッちゃんの事をうっかりしてました」

「別にいいってことよ。気にすんな」

「それ僕のセリフだからね」

 

戦闘の尖った雰囲気も緩んできたな。

さあ、先を目指すか。

 

「……お前たちはいつもこのようにしているのか?」

「ん? どうしたおっさん、いつもそうだぞ?」

「……そうか」

 

むしろそれ以外になんかあるのかよ。

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