エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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閑話 他のチーム

技の門をクリアした男、冒険者ダレスは祭壇の置かれた部屋へと戻ってきた。

手には攻略の証であるマントを持っている。

 

「意外と早かったね」

 

男に声をかけてきたのは『パンナコッタ』のリーダー、フーディーだ。

 

「さすがに何度も攻略はしているからな、こっちは問題ない。フーディー殿はあそこの問題を解けたのか?」

「ん? ほとんどはウチのロア婆が解いたよ。私が解いたのは一問だけさ」

 

そういうとフーディーは仲間のメンバーを指差す。

だいぶ年配のようだが、その知識は確かなようだ。

 

「それでもう、例のものは祭壇に捧げたのか?」

「ああ、祭壇に置いたらくっついちまった。離れやしない」

 

その方向には、木でできた短剣のようなものが置かれていた。

 

「世界樹の短剣、か。確か持ち主の魔法を助けてくれるとか聞いたことがあるな」

「市販品なんかとは比べ物にならないらしいね。ロアの婆さんが欲しがってたよ」

 

残念だけど持ち出せないからね、と呟く彼女の愚痴を聞きながら、男は祭壇の方に自らが手に入れたマントを置く。

すると、吸い付いたように祭壇と一体化し、離れなくなった。

 

これであと最後の一つを『オーガキラー』が持ってくれば新たな道が開けるはずだ、そう男は考える。

 

男がフーディーの方を見ると、どこか落ち着かないような、イライラしたような仕草を見せる。

 

「なあアンタ、このダンジョンおかしいと思わないかい?」

「おかしい、だと? 確かに発生したダンジョンにしてはいささか仕掛けが複雑すぎる気もするが……」

「私のところもそうさ。それだけじゃないね。ここにあるギミック、後から作られたもんだ」

 

ダンジョンには二種類ある。

一つが天然のダンジョン。もう一つが人間や上位の魔物によって作り変えられたダンジョンだ。

 

もっとも後者は数が著しく少ない。

ダンジョンを作り変えるには一度ダンジョンの核を支配する必要がある。

 

そのためには、ダンジョンを踏破して一定の手順で支配下に置く必要があった。

その管理の手間から領主や国が管理下に置く場合を除き、基本的には破壊されるのが普通だ。

 

「まさか、人の手が入っていると?」

「いや、人じゃない。人が手を入れただけなら時間と共にダンジョンは元の形に戻ろうとするはずだ。おそらくだが、このダンジョンを支配しているボスの趣味だね」

 

天然のダンジョンを誰よりも早く攻略し、支配下に置くというのは至難の技だ。

だが、その存在を確信しているかのように彼女は語る。

 

「『知』の方にあった問題だがね、どうにも書かれた質問の内容が新しい。ここ百年で発見されたネタもあった。それなのに問題はやけに古臭い言葉で書かれてた。古代語ってやつだね。まるで、私達で遊んでるみたいだ」

「……バカな。俺達がここの主の手のひらの上で踊らされていると? 誰が、一体何の理由でそのような事を?」

「それが分かれば苦労はないさ。だが攻略して違和感がより大きくなったことだけは確かだね。あいつらが戻ってきたら状況を確認して、一時撤退も視野に入れるべきだ」

 

男はまるで竜の口の中に飛び込んでしまったような恐怖感を覚えた。

寒くもないがわずかに身震いする。

 

そこで力の門が開く。

 

「あれ? みんなどうしてここにいるん? ……ってここ、祭壇のある場所じゃん。ウチ達、どこか道間違えた?」

「サファイよ、その心配はない! 地下に落ちてからここまで、迷うことなき一本道だったからな!」

 

出てきたのは『オーガキラー』のメンバーだった。

 

「おや、もう攻略してきたのかい? ……にしては何か変だね」

 

「攻略はまだだ! 相手の罠にはまってしまってな、ここに来たなら仕方ない。もう一度入り直してこよう」

「なに馬鹿な事を言っている? 『力』の道を攻略せずに抜けてきたというのか?」

「私達は罠に引っかかったといったろう? 問題ない、代わりに『エリーマリー』のマリーが戦っているはずだ」

 

ルビーは自信満々にそう語った。

それを聞いて男は慌てる。

 

「バカな! 彼らはD級だぞ! 早く助けに行かねば危険だ!」

「私が保証する。あいつらが負けることなど万に一つも無い!」

「なんといい加減な……」

 

しばらく男とルビーの間で言い争いが続く。

そこで、しばらく黙って考え事をしていたフーディーが口を開いた。

 

「なあルビー……。アンタ地下に落とされたって言ってたね」

「ああ! 敵が卑怯にも落とし穴を使ってきてな、ウッカリ策に嵌ってしまった」

 

「そこに広間があって、敵を倒して階段を登って光の渦に飛び込んだ、それで間違いないね?」

「ああ! アンデッドオーガ百体! 心地よい組手だったぞ!」

 

戦いの様子を嬉々として語るルビー。

その答えを聞いた彼女はさらに顔を歪める。

 

「マズイね」

「どうしたフーディー殿。もし差し支えなければ教えていただけないだろうか」

「ここは敵が弱いけど溢れやすい、複雑なギミックがある、そういった理由からC級ダンジョンとして認定された、そうだろ?」

 

男は頷き、続きを促す。

 

「ギルドの考えだとギミックを解いたらダンジョンコアがあって破壊する。そうしたらハイ終わりとなるハズさ」

 

そうだろうな、と男は頷く。

これは異常な考えではない。

謎解き型と呼ばれるダンジョンの大半は仕掛けを攻略すれば後は破壊するも支配するも自由だ。

それを踏まえた上で、このダンジョンもそれに近い性質を有しているとの判断だった。

 

「だけど、ルビーはそれよりさらに深く潜った。一瞬だけどね。つまりここはさらに地下がある。つまり続きがあるって事さ」

 

男にも言いたいことが分かってきた。

分かっていなさそうなのはルビーだけだ。

 

「確実にこのダンジョンの主がいる。このくだらないギミックを作った親玉がね」

「つまり俺達が思っているより、ダンジョンの難易度は高い、と?」

 

場を一瞬の沈黙が支配する。

 

「なんと……。では撤退も含め……」

 

 

 

その時、このダンジョンから外へと続く階段が音を立てて崩れ落ちた。

 

「閉じ込められたようだね」

「なに! ……くそっ! 厄介な!」

「恐らくダンジョンのギミックの一つさ。仕掛けを解くまで出られないよ」

 

男は瓦礫の山を動かそうとするがビクともしない。

 

「ふむ、ならば親玉もダンジョンもまとめて倒すまでだ! 心配することはない!」

「まあ、出口のないダンジョンなんてありえないさ。アタシたちが鼻の穴を塞ぐようなもんだ」

「ということは何かしら仕掛けを解くか、敵を倒すかといったところか……」

 

その時『力』の門が再び光る。

出てきたのはマリー達だ。

 

「おう、『オーガキラー』はもう戻ってたか。良かったぜ。皆待たせちまったな……ん? どうしたんだ、神妙な顔して?」

「説明は後でするよ。とりあえずお宝を祭壇に置いとくれ」

「おう。 ……只事じゃねえようだな」

 

マリーもまた、手に入れた龍眼玉を祭壇に置いた。

 

――その時、マリーとフーディー、そしてダレスの周りに光が走る。

 

 

「なに!?」

「何だい!」

「まさか、転移か!?」

 

光が眩しくなり、それぞれの声が響いた後、三人の姿が掻き消えた。

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