エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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閑話 酒場のエリー

マリーが出ていってすぐ、ガラの悪い冒険者が声をかけてきた。

 

「エリーちゃんって言ったかい? 俺と一杯お茶しよーぜえ」

 

男は新米やカモによく絡みに行く事で有名な冒険者だ。

腕はそれなりだが評判は当然悪い。

周りの冒険者もその様子に嫌悪する者、好奇の目で見つめる者など様々だ。

 

「ごめんなさい、人を待たせておりますし手持ちも無いので……」

「へへっ安心しろよお! 俺がた〜っぷり奢ってやるからよお」

「えっ、良いんですか!? ではお言葉に甘えさせて頂きますね」

「へ?」

 

男は場違いな所にいるお嬢さんに絡んで嫌がらせしてやろうかと思っていただけだ。

まさか、笑顔で承諾されるとは思っていなかった。

目を輝かせて笑顔になるエリーに男はドギマギして挙動不審になってしまう。

 

「私こういうお店初めてで…… よろしければどのような料理が美味しいか教えて頂けないでしょうか」

「いや、ここは…… ああ、くそっ! へへっ! お嬢ちゃんみたいなやつには、特盛肉皿がオススメだぜえ!」

 

最初は場違いな雰囲気を漂わせるお嬢さんを嫌がらせしてやろうとしていた男だが、毒気を抜かれてしまい困惑する。

気を取り直して絡みなおそうとするも、普通にオススメ料理を回答してしまっていた。

 

「お肉ですか? 私も机で食べていいんですの?」

「は?」

「私、食事のときは台所で料理を作る手伝いをしながらパンと野菜スープばかりでしたので、その……肉というものをあまり食べたことがなくて」

「…………」

「あ、でも少しは食べました! 料理は味見をしないといけませんから! それにお姉様達はお肉の食べすぎでコルセットがキツいと嘆いておいででしたから、あまり食べないほうが良いのかもしれませんね」

「……バカやらー、好きなだけ食いやがれ」

 

気がつくと男は涙を流していた。

失いかけていた彼の良心が刺激されたのだろう。

 

「ありがとうございます、お礼になんでも……は出来ませんけど、手料理をごちそういたします、色々と教えてくださいね」

 

その笑顔はまるで辺りに花を咲かせるかのようなキレイな笑顔だった。

男はゴクリとツバを飲み込む。

 

「アンタ達はなに馬鹿な事やってんだい」

女将がやってくると男の頭をお玉でコツンと叩くと、男は痛そうに頭をさすっていた。

 

「エリーとか言ったね。なにしにここへ来たんだい?」

「えっと、マリーさん、あ、私の連れ合いのお名前です……。マリーさんがギルドでなにか相談をしてくると言うことで待っておりました」

 

「ここでの相談事っていったらアレだね。職探しだね。横から聞かせてもらったけどアンタ料理ができるのかい?」

「はいっ! 魔物退治は苦手ですが、掃除洗濯にお料理までは一通りはこなせます!」

「ちょっとこっちに来な。」

 

女将は奥にエリーを招き入れた。

そこは厨房になっており包丁やまな板など料理人の器具が並んでいる。

そこで女将は近くにある食材を適当に見繕って渡してきた。

 

「これで試しに作ってみな。なんでも良いよ」

「はいっ! 任せてください!」

 

そう言うとテキパキと料理を作り始めた。

イノシシ肉はステーキにして一口サイズに刻み、塩と香草で味付けをしていく。

出来上がった一口サイズのステーキは葉野菜を敷いた皿の上に載せる。

そこにピーマンとブロッコリーを刻み焼いた野菜を添えて盛り付け、完成だ。

 

「お上品な料理だねえ」

 

エリーは知らないがこの店では冒険者をメインにしているため、盛り付けよりも量を重視しているのだ。

女将が肉を一つ食べてみると顔がほころぶのが分かった。

 

「……あら美味しい。これどうやって柔らかくしたんだい?」

「魔法です。相手の鎧を柔らかくする魔法をお肉にかけました!」

「へぇ……。こんな魔法の使い方もあるんだねぇ」

「さっきのお兄さんにも召し上がっていただきますね」

「あ、ちょっと待ちな」

 

女将の静止の声は届かず、先程の男へと料理を持っていく。

 

「おまたせしました!」

「……良いのか? だって俺はお前に……」

「ええ! 先程お約束しましたからね。どうぞ召し上がって下さい!」

 

恐る恐る料理を口に入れると、男の顔がほころぶ。

 

「うめぇ……。俺にもようやく春が来たんだな……。永かった……」

「アホな事言ってるんじゃないよ!」

 

奥から再び女将が出てくるとお玉で再び男の頭を小突き、呆れたように話しかけてくる。

 

「色々と勘違いしてるようだけどね、アンタ。これは元々エリーちゃんからのお礼だったろう? 施す前にお礼貰うなんて、なーに考えてんだい」

 

ギロリと睨みつける女将に男もタジタジだ。

 

「いてて……。わかったよクソ、しょうがねえ。エリーちゃん食べたい物を奢ってやるぜえ」

「えっと……。私、皆さんと楽しく食べられる事が一番です!」

 

ここに来て何を食べたらよいか検討もつかないエリーは、とりあえず皆で食べられるモノを頼むことにした。

こうすれば皆幸せになれると考えて。

そこで女将はニヤリと悪い顔をして口を挟んでくる。

 

「よし! 決まりだね! 楽しく食べられるようになる魔法の飲み物、酒をおごりな!」

「ちっ、オバハンがしゃしゃり出やがって。構わねえよ。好きなだけ飲みやがれ……。いてっ、何度もお玉で殴るんじゃねえ」

 

オバハンと言われたことに苛ついたのかお玉で更に頭を小突くと、次に周りに向けて大きな声で話し出す。

 

「みんな、聞いたろ! 今日の酒はコイツの奢りだよ!好きなだけ飲みな!」

「マジかよ!」

「ヒューッ!やるう!」

 

日が高いため数は少ないながらも筋金入りの酒飲み達から歓声があがる

 

「はぁっ!? なんで俺が」

 

「どうせ今なら人も少ないから良いだろ? ツケといてやるから、いつもいつもイチャモンつけてばかりじゃなくて、こんな時くらい男気みせな!」

 

女将に一喝され、男は何も言えなくなる。

 

冒険者にはメンツがある。

この状況では引くに引けない。

がっくりとうなだれた男を尻目に、女将は料理の準備へと移る。

 

「ひゅー、流石だなあ!」

「よっ! 色男」

「ナイスだぜエリーちゃん!」

「ついでにウザ絡みの男にも乾杯!」

 

昼間から飲んだくれてはやしたてる冒険者と、ガッツリお金を搾り取られ凹んでいる男の姿があった。

 

 

「さて、昼間っからとはいえ少し人手が欲しいね」

「でしたら私も手伝います!」

「ん、無理しない程度に頼むよ。着替えは予備があるから着てな」

「はいっ!」

 

 

そしてエリーは酒場の給仕を行っていく。

 

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