エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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第44話 ラズリー

翌日。

街の魔法店をいくつか見て回ったが、しっくりくる店がないな。

デザインは良くてもリッちゃん的に作りが甘いとか、作りは良くてもデザインが甘いとか、妙に価格が高いとかそんなんばっかだ。

 

最悪金でゴリ押ししてもいいが、もう少し見て回りたい。

 

「ねえねえ、これ前もあったっけ?」

「ん? ……いや知らねえな。最近できた店か?」

「もしかしたら当たりかもしれません。入ってみましょう」

 

一応看板には『よろず屋 アイザック』と書かれている。

 

「いらっしゃいー」

 

中に入ると店番をしている女性が話しかけてきた。

 

「お客さん、冒険者かな?」

「そうだ。アタシはマリー。こっちがエリーで、向こうがリッちゃんだ、よろしくな」

「マリーにエリー……。ああ! 噂になってる人たちだね」

 

おや、商人にもアタシ達の武勇伝が行き届いてるようだな。

 

「なんだっけ。お偉いさんが集まるパーティーをぶち壊して代わりにファンクラブなんて狂ったものを立ち上げたり、祭り好きで自分の屋敷を使ってお祭り騒ぎを繰り返してるって聞いたけどホント?」

 

おい。

大体間違ってねえけど悪意を感じるぞ。

 

「基本的に運営はなげっぱなし。ギルドマスターと商会長が四苦八苦しながら切り盛りしてるファンクラブの名目上の長だとか」

 

え? マジで?

すまんギルドマスター、あと会ったこともない会長さん。

なんか無理させてたみたいだな。

 

「……間違ってないけど正しくはないな。アタシは写真とかを堂々と撮影させる代わりに、お金をもらってるだけだ」

「権利ビジネス……ってやつ? 興行師たちの中にはスネに傷あるやつが多いからね、睨まれない程度にね」

 

裏社会のやつらだな。

あまり関わったことはないが、存在は知っている。

 

基本的に冒険者にすら成れない、どうしようもない奴らだ。

だが金と暴力を巧みに使うという点で、人間社会に限って言えばこれほど厄介な奴らもそうはいない。

 

「……忠告ありがとよ。だがそれは他のやつらもわきまえてるはずだ」

 

頼んだぞ、ギルドマスター。商会長。

アタシ達は平和主義者なんだ、どうかトラブルには巻き込まないでくれ。

アンタらの上前ハねるくらいしかアタシにはできることがねえんだ。

 

……だがもしも切った張ったの殴り合いになるようだったら任せろ。

全力でぶち殺してやる。

 

「だいぶ話が脱線しちゃったね。ここに来たってことは、魔道具を買うか作りに来たのかな?」

「ああ、そうだ。これを使って魔道具を三つ作りたい」

 

アタシは龍眼玉をみせる。

 

「いい石だね。ちょっと待っててね。見積もり出してみる」

 

そう言うと彼女は計算をしだした。

その間にリッちゃんやエリーと店の品物を見る。

 

……どれも細工の出来がいいな。

薬関係や魔道具はかなりイロモノが多いが。

まあ趣味でやってるんだろうな。

痛みを快楽に変える薬とか誰が……あとで二、三本買って試してみるか。

 

「ここにあるのは皆付与魔法のレベルが高いね。あのお姉さんが作ってるのかな」

 

リッちゃん的にも問題ないか。

なら後は価格だけだな。

問題なければここの店で決めよう。

 

「お待たせー。3人分だとこんなもんでどう?」

 

ネックレスや指輪にした場合など、効果を含めた何パターンかで料金が提示されている。

……もう一声欲しいな。

 

「なあ値段だが……」

「あ、やっぱりそれなりに高いの分かっちゃうかな? ごめんねー、触媒の関係でどうしても安くなんないの。もし触媒を持って来てくれるなら三割引でもいいよ」

「え? なんの触媒を使ってるの?」

「それはどんな効果をつけるかによるかなー。アタシが付与できるのはこれだけだよ」

 

再度リストを見せてくれる。

 

魅力上昇とか美容維持は要らんな。

今でもたまにクるのに、これ以上エリーの魅力が上がったら任務に支障が出てしまう。

なによりアタシがスキルを定期的に使えば一発だ。

 

「簡易通信と守護、魔力補助はどうだ?」

「魔力補助は触媒が余ってるからいらないけど、残りの効果をつけるんなら野良ゴーレムのカケラとかだね。なるべく上質な奴」

 

たしか北の山にある溶岩ダンジョンにD級魔物のゴーレムがいたはずだ。

……たいした敵でもないだろ。

リッちゃんが昇格するための実績作りも兼ねて狩ってくるか。

 

「よし、じゃあちょっと取ってくるわ」

「おっ! 流石だね! 任せたよ」

 

ギルドで手続きをして、明日中に入ることにした。

 

溶岩ダンジョンは領主が管理しているダンジョンで、冬でもそれなりに暖かい。

そのため人もいて賑わっているはずだ。

さて、さっくり狩りますか。

 

何故かいつもは入り口に門番がいるはずだが、今日はいない。

 

まあいいや。

さっさと奥に行こう。

 

出てくる敵はファイアドレイクとかいう火を纏ったトカゲに、ストーンゴーレム、あとは原生生物が多少いるくらいだ。

 

雑魚は無視してさっさと奥へ向かう。

このダンジョン、溶岩地帯であることから、まともに進むのは難しいところがあり攻略はされていない。

だが魔物もロクに生成されず危険性は低いとされているダンジョンだ。

 

ファイアドレイクの鱗がなかなかいい素材になるので、定期的に冒険者がくるが。

 

途中、何匹か出たがアタシとリッちゃんで瞬殺した。

 

「D級ではなかなか苦戦するはずなんですけどね」

「アタシ達も色々戦ってきたからなあ」

 

魔族とか悪魔とかな。

同格なら今更よっぽど相性の悪い奴以外には負ける気がしない。

 

「あと二つ、階層を降りたら目的地だ」

 

ふと、人影が見える。

個人的には忘れたいが、忘れたくても忘れられない相手だ。

 

「おや、皆さんどうしてここへ?」

「お前は……変態じゃねえか」

「いえいえ、私は変態ではございません。清らかなる乙女、淑女ラズリーでございます」

「ちょうどそこに焼けた岩があるからそこで世界に土下座してろ」

 

お前のような乙女がいるか。

世界の淑女に謝れ。

 

「これはなかなか手厳しい……。それで改めますが皆さんはどうしてここへ?」

「アタシたちはちょいとゴーレムを狩りに来た。むしろアンタがどうしてここにいるのか知りたいな? 筋肉姉妹も一緒か?」

「ルビー様は悪魔を一撃で葬れなかったことに対して嘆いておられました。それでサファイ様と武者修行に行くと旅立っております。ギルドからの強制案件もあり、春までは帰ってこないかと」

 

おお、筋肉姉妹はいないのか。

いたら帰るところだったぜ。

 

「悪魔を一撃で葬れるなんてオッサンぐらいだろ。それもスキルのおかげだぜ?」

「私もそう伝えたのですが『ならばスキルも筋肉と同じく磨き上げるだけだ』と言い残しB級ダンジョンへ潜ってしまいました」

 

脳筋がまた筋肉に特化するのかよ。

悪夢か。

 

「私もついていきたかったのですが、攻撃よりも防御に特化しておりますので、強制依頼の前に長所を伸ばして置こうとかんがえております。そのため少しマグマに浸かろうかと」

「ん? マグマに?」

「はい、私のスキルは防御を高めるスキルですので、溶岩浴ができるようになるまでスキルを強化しにきました」

 

岩盤浴みたいな軽いノリでマグマに浸かろうとするんじゃねえ。

確かに使いこなしていくと結果的にスキルは強化されるものだが……

 

「溶岩の中でルビー様とサファイ様に敬愛の意を込めて五体投地を行う予定です。ああ、二人の事を考えながら飛び込むマグマの赤……。なんと美しい! 交わりたいっ!!」

 

……やっぱり駄目だこいつ。

焼けた石の上で土下座したほうがマシじゃねえか。

 

しかしマグマの中で笑いながら五体投地する変態とか恐ろしいな。

こんな奴どうやって殺せば良いんだ。

 

「マリー、前のダンジョンでルビーさん達と一緒に戦っていた時から気になっていましたがこの方って少し……」

「少しじゃない。アタシの中ではぶっちぎりのナンバーワンだ」

 

エリーがドン引きしてるぞ。

のっぺらぼうのメイドを見ても引かなかった凄いやつだぞ。

そんなエリーが引いてるんだぞ。

 

「お褒め頂き恐縮です。皆さんもご一緒にどうですか? ここで会ったのもなにかの縁。裸の付き合いというものも乙なものです」

 

なんで耐熱装備も無いのに裸でマグマにインしなきゃならねえんだ。

あと出会ってから一度も褒めてねえよ。

 

「すまんな、アタシ達は人間なんだ。溶岩に入って生きられるほどタフじゃない」

「ふむ、残念です。それでは短い間ですがご一緒しましょう!」

「なんでお前も来るんだよ」

 

一人でそこのマグマに浸かってろ。

万が一同類だと思われたらどうするんだ。

 

「ははは、ここは少しぬるめですから! 一番熱いマグマに浸かれるのがゴーレムのいる階層なのです。ついでに敵と裸で殴り合いできる素敵な場所ですよ」

 

溶岩から突然裸の変態が殴りかかって来るとか、モンスターの気持ちも考えろよ。

アイツラだって生きてるんだぞ。

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