エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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第45話 ゴーレム

第五層まで降りてきた。

ここがストーンゴーレム達のいる場所のはずだが何もいない。

おかしいな? 変態の存在を察知したか?

 

いや、魔物一匹すらいないのは異常だ。

 

「なんだかおかしいぞ」

「敵の反応がありますが……ひとつだけですね」

 

エリーが指し示した場所はマグマの奥の方だ。

通常なら到底歩いて行ける距離じゃない。

 

「とりあえず先手必勝でそこに魔法を撃ってみる?」

「いや待て、ゴーレムを一撃で沈めてしまったら厄介だ。マグマだと素材が取れないからな」

 

なんとかおびき出せないか方法を探っていると、変態が声をかけてくる。

 

「ちょうど良い! ワタクシめにお任せください! このラズリー、盾となりて見事おびき出してみせましょう!」

「できればおびき寄せた後、そのままマグマに溶けて消えてくれると嬉しいぞ」

「ははは、お戯れを」

 

アタシだって戯れる相手は選ぶわ。

だが、自分から肉壁を買って出るとは殊勝なやつだ。

 

「ぬぅん! スキル『剛体』!」

変態の全身が鋼色に変色していく。

うーん、気持ち悪い。

 

「あれは、先のダンジョン攻略でも見せていたスキル……」

「知っているのかエリー。早く忘れるんだ、夢に出てくるぞ」

「それは少し嫌ですね……。ですがあのスキルで悪魔たちの攻撃を一身に引き受けてくれていたので私達は無事でした」

「あれすっごいスキルだよね」

 

どうやら知らない所で世話になっていたようだ。

ありがとう変態。

できればそのまま溶岩の海に沈んでくれ。

 

変態はポーズを決めながらゆっくりと前に進む。

 

ゆっくりと前に……、前に……

いや、歩くの遅っそいな。

 

「フッフッフ。お見せしましょうこの体! 唯一の弱点は速度が落ちることですが、それ以外に弱点らしい弱点はございません!」

「せめてもうちょい近づいてから使え」

「万全には万全を期すものです! かつてこの体を貫いたのは『オーガキラー』のルビー様ただ一人!それ以外でこの肉体に傷がついたことなどございません!」

 

だからファンクラブ会員なんてのをやってるのか。

たっぷり時間をかけてマグマの海の近くまで歩いて行く。

 

「本当におびき寄せられるのか?」

「……ええ! 敵が動いています!」

 

アタシ達も戦闘態勢に入る。

特にリッちゃんはたっぷり時間をかけて魔法陣を構築済みだ。

 

「よしっリッちゃん。姿が見えたら変た……ラズリーごと魔法をぶちかませ」

「え? 流石に死んじゃうんじゃないかなあ?」

「今あいつが生きてここにいる、それがやつが化け物の証だ。むしろ殺す気でいけ」

 

その程度で死ぬような奴なら『オーガキラー』のメンバーではいられないはずだ。

 

「一応、ラズリーさんに魔法をかけておきますね、〈守護〉」

 

エリーが魔法をかけている。

さすがだな。

アタシならファイアローズをぶちかましてるところだ。

 

そうこうしているうちに、溶岩が盛り上がると敵が姿を現す。

随分と巨大なゴーレムだ。

……ストーンゴーレムじゃないな。

金属の光沢がある。

 

「さあ、かかって来なさい! この鋼の肉体、貫けるものなら貫いてみせよ!」

 

声に反応したのか、ゴーレムが近づいてくる

そして思いきり拳を振りかぶって叩きつけてきた。

 

轟音と砂煙が響く。

だが、ラズリーはその場に立っていた。

 

「なかなかに響く一撃ですね。ですかワタクシの体を疼かせるほどではありません! さあ、サファイ様のように体に響くバイブレーションを与えて見なさい!」

 

一瞬、ゴーレムがうろたえたように後ずさる。

だが、腰が引けた状態で再び何度も拳を叩きつけてくる。

なんだかすっごい嫌そうだ。知性でもあるのか?

 

ゴーレムが右から、左から、横からあらゆる叩きつけをおこなっているが、ダメージを受けた様子はない。

 

「おおっ! なんと甘美なる刺激か……。もっと!さあもっと打ち付けなさい!」

 

変態お前……、そっち方面の性癖も持ってるのかよ。

ゴーレムが更に変態に近づいてくると、今度は足で踏みつけた。

 

「これは効きますね……。ですがまだまだ! 私はこの快楽を乗り越えて高みへと登らねばならないのです!」

 

おい、なんだかゴーレムの腰が引けてるぞ。

チャンスじゃないか?

 

「リッちゃん」

「分かってる! ラズリーさん、頑張って耐えてね!〈零度陣〉」

 

瞬間、世界が凍てつく。

波打つ溶岩流も、ゴーレムも、変態すら全てが凍りついた。

 

そして世界が砕ける。

ゴーレムの体が砕け散っていく。

 

「……ぐっ、はぁ! リッちゃんさん!素晴らしい一撃でした! まさか魔法で身体の芯に響く一撃をいただけるとは!私、感動しております!」

「なんでこの人元気なの……」

 

リッちゃんが呟いてる。

あたしも同感だ。

 

とりあえず、ゴーレムは砕いたし後は回収して帰れば……

 

「おいマズイぞ! 変態!」

「へ、変態とは私の事ですか!? 常識が多少わからないからといってあんまりな発言です!」

「違う! 違わないけど違う! まだ生きてるぞ!」

 

砕けたゴーレムの体が宙に浮いている。

再び一つにまとまると体を形作った。

赤熱していた体は冷えており、その姿が明らかになっていく。

 

コイツはゴーレムの中でも上位種、魔法銀製のゴーレムだ。

ゴーレムはガードを固めている変態を掴むと、マグマの中へ放り投げる。

 

攻撃が効いていないのを理解していたか。

……やはり、多少は知性があるな。

『オーガキラー』の筋肉姉以上、妹未満ってとこか。

 

「わ、私は! 私は必ず帰って参ります! しばしお待ちを」

 

そう言いながら変態はマグマの中に沈んでいった。

……親指を立てて沈んでんじゃねえ。

 

だが、なんだか元気そうだな。

あれなら平気だろ。

 

さて、目の前の敵と向かい合わねーとな。

軽くて硬く、魔法への耐性も持つ魔法銀。

 

うまく加工して糸にして織り込めば最良の服にもなる。

これは……チャンスだ!

 

「エリー! リッちゃん! ここでなんとしてでも倒すぞ! アイツを倒せば新しい服が作れる!」

「えっ! ホント?」

「これは頑張らないと行けませんね」

 

アイツの体を糸に加工して仕立て屋に持っていけば服が作れるぞ!

さあ、喧嘩だ!

 

「マリー! 核になる部分を探して!」

「もう分かってる! 頭だ!」

 

砕けたとき、頭が最初に行動してたからな。

頭砕いて終わりだ、楽勝よ。

 

 

「喰らえ!〈雷撃陣〉」

「マリー、お願いします〈肉体強化〉」

「任せろ」

 

リッちゃんの魔法陣がゴーレムに一撃を与える。

 

そこまで怯んだ様子もない。

確かに魔法の効きが悪いようだな。

 

効きが悪いなら効くまで殴りつけるだけだ。

金属魔法で二つの刃を一つにまとめ、音魔法で刃を震えさせる。

 

風魔法で空中に飛び上がり、ゴーレムの顔を斬りつけた。

……少し浅いか。やっぱり硬いなこいつ。

 

ゴーレムが拳を大きく振りかぶる。

 

「おう。アタシもアイツと同じくらい硬いぜ?」

 

ゴーレムが一瞬動きを止めた。

言葉もわかるのか。

中途半端に知性があると困っちまうな?

 

「嘘だよ!」

 

アタシは動きを止めたゴーレムを電撃を纏った刃で斬りつける。

……これもイマイチかよ。

ゴーレムは怒ったように全力で拳を叩きつけてくる。

 

「せっかくいい服が作れるんだ、アタシからも大奮発だ」

 

アタシは、あえてゴーレムの攻撃をかわさない。

そのまま攻撃を受ける。

 

「えっ! マリー!?」

「大丈夫だ」

 

ゴーレムの拳は、アタシに当たる直前で開いた空間に飲まれる。

そして、消えたはずの拳が空間から飛び出すと、ゴーレムの顔面に突き刺ささった。

顔面にヒビの入ったゴーレムはうずくまってしまう。

 

「文字通り次元の違うカウンターはどうだ? 自分の拳の威力はどんなもんだい?」

 

リッちゃんの空間魔法を応用して、拳の位置を少しずらしたのさ。

だがキツイなこれ。

 

使った後に、他の魔法が全て維持できなくなって消えてしまった。

……できそうだからやってみたが、うっかりミスすると一気に追い込まれそうだ。

実戦向きじゃないなコレ。

 

あと疲労感がものすごい。

なんか立ってるのも辛い。

……本当に追い詰められた時だけ使うようにしよう。

 

ゴーレムは大分ダメージを受けていたのか、アッサリと崩れ落ちた。

アイツの拳、相当に威力が高かったみたいだな。

 

「エリー、ちょっと回復してくれねえか? 調子に乗りすぎたみたいだ」

「マリー、魔力欠乏症の症状が出ていますよ。これは回復魔法では無理です。 ……消耗の大きすぎる魔法ですね」

「みたいだな」

 

あー、眠い。

調子に乗りすぎた。

 

「あ、じゃあ僕が治すよ」

「え?」

 

……アタシの口がリッちゃんの唇で塞がれる。

何か気持ちいいモノが流れ込んでくる感覚がある。

 

「……ぷはっ、ちょっとだけど僕の魔力を分け与えたよ。少し楽になった?」

「……え? おお、ホントだ。体の眠気が無くなってる」

 

気だるさは残っているがこれなら許容範囲内だ。

ていうかなんでキス?

 

「リッちゃん? 私の……。コホン、一体マリーになにをやっているのですか?」

「人から魔力をもらう時は、粘膜同士を接触させて魔力を分けたり、奪う事ができるんだ。知らなかった?」

「……知りませんでした。やはり魔法に関してはリッちゃんから聞かないと駄目ですね。それはさておき、いきなりですが失礼します」

「ふぇっ!?」

 

そう言うと、エリーがリッちゃんにキスをする。

がっしりと掴んで放さない。

うわ……。あ、そんなとこまで……

 

「ふふっ、これでマリーと間接キスですね」

 

リッちゃんが目を回している。

いや、その前にリッちゃんと直接キスしてしまっているがそれはオッケーなのか?

 

「お、おう……。別にアタシはいつでも……」

「ごめんなさい、つい嫉妬してしまって。では早速……」

「僕をダシにして惚気るなぁ!」

 

復活したリッちゃんに邪魔された。くそっ。

 

「お待たせしました! 私ラズリー泳いでまいりました! 皆さん大丈夫でしょうか!」

「死ねばよかったのに」

「おお、それは本音と建前が逆という奴ですな! 心配頂きありがとうございます」

「お前メンタルも固いんだな」

 

変態も溶岩から這い上がってきた。

ここまで邪魔が入ったならしょうがない。

エリーと目で会話をする。

続きは部屋に戻ってからな。

 

とりあえず、ゴーレムのカケラを集めてリッちゃん倉庫に保管する。

変態はスキル強化のためにしばらくマグマの海を泳ぐらしいので、そこで別れることになった。

意味のわからない奴だ。

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