エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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第49話 石

「おまたせー、マリーちゃんはそこいらの冒険者とは違うわね。オネーさん安心よ? あ、でも勘違いしないで。この姿がアタシの本来の姿なの。どっちかって言うと普段のアタシが演技よ」

 

元通りの裏声に戻ったが、お前はオネーさんじゃなくてオッサンだろうが。

あとアタシ達はあんたの本来の姿なんて知らねえよ。

 

「どっちでもいいさ。確か幹部の子供が家出したから探して連れ戻してくればいいんだろ?」

「うんうん、ギルドの一般向け情報はそうなってるわ。 ……でもね、マリーちゃんは賢いから特別に事情を話しちゃう。 ……聞く?」

 

裏があんのかよ。

これは一癖も二癖もあるな。

厄介なことに首を突っ込んでしまったようだ。

 

「その質問してる時点で、もう引けねえ場所まできてるってことだろうが」

「理解が早くて大好きよ、マリーちゃん」

「アタシはあんたのことが嫌いになりそうだ」

 

ウインクしてボーズをとっても可愛さより吐き気が来るから止めろ。

 

「うふふ、これは一応ギルドの上層部も知っているから大丈夫よ。ギルドに送った似顔絵なんだけど、あの子は本当のターゲットじゃないの。本当のターゲットはアタシたちも不明だわ。写真の子はバレッタ伯爵領から来た娘ね」 

 

伯爵領だと?

 

「伯爵領が荒れているのは知ってるかしら?」

「……ああ、なんでも跡継ぎ問題が悪化したとか聞いたな」

 

たしか『パンナコッタ』のチームもそっちの案件で忙しいんじゃなかったか。

年明けに手紙が届いて、前回のお礼と挨拶に行けない事の謝罪が書いてあったぞ。

 

「そう、伯爵が急逝したの。その跡継ぎ問題に加えて嫁ぎ予定の娘婿が口を出してきたらしいわ。婚約相手を長女から変えたい……って」

 

お貴族同士の婚姻なんてそう簡単にひっくり返せるもんじゃねえだろ。

世間知らずか? それともよほどのバカか。

 

「それがきっかけで、骨肉の争いが始まってるのよ。すでに三女以下は皆死んで、領地に残っているのは次男、次女ね。長男と長女は行方不明」

 

だけど、と向き直って話を続ける。

 

「少なくとも長女は生きてるみたいね。逃げ延びてここ、ドゥーケット子爵領に入ったらしい事が確認されているわ。写真の子はおそらく長女の付き人だと言われているわね」

 

付き人ねえ。

エリーに目線を送るが軽く顔を横に振る。

……知らないか。

 

「なんでそこまで荒れたんだ? しかも余所の領地に迷惑をかけるようなことまでして」

「なんでも、宝物庫からある石ころが見つかったみたいだわ。その名も“召喚石”。知ってる?」

 

なんだそりゃ。

聞いたことねえぞ。

 

「僕知ってるよ。悪魔や精霊と契約を結ぶ時に使う魔法の、一番最初にきっかけとなる石だよね」

「あら詳しいわね? その石なんだけど、それこそ爵位持ちだかなんだかって言う高位存在と契約できるほどの石が見つかったらしいわ」

 

「すまんがアタシは悪魔や精霊の専門家じゃないんでな、もう少し噛み砕いて教えてくれ」

「んー、それがアタイも詳しくないのよねぇ」

 

「それも僕が説明するよマリー。悪魔や精霊と言われる彼らは強さを表す格みたいなのがあるんだ。爵位って呼ばれてるね。前にみんなで戦った人形みたいな悪魔、彼らは悪魔のなかでも一番弱くて歩兵級、えっと爵位を持たない最下級の悪魔だよ」

 

アレが弱いのは知っていたが、最下級か。

多分弱点を突けるスキル持ちのおっさんがいなかったら結構苦戦したと思うぞ。

 

「爵位を持たない悪魔は戦車級とか騎士級、僧侶級とかに分けて呼ばれてるね。人間が対応できるのは基本ここまで」

「人間が対応できる……?」

「そう。さらに格上になると、強すぎて人間じゃ対応できなくなるんだ。男爵級とか伯爵級といった精霊や悪魔は強すぎて到底人間の手には負えないし、制御できないんだ。いくつか裏技はあるけどね」

 

「すごく詳しいわね。 ……古代の魔術師と言うのも嘘じゃないみたい。その通りよ、そして伯爵領で見つかった石の価値は百札五枚になったと言われているわ」

 

つまり金貨五万枚か。

恐ろしく高いな。

 

「その石を奪いあったのが争いのきっかけと言われてるわね。最初は腹違いの末の妹、エリスが謀殺されたそうよ」

 

実際は死んでないがな。

アタシはエリーに再び目配せをするが特に反応はない。

 

「いや待て。少しおかしい。いくら価値があるとはいえ、たかが石ころで貴族がそこまで争うか?」

「それなのよねぇ……。亡くなった三女はアレが魅了してくる……ってうわ言のように呟いてたらしいわ」

 

その疑問に答えたのもまた、リッちゃんだった。

 

「石に魅入られたのかな。石は精霊や悪魔の残滓を放つから扱いを間違えると危険なんだ。だとしたらその石は多分、魅了を司る存在と契約する事ができるはずだよ。それだと精霊アプサラス……かな?」

 

という事はもしエリーがその石を見ていたら魅入られて取り込まれた可能性があるのか。

危なかったな。

 

「へぇ……。面白い情報を持っているわね。あなた達が仕事を受けてくれて良かったわ。アタシも陰ながら力を貸すからよろしく頼むわね」

「えーと話をまとめるぞ。付き人を探して、最終的には長女の確保でいいか?」

 

「ちょっと違うわね。長女の保護。そして長女を暗殺しようとする人間がいるなら撃退、もしも万が一契約石を持ってた場合は破壊してちょうだい。それが本当の依頼よ。依頼主は教えられないけどね。力がある人だから、その人を通じてギルドにも依頼の修正をお願いしておくわ」

 

力のある人物ねぇ……

大体予想はつくが聞くのは野暮だな。

後でおやっさんにでも確認するか。

 

「石ころは手に入れねえのか?」

「アタイは自分のシマを守って男たちに囲まれてれば十分なの。欲張る女は花火のように咲いて散るだけよ」

 

お前は男だろうが。

スキルで反転させんぞ。

……そのままの姿で性別だけ反転しそうだな。

モンスターを生み出しそうだから止めとこう。

 

「アタイはね、そんな愚かな事はしないの。何よりそこのお嬢ちゃんの言うとおりなら身に余る災害よ」

 

確かに扱いに困りそうだ。

リッちゃんなら保管の方法とかも知っているかもしれない。

もしも手に入れたときのために聞いておこう。

 

……今回、問題はエリーだ。

自分を殺そうとした長女を守れるだろうか。

エリーを見て軽く頷くと、頷き返してくる。

目に迷いはない。

 

……大丈夫そうだな。

 

「分かった、長女を保護する。届け先はあんたで良いか?」

「ありがとね。アタイんトコに持って来てくれれば良いわよ。こっちは本当の依頼主が指定した期限まで保護、あとはその子を届けて終了ね。 ……でも良かったわ。これで一息つけそう。報酬は弾むから安心して良いわよ」

 

安心したら喉が渇いたわね、とオネエ組長が手を叩くと、少年がお茶を運んできてくれた。

 

「どうでもいいが、男の裸エプロンで食事や飲み物を持ってくるのは、キツイからやめてくれ」

「そうかしら? お尻かわいいのに残念ね」

 

いやそれがキツいんだよ。

せめてちゃんとケツ毛の処理をさせろ。

 

なんとかマフィアとの会談を終えてアタシ達は街に出た。

色々とドギツいオッサンだったな。

 

今回はエリーも絡んでいる話だ。

マフィアのオッサンのこともあるし話を進めさせてもらうとするか。

 

 

エリーがため息をつくと後ろからそっと抱きついてくる。

やはり緊張していたのだろうか。

バレッタ伯爵の絡みもあるしな。

 

「ねえ、マリー。質問があるんですが」

「なんだ? 言ってみろ。バレッタ伯爵の保護についてか?」

「いえ、それはどうでも良いんですが……銀髪の男の子って誰ですか」

 

そういうとエリーは手を肩から下に持ってくる。

 

「んあ? 気づいてないのか? それは……おい! 服の中に手を入れるな!」

「ここは娼婦街です、少しくらいイチャついても大丈夫ですよ。体に聞きますのでたっぷり教えてくださいね」

「おい、ちょっと……ん、だめ……。ここ人が見てるからぁ」

 

「わわわ、マリー! おちついて! プライベートモードになってるよ!! エリーもハウス!」

 

なんとか誤解を解いて服の乱れを直した。

つかエリーは気づいてなかったのか。

 

……リッちゃん、ありがとう。

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