エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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閑話 リッちゃんとパンナコッタ

リッちゃんは焼き鳥を食べながらギルドへと向かっていた。

しかし屋台の出ているほうへとつられて歩いて行った結果、途中で道を間違えたのか、段々と寂れたところへ移動し、ギルドらしき建物が見える気配はない。

しょうがないので近くにいた冒険者らしき人物へと声をかけていく。

 

「すいません、ギルドはどこですか?」

「あなたは……『エリーマリー』のメンバーではありませんか?」

 

冒険者は前回の冒険で出会った『パンナコッタ』のメンバーの一人、コナツだった。

 

「……あ! ナナツさんでしたっけ、お久しぶりです」

「コナツです。あの、タレがついていますよ?」

「あ、うっかりしてたや」

 

リッちゃんは指でタレを拭うと、ペロリと舐めた。

 

「どうしてこんなところへ? 他の皆さんも一緒ですか?」

「僕は今回は特別任務で一人だよ。ギルドを探してたんだけど、どこ探しても見つからなくて。もし知ってたら教えて欲しいかな」

「ギルドは隣の通りを歩いていったところですね。連れて行きたいのですが、今はちょっと問題があって……」

 

その時、影から男たちが数人飛び出してくる。

 

「最近こそこそ嗅ぎ回ってる冒険者ってのはお前たちのことかい?」

「え? 違いますよ? 僕は通りすがりの魔王です。むしろ魔王の親? ご先祖様?」

「へへっ、ふざけた野郎だ」

 

リッちゃんは真実を語るが、コナツも含めて誰も相手にしてくれない。

 

「あいつらに関係あるかどうかは体に聞けばわかることさ。こちとら金をもらっている限り、秘密を探るやつは誰であろうと消すまでよ」

「へへっ、なかなか上玉じゃねえか」

「……すいません。リッちゃんさん。どうやら巻き込んでしまったようです」

 

コナツが小さく謝ると、懐からステッキのようなものを出してくる。

ステッキを握りしめると、それは大きくなり、薙刀の形へと変化した。

 

「この人は無関係です。狙うなら容赦しません」

「え? ちょっと待って! いきなり何なのさ!」

「うるせえな。みんな囲め」

「させませんよ」

 

周囲を囲もうとしていた男達は、コナツの薙刀によって一瞬で切り裂かれる。

男たちは声を上げる間もなく、倒れ伏した。

 

「申し訳ありませんでした。リッちゃんさんのいるところとは違い、今こちらは伯爵の跡継ぎ問題で少々揉めています。おかげで昼間でもこのような輩が出てくる始末で……」

 

そう言ってコナツは謝ってくる。

 

「そうそう! それで僕ここまで来たんだ! あとリッちゃんでいいよ」

「は、はあ。リッちゃん、ですね。わかりました。あと伯爵の件とはどういう……」

 

リッちゃんは経緯を説明する。

 

金髪の女の子が子爵領まで来ているという噂。

それを裏稼業の人間たちが探し回っていて、自らのチームがそれに巻き込まれたという話をした。

 

「金髪の女の子……、もしかして長女が……? それは少し興味深い話ですね。一度フーディーのところに来てもらえませんか?」

 

結局、リッちゃんはコナツにギルドまで案内される形となった。

コナツがギルドで連絡を取ってしばらくすると、『パンナコッタ』のリーダーであるフーディーが姿を表す。

 

「マリーのところの嬢ちゃんかい、久しぶりだね。アイツには世話になったよ。今揉めている話が片付いたらお礼に行くからよろしくいっといてくれ」

 

「わかった、伝えとくよ。どこで僕がこっちに来た件についてなんだけど」

「わかってるよ。馬鹿共の身内争いについてだろ?」

「馬鹿ってそんなストレートに……」

 

「馬鹿は馬鹿さ。ここまで醜い争いが表になったんだ。国が知ったら最悪領地の没収までありうるね。ましてや隣の領地にも迷惑をかけてるってことだろ? 崩壊は時間の問題さ」

「まあそれは否定しないけどさ。もうちょっと言い方にこう、優しさをさ……」

 

手心加えたって何も変わらないよ、と少し苛立ったように言う。

彼女の怒りは目の前にいるリッちゃんに、というよりも今起きてる出来事に対して伯爵への怒りを抑えきれないといったようだ。

 

「話を戻すよ。まずこっちで起きてる問題だ。こっちでは伯爵家の人間がどこかへ幽閉されてるって話だ。伯爵家にいる執事の一人から依頼が来て動いてる。今回は厄介なことに裏稼業の奴らが動いてるね。長女か長男かは分からなかったけど、そっちの話を聞く限り長女はそっちにいて、こっちにいるのは長男の方ぽいね」

 

リッちゃんはスキルを応用して、空中にメモを取っていく。

彼女にしか見ることのできないメモ書きだ。

 

「アタシ達が受けてるのは裏組織に拉致されて幽閉されている人物の救出。別のチームがヤクザ者達を押さえ込んで、その間に救出するっていう寸法さ。もう場所まではある程度特定できていてね、後はタイミングを見て、突っ込んで救い出すだけさ」

 

「あれ? じゃあもうほとんど解決してるんだ?」

「まだだね。肝心の“召喚石”が見つからない。どうやらその石を裏稼業の奴らが動くための報奨金にしていたらしい。ところが石ごとどこかへ消えちまったのさ。それで裏稼業の奴らも躍起になってるね。このままだと働き損だからね」

 

だけど、もしアンタ達の話が事実なら、この領地にはないかもしれないね、そうつぶやくと彼女は眼帯の上からスキルの宿った目をなぞり、ため息をついた。

 

「とにかく私からのアドバイスだ。この件は一介の冒険者じゃ身にあまる。ちゃんと

ギルドを頼るようにするんだ」

「ええ、こちらも他のチームのメンバーがやられたりと中々に大変な状況です。」

 

他の冒険者チームも激しい戦いの末やられているという現状に、りっちゃんはゴクリと息を飲み込んだ。

 

「わ、分かったよ。ところで質問なんだけど……」

「なんだい? 私に答えられることなら何だって答えてやるよ。敵の構成かい? それとも」

「うん、あのさ……。ここのお土産って何がオススメかな?」

 

「……は?」

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