エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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第54話 罠

ダンが謎の男に会いに行くことが決まってすぐ、アタシはダンを含めた三人で打ち合わせを行っていた。

 

「これはボスの立案だ。聞いてくれ。最初は俺が直接会って話をする。あんた達二人のうち、一人は遠くから見ているんだ。もう一人は後から認識に差異がないか接触して確認する。だそうだ。理由は分からん!」

 

そんな自信満々で言うことじゃねえだろ。

 

「とりあえず近づいてブッ刺せば良いって事は分かっている」

「なんにも分かってねえよ」

 

だがオネエ組長のやりたい事は分かった。

スキル対策で二人一組でなんとかするってことだな。

そうすれば仮に二人が同時にスキルを食らっても、もう一人がなんとかできるってわけか。

 

だったらアタシが遠くから探るか。

状況は逐次ペンダントを通じて送ればいいな。

 

「マリー、今回は私が行きます」

「何を言ってるんだ、危ないぞ?」

「いいえ、これが一番安全です。もしもダンさんがスキルで無力化された場合、もう一人に矛先が来る可能性があります。その場合、私であればマリーのスキルで直してもらうことが可能です」

 

……確かに。

精神攻撃系のスキルだった場合、アタシだと食らったことにすら気が付けないかもしれない。

だがエリーなら治す事ができる。

しかし……

 

「大丈夫ですよ。今のところ殺された人間はいないのでしょう? もしも危ないと思った時は助けてください」

 

覚悟が決まっているようだな。

こうなったら言っても聞かなそうだ。

 

「分かった。ペンダントを使ってこまめに情報を送ってくれ。万が一の場合、逃げられるように落ち合う場所を決めておこう」

「違いますよ、マリー。倒すため、誘い込む場所を決めるんです」

「……エリーは強いな」

 

そうして最初はダンが囮となり、遠くからエリーが様子を伺うと言う形を取った。

途中気が付かれたため尾行から第二の囮へときりかえる事で見事に策が功を奏し、アタシ達は犯人らしき人物を見事に追い詰めていた。

 

万が一にもエリーの姉だった場合、エリーの姿を見られると逆に逃げられてしまう恐れがあったので人に見られないよう、エリクに変身している。

途中変身する可能性も考えて男女どちらでも違和感ない服に交換だ。

 

 

「お前、魔眼系のスキルだな? 顔を合わせられねえのは辛いがここで終わらせるぜ」

 

とはいえ、殺すわけにはいかない。

アタシは風に土くれを乗せて目に当てる。

 

「くっ、しまった。目潰しか!」

 

簡単な罠だが無詠唱と併せると厄介だろ?

引っかかってくれて嬉しいぜ。

 

目潰しの隙を利用して、抑えつけた後、用意した紐と布で縛り上げ、目隠しをした。

猿ぐつわはまだだ。

いくつか尋問しとかねえとな。

 

「君たちは冒険者かい? 私をどうする気だね? 私はバレッタ領主の娘だよ。勝手に捕まえると問題になるんじゃないかな?」

 

……確かにエリーと同じ色の金髪だ。

だが、こいつが本当にエリーの姉なのか?

エリー、いやエリクの方を見るが表情は暗い。

 

「顔だけなら確かにそうですね。ですが、あね……長女は灰色の髪を持つ貴族、ファティーニ辺境伯に嫁いだはずです。なぜここにいるのですか?」

 

ファティーニ辺境伯?

たしかバレッタ領の隣、西の魔王領から来る魔族たちから国を守る貴族のはずだ。

 

そんな大物貴族が婚約相手かよ。

だとすると余計おかしいぞ。

 

姿を騙すスキルがあるんだ。

灰色の髪なんて名乗ったら関係性を疑われるだろうに何を考えているんだ。

 

「……私はファティーニ伯爵から婚約破棄をされてここへ来たんだ。知らないのかい?」

「なぜ婚約を破棄されたのですか?」

「私の容姿が気に入られなかったらしくてね。それで実家に帰るわけにも行かないからここへ逃げてきたのさ」

 

エリクはため息をつく。

なにか思うところがあったのだろうか。

 

「そうでしたか。やはり貴方は姉ではありませんね」

「姉? 何を言って……」

 

「ファティーニ辺境伯は貴方の容姿と政治的な強化をもとめて婚姻関係を結びました。性格に難はあるが、それを補って有り余る容姿である、と。その貴族の方が今更、顔でお姉様を放り出すはずがありません」

「……何?」

「そして姉にスキルはありません。話し方も違います。貴方の話を聞いて確信しました。貴方はなぜ姉様の姿をしているのですか?」

 

その時、リッちゃんから通信が入る。

……この振動は緊急連絡のサインだ。

 

かなり途切れ途切れのメッセージだな。

よほど焦っているのか。

 

 

「伝言を読み上げるぞ。二つ連絡。長男、死んでる。毒殺。犯人は魔族。次男と次女に、化けていた。一部、討伐済み。幽閉された、金髪の女性、推定長女。死亡確認。そちらの女、誰? ……なんだと?」

 

「じゃあ、ここにいるのは……」

「くすくす……。バレてしまったか。ここまで綺麗に引っかかってくれると嬉しいな。騙しがいがあるね」

 

いつのまにか縄がほどけている。

そう簡単に抜けられるようなヌルい締め方はしてねえぞ。

 

……いや、体がおかしい。

全体的に丸みを帯びて変形している。

何だコイツ? なにかおかしいぞ?

 

「改めて正式に名乗りを上げよう」

 

その顔が変形していく。

なんだその顔は。

三つの穴が不規則に空いているだけだ。

 

「私のスキルは『擦リ変得ル追憶』、そして私の種族はドッペルゲンガーさ」

 

ドッペルゲンガーだと!?

 

「殺した相手の姿を乗っ取るっていう奴だな、お前は魔族か?」

「ご名答。理解が早くて説明の手間が省けるよ」

 

姿がさらに変形していく。

 

「私は魔王軍工作部隊隊長。通称『改変』のノルヘルという。ついでだ、私の輝かしい功績を聞いてくれ」

 

ふざけてんじゃねえぞ。

前に戦った奴の仲間か?

 

「我々は魔王様の命を受けて人の領地入り込んだんだ。目的は領地の内乱と分断さ。最初はファティール辺境伯の領地を荒らす予定だったんだけど守りが硬くてね。代わりにバレッタ伯爵領地を混乱させて、力を魔族領に注げないようにしたんだ」

 

バレッタ領地を混乱させた、だと?

じゃあもしかしてここ一年の騒動は……

 

「男爵領地で街から近くて使われてないダンジョンを見つけたのも幸運だった。おかげで素晴らしい戦略が立てられたよ」

 

「第一目標であるバレッタ伯爵領地の無力化は達成した。第二目標である隣の男爵領での反乱ももうすぐだ。今は冒険者をひっそり狩ってる頃かな? その後に大反乱だ。楽しみにしていてくれ」

 

おいおい、洒落にならねえぞ。

……だが、一つ思い違いをしているな。

 

「ついでにバレッタ領地で見つけた召喚石を使って味方の召喚士を強化する予定だ。この完璧さ、まさに幸運の女神がついているようだと思わないかい?」

 

なるほど、石ころはお前が持っていたのか。

それで誰も見つからなかったんだな。

 

「アタシからも教えてやる。ペラペラと内情を喋るスカした野郎はブチのめされて消える雑魚だって相場が決まってんだよ」

 

ドッペルゲンガーの野郎からコココ……。と奇妙な音が聞こえる。

笑ってんのか?

 

「普通ならそうだろうね。さて、ここで質問だ。先ほどから二人とも私の目を見ているが気が付いていたかな?」

 

すると、コイツの両肩から目が開き、紫色に光る。

マズイ!

 

「私は体の、目や鼻の位置、内蔵まで自由に変えられるんだ。君たちみたいな不完全な生き物と違ってね。このスキルは制約がきつくて時間稼ぎをする必要があったが……。これで、今の会話は彼方に飛んでいったね。なーに、数年経てば思い出す事もあるさ」

 

マズイ、意識が朦朧としてきた。

 

「長女は死んでるのがバレてしまったんだったな……。攻撃してスキルが解けてもマズいし……。よし、こうしよう。君たちは冒険者としてここに来た。女の子を探るためだ」

 

なんでアタシはここにいるんだ?

そうだ、誰かをしらべにきたんだ……

マズイ、術中にハマっている。

 

「探っていた店に働いているサリーという娘。なんと恐ろしい事に彼女を殺した奴がいるらしい。かわいそうに、腹を裂かれて殺されていた」

 

聞くな、きくなアタシ。

せめてエリクに……

 

「殺したのはファティール辺境伯の一人息子。彼が愛していたバレッタ伯爵の長女、彼は彼女を愛するあまり幽閉したが、ながい幽閉生活で死に追いやってしまう」

 

……そうか。ろくでもないやつだな。ファティールは。

 

「哀れにもその一人息子は自らの失態を隠すため逃げだした。更には罪を隠すために隣の領地で魔物を暴走させる予定らしい」

 

まものを? なんてわるいやつだ。

まものをぼうそうさせるのか?

とめないと。

 

「これから君たちは、それをギルドに報告しに行くんだ。そうだろう?」

「ああ……そうだな」

「理解してもらえたようだね、それじゃあ失礼するよ」

 

しらないひとにいろいろおしえてもらった。

 

……そうだ、ギルドに行かないと。

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