エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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第57話 古代の力

「ご指名ありがとうよ。でも悪いがあんたは私の好みじゃねえんだ」

「つれないことを言うのう。だが否が応でも術式を使わせるまでのこと。行くぞ」

 

アタシは再び武器を構える。

 

「ファイアローズ! サンダーローズ!」

「そうそうそれじゃ。もっと撃ち込んでみるが良い」

 

くそっ、やはり魔法が効いてねえのか。

……いや攻撃を受ける瞬間、ほんのわずかだが動きがこわばっている。

そのタイミングで、僅かながら白い光が全身から吹き出している。

これは悪魔の時と同じで、一応効いているのか?

 

「ふむ、効いているかどうか分からなくて不安か? 安心するがよい。お主の一撃は一部無効化出来ずにまともに食らっておるわ。それよりも興味が勝っての。その力を我に見せておくれ」

「ちっ! 何だか知らねえが見せてやるよ!」

 

くそっ、なめやがって!

アタシは炎、雷、風と魔法を繰り出していく。

 

「それだけ多様な技を出せるか……。だが借り物でない力を借り物のように振る舞う必要もないだろうう。肝心の根源魔法を使わないとは。使い方を知らぬのか?」

 

根源魔法?

なんだそりゃ?

 

「もっと分かりやすく言いやがれ!」

「マリー! 根源魔法っていうのは神話の魔法だよ! 全ての魔法の根源となる力! それを直接魔法として使うのが根源魔法だ!」 

 

答えたのはリッちゃんだった。

 

「そうかい! どうやって使うんだ!?」

「神話では『そのまま使った』とだけしか書かれていないんだ! もう失われた神話の魔法だよ!!」

 

それじゃあ使いようがねーじゃないか。

 

「あれから幾千もの年月が経っておる。伝承が途絶えても仕方あるまい。そこの小娘の言うとおり、そのまま使ってみるがよい」

 

精霊がご親切にもアドバイスをしてくれるが、それがわかれば苦労しねーよ!

いつまでたっても別の技を使わないアタシに業を煮やしたのか、精霊が大きくため息をつく。

 

「お主はさしずめ勇者の卵といったところかな、惜しいのう」

「勇者だあ?」

 

そんな対魔王暗殺用の存在と一緒にするんじゃねえ。

そんなもんは王都の温室にしかいねえよ。

 

「そういえば過去の勇者も追い詰めるまで力が発現せんかったのう。よしっ、ならば死ぬ一歩手前まで追い詰めてみるとするか!」

 

やってみよう的なノリで軽々しく人の命を左右するんじゃねえよ!

 

「もしかすると主の仲間も、何かしら覚醒するかもしれんの。まとめて半殺しじゃ。うっかり殺してしまったらすまんの」

 

精霊が軽く手を振るう。

すると、アタシの片足、膝から下が吹き飛んだ。

 

「……は?」

「まずは片足じゃ。……手足だけならもいでも死なんよな? 頭をもいではイカンのは知っとるぞ」

 

脳が追いつかないのか、痛みが後からやってくる。

人外め。人の常識を持たないやつは厄介だ。

 

「そういうのはやる前に聞くもんだろうが! サンダーローズ!」

 

「マリー! 〈再生〉〈治癒〉」

「よくもマリーを! 〈火球陣〉!」

「ふむ、大丈夫そうじゃな」

 

リッちゃんが牽制をおこない、エリーが回復魔法をかけてくれる。

おかげで少し痛みが引いていく。

さすがに無くなった足までは再生まではしないようだが、スキルを使えばなんとかなるはずだ。

 

……だがこの状態でスキルを使わせてくれると思えねえな。

むしろ途中で妨害されてろくでもない結果になる可能性が高い。

 

「ありがとよ二人とも。片足でもやれるさ」

 

このクソッタレの精霊が言うには、アタシがなにかの魔法を使えればいいんだろう。

 

「はぁっ!」

「魔法を衝撃波に変えたか。だがそのようなものではないぞ、さあ次だ!」

 

次だ、じゃねぇ!

アタシは立て続けに魔法を唱えていく。

毒、音、光、闇……

あらゆる魔法を唱えるが、そのどれでもないようだ。

そのまま使うとかどうやるんだよ。

 

「うむむ、うまくいかんのう。時間も迫っておるし力もあまりない……。 そうじゃ! 思いついたぞ! 主らの仲間を寝取らせてもらう、これならどうじゃ?」

「てめえ、何言って――」

 

言い終わらないうちに、紫の霧が二人を襲う。

 

「きゃっ……」

「うわっ!」

「エリー! リッちゃん!」

 

「さあ二人とも、我は愛しい愛しい恋人じゃ。理解したなら足を舐めるがよい」

 

精霊は水の中から足を出すと、見せつけるように足を出した。

 

「うう…… ああ、そうだったね。メイ。今日はそう言うプレイの日だったっけ……」

「お、おい正気に戻れ! つか、部屋でそんなことやってたのか!」

「無駄じゃ、言葉だけでそうそう解けるものではない」

 

慌てて止めようとしたが片足では追いつけそうにない。

さらにはご丁寧に、残った片足を水が絡め取っていやがる。

リッちゃんはフラフラと近寄って行くと、足に口づけをした。

 

「ふむ……。こやつは堕ちたようじゃな。さて、次はお主じゃ」

 

精霊がリッちゃんに合図を出すと、フラフラと横に移動してボーッと立っている。その目は虚ろだ。

アタシの声が聞こえた様子はない。

 

「正気に戻れ! リっちゃん! エリーも!!」

 

くそっ! エリーはアタシのもんだ!

させるかよ!

エリーもまた、宙空を眺めながらなにかをブツブツと呟いている。

 

「私が、愛する人は……」

「ほう? 抗うのう。じゃがムダじゃ。すべてを忘れて我を愛すると良い」

 

そう言うと精霊はエリーの方に向かっていく。

くそっ、なにか仕掛ける気だな。

 

「アタシのエリーに……」

「ん? 何か言ったかの? 力も使えん小娘に何ができるのじゃ?悔しければ力を使ってみい」

 

くそが! 挑発してんじゃねえ!

 

「私の、愛する人は……」

 

まだ抗っているようだ。

エリー、持ちこたえてくれ。

アタシはコイツをなんとかする!

 

「エリーに手を出すんじゃねえ!」

 

足元の水を吹き飛ばし、アタシは全力で飛び上がる。

武器も持たない、やぶれかぶれの一撃だ。

 

「エリー!!!」

「愛する人は…………マリーです! あなたではありません!」

 

エリーが精霊の腹を突き飛ばす。

そのタイミングでアタシの一撃が背中にぶつかる。

その一撃は背中で止まるかと思ったが、なにかと干渉しあうように力が増幅されていく。

 

そのままアタシの手は精霊の背中を貫いた。

なにかに引き寄せられるように、アタシの腕が導かれる。

 

背中を貫き突き進むと。誰かの手を掴んだ。

……これは、エリーの手だ。

 

精霊相手に戦う力を持たないはずのエリーもまた、アタシと同様に精霊の腹を貫いていたのか。

傷口からは血の代わりに光の粒が大きく溢れる。

 

アタシは光の粒が弾ける中でエリーと手を重ね合った。

 

「なっ! 我の術を破ってさらに一撃を加えるとは……。これは……いや、これこそ根源の力! 先程までなにもできなかった小娘が急に力を扱えるとは!」

 

驚いたのか少し距離をとった精霊は、光の粒がこぼれ落ちる腹を愛おしそうに眺めながら笑顔を浮かべる。

痛みを感じねえのか。それともマゾっ気でもあんのかよ。

 

「見事じゃ! お主、名はなんという?」

 

精霊が問いかけたのはエリーの方だった。

なにか、今回のキッカケがエリーにあったのか?

 

「……私はエリーです」

「うむ、見事じゃエリーよ! 今回の一撃。お主があやつの力を引き出した! 真の立役者と言っても良い! 褒美をとらす! 我と契約をかわそうではないか!」

 

エリーはまだ警戒を解いていないが、精霊にさっきまでの圧はない。

なんだ? この戦いはアタシ達の勝ち……で良いんだよな?

 

「いえ、お断りします」

「なぜじゃ!? 我の力がこんな破格で手に入ることなどないぞ!」

「貴方は私からマリーを奪おうとしました。貴方の力を借りる訳にはいきません」

「なんと!?」

 

なんとじゃねえよ。

散々こっちを挑発するような行動を取りやがって。

アタシじゃなかったら片足吹っ飛んだだけで冒険者引退もんだ。

 

「むむむ……。せっかくの機会だというのに、我の力があれば戦闘でも力になるぞ?」

「いえ、結構です」

「ええい、もうあまり時間もなし……。やむを得ぬ。強制契約!」

 

エリーの手に、先ほど見かけた文字のようなものが一瞬だけ浮かび上がり、消える。

 

 

「これでよし。契約は成し遂げられた。お主が任意で魔力を込める事で、我の力を顕現させることができるぞ」

「いえ、ですから必要は……」

「これは我の詫びも含めておる。それに、力を使えばあのおなごを数百倍気持ちよくさせることもできるぞ?」

 

おい。何ドサクサに紛れてとんでもない事言ってやがる。

声のトーンを落としたようだが丸聞こえだ。

 

「でしたら受け取っておきましょう」

「うむうむ、ここだけの話じゃ」

「おい、聞こえてんぞ」

 

また夜が危なくなるようなモノを手に入れたか。

精神が壊れても治せるからって段々と遠慮がなくなってきてるんだぞ。

 

つか、流石に片足で辛くなってきた。

なんか戦いも終わったみたいだしいいか。

アタシはスキルを使って、体を治す。

 

「ほう! それがおぬしのスキルか。なるほど! それであの悪魔どもの枷を解いたわけだな」

「うるせえよ。なんだ枷って」

「うむむ、その話も失われておるのか。ほんの数千年程、悪魔が男どもにかけた身体強化の呪いじゃ。詳しく話してやりたいが時間がない。適当に神話でも漁るがよい。骨組み程度はわかるはずじゃ」

 

確かに光の粒が流れる量が多くなってるな。

クソっもう一発ぶん殴ってやりてえが、さっきの力が出せない。

 

「基本的に我々精霊はお前たちの味方であると思ってくれれば良い。それではしばしさらばじゃ! 我は子爵級精霊、水のアプサラス! また呼び出してくれることを楽しみにしておるぞ」

「誰が呼び出すか!」

「まったくです!」

 

一方的にそういうと精霊は光の粒なって消えてしまった。

殴りたりねえぞコラ。

 

 

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