エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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第64話 本当の講師

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「これからはその冒険者の方々が先生として指導を行っていくんでしょうか?」

「まあそんなもんだ。こんなやつでも残念ながらB級冒険者だからな」

 

「ふはは! 力が欲しいか! なら私についてこい! オーガすら屠る力を与えてやろう!」

 

ルビーの奴、パフォーマンス代わりに斧を片手でブンブン振り回している。ウザい。

 

つかおとぎ話に出てくる魔王みたいなこと言ってんじゃねえ。

お前みたいに力の代償に知性が失われたら元も子もないだろうが。

 

「嘘だろ……。あんな人達が次の講師を……?」

「大丈夫かな? 死なないかな……?」

 

アタシたちの優しい指導とは違ってキツそうだもんな。

分かるぜその気持ち。

 

「え? マリー先生の地獄のしごきが終わったと思ったら、次はあの人達?」

「お、お前たちは俺が守ってやるから、あ、安心しろ」

「もっとマリー先生に手とり足取りしごかれたい……」

 

 

……男どもはなんか思ってたのと違う感想だな。

というかヤバイ方向に目覚め始めてる奴らがいる。

そういう奴らはオーガキラー送りだな。

脳みそを筋肉に変えて余計な事を考えられないようにして貰おう。

 

「まあこの中から何人かはアタシ達と一緒に魔物で戦い方を覚えてもらう。他はこの『オーガキラー』とC級冒険者でそれぞれチーム分けをして、面倒を見るからな」

 

一応、これからの事を細かく説明しといてやる。

 

「ふはは! 任せておけ! こいつら全員、オーガをボコボコにするほどの強力な冒険者に仕上げればいいんだろう!」

「そうだけどそうじゃねえよ」

 

ちゃんとマナーや道徳も……。

いや高望みしすぎたな。

犬に空を飛ばせるほうがまだ現実的だ。

 

お前らが戦闘能力に特化しすぎているせいで、わざわざモラル関連で他の冒険者をあてがうくらいだもんな。

 

「お前ら、今回また失敗したら連続して強制依頼受ける羽目になるぞ?」

「ひいいっ! やめるんよ! もうしばらく強制依頼は良いんよ! 姉ちゃん、強制依頼を受けないためにもちゃんとするんよ!」

 

いきなりサファイが恐怖の声を上げてきた。

珍しいな。

コイツがこれだけ懲りてるなんて。

 

「お前がそんなことを言うなんて珍しいな? そんなに酷い依頼だったか?」

「やめるんよ! 思い出したくないんよ! キングローパーが、ヌルヌルがウチの体に入り込もうとしてくるんよ……」

 

ローパー系は体内に卵産み付けようとしてくるからな。

その辺でなんかあったのか。

まあローパーのヌルヌルはローションや媚薬の材料にもなってるしな……。

 

可哀想に、慰めておくか。

 

「気持ちよくなれたんだろ? 良かったじゃねえか」

「マリーには分からないんよ! ほんのり気持ちいいのが気持ち悪いんよ!! あの皮膚を這い回る感触……ひいぃっ!」

 

すごい剣幕で怒られた。

でもちょっと気持ちよくなってんじゃねえよ。

 

「なあに、サファイよ! 姉ちゃんがどんな敵もぶった切ってやるからな」

「たおした奴は切らなくても良いんよ……」

 

さて、コイツらはほっといてひよっ子にフォロー入れとくか。

 

「みんな、こんな奴らで不安だろうが、戦闘能力はA級にも届く冒険者だ。C級冒険者もサポートにつくからな。常識はそいつ等から学ぶんだぞ」

 

ひよっ子共がざわつきながらもはい、と返事をしていく。

 

困ったことがあったら言えよ、皆。

間違ってもこんなバカになるんじゃないぞ。

ダンの野郎は手遅れだが。

 

「さて、アタシ達が面倒を見る奴らだが……」

「それは私から連絡しますね。今回はルルリラさん、ウルルさん、アルマさん、フィールさん、ガロさん……計五名の方は私達と行動してもらいます」

 

エリーが名指しして、それでは後で私たちのところに来てくださいと声をかけていく。

 

本当は全員女の子で揃える予定だったが、さすがにあの三人組を引き離すのは可哀想だからな。

ガロは特別枠だ。

 

「えぇ…… またあのシゴキを受けるのかよ」

「ガロ君またそんなこと言って! マリー先生のトコで良かったじゃん! オーガキラーのトコに入ったら絶対大変だよ!」

「私達は節度を持ってマリーさんとお話しすればよいのです」

 

おう、よく分かってるじゃねえか。

 

ひよっ子たちにはとりあえず最後の訓練として、二人一組になってもらってお互いの動きを指摘するようにさせている。

 

アタシ達はこれから来るC級冒険者に引き継ぎをしなきゃなんねえからな。

変なやつだったら可愛い奴らのためにも潰さないといけねえ。

そのための自習だ。

 

「マリーじゃない。久しぶり! それにエリーも」

「コリンさん。お久ぶりです、お元気でしたか?」

 

おっ、懐かしいな。

『幌馬車』のリーダー、コリンじゃねえか。

 

「僕もいるよー」

「リッちゃんも久しぶりね!」

 

リッちゃんが後ろから声をかけてきて、コリンも挨拶を返した。

 

「久しぶりだな! たしか……館でのちょっとしたパーティー以来か?」

「それくらいかしら? でもマリーが先生をやってたなんてね。講師の打診を受けてこっちに来たんだ」

「てことはコリンがこの講師をやるのか」

 

でもたしかD級じゃなかったか?

今回はC級の依頼だったはずだが。

 

「僕たちはこの間C級にランクを上げたんだ。色々あってね」

 

コリンの後ろにいた知ってる……いや、知らないイケメンが声をかけてきた。

ナンパならお断りだ。

 

「コリン、知らない奴が話しかけてくるんだがコイツは誰だ?」

「やだなー。私の旦那様よ」

「……え? は? ジクアと結婚したのか!?」

「なんだ、僕の事覚えてたんだね……」

 

イケメンがなんか言ってるかどうでもいい。

しかし、結婚とかマジかよ。

なぜか置いていかれた気分だ。

 

エリーとリッちゃんが二人におめでとうと声をかけている。

 

「私もいい年だしね。実はもう、お腹に子供もいるんだ」

「なに! 無理やりだったら責任を取らせてやるから安心しろ」

「いや責任を取ったから結婚したんだよ?」

 

おのれ、合意の上で子供まで作るとは。

用意周到なやつだ。

 

「僕たちも最初はB級冒険者のマリー達って言われてもピンと来なかったよ。ただオーガキラーのリーダーと死闘を繰り広げた君だ、特例で昇級したんだね」

「まあそんなトコだ。積もる話もありそうだし後でな。コリン、おめでとう」

 

アタシはコリンと握手をする。

 

「ありがと、マリーも早く大事な人ができるといいわね」

「いや、もういるからな?」

 

アタシはエリーの手を引っ張る。

 

「紹介に預かりました、エリーです」

「え!? ちょっとマリー、いつの間にエリーちゃんと!? そっちのほうが驚きなんだけど!」

「まあ、恋愛の形は自由だしね。いいと思うよ」

 

イケメンが爽やかな笑顔で肯定してくる。

うるせえよ。

お前は子供と女房のことだけ気にかけてろ。

 

「んー、二人が満足してるならそれでいいんじゃないかな? 私も応援しちゃうわ」

「おう、ありがとよ。しかし、講師は……大丈夫か?」

 

結構ヤンチャな奴らもいる。

特に子供がいる状態だと辛いだろう。

それにコイツらメインの稼ぎは行商だ。

 

「ああ、『幌馬車』は一時的に休業する事になるね。でも大丈夫さ。子供がいる状態で行商は辛いし、それなりに蓄えもあるからね」

「他のメンバーも数年はここで生活するわ。ギルドが人手不足で困っているみたいだから、ちょうどいいかなって」

「僕とコリン、二人で基本的な知識とマナーを教える予定さ」

「臨月が近づいたらジクアに任せる事になるわね」

 

ちょうど良かったよ、とジクアは続けてくる。

相変わらず交互に話してくるな。

息がピッタリだ。

 

「いや、講師ってアレだぞ? あのアホの尻拭いだぞ?」

 

アタシが指さした方向ではいつの間にか『オーガキラー』の二人が模擬戦闘を始めていた。

いや、ホントに何やってんだアイツラ。

 

「はぁ! 振動圧!」

「うおお! マッソーパウアッ! 甘いぞサファイ! 部下たちを鍛え上げるためにはそのような生ぬるい力では足りない! もっとだ! もっと激しく燃え上がるのだ!」

「いや、お前らの部下じゃねえよ」

 

何勝手に自分の部下にしようとしてやがる。

アタシの可愛いひよっ子達だぞ。

 

「む? マリーよ、そちらの二人は何者だ?」

「えっと、始めまして。私はC級冒険者『幌馬車』のコリンと、夫のジクアと申します」

「……むっ? おお、聞いているぞ! コチラこそよろしく頼む! 私の至らない部分を補ってくれるそうだな! 頼んだぞ!」

 

え?

なんで普通に会話して普通に握手できるのお前?

アタシ、ルビーがコリンに攻撃してくる万が一を想定して武器構えてたよ?

 

「おいサファイ。ちょっと来い」

「なんなんよ……。ちょっと引っ張らないで!」

 

アタシはサファイの腕を引っ張ると、ルビーから離れて声が聞こえないところまで移動する。

 

「まったく! 何するんよ!」

「おう、すまん。ルビーの奴どうした? ヤバイ薬にでも手を出したのか? 凄まじく常識的な対応だぞ?」

「相変わらずの失礼っぷりなんよ! 姉ちゃんは弱いものには優しいんよ。ちょっと強そうな奴がいると腕試ししたり、変な疑いをかけられると力で解決したくなるだけなんよ」

 

マジかよ。人間としての行動も取れたのか。

……嘘くせえ。

 

「てっきり見境なく冒険者に襲いかかってくる奴だと思ってたぜ」

「姉ちゃんは狂犬じゃないんよ!?」

 

いやもっとタチ悪いだろ。

狂犬に謝れ。失礼だぞ。

 

……いや待て。

たしかに最初にあった時は会話から入ったな。てことは……。

 

「あいつ、最初アタシを格下に見てやがったのか! 許せねえ!」

「なんでキレるんよ!? 話しかけても襲ってもキレるとか、マリーは意外と面倒くさいんよ……」

 

失礼な奴だ。

襲いかかってくるのが悪いんだろうが。

 

「ねえマリー、こっちは話終わったけどそっちはどう?」

「おう、コリン。どうだ? オーガキラーのリーダーに会った感想は?」

「うん? そうね……話してみると悪い人には見えなかったけど?」

 

マジかよ。

お前騙されてるぞ。

そんなんで行商人やっていけるのか?

 

「とりあえず、ルビーさんは戦い方だけを教えるわ。それ以外は私達にまかせて貰うことになったのよ」

「それでいい。いや、それが良いな」

 

本当は戦闘ですら任せたくないが……

仕方ないか。

一応戦闘能力だけはバケモンだしな。

戦闘能力だけは。

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