エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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第67話 森の戦い

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南西にある森の入り口についた。

懐かしいな。

ここでエリーと出会ったのが昨日のようだ。

 

「さて、この辺りはゴブリンしかいない。だが、間違っても森の奥には行くな。中心部にはオークなどの魔物も観測されている」

 

さて、ここで食べられる草とかの説明もしておくか。

 

「ゴブリンを見つけるまで簡単な説明をするぞ。例えばこの草だが――」

「あ、知ってる! 香味草ですね! 肉と合わせると臭みが消えて美味しくなるんです!」

 

ほう、知っているのかアルマ。

 

「私子供の頃は、森で育ったので森には詳しいんです。」

「ならちょうどいい。皆に食べられる草やらを説明してくれ。アタシは最低限の事しか教えられないからな」

「えっ!? 大丈夫かなぁ……」

 

いや大丈夫だと思うぞ?

アタシなんて香味草は辛みはあるが食える草くらいの認識しか無かったし。

 

「まあやってみろ。ギルド絡みのネタはアタシが補足してやる」

「そう? それなら……」

 

一歩前に出て、あちこちから草や木をむしってくると説明を始めた。

 

「この木はね、新芽を食べる事ができるよ!」

「このキノコは毒があるんだけど、煮詰めると毒が抜けるし、汁は煮詰めて弓に塗ると狩りに――」

「この草は――」

 

もの凄い勢いで話している。

アタシは見ているだけでほとんど説明することがない。

せいぜいギルドの買い取り依頼が出ているやつくらいを紹介するくらいだ。

 

つか森の中に食い物こんなにあったのか。

エリーも感心しているな。

 

「マリー、彼女の知識は凄いですね」

「いや驚いた。森の中ならアタシより知識上だぞ」

 

アタシじゃあそこまで詳しくない。

むしろアタシが講義を受けたいくらいだ。

 

おや、リッちゃん。

なんだか難しそうな顔をしているな。

 

「どうしたリッちゃん?」

「んー……なんか、あのコどっかで見たことあるような? 懐かしい感じ?」

 

なんだそりゃ。

千年前からの友人かよ。

ズッ友にしても長すぎんだろ。

 

「まあいっか! なにかキッカケがあれば思い出すよ!」

「おう、思い出したら教えてくれ」

 

しばらくすると満足げに講義を終えたアルマが戻ってくる。

 

「えへへ、ちょっと全力で説明しちゃいました」

「おつかれさん。凄い知識だな」

「本当に凄かったですよ。どこで学んだのですか?」

「あたしは森で育ったから森と友達なんだ! さっきの知識も森が教えてくれるんだよ」

 

おおっ、森に生えてるツタがアルマの意思に応じて変化する。

操っているのか。

 

「これは『樹木操作』……か? いや、もっと汎用的なスキルだな?」

「へへん! これはね……」

「アルマ! いけませんわ! そのスキルは秘匿とするように言われているはずです!」

 

アルマの相方が慌てて割って入ってきた。

もう少し見たかったが仕方ないか。

 

「あ、そうだった。と言うわけで秘密です、ごめんねセンセー」

「気にすんな。誰にだって話せないネタはある」

 

アタシたちも秘密の塊だしな。

 

「マリー、左手の方にゴブリンの反応があります。数は三。このまま行けばあと五分でぶつかりますね」

 

そこでエリーから声がかかる。

〈探知〉の魔法に引っかかったか。

 

「お前らゴブリンが見つかったぞ。普通にやっても勝てるがいい機会だ。チームで戦ってみろ」

 

そう言って金髪ショタの三人チームは二匹を、ウルル達のチームは一匹を相手にするように指示を出す。

 

 

「戦いの基本はそれぞれが役割をこなす、不意をつく、囲んでボコる、これだけだ。これでちょっとくらい戦力に差があってもひっくり返せる」

 

まあ人間相手だとそもそも囲ませてくれなかったり、戦力差が大きいと逆に囲いを抜かれて囲い返されたりするがな。

 

「だが今回は敵も戦力が多くない。一対一でも勝てる相手だ。それぞれの強みを活かして弱点を殺すように戦い方を工夫して、できるだけ気づかれず倒せ」

 

アタシはエリーに合図をする。

 

エリーは幻惑の魔法でゴブリンを二手に分けた。

まずは数の多い方を倒すようにガロ達に合図を出す。

ルルリラ達はリッちゃんに監督させてアタシはガロ達の方を面倒見る事にする。

 

 

「ま、任せろ! 俺が先に相手を惹きつけて……」

「待ってガロ君。私が足止めするね」

 

そういうと、森の根がうねり足に絡みつく。

アルマは弓をつがえ、混乱しているゴブリンを撃ち抜いた。

 

「まずは一匹〜」

「では残りは私が片付けますわ【暗闇に眠る棺の王。昏き夜に疾る無風の刃は敵を穿つ】〈夜爪〉」

 

見えない影が一瞬走ると、残っていたゴブリンの体がバラバラになった。

 

あっという間に終わってしまったか。

ちょっと簡単すぎたな。

……というか手慣れている。

 

「流石はガロ君!」

「やはり貴方がいないとですわ!」

「へ? いや俺なんにも……」

 

いや金髪ショタは何もしてねえだろ。

初めて戦うみたいだから段階的に慣らしていこうと思ったが……

こいつら実力を隠してんな?

 

「そんな事ないよ! ガロ君がいたから、アイタッ!」

「痛っ! マリー先生、痛いですわ! なんで私達を殴るんですの!?」

 

なんでもクソもあるか。

 

「お前ら、ガロを戦わせない気か?」

「た、戦わせない訳じゃありませんのよ?」

「そうそう、ガロ君は私達の秘密兵器だから……」

 

一生秘密にしてるつもりかお前ら。

男なんて前線で肉壁になってナンボだろうが。

これはお仕置きが必要だな。

 

「これは後で使う予定だったんだが……」

 

アタシは懐から小瓶を取り出すと、金髪ショタにぶっかける。

 

「うわっ、何だこれ?」

「これはな、魔物寄せの香を薄めた物だ。効果はすぐに切れるだろうが、お前たちを狙って大量にゴブリンがくる。手出しはしないから頑張れよ」

「そのくらいの雑魚ならなんとでもなりますー!」

「ええ、ゴブリンが何匹来ようとアルマが足止めして私が魔法で切るだけですわ」

 

ほう、やっぱり実践に慣れてんなコイツら。

なら……。

 

「じゃあスキルを使うのも禁止な」

「へあっ!?」

「非道いですわ! どうやって対処しろといいますの!?」

 

コイツら、なんのために魔法やら動き方を教えてたと思ってんだ。

 

「敵が来るのも分かっている。敵の種類も分かっている。何が問題なんだ? 守りを固めても良いし、奇襲のために囮を使ってもいい」

 

囮というのは当然ガロの事だ。

だがさっきまでガロを庇っていたお前たちにその決断は無理だろうな。

 

……本当は囮を使うほうが効率良いんだが。

 

「もしこの約束を破るなら、ガロをこの間の男に渡して同性愛に目覚めさせる」 

「ひっ、そんな無茶苦茶な!」

「させませんわ! ガロさんは私達のモノでしてよ!」

「おい! 俺の意見は無視かよ!」

 

金髪ショタがなんか吠えている。

残念だが弱い冒険者の意見は通らねえよ。

さて、風向きからいって上手く匂いを送り込んだつもりだが……。

 

「マリー、そろそろ敵が来ますよ。敵の数は……」

 

お、来たか。

アタシは指を口に持っていき、喋らないようにサインを送る。

 

「コイツらは戦い慣れてるみたいだ。これ以上は情報無しで戦ってもらう」

「この先生、鬼ですわ!」

「鬼! 悪魔! アンデッド!」

「ちょっと、アンデッドをひとくくりにするのはやめていただけませんこと?」

 

そうだ、そうだ。

アンデッドはリッちゃんだけだ。

つかゴブリンなんて雑魚じゃねえか。

慣れてるなら余裕だろ。

 

やがてアチコチから集まってきたゴブリン達が姿を見せる。

ひい、ふう、みい……。ちょっと多いな。

 

「二十体はいますわ! この数をスキル無しで戦えと!?」

「頑張れよ。もし死んだらガロは色街送りだ」

「フィーちゃん! 絶対に勝つよ!」

「負けませんわ!」

 

おう、その心意気だ。

ん? なんかウルル達がこっちを見てるな?

 

「なあ、センセ。俺達は行かなくて良いのか?」

「お前らは戦い慣れてるんだろ? アレは戦いを舐めた奴らへの罰だ」

 

戦うときまで脳みそピンク色になってる奴らはどこかで確実にやらかす。

ここでしっかり矯正しとかないとな。

 

「まあ見てろ。本当にヤバかったら助けに行ってやるから心配するな」

「そうかー? まあ俺は良いけどよ」

 

なんだか暇そうだったので、リッちゃんとエリーに魔法の手ほどきを受けるように伝えておく。

 

三人くらいならアタシ一人でも面倒見られるさ。

 

 

「【……き夜に疾る無風の刃】〈夜爪〉! くっ、数が多くて詠唱が……」

「私の弓も間に合わない!」

 

おう、このままだと押し切られちまうな。

誰かが盾になってやらねえと。

 

「俺が前に出る!」

「いけません! 万が一ケガでもしたら……」

「大丈夫だ、俺だって戦えるんだ!」

 

ガロの奴が一歩前に出る。

そうだ、それでいいんだ。

 

「うりゃあああ!」

 

ガロが敵を一匹ずつ切り伏せるたび、少しずつ動きが良くなっていく。

緊張がほぐれてきたな、いいぞ。

 

最前線で戦って始めて男は強くなるもんだ。

 

「〈夜爪〉! ガロさん、素晴らしいですわ!」

「うん、これなら全部倒せるよ!」

「へへっ、あと五つ! ……いてぇっ!」

 

ん?なんだ?

金髪ショタの足に噛み付いてる生き物は……グリーンスネークか。

野生生物の一種だな。

 

ゴブリン共に紛れてやがったか。

魔物寄せは一部の野生生物も呼ぶんだったか。

 

まあたいした毒でもないし汎用薬で治せ……

ガロの奴、ゴブリンに回り込まれたのに気がついてねえな。

まずい。

 

「うぐっ! くそっ、俺がこんな所で……」

 

気を取られたスキにゴブリンの一撃を食らったか。

戦線崩壊かな?

さて、そろそろ手助けするか。

 

「ガロさん! ……よくも、よくもやってくれましたわね!」

「フィール! ダメ!」

 

瞬間、大気が震える。

気に止まっていた鳥たちが一斉に羽ばたいて逃げていく。

 

おいおい、なんだその気配は。

ゴブリンなんかじゃ比べ物にならねえ。

もっと上位種としての気配だぞ?

この娘、ナニモンだ?

 

「下等な生物ごときが! 良くも私のガロをっ!! 死ね!!!」

 

フィールの漆黒の翼が背中から生える。

軽く地面を蹴ると、滑空するようにガロの下へと移動していく。

スキルか? いや、これは……。

 

周囲のゴブリンたちを一瞬でなぎ倒すと、そのままガロを抱えて直進していく。

 

「おい、あいつどこまで行くんだ?」

「フィールちゃんが理性飛んじゃった! まずいよ! このままだと、このままだと……」

 

なんだ? まさか、発動後に副作用があるタイプのスキルなのか?

場合によっては動けなくなったり肉体にダメージが入るパターンもあるらしいからな、助けてやらねえと。

 

「ガロ君の童貞が危ない! 独り占めなんてさせるもんか!」

 

そっちかよ。

……あ、しまった。

気を抜いたスキにアルマも走っていってしまった。

しかもやけに早い。

……森の枝や根っこが弓のようになってバネのように押し出してるのか。

 

なかなか世話の焼ける子供達だ。

……一応連絡はしとくか。

 

「エリー、リッちゃん。ちょっとアイツラ追っかけて躾けてくるぞ」

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