エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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第68話 スキル覚醒

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うーん、困った。

 

「絶対に傷つけさせないぞ! 絶対にだ!」

「やめて、私達は魔族なんだよ? 私達に構わないで! ガロ君はガロくんの道を……」

「魔族がなんだ! 俺は守る! 俺の仲間を、大事な友達を!」

「ガロさん……」

 

金髪ショタと魔族っ娘達が三文芝居を張り切ってるがどうしたもんか。

本人達は大真面目だけどショタは流石に二人ほど強くないだろうしなあ。

 

第一もう皆ボロボロじゃねえか。

 

コイツもイチから指導をしたいのは山々だが、正直腕も焦げてマトモに動かないし、痛いからさっさと終わらせたい。

んでもってサクッと治療、待たせてる二人と合流、キャンプして今回は終了かな。

 

そろそろリッちゃんも来るし……。

来るよな? 迷子になってないよな?

 

いかん、気にしたら負けだ。

金髪ショタには悪いが、ここは予定通りサクッと終わらせよう。

真面目に頑張ってるとこ悪いが女の前であっさり負けるといい。

すまんな、お前は悪く……、いや将来イケメンになりそうなお前が悪いんだ。

 

「悪いがお前じゃ無理だ」

「いや、できる! 二人共、力を貸してくれ!〈多身一体〉」

 

何!? こいつスキルが使えたのか?

 

「へえ……、スキルを隠してたのか。やるな」

「これは、たった今目覚めたスキルだ。だけど使い方は分かる! この力で先生、アンタを倒す!」

 

〈多身一体〉……。

聞いたことあるな、どんな効果だったかな?

まあどんなスキルだろうと戦い慣れてないひよっ子に――

何っ!?

 

「剣に血が纏わりついて……。これは私のスキルではありませんか!? なぜガロさんがそのスキルを!?」

「俺のスキルは仲間のスキルを使える! 共有して一つの力にする! これが俺のスキルだ! 行くぞ!」

 

金髪ショタが血の刃を構えて向かってくる。

物語の主人公みたいな覚醒しやがって。

 

つか思い出したぞ。

ガロが使ってるスキル、昔の勇者が持ってたスキルじゃなかったか?

くそっ、お前は主人公か。

 

「うおおおおっ!!!」

 

血で作った刃を振り下ろして来る。

面倒だが仕方ない。

数発打ち合って……。

 

……まてよ?

この剣で切られたらアタシ操られるんじゃね?

血は液体だし……、ヤベッ!

 

全力で回避すると予想通り刃が変形しやがった。

マトモに受けてたら傷くらいついてたな。

 

「ファイアローズ!」

 

アタシは炎を刃にぶつけて血を変質させてやる。

……どうやら上手く行ったようだな。

剣から血の部分が崩れ落ちてるぜ。

 

「まだだ! 森よ! 枝で貫け!」

「アルマの力も使えんのか……」

 

厄介だなコイツ、一人で三人分くらい働ける。

 

ショタの後ろでへばってる二人が活気づくと生かして倒すのが難しい。

下手するとコッチも痛い目を見る。

これは短期戦しかムリだな。

 

「悪いな。少し眠っていてくれ。手加減できそうにない」

 

さっきフィールに打ったように掌底を叩き込んでやる。

……だが、一撃は当たらずに体をすり抜けた。

 

なんでお前も体が霧になってんだよ?

人間だろお前。

 

「俺が共有できるのはスキルだけじゃない! 身体の能力もだ!」

「おいおい、マジか……」

 

くそっ、ズルいぞ。

魔族の特性までコピーできるとかふざけんな!

フィールがほとんど使わなかった影の刃まで出してきやがって!

 

「先生、アンタは俺の仲間を傷つけた! ここで倒す!」

「勝負ってのはそんなもんだろうが。コッチがイかねえように注意しつつ、相手をイカせるのが勝負だぜ?」

 

とはいえ厄介だ。

上と後ろからは葉の刃に枝槍。

正面からはショタの剣。

側面は影の爪。

 

一つ一つが未熟だから捌けるが、成長したらマジでやられるぞ。

殺しちゃ駄目ってのは厄介だな。

 

「くっ、この! くそっ! 躱すな!」

「手数だけ増やしても正確さが足りねえな。細やかな気遣いができない男は嫌われるぞ?」

 

しかしなぜだ?

何故残りの二人は攻めてこない?

 

少し二人を見るが、むしろ息が上がってねえか?

激しく動いてる訳でもねえのに息切れ……?

 

まさか、そのスキル……。

 

「おいバカ、そのスキルを止めろ! 大変なことになるぞ!」

「うるさい! その手には乗るか! 二人は絶対に奴隷なんかにさせない!」

 

クソ馬鹿め!

だがアタシの推測が正しければ傷つけるわけにはいかねえ。

前から考えてたあの魔法を使うか。

 

「スタンボム!」

「うわっ! な、なんだ!?」

 

前に編み出した即席の光魔法に加え、音魔法で爆音を鳴らしてやる。

まあ眩しくてうるさいだけだが、怯ませるにはうってつけだろ。

 

……おや? 影の翼も消えたな。

そうか、光を当てると消えるのか。

太陽じゃなくてもいけるんだな。

 

だがこれが本命じゃないぜ?

この分からず屋を分からせるには……これだな。

 

アタシは残った一本の刃で太ももを軽く切りつけてやる。

 

 

「う! 痛……いっ、だけどなんだこのくらい!」

「ああああっっ!」

「くぅう……。痛い、痛いですわ」

「ど、どうしたんだ二人共! な、何をした!」

 

まだ気が付かねえのか?

自分のスキルなのに鈍いやつだ。

 

「アタシじゃない。アタシは毒魔法で毒を塗りつけただけだ」

「馬鹿な! じゃあなんで……」

「“共有”してるんだろ? 肉体の能力も、痛みも、全部な」

 

その一言にガロは顔を青くする。

やっと理解したかよ。

お前は昂ぶってるから痛みが気にならねえだろうが、戦闘が終わった奴はさぞ痛いだろうさ。

 

……霧になった身体が戻っていくな。

 

「スキルを解除したな? じゃ、とりあえずお前も戦闘不能にしとくぜ。サンダーローズ!」

 

三馬鹿を地面に埋めてしばらく待つと、やっとリッちゃんがコッチに来た。

 

「ごめんマリー。待った? ちょっと迷子に……ってその腕どうしたの!?」

「ああ、コイツらがなかなか頑張ってな。熱い一時を過ごしてたぜ」

 

今の三人は逃げ出そうとしてもがいたせいか中途半端に魔族の特性が出ている。

フィールは目と牙がそのままだし、アルマは耳が尖ったままだ。

 

「くっ、殺しなさい!」

「お願い! 私達はどうなっても良いからガロ君だけは!」

「俺は、守れないのか……? くそっ! くそっ!」

 

さっきから聞く耳持ちやしねえ。

なんでコイツら勝手にシリアスしてんだよ。

 

手加減したとはいえ拳で分かりあえないのは初めてだ。

やっぱり命の奪い合いじゃないと駄目か?

 

ん、なんだリッちゃん?

なにかを思い出したようにぽんと手を叩いて。

 

「ああ! キミなんか懐かしいと思ったら、エルフでしょ? ウチにプロトタイプのコいるから会いにきなよ」

 

突然のフレンドリーな姿勢にシリアス三人組が沈黙してしまった。

ナイスだ、リッちゃん。

……やっと誤解を解けそうだな。

 

「もしかしてこっちのヴァンパイア娘も知り合いか?」

「キミは……ファーちゃんと一緒に作ってた種族だね。最初の子はダルクールって名前にする予定だったけどあってる?」

 

「確かに初代真祖の名前はダルクール……。なぜ人間の貴方がご存知ですの? それにファーちゃん……とは? 私の一族は初代魔王ファウストによって、ファウスト……、ファー……? っ!?」

「そっかー。やっぱりあの子完成させたんだね。あの頃は魔力の肉体変化と食事からの魔力補給のバランスが難しくてねぇ」

 

おい、一人で昔に浸るな。

この場でついていけてる奴なんて一人もいないぞ。

 

「あ、改めて名乗るね。魔王の母です。いや、元父のほうが伝わるかな?」

「いや、今の魔王と別モンだしそれじゃ伝わんねえと思うぞ?」

 

元父で母とか無駄に複雑な家庭環境みたいでややこしいから省いてくれ。

 

「あ、ごめんごめん。ちゃんと名乗るね。えーと、我こそは魔族の創造主。愛しき初代魔王ファウストと共にエルフとヴァンパイアの祖を生み出せし者、リッチ・ホワイトなり。古き絆により繋がりし子供たちよ、楽にせよ」

 

フィールとアルマの顔が驚愕に歪む。

おお、やっと分かってくれたようだな。

 

分かったら恐れ慄いて反省を……。

……いかん、これじゃアタシがリッちゃんの威を借る狐じゃないか。

 

「ところでエルフのプロトタイプってどこにいるんだ? 見た事ないぞ?」

「え? マリーだって毎日見てるじゃん。メイだよ」

 

アイツかよ。

耳くらいしか似て……、いや最初会ったときに感じた駄目な子っぷりも似てるのか?

 

「あの、マリー先生は魔族の私達を殺しに来たんじゃ……」

「え!? そうなのマリー!」

「なんでリッちゃんも信じるんだ。そもそも魔族の創造主とかいう国家機密レベルの存在が身内にいるのに魔族の子供なんて殺す理由がねえよ」

 

アタシが倒すのは襲ってくる敵だけだ。

『オーガキラー』みたいなのと一緒にしないで欲しい。

 

「むしろリッちゃんの方こそ魔族と戦ってるけどいいのか?」

「僕が作った子なら気にするけど、世代も重ねてるし僕が関わってない子だとほとんど他人だねえ。倒すのは少し気が引けるけど……でも悪いことしたら叱らなくちゃね」

 

前も聞いたが、やっぱりそのへんは気にしてないんだな。

ちょっと気になってたんだ。

 

「あの、もしかして、もしかしてなんだけど私達を殺すつもりも、捕まえるつもりもなくて、ただ追ってきただけだったり……する?」

 

それ以外に何があるんだよ。

むしろなんでイキナリ殺しに来るんだ。

 

「何故アタシが殺しに来たと思った?」

「それは……。魔族を何人も倒して、悪魔ですら退けたと噂のマリー先生なら、魔族を見かけたら全力で殺しに来るかと……」

 

ゴキブリを見つけた主婦じゃねえぞアタシは。

 

「それに見逃してと言っても見逃してくれそうにありませんでしたわ」

「訓練中に暴走した奴を見逃すわけないだろ」

 

まったく、どうしょうもない奴らだな。

 

「あとは負けたら奴隷契約をすると……」

「従者の契約だ。どっから斜め上な解釈が出てきた?」

 

奴隷契約なんて何百年前のシステムだ。

現代は制度よりカネと名誉で縛ったほうが効率的なんだよ。

 

「ということは……私達の反抗はすべて無駄だったのですか?」

「いろんな意味でな。まあついでだから訓練がてらに戦ってみたが、意外とやるな」

 

そう言うと三人はアタシの腕を見て気まずそうにする。

これは気にすんなよ、自分の炎で焼いたんだし。

 

まあ治してからエリー達のところに戻っても良いが、暴走した件もあるしコイツらには少し反省してもらおう。

あんまりすぐ治せるのをバラしてもまずいしな。

 

どうしようもないが可愛い教え子達だ。

ちゃんと面倒見てやるよ。

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