エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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第76話 『ラストダンサー』

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「おかえりなさいませ」

 

館に戻るとメイが出迎えてくれる。

そばにはメイド服を着た魔族っ娘達が死んだ目で立っていた。

 

……色々と厳しく躾られたようだな。

とりあえず中で説明するか。

 

「――というわけで、明日辺りにお前たち宛に依頼が来る。ランクの制限があるから名目上はアタシ達だがな。質問はあるか?」

「チーム名ってなんでもいいのか?」

「ああ、だけど一回決めるとなかなか変更が面倒だからな。良く考えて決めるといい」

 

チーム名は知名度とも関わるからな。

そこそこ名前が知れてから変更すると解散とか不仲とか謎のスキャンダル扱いされるぞ。

 

「俺はアルティメット・マグナム・グランドクロスのほうがいいな!」

「おお! 俺もスーパーデンジャラスラグーンとかにしようと思ったんじゃんよ。気があうな!」

 

カリンとウルルが謎の意気投合をしてるがそういう無駄に強い名前は将来後悔するからやめとけ。

 

 

しばらく話しあった結果、名前が決まったようだ。

 

「カリン達は『森林浴』でウルル達は『狼と黒猫』だな。分かった伝えとくぜ」

「よろしくね! マリー姉さん」

「俺達もよろしくじゃんよ」

 

そっか、アタシ達の姉妹チームってことになるのか。

それなら今度また、ファン相手にお披露目会でもやろうかな。

でも魔族の問題があるから誤魔化す必要があるな。

 

ギルドにチーム名を届けた当日、即座に依頼が発行された。

内容はD級の魔物であるニードルベアの討伐だったが、特に苦労することもなくひよっ子達だけで倒してしまった。

 

魔族に変身すらしてない。

うちの子達は優秀だな。

これならアタシ達も心置きなく旅立てそうだ。

 

 

約束の日が来た。

前に戦ったストルスが後ろに二人の女を連れている。

「やあやあやあ。『エリーマリー』の皆さん。こちらが『ラストダンサー』のメンバー、ポリーナ、ジーニィの二人と、拙者ストルスである」

「おう、アタシは『エリーマリー』のマリー、コッチがエリーで、コッチがリッちゃんだ」

 

それぞれが挨拶を交わす。

 

「マリーだったっけ? ストルスがヤンチャしたみたいでごめんね」

「まったくだ。首に縄でもつないでおいてくれ、『氷炎』のポリーナさん」

「えっ!? 昔の二つ名知ってるんだ! 嬉しい! サインいる?」

 

いらねえよ。

アンタが昔この街に居たから知ってるだけだ。

 

「あ、もしかして夜の方がお望み? ゴメンね。私、今は相手がいるんだ」

「ちげえし、いらねえよ」

「あーん、でもマリーちゃんカワイイし、女の子相手なら一日くらい浮気しても許してくれるかな? ベッドの上でイチャイチャしてる写真送れば大丈夫?」

「話を聞け」

 

なんつーか、こんなキャラだったんだな……。

ベッドの写真を見て相手の脳が破壊されたらどうすんだ。

 

そこでエリーがアタシを引き寄せて、首に手を回してくる。

 

「残念ですが、マリーは予約済みですので」

「えぇ!? もう相手いるんだ! ちぇっ、残念。あ、寝取るのはキライだけど、寝取られるのは好きだからいつでも来ていいわよ」

「いかねえよ、アタシは予約済みだ」

 

そう言うのは寝取られと言わねえだろ。

なんで知りもしない奴を寝取らないといけねえんだ。

まさか、こんな性格だったとは。

遠くから眺めただけじゃ分からねえもんだ。

 

ん?

もう一人、『ラストダンサー』のメンバーが近づいてくる。

名前は……ジーニィだったか?

地味で目立たないから地味子でいいか。

 

「どうした」

「ポリーナは……駄目。私の、モノ」

「うんうん、カワイイなあジーニィは。ジーニィもあたしのものだよー」

 

派手女の奴、地味子を抱きしめて頭を撫で始めた。

 

「ポリーナは……、私の、恋人。駄目……渡さ、ない」

「うんうん、わかったよー。……そう言う事だからあたしを奪いに来ても駄目だからね?」

「奪わねえよ。むしろコッチに来ないようにしてくれ」

「……分かった。ポリーナ、アレ、ちょうだい」

「アレ? ああ、仲直りのチューだね。はい、ちゅー」

 

何だコイツら、アタシを放ったらかしにしてイチャイチャしだしだぞ?

バカップルか?

 

「人をダシにしてイチャイチャするとは困った奴らだな」

「マリー達も似たような事やってるよ……」

 

ちょっとリッちゃんが何言ってるのか分からない。

……とりあえず気をつけよう。

 

しかし、ポリーナの奴がこんな性格だったとはな。

昔は遠くから見ているだけだったから気付かなかったが色々とひどい。

 

「どうしたんですか、マリー?」

「いや、憧れってのは理想の押しつけなんだなって」

「安心して下さい。仮にマリーが余所に取られても、寝取り返して書き換えられないように深く刻み込みますから」

 

ナニを心に刻み込むと言うんだ。

怖いがちょっとだけ体験してみたい。

 

「あー、誠の誠に済まぬが話を続けても良いだろうか?」

「ごめんごめん、ストルスは王都でよろしくやってね」

 

後で話を聞いたがどうやらこの細目、王都に恋人がいるらしい。

お前ら全員バカップルかよ。滅びろ。

 

「さてさて、仕切り直してご確認。王都には一緒に来てくれるかな?」

「大丈夫だ。だが先にギルドに話を通してくれ。説明が面倒だった」

「あれ? ギルドに話通ってなかった? ねえストルス、手紙出してたよね??」

 

細目は引きつって固まっている。

 

「その、さっきのさっき出したのである」

「ちょっとお! ギルドには事前に伝えないとこじれるよ?」

 

なんか色々グダグダだ。

コイツらもみんな残念な奴らなのかもしれないな。

 

「で、結局誰を護衛するんだ? 貴族か?」

「んん? ストルスそれも教えてないの? 勇者だよ、勇者をしばらく護衛するの」

 

勇者だと?

貴族かと思ったがハズレたか。

 

「別に隠す必要はなかっただろ、ちゃんと説明しろ」

「ふむふむ。正論である。しかし逆に問おう。魔王の侵略行為を調査にきたものが勇者の護衛を依頼する、コレが意味するところは何か?」

「……魔王が命を狙ってきている、もしくは勇者を動かして攻めるって所か」

 

アタシの返答にストルスは大きく頷いた。

どうやら間違ってなかったらしいな。

 

「然りの然り。正解は後者である、こちらとしても返し刃のひとつは浴びせたい。しかし魔族と通じた者が戯言を吐いて混乱させようとしていたのであれば元も子もなし。故に力を測る気であった」

 

もっとも拙者の手に余ったようだが、と続けてくる。

 

「一筆手紙をしたためた時点では、そちらが魔族を倒せるほどの腕か、あるいはそう見せかけて魔族に与するものなのか判断つかぬ状態であった」

 

つまり魔族の仲間っていう疑いもかけられていたってことかよ。

……まあ今ウチにいる人間はアタシとエリーだけだから間違ってないんだけどな。

リッちゃんはアンデッドだし。

 

「万の万が一にも漏れぬよう、詳細はギリギリまで隠し通した次第」

「だったらせめて紙を渡す際に言え」

 

その時、再びストルスが狼狽える。

 

「それは……負けて悔しい思いでうっかりしていた。すまぬ」

「第一そんなので信用を測って良いのかよ。アタシが実力派の魔族だったらどうするんだ」

「それこそ万に万の一つもありえぬ。貴公がいくら強かろうと、爵位持ちの精霊を含めて悪魔の手札を失うのは割にあわぬ」

 

話を詳しく聞く。

アタシ達にかけられていた疑いは『実力を偽り魔族を倒したフリをしている、あるいは魔族側と共謀してなにか情報を得ようとしている』と言うものだ。

どちらもアタシ達がそこまで強くない前提の話だな。

 

言われていた通りの実力を持っていて魔族側の人間なら、召喚士を倒すよりそのまま精霊や悪魔を暴れさせた方が早いらしい。

特に今回相手が使った召喚魔法は特殊で、普通なら召喚した悪魔はセーフティーロックとして特殊な空間で覆われ、範囲内から出ることができなくなるそうだ。

 

だが、アタシがダンジョンで戦った召喚士の魔族はスキルかなにかでその制限を外していたらしく、驚異になる可能性があったとのことだ。

 

あの影に放り込むスキル、影の中だと空間をある程度操ってたみたいだしな。

多分あれで外せたんだろう。

戦闘が下手な奴だとしか思ってなかったが、もしかすると意外と厄介な奴だったのかもな。

 

次に変身する魔族を倒した事で領地内の反乱計画が伯爵領内だけにしか広がらず完全に頓挫した事。

これらは状況的に問題は全くない。

だが都合が良すぎたため、かえって疑うことになったらしい。

 

そのため『ラストダンサー』が万が一を考えて裏取りに動く事態になったとか。

 

「ま、魔族を何回も退けるなんてA級冒険者にもそういないからね。王都や辺境伯領でもないのにそれだけの実力者がいるのも不自然だったんだよ。疑ってゴメンね?」

「本当に疑いが晴れたんだな?」

「大丈夫だって。……知ってるかどうかわかわんないけどさ、実は魔族ってちょくちょく街に溶け込んでるんだ。五十人に一人くらいかな?」

 

……うん、知ってる。

つかそんなに少ないのかよ。

 

「私、てっきり十人に一人はいるのかと思ってました」

「あはは。そんなにいないでしょー。魔族のバーゲンセールじゃないんだからさ」

 

エリーが体感で人数を伝えてくるが冗談だと思われたみたいだ。

 

すまねえがアタシもそれくらいかと思った。

どうやらこっちはバーゲンセール開催中みたいだ。

 

「で、ココだけの話、裏では王都でも和平のために百年くらい交渉を続けてるんだよ」

「そんなに長い間やってるのか? その割には何も進展してないみたいだが……」

「表向きは魔族は悪い奴って事になってるけど魔族に怨み持ってる奴って少ないでしょ? アレは国とギルドが共同で一生懸命情報操作してるんだよ」

 

そんな裏事情が……って待て。

これってもしかしなくても極秘事項だよな。

……聞きたくなかった。

喋った本人は気がついてねえみたいだが、こんな情報聞いたらいろいろと面倒に巻き込まれるんだ。

 

「おかげで敵は二つの派閥に分かれてるんだ。一つがみんなの知ってる魔王派閥。もう一つが魔王に与しない中立派。魔王派も力でまとめあげてるって噂だから、魔王さえ倒せば瓦解する……はず! うん、きっとすると思う!」

 

なんだか最後の方歯切れ悪いな。

 

「気になることがあるならハッキリ言ってくれ。中途半端が一番嫌いなんだ。推測でもいい。受け入れるかどうかはアタシが判断する」

「いやね、魔王を倒すのは良いんだけど魔王ってさ、代替わりしてるよね? なのにみーんな人類ブッ殺せ派なんておかしいよね? おかしくない?」

「一人くらい穏健派がいてもいいのにって事か?」

「そうそうその通り。だから何かあるのかなって」

 

確かにそれは気になるが……。

 

「どっちにしろブッ倒すことには変わりないだろ。倒して次の魔王が出てくるならなにか分かるさ」

「うんそうだね! 結局やる事は一つさ。悪い子を叱って改心させる! 駄目なら倒すだけだね」

 

リッちゃんがアタシの後に元気よく言葉を続けてくる。

そういえばリッちゃんは唯一の穏健派魔王だな。自称魔王だけど。

 

「じゃあ受けてくれるって事でよろしくね。あ、勇者の護衛っていっても、実際には私達がメインでちょっと補助してもらう立場になるから安心していいよ」

 

補助ねえ……。

まあどうせロクな事にはならねえだろうし、最大限の準備はしていかねえとな。

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