エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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第77話 同行者

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「いらっしゃーい。……おや、久しぶりだね。この間のおチビちゃん達は元気かい?」

 

やってきたのは『よろづ屋 アイザック』だ。

『ラストダンサー』のメンバー達とは後日王都に行くことで決定している。

 

今日はそのための事前準備だ。

王都なら品揃えも充実してるから大丈夫だろうが、万が一のトラブルで調達できないこともある。

 

ここなら一通りなんでも揃うからな。

 

「ああ、ひよっ子達は今は別口で使用人としての心構えを叩き込まれてるな……。あとはついでにダンジョン潜りだ」

「使用人? ダンジョン? いいトコの貴族様もいるだろうに大丈夫かい?」

「なんで分かった? ……いや、金貨見せびらかしてたな、すまねえ」

「それもあるけど、私の直感だとそれだけじゃないねえ。なにかあるよ、あの子達みんな、ね。何かしら訳ありでコッチに来てるね」

 

おいおい、一回会っただけでそこまで見抜くか。

だがその件なら解決済みだ。

アイツらみんな魔族っていう秘密があっただけだ。

しかしよくわかったな。

 

「商売人のカンってやつか?」

「んー、ちょっと違うかなー? 引退したとはいえ、元は王都で冒険者やってたからそっちのカンだよ」

「王都? てことは元A級かB級の冒険者か?」

「まあ一応ね。引退したから今はただの雑貨屋さ 」

「ちょうどいいや。アタシ達も王都に行く予定なんだ、いい店を知ってたら教えてくれ」

「そうだねえ。だったら――」

 

美容室、化粧品店、武具店など彼女が現役時代に世話になっていた店を教えてもらった。

中でも美容系のスキルを持つ店は高いが冒険者の若さを保ってくれるので重宝していたとか。

アタシ達には必要ないがA級冒険者は皆通っているそうだ。

……ポリーナも年齢を考えると使っているんだろうな。

お礼にこちらも必要なものをいくつか買い揃えていく。

 

買い物の途中でアタシ達以外にも来客が現れた。

イケメンとひよっ子達だ。

 

「皆、ここがこの辺りでなんでも揃う雑貨屋だよ」

「こんにちは、ジクアさん」

「やあエリーちゃん。それにマリーも。今日は買い物かい?」

 

む、アタシのエリーに手をだすつもりか?

そうはさせねえぞ。

 

「ひよっ子共、気をつけろ。こいつは商売の腕も性格もいいがイケメンなんだ」

「それただのいい人だよマリー……」

 

リッちゃんがイケメンの魅力にやられてしまったようだ。

あとでメイに調教してもらわないとな。

 

「なんか悪いこと考えてない?」

「別になんでもねえよ。ところで何しに来た?」

「ああ、新人たちに店を紹介してたんだ、ここの店が開いてから、僕たちも行商に行くときはお世話になってたからね」

 

てことはコリンも世話になってたのか。

世界は狭いな。

 

「特にこの店、店長の目利きがすごいんだ。基本的に外れはないよ」

「それに関してはアタシも同意だ」

「褒めたって一割しかまけないよ」

 

安くしてくれるのかよ。

ありがたチョロいな。

 

「イケメンの方はどうだ? ひよっ子共は成長したか?」

「こっちはそれなりだね。マリーのところの話は聞いているよ。オークを倒せるようになったらしいね。すごいじゃないか」

「肝心の常識が足りないけどな。……ところでルビー達とコリンはどうした?」

 

その話を聞くと困ったように肩をすくめるイケメン。

なんかあったのか?

 

「それがね、コリンが身重だと聞いたらナンテーンの木を取りに行くって言って、ルビーさんと腕が立つ新人たちとで山のほうに行ってるよ」

 

ナンテーンか。

たしか加工してやれば緩やかに体力を回復させる効果があったな。

一部の地域では安産のお守りとして珍重されていたはずだ。

 

魔物もそれなりに出るだろうに立派なやつだ。

あいつ、少しは人の心も持ってたんだな。

 

「新人はシゴかれて大変だろうによくついてこれてるな」

「それが意外と面倒見いいんだよ、彼女。ラズリーさんはちょっとアレだけど」

 

ラズリーはアレだから仕方ないとして、ルビーたちが面倒見いいとは……。

 

「お前……、筋肉が脳みそに侵食されたのか?」

「いやいや、確かに力任せに突撃して限界ギリギリまで戦わせる癖はあるけど、教え方は丁寧なんだよ」

 

イケメン、ついに脳がやられたか……。

そんなに筋肉のしごきが辛かったんだな。

かわいそうに。

 

「辛かったんだな、イケメンのために何もする気はないけど、辛いことがあったらそこの壁にでも話しかけてくれよ。遠くから見守ってやるからな」

「それただの危ない人と遠巻きに見てる人だよね?」

 

まったく、人が心配してやってるのに呑気な奴だ。

 

イケメンにはアタシ達が王都にいくこと、今アタシたちが面倒みているひよっ子はギルドで依頼を受けさせることを伝えておく。

 

なにかあったら気にかけておくよ、と言ってイケメン達は行ってしまった。

これから街で取引をする際の基礎をひよっ子達に教えるらしい。

 

……そういえばそのあたりはウチのひよっ子メンバーには教えてなかった。

 

むしろアイツらに一番大事な知識かもしれない。悔しいがイケメンに教えておいてもらうか。

 

 

出発当日。

アタシ達の館の前に一台の馬車が止まった。

『ラストダンサー』が借りている馬車だ。

 

「やっほーマリーちゃん。準備できた?」

「ああ、一応準備は出来たが……ちょっとだけ待っててくれないか」

「なになに? あの日? 予備あるよ?」

「ちげーよ。どうしてもついていきたいっていう奴らがいてな、そいつらを言い聞かせる時間をくれ」

 

ちょっと問題児がうるさいんだ。

 

「そこをお願いします!」

 

お願いのポーズを取っているのはルルリラだ。

後ろからウルルも顔をだす。

 

昨日の夜、雑貨屋から聞いた美味しいお菓子屋さんの情報をうっかり漏らしてしまったのが間違いだった。

お土産に買ってくると伝えたが、どうしても自分たちが行くと言ってきかない。

 

「だから、買ってきてやるから家でおとなしくしてろ」

「お菓子というのは鮮度も大事なんです! 鮮度、場所の雰囲気、店に来る人、そういった全てが美味しいお菓子づくりに貢献してるんです!」

「だから、アタシ達は遊びにいくんじゃないんだ。『森林浴』の奴らみたいにゴブリン退治や薬草集めでもやってな」

「そこをなんとか! 今回を逃すと次いつになるかわからないんです! ほらウルルも頼んで!」

「あたしはどっちでもいいじゃん?」

 

このワン子、なかなかに強情だな。

ハウスしろって言ってるのに躾がなってない。

誰だ躾をしないといけないのは。

……アタシかあ。

 

「あはは、確かに王都はなかなか行かないよねー。こっちからだとちょっと遠いし。私達のチームは別に構わないよ。ちびっこちゃんもおいで」

「お姉さん、ありがとうございます!」

 

マジか。

まあ『ラストダンサー』が良いっていうなら止めはしないが……。

 

「しかし躾はちゃんとしないとだな……」

「まあまあ、たまにはね? 仕事は参加させられないけど、お嬢ちゃん達は宿で留守番でもさせとけばいーよ」

「……ウチのひよっ子達がすまないな」

「いいよ別にー。ジーニィ、念話石でストルスに伝えといてー」

 

そういえば細目の奴、見かけねえな。

どっかいったか?

 

「細目の兄ちゃんはどうしたんだ?」

「ストルスちゃんのこと? 彼ならもうスキルで先行して偵察に行ったよ。ついでに雑魚は倒してくれるから道中は平和だと思うよ」

 

そうか、ストルスの転移能力を使えば、超高速で移動できるんだったか。

便利なスキルだな。

まあコッチにもリッちゃんがいるから、1回王都まで行けば次から空間魔法でショートカットできるが。

 

「リッちゃん、準備はいいか?」

「こっちは準備終わってるよ。王都かぁ。懐かしいなあ」

 

そういえばリッちゃんは王都に遊びに行ってたんだったな。

 

「確かリッちゃんは古代の魔術師だったね。昔はどんなだったのか道中で教えてよ」

「リッちゃん姉は古代の魔術師どころか、まお……、ふぁあん!」

「ふにゃああ! にゃ……、なんで俺まで……」

「お前らちょっと来い」

 

慌てて尻尾の付根から腰あたりをトントン叩いて黙らせる。

 

危ねえぞコイツら。

サラッと正体をバラすんじゃねえ。

王都に行く前に殺し合いになったらどうするんだ。

 

「――というわけで、リッちゃんは封印されてた古の魔法使いとして表向きは通ってる。あんまり裏事情をペラペラ話すんじゃないぞ」

「わ、分かりました……」

「世を忍ぶ仮の姿ってわけだな! かっこいいじゃん」

 

言うほどリッちゃんは忍んでないがな。

とりあえずこっちはこれでよし、と。

 

さあ、馬車に乗り込むか。

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