エリー×マリー 〜スキル『TS』が意外と強い〜   作:SHノーマル

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第81話 旧知

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「すまないがリッちゃん。状況を説明してくれないか」

「あ、ごめんごめん。えーっと……」

 

宰相のオッサンに目をやっているが、バレるのを心配しているんだろうか。

もう手遅れだからまず説明してほしい。

今更隠し事する方が厄介だ。

 

目で合図をする。

どうやら意図はリッちゃんに伝わったようだな。

 

「えっとね。まず空間魔法でココと館をつなげてメイに会ったんだよ。そしてメイに壺を治して貰ったんだ」

「ツッコミどころは色々あるが、何故メイに頼んだ?」

「あれ? 知らない? メイはメイドとして一通りの家事洗濯の他にも簡単な物は材料さえそろってれば魔法で治せるよ? 剣みたいに年数も経って変化したのは無理だっていってたけど」

 

マジかよ。知らなかった。

そういう魔法使えたのか。

確かにモノが壊れねえと思ったが……。

 

「それは分かった。で、なんで剣の代わりに枝が刺さってるんだ?」

「最初は剣を刺そうとしたよ。でも剣を元に戻すには魔力とか時間とかが色々足りなかったんだよ。前はファーちゃんがいたから魔力でゴリ押しでなんとかなったけどね」

 

なんでも館への転移と違い、事前に準備していなかったため魔力が足りずに小さい穴しか作ることができなかったそうだ。

そのために事前に準備してあった館への転移を先にここで設置して壺の修復を優先したらしい。

 

「剣は穴が小さくて刺さらなかったけど、何も刺さってないと問題になるでしょ? という訳で、残念だけど僕たちのお気に入りの木の枝を代わりに刺しておいたんだ」

「木の枝が代わりでも問題になると思うぞ」

 

伝説の勇者の剣を抜きに来たら、刺さっていたのは木の枝だったとか質の悪い冗談だ。

キャンプにしか使えねーぞ。

 

「マリー、僕は思うんだ。今はただのいい感じの木の枝かも知れない。でもね……」

「いや普通の木の枝だろ」

「時間が立ったら伝説の木の枝として僕たちの聖剣エクスカリバーと魔剣バルムンクは崇められるんじゃないかって!」

「リッちゃん姉はそこまで深く考えて……。私、感激しました!」

 

ケモノっ娘は少し黙っててくれ。

これはただノリで動いてるだけだ。

 

確かに数百年したら崇められるかも知れないが……。

抜けないだけの木の枝を聖剣として崇めてるとか嫌だな、そんな国。

 

「ま、ま、まお……」

 

やべっ、宰相オッサンの事忘れてた。

なんだ? リッちゃんを指差して。

もしかして知り合いか?

 

「いやまさか、こんなところにいるはずがない……。奴は死んだのじゃ。他人の空似、そう似ているだけ……。数百年前にも他人の空似で叫んでアチコチから怒られたのじゃ。同じ轍は踏まんぞ」

 

一人でブツブツとうるさい宰相様だ。

その様子にリッちゃんはクビを傾げてオッサンをじっと見つめてくる。

 

「えっと、おじさん。もしかしてどこかで会ったことがありますか?」

「い、いや気のせいじゃろうたぶん。きっと。……落ち着けワシ。諜報部からの情報でも封印された古代の魔術師だと……、古代?」

「えー、でもどっかで見たような……」

 

リッちゃん、ナンパや色街のキャッチじゃないんだからそこまでにしとけ。

お互い他人のほうが後腐れ無いこともあるんだぞ。

 

温和な宰相の顔が青く引きつってるじゃねえか。

 

「と、とにかく! リッちゃん君だったね! なにはともあれ君は剣を抜いた! 君の生い立ちは後々聞かせてもらうとして今は――」

「思い出した! えっと大臣さんですよね? その説は色々ご迷惑をおかけしました。こちらつまらない物ですが……」

 

リッちゃんが修復された壺を渡してくる。

……それもともと王国の国宝じゃねえか?

 

「当時は王様の顔に落書きしてすいませんでした。あの頃の王様は元気ですか?」

「ほ、本物の……ま、お……う……」

 

呟くとそのまま気を失って倒れてしまった。

薄々そうなんじゃないかとは思っていたが、まさか関係者だったとは。

世界って狭いな。

 

「わわわ! どうしよう、前の王様とっくに亡くなってるんだった! うっかりトラウマを思い出させちゃったかな!?」

「落ち着くんだリッちゃん。あとトラウマはお前だ」

 

「どうマリーちゃん? 宰相様と話し終わったかな?」

 

タイミング悪くポリーナが入ってきた。

さて、倒れた宰相のオッサンをどうするか。

……上手く誤魔化して運び出すしかねえな。

 

「私たちも一緒にここで話をする予定だったんだけど、グロウ様が驚かせたいからっていう理由だけでわざわざ直接出向いてきたんだ。お茶目でごめんね。驚かせちゃった?」

「ああ、驚いたよ」

 

宰相のオッサンのほうがな。

 

「あれ? なんでグロウ様倒れてるの?」

「……さあ? わからねえな? 急に魔王とか叫んで倒れたんだ。長生きしてると、いろいろ気苦労があるんだろう」

 

エリーとケモノっ娘達が目を逸らす。

心当たりしかないもんな。仕方ないな。

 

だけどなんで肝心のリッちゃんは頭の上にハテナマークが浮かびそうな顔をしてるんだ?

……本当に分かってないんだろうか。

こりゃ大物になるな。もうなってるか。

 

「この宰相は魔王とただならぬ因縁があるのでしょうか?」

「えっ! 魔王? そっかごめんねー、この人さ、過去のトラウマで魔王の事になると暴走するんだ。『不老』のスキル持ちってのは聞いた?」

「ああ、魔王とも関係があるみたいだな」

「そうそう、なんでも初代魔王とその相方がペアで動いてた頃からの相手なんだって」

 

相方ねぇ……。

それにしちゃちゃんとリッちゃんを魔王と認識してたな。

なにかあんのかも知れねえな。

 

「なんでも王都を襲撃しては王様に殺害予告をしたり、宝物庫を空にしたりとやりたい放題だったそうよ」

「え!? もともとほぼ空っぽだった――ふにゅっ!」

「リッちゃん。ちょっとだけ静かにしてて下さいね」

「そうです! マリー姉にまかせてドンと構えていてください! 黙ったままで!」

「そうじゃん、そうじゃんよ!」

 

エリー達が必死でりっちゃんに発言させないようにしている。

よし、しばらくは頼んだぞ。

今アタシたちパーティーの首が物理的に飛ぶかどうかの瀬戸際だからな。

 

「魔王というのはとんでもない奴だな。だけど、初代魔王の伝承に比べると可愛いモンな気がするが……?」

「なんでも魔王の相方かな? 友人か恋人だったと言われてる人がいたみたい。その子が死んじゃってからいろいろ変わったみたいね。魔王軍を作って攻めてきたのも一人になってからなんだって」

 

友人か恋人……ね。

実際には家族だったが間違ってはないな。

話を聞いたリッちゃんが急に大人しくなった。

 

「どうしてファー……初代魔王はそんな事したのかな? 不器用でも静かに生きることだってできたはずなのに……」

「そればっかりはなんとも言えないわねー。魔族を捕らえて尋問しても良く分からなかったらしいわ」

 

歴史の謎ってやつか。

初代魔王に詳しい人物が近くにいるのに、誰も知らねえならお手上げだな。

 

「とりあえず、宰相のオッサンを運ぶか。どこに運べばいい?」

「それならすぐ近くに医務室があるよ。ほらあの部屋。使用人向けだけど」

 

それならそこに運び出すか。

……面倒くさいな。しばらく放ったらかしでも良いんじゃないか?

 

「あ、そうそう。ココに『勇者の剣』があるんだけど――」

「よしっみんな急げ、オッサンを運び出すぞ」

 

アタシ達は全力でオッサンを運びだした。

……ポリーナが悲鳴をあげていたようだが一体何故だろうな。

宰相が倒れてなかったら確認にいけたんだが残念だ。

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