IF世界の小日向さん   作:ミネラルいろはす

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息抜きに書いた作品です。
実はこれ前メモ書きに設定を残していた作品なのですが、いつか書きたいなと思っていたので、書きました


絶望の日常

私の陽だまりは消えてしまった。

五年前のあの日から永遠に・・・

それ以来、私の心に光がさすことはなくなった。

私があの日彼女を誘わなければ、私も彼女と一緒にあの場所へ行っていれば彼女の代わりに私がなれれば、何度そう願ったことだろうか。

そんな願いもむなしく、当然のように時間は過ぎ去り、ひっきりなしに報道していたあのコンサート会場の事件も今ではそんな大惨事があったよねぐらいにしか思われていない。

本当に気持ち悪い。

 

私の中では何一つとして進んでないのに

 

電気屋の前を通りかかったとき、ふと耳元に聞き覚えのある声の歌が流れる。

五年前のあの日とは成長したあの人の声が・・・

私の陽だまりを殺したあの人の声がテレビ画面から流れてくる。

ステージに立つのはツヴァイウィングと呼ばれていた双翼の片割れ風鳴翼。

あの惨劇で相方である天羽奏を失いつつもアイドルを続けてきた女。

たった一人でステージに立ち続けている。

 

「・・・気持ち悪いよ、ほんと。あなたも私も」

 

これ以上あの女の声を、歌を聴いていたくなかったので急いでその場を後にした。

みんながもてはやすあの女の歌を久しぶりに聞いたが、あの女の声も、歌も私にはただの騒音にしか聞こえない。

私の心に土足で踏み込み荒らしていくだけだ。

あの事件がなければ私もそのうちの一人だったんだろうなと思わないことはないが、そんな過程には意味がない。

 

なぜなら

 

「うぉぇ・・ゲホゲホ、気持ち悪い」

 

人通りのない路地裏で一人嘔吐く。

あの日以来、私は歌を聴くと気持ちが悪くなって吐いてしまうのだ。

医者には精神的なものだからいずれ治るなんて言われているが、自分のことは自分が一番わかるとはよく言ったもので、私はこれが死ぬまでついて回ること知っている。

むしろそうでなくては困る。

 

なぜなら、これがあの日彼女一人をコンサートに行かして殺してしまった彼女から私への罰なのだからそして

 

「わかってるよ響、これがあなたが残してくれたアイなんだよね」

 

彼女が最後に私に残してくれたものだ。これを治すなんてとんでもない。

これが治るのは私が死ぬとき以外ありえない。

 

彼女が残してくれたモノさえ失ってしまったら私に生きている価値なんてものは存在しないのだから。

 

だから、私も生きていく私の犯してしまった罪とそんな私に残してくれた響のアイを持って私は今日も絶望しながら、生きていく。

 

 

空を見上げれば路地裏からでもわかるぐらい晴れ晴れしい青空が広がっている

 

「ほんと最悪の天気だね」

 

私は一人薄暗い路地裏からでて、商店街の道へと戻る。

昔から変わらない商店街の町並みは、私と響の思い出が残り続けている大切な場所である。

この商店街を歩いているだけで、私は陽だまりがまだあったあの頃のような暖かい気持ちになれる。

 

とある一軒のお店の前で足を止める。

外装は決して新しいものではなく、商店街の数あるお店のうちの一つだ。

もちろん私にとってはもちろんその限りではないけど

店の看板には「ふらわー」と書かれており名前だけ見ればお花屋さんかと思うが、お花屋さんではなくお好み焼き屋なのだ。

 

「あら、未来ちゃん、また来たの?最近はよく来るわねぇ」

 

ドアを開け中に入ると、元気のいいおばちゃんの声が聞こえる。

 

「うん、ここなら響を感じることができるから、それに響もおばちゃんのお好み焼き好きだったから」

 

「そう?でも粉ものばかり食べてると太っちゃうわよ?」

 

心配そうにおばちゃんが体重について訪ねてくるが、それが本音出ないことを知っている。

本当に心配しているのは私がまだ響のことを吹っ切れていないことだろう。

それでもおばちゃんは私に対して深くは踏み込んでこない。

私がそれに耐えられないこと知っているから、おばちゃんは今日も私にお好み焼きをつっくてくれる。

 

そんな空間が私にとっては、唯一の癒しだった。

 

「ありがとう、おばちゃん」

 

料理を作ってくれたことと、私に深く踏み込まないでくれること。

二つの意味で感謝を込める。

すると決まっておばちゃんは

 

「いつでもおいで、いつでもおいしいお好み焼きを作って待ってるからね」

 

と寂しそうに笑ってほほ笑むのだ。

その笑顔の意味を知っているのに、私はおばちゃんのやさしさをまた利用する。

 

「うん、また来るねおばちゃん」

 

そう言ってお店を出る。

お店を出た瞬間に虚無感が一気に私に襲い掛かるが私は大丈夫。

まだ、私が死ぬには絶望が足りない。

 

響の味わった苦痛の何倍もの苦痛を受けないと私が響に会いに行くことはできない。

何より私が許せない。

 

 

そんな虚無感に襲われていると、聞き覚えがある警報が商店街に響き渡る。

最近よくなるその警報の意味は私の響を奪ったノイズの発生を知らせる警報だ。

 

ここ数日この付近でのノイズの発生件数が増えていると聞いている。

 

そして今日も又ゴミの発生を知らせる吉報が届いた。

 

「待っててね響♪今からゴミを排除してくるから」

 

胸元にしまい込んでいる赤いペンダントを取り出す。

響が最後に私へと送ってくれたモノ。

死んだ彼女の心臓に突き刺さっていた破片から作り出されたそれは、彼女の命を奪ったのと同時に私に贖罪のチャンスをくれた忌々しいもの。

 

私は奏でる絶望のメロディを明日の絶望を受けるために今日の絶望を乗り越える。

 

「行こうか響♪」

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