突然だが、ちょっとだけ俺の出す質問を真剣に聞いて、答えを考えてみて欲しい。
問い・エロゲーは好きですか?
『エロゲー』それは夢であり希望だ。
男であれば誰しも一度はプレイしたことがあるのではないだろうか?
あるいはまだ未経験だとしても、してみたいという願望くらいは持ち合わせているであろう。それが『エロゲー』というものだ。
そして俺には毎日ひたすら欠かさずに行っている事がある……
「なにかって?」
『エロゲーだ』
もはやクリアしたゲームの数は数えきれない。この道に関して言えばプロと言っても過言ではないだろう。
それ程までに俺はエロゲーに人生をかけてきた。
だがそんな俺にもクリアできないものがある。そう……リアルの人生だ。
いくらエロゲーが得意でも全く上手くいかない。
俺のヒロインはいつになったら登場するんだ?
選択肢はなぜ出てこない?
リアル、それは紛れもないクソゲーだ。夢も希望もない。あるのはただの絶望だけだ……
だから俺は夢を見るのさ、このエロゲーに!!
次々と登場してくる可愛いヒロイン。攻略しがいのある性格。そしてこのエロい体! 何もかもがこの一つの世界に詰まってる。
さて、先ほどの問いに答えよう。
つまり『エロゲー』最高ッッ!!
「ありがとうございました」
コンビニで弁当を買い一人寂しく家に帰る。
こうぐちげいむ
工ロ芸夢、俺の名前だ。
年は30才、エロゲー歴20年のベテラン会社員。趣味はもう言うまでもないだろうから言わないぞ? そう、エロゲーだ。
「あ~帰ってはやくゲームしてえ」
コンビニで買ったレジ袋を片手に持ちながら信号が変わるのを今か今かと待つ。
「ここの信号おっそいんだよなあ、車来てねえし渡ろ」
そして車にひかれて死んだ。
「信号を渡ってから車にひかれて死ぬまでが適当すぎではないか?」
「すみません、もういいかなと思って……」
「そういうところだぞ、エロくん」
俺は神様に説教されていた。今までのエロゲーでも味わったことのない経験だ、実に興味深い。
「とりあえず今までのエロくんの人生については確認させてもらった。過去に3回、エロくんは死んで生まれ変わった訳だが毎回エロゲーをして死んでいく人生だった。これ以上の改善は神にも不可能と判断し、転生は諦めてエロゲーの世界に転移させる事にした。以上」
「な、なんですとッ!? エロゲーの世界に行けるでござるか!?」
「そうだ、だからその気持ち悪い言葉使いはやめてくれたまえ。こちらも疲れているんだ」
神様が冷たい……だがまあいい。エロゲーの世界ならこっちのもんだ。もはや俺が最強、完全なる主人公だ!
「あとおまけとして、たまに選択肢が出てくるようになっているから上手く使いこなしてくれ」
「選択肢まで! ゲヘヘ、神様ありがとうございます。その世界、私が必ずや攻略して見せましょう」
「いや、そういう使命とかないから、普通にまっとうに生きてくれればそれでいいから」
お、体が光始めてきたぞ……
「じゃあこれで話は終わり。今度こそはちゃんと幸せになるんだよ」
「はい、神様もお元気で」
「あっ……やばい、間違えた。転移先エロゲーの世界じゃなくて普通の世界にしちゃった……えっと、この世界の名前は……」
『ようこそ実力至上主義の教室へ』
光に包まれて俺はエロゲーの世界に転移したはずだ。だがここは、なんのエロゲーだ? 見たことのない風景だ……
ほとんどのエロゲーはプレイしたはずだし俺は全ての風景や名前、攻略法など余すことなく覚えている。そして今の俺の格好……制服か。つまり学園物だ。
「俺の知らないエロゲーなのかもしれないな」
ふっ、だがそんなことは些細な事だ。なんせここは『エロゲー』なのだからな!!
「フハハハハハハハハハ」
「ね、ねぇ君……大丈夫?」
「ん?」
振り向けばそこには美少女がいた。
そうか、さっそくお出ましか……
高校の制服に天使のようなスマイル、そして抜群のスタイル……間違いない。俺のエロゲーマーとしての勘がそう告げている。こいつは攻略対象。たが選択肢が出てこないな。ランダムなのか? それとも何かしらの発生条件があるのか……
「あ、あの……」
おっと、俺としたことが考えるのに夢中で返事を忘れていた。選択肢がない以上、自力で乗り越えるしかないだろう。
「あ~すまないな、大丈夫だ。ただちょっと体調が悪くてな。出来れば学校まで一緒に付き添ってくれると助かるんだが……」
「もちろんだよ! 同じ制服だし一緒の学校の同級生だよね? 私もこれからバスに乗って登校するところだから一緒に行こっか!」
「ああ、助かる。これからよろしくな。俺はエロ芸夢、えっと名前は……」
「櫛田、櫛田桔梗だよ。これからよろしくね、エロくん」
櫛田桔梗か……まずは情報だな。ここがどんなエロゲーなのか。そして、どう攻略していくか。
俺は櫛田のおっぱいを見ながら真剣に悩むのだった。
「エロくん、バス停についたよっ。体調は大丈夫かな?」
「ああ、櫛田のおかげで絶好調だ」
バス登校か、学校までは遠いのだろうか……
「なあ櫛田、学校まではどのくらいかかるんだっけ?」
「学校までは30分くらいかな。けど明日からは寮生活だし今日だけの我慢だねっ」
なに!? 明日から寮生活なのか? 俺も寮生活なのだろうか、いやエロゲー展開的に櫛田だけ寮生活って事はないだろう。おそらく俺も含めて全員が寮生活のはずだ。
「あっ、バスが来たよ」
「ああ、そうだな」
俺は櫛田に返事をしながら内心驚いていた。
バスのドアに映った自分が若返っていたからだ。年はちょうど高校1年くらいの時だろう。かっこよくもなく、ブサイクでもない。いわゆる平凡な顔つき。だがそれでいい。ここはエロゲー、顔よりもテクニックの世界。そしてエロゲーで俺に勝るやつはいない。それにしても……俺はバスの中を見回して気がついた。
ほとんどが同じ高校の制服だ……
痴漢イベントとか発生しそうな雰囲気だな。それか俺が痴漢をしてそこから仲良くなる物語かもしれない……
やはりするなら櫛田か……
俺は隣でつり革に掴まっている櫛田を見て首を振った。いや、待て。間違っていたら取り返しのつかないことになるからな。少しだけ様子を見よう、少しだけだぞ?
「櫛田、席が一つ空いてるが座らないのか?」
「うん、私はいいの。エロくんが座ってよ」
「いや、俺は大丈夫だ。ここはレディファーストで櫛田が座ってくれ」
「えっ、でもエロくん体調が良くないし座ったほうがいいと思うなっ」
普通ここまで拒み続けるか?
つまり櫛田には立っていなくてはいけない理由があるということだ。
それは痴漢。こいつは痴漢されるために立っているに違いない。ならば俺のやることは一つだ!
俺は櫛田の尻目掛けて手を近づけた。
「ちょっと君!?」
「まてっ、まだ触ってない、誤解だ!」
俺は急いで両手でつり革を握り無罪を主張した。
櫛田も自分の痴漢イベントを邪魔されて驚いているようだ。
「いや、君じゃなくて……そこの優先席に座っている君よ!」
「レディ、私がどうしたというんだい?」
「席を譲ってあげようとは思わないの!?」
なんだよ驚かせやがって、俺じゃないのか。声を上げたOL女性の隣には一人の老婆が杖をついて立っていた。
席ならここに一つ空いているのだが……
この騒ぎ方と優先席へのこだわり……このバスは痴漢バスではなかったのか?
これが本当のイベントならば、どんなエロゲー展開がある?
席を譲って終わりは、ない。
席を譲ろうとしたところ、バスが揺れてラッキースケベパターンか?
だが今優先席に座っている男、どう見てもラッキースケベの顔ではない。金髪で長髪のイケメン、体つきもしっかりしている。
まるでAV男優……そうか、あいつはAV男だ。この先必ず強引な手段で女を食い散らかすに違いない。これはその序章ということか……
そうなると俺はどうしたらいい?
やつの魔の手からOLを守るのか?
……それとも今後のためにやつと仲良くするべきなのか? 俺が思考を巡らせていると櫛田が急に声を上げた。
「あのっ、良かったらここの席空いてるのでどうぞ」
「ありがとう、助かるわ!」
OLがお婆さんを椅子まで誘導して座らせた。
それを櫛田は満更でもない顔で見ている。
『なんだ、この展開は……』
まったくエロくない。いやまだ物語は始まったばかり、焦ることもないのか……
それよりいつになったら選択肢が出てくるんだ?
「……きゃっ」
バスの発進で姿勢を崩した櫛田が俺に寄りかかってきた。俺の腕に櫛田の胸が当たる。
「大丈夫か?」
「う、うんっ。ごめんねエロくん」
櫛田の胸めっちゃ柔らかい……ずっとこのままでいてくれ。
『ピロン』
急に頭の中に選択肢が現れた……
ついに来たか、さあ早く俺に選択肢をくれ!
『お婆さんの胸を揉む』
『お婆さんの胸を揉まない』
ふざけんな、揉むやついないだろ。
俺がそう思考すると頭にアナウンスのようなものが流れてきた。
『お婆さんの胸を揉まないルートへ進みます』
お婆さんの胸を揉むルートがどうなっていたのか少し気になるがきっと間違いではなかったはずだ。
『次は高度育成高等学校前、お降りの方はお知らせ下さい』
「あっ、ついたよっ、エロくん」
「ああ、そうみたいだな」
高等育成高等学校……ここがこのゲームの舞台か。どんなエロ展開が待ち受けているのか今から楽しみだぜ───
バスを降りた俺は1つでも多くの情報を得るため周囲を見渡した。何かヒントになるものさえあれば行動方針も大きく変わってくる。
例えば学校の手前が坂道になっていてエピソードシーンがあるとか。または大きくそびえ立つ伝説の木があるとか。
はたまた、いきなりぶつかってくる女子生徒がいたりとか……
『なんもねえ……』
いや、普通すぎるだろ。特徴がなさすぎる、これでは推測すらも容易ではない。
「なあ櫛田、この学校に伝説の木とかあるか?」
「えっ、私は聞いたことないけど。伝説の木ってなに?」
「いや、知らないならいい。変な質問して悪かったな」
「うぅん、それよりもクラス分けが張り出させてるみたいだから見に行こうよ!」
クラス分けかそれは大事だな、たぶん櫛田とは同じクラスだろう。
前を歩く櫛田についていく。周りには多くの人がクラス分けが張り出させてる屋外提示板に集まってる。そもそも俺は試験など受けた記憶はないがその辺は大丈夫なのか?
「AクラスからDクラスまであるのか」
俺はAクラスから順に自分の名前を探す。どうやら櫛田が先に名前を見つけてくれたようだ。
「エロくん! 私たちDクラスに名前あるよっ、同じクラスだね。これからよろしくね」
「そうか、Dクラスか。こちらこそこれから宜しくな」
どうやら学校の入学はしっかり手配済みのようだな、ちょっと焦ったぜ。名前あってよかった……
つまり俺はこの学校の1年生として今日から過ごすことになる。だがここで1つの疑問が残る。
『俺のポジションは主人公なのか?』
神様は転移させるとは言ったが主人公とは言わなかった。今冷静に考えてみると転移ということは、俺はこの世界におけるイレギュラーな存在なんじゃないのか?
なにが言いたいかって?
『主人公は他に存在している可能性がある』
そもそも俺が1年っていうのが怪しい。大抵のエロゲーは主人公が2年からスタートだ。これは年上、年下の両方のイベントをこなせるというのが大きい。
もしこの学校の2年で女にやたらとモテるやつがいたら、おそらくそいつが主人公だ。何とかお近づきになって俺にも何人か分けてもらおう。そして隙をついて俺が主人公に成り変わればいい……
「フフフ……フハハハハハハ、ゲホゲホ」
(エロくんまだ体調悪いのかな……)
櫛田と一緒に教室へと向かった俺は、その途中隅々まで校内を観察しながら歩いた。
『ようやくエロゲーらしくなってきたな』
校内を見渡せば至るところに監視カメラがつけられていた。これはあえて監視カメラを大量に設置することにより、学校内での行為にスリルを持たせる為だろう。
ヤルならカメラのないところでヤレって事か……面白い、受けて立とう。まずはカメラ位置の把握からだな、校内プレイは常識だ。徹底的に調べてやるぜ。
「エロくんついたよ、この教室だねっ」
「おっ、ついたか。Dクラス……ここが俺たちの教室か」
櫛田が中へと入っていく。その後に俺も続く。どうやら既に半数以上の生徒が登校していたようだ。
もし二年に主人公がいるとして、一年にも数人の攻略対象がいると考えて然るべきだ。今のうちに誰がモブで誰が重要なキャラなのかを知る必要がある。
俺は隣にいる櫛田を見た。こいつが攻略対象の一人である確率はかなり高い、最初に俺と出会ったのも何かの縁を感じるしな。それにしても……
『このクラス可愛い子多すぎじゃないですか?』
右を見ても左を見てもみんな可愛いんだが……まぁ、モブらしきやつもいるが比率がおかしい。全員重要なキャラに思えてくる。
だがその中でも一人だけ、確実に攻略対象だと言い切れるヤツが一人いる。
あの容姿は間違いないだろう……
俺は席毎に置かれているネームプレートに気付き、そいつの席に近づいて名前を確認した。
『沖谷京介』
こいつは間違いない、『男の娘だ』
いや、もしかしたら男装してる女子の可能性すらある。まずは俺の攻略対象の一人が決まったな……
いつかその服の中にさらしを巻いて隠しているであろう胸を拝ませてもらうとしよう。
それにしても他にも怪しいヤツが何人も居やがる。まだこの世界がなんのエロゲーかはわからないが、もしこのゲームに名前をつけるとすれば……
『ようこそエロゲーの教室へ』
皆さまへも選択肢です!
『名前をこうぐちくんで読み進める』
『名前をえろくんで読み進める』