ようこそエロゲーの教室へ   作:Monburan

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白いビーム

 

 

 そこからはあっという間だった。池と山内に桔梗からの伝言を伝えると、大地が揺れるほどの大声で叫びながら走り去って行った。

 そして、待ちに待った放課後が訪れる。

 他クラスの友達に話があるから待っていて欲しいという桔梗の言葉を受けて、俺たち3人は校門の前で桔梗の到着を待っていた。

 

 

「なあ、エロ。エッチすることになったらどうすりゃいいんだ……。なんか俺、急に心配になってきたぜ……」

「おい、山内! お前が櫛田ちゃんと出来るわけないだろ!! むしろ俺のほうが心配で心配で……。なあ、エロ。どうすりゃいいんだよ……?」

「二人とも、心配は無用だ。これを貸してやろう」

 

 俺は制服の胸ポケットから、おもむろにコンドームの袋を取り出し二人に渡す。

 

「お、お前。こ、これって。あれじゃねえか!」

「やべえよ、山内。俺、実物を見るの初めてだ……」

「説明は不要のようだから俺からは何も言わんぞ? そう、これはコンドーム。大人の階段を登る上で欠かせない防具。きっとこいつがお前らの大切な女を白いビームから守ってくれる。俺からの餞別だ、受け取っておけ」

「し、師匠……」

「エロ師匠ー!!」

 

 

 校門で繰り広げられる感動シーン。俺たちが友情を深め合っていると、ようやく今日の主役が登場する。

 

「遅くなってごめんね。お待たせっ!」

「うおお、待ってたぜ櫛田ちゃん! ってなんで平田たちがいるんだよ!?」

 

 激しいツッコミで飛び跳ねる池。忙しいやつだ。しかし平田と軽井沢、あと篠原と松下……だったか? ずいぶんと数が増えたもんだ。

 

「あ、途中で一緒になってね。折角だから誘ってみたの! ダメだったかな……?」

「い、いや。ダメってわけじゃないんだぜ?」

「ありがとう! じゃあみんなで行こっ!」

 

 桔梗の上目遣いに池が後ずさる。あの頼み方をされて断るのは不可能だろう。池も内心は嫌だろうが渋々受け入れたようだ。

 俺は平田の隣へ向かい、小声で話しかける。

 

「なあ、平田。これはどういうことだ?」

「うん。櫛田さんの言う通り、決して仕組んだとかではなくて本当にばったり出くわしたんだ。そして話を聞いた彼女たちが誘いに乗った感じかな」

 

 なるほどな。平田はいつもこちらの聞きたいことを教えてくれる。つまり偶然か、それとも桔梗が平田にバレないように仕組んだか……

 だが、今はどちらでもいい。今さら断ることもできんしな。篠原と松下はあまり面識がないが、今後のために話しておくのも悪くないだろう。

 

「そうか、わかった。みんなで楽しむとしよう」

「ありがとう。そうしてくれると僕も助かるよ」

「ま、待ってくれエロ! もし櫛田ちゃんが平田を好きになるアンラッキーイベントが起きたらどうすんだよ! イケメンと可愛い子が付き合わない方法はイベントを起こさないことだけなんだぞ!」

「心配はいらん。平田は軽井沢と付き合ってるからな。それはない」

「ほんとかよ……。まあ、エロがそういうならいいけどよ……」

 

 山内の発言に平田は何も言わず肯定の笑みを浮かべる。そんな俺らに構うことなく、女子たちは先へ歩み始めていた。

 

「平田くん~早く行こうよ~」

「うん、今行くよ!」

 

 前を歩く軽井沢から声がかかり、俺たちも歩き始める。そういえば平田に聞いておくか……

 

「なあ、平田。今日の小テスト、最後の3問解けたか?」

「うぅん、あれは解けた人いないんじゃないかな。少なくとも、僕の知る限りでは1人もいないよ」

「そうか、わかった」

 

 平田の知る限り1人もいないのなら、おそらくいないのだろう。勉強か、非常に悩ましい問題だ……

 俺は思考をやめ現実に戻ると、迷いなく歩いていく平田に気付き、ふと訪ねる

 

「そういえば、どこに向かってるんだ?」

「あれっ、エロくんは聞いてないのかい? カラオケに行くらしいよ」

 

 

 

『……カラオケだと?』

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 覚えているだろうか? 

 俺は過去に一度、平田にカラオケへ誘われたことがある。あの時は用事があると逃げ切ったが、今回はそうはいかん。なにせ、既にカラオケ部屋の中にいるからな……

 

「エロくんは飲み物なにがいいかな?」

「ビールで」

「えっと、アルコールはまずいんじゃないかな。とりあえず苺みるくを頼んでおくね」

 

『失礼しまーす、飲み物お持ち致しました!』

 

 俺の席に置かれる苺みるく。誰が苺みるくだ。なんでお前ら普通にコーラなんだよ。くそっ。平田のやつ、なぜ俺の好物を知ってやがる……

 俺は苺みるくを飲みながら周りを見渡す。どうやら曲を入れ始めているようだ。女子が優先的に曲を入れて歌っていく。女子が歌うだけで多少下手でも上手く聞こえる気がする。人間の神秘の一つ。

 

 

「はいっ、次エロくんも曲選んで!」

「お、おお……」

 

 反対側に座る桔梗がテーブルを挟んでデンモクを渡してくる。デンモクの上に乗るおっぱい。間違えておっぱいを受け取ってもおかしくない。

 横を見ると池と山内が桔梗の胸を凝視している。俺は慎重にデンモクを受け取り隣の平田に渡すと、席を立ち反対側に座る軽井沢の横へと移る。

 

「なあ、軽井沢。ちょっといいか?」

「えっ、なによ? てか、二人きりで話すとかアリなの?」

「今は緊急事態だ。そんなことを言ってる場合じゃない」

「き、緊急事態ってなによ!?」

「俺はな、カラオケが苦手なんだ……」

「……は?」

「だから暫しの間ここで匿ってくれ。男子の番が終わったらまた向こうに戻る」

「別にいいけど……。あんたと話してたこと、後でみんなになんか言われたらどうすればいいのよ」

「普通に言えばいい。俺と軽井沢が平田繋がりで仲良くしていたところで、何もおかしいことはない。むしろ変に距離を置くほうが不自然だ」

「ま、まぁ。そう言われてみればそうね……」

 

 

 軽井沢という防御壁を手に入れた俺は、平田の歌を聞きながら何気ない話を始める。

 

「最近はどうなんだ? 派閥は順調そうに見えるが」

「うん。平田くんと付き合ったおかげで順調に進んでる。カースト上位のグループにいた方が幅もきくし、人数はかなり増えたかな」

「まあ、そうだろうな。上手くいってるならなによりだ」

「あんたの方はどうなのよ。全然女にモテてないし、むしろ減ってんじゃないの?」

「ああ、どうしてだろうな……。平田に彼女が出来ればモテると思ったんだが……」

「それって、あんたの派閥のせいもあるんじゃない?」

「派閥とは池たちのことか? 別に派閥ってわけじゃないんだが……」

「あんたがそう思ってても、女子からしたらそう見えるのよ。基本あんたの派閥っていい噂聞かないし、みんなに恐がられてるわよ?」

「……なんだと。それは本当か?」

「うん。まず池くんも山内くんも言動が最悪だし、綾小路くんは根暗っぽいし、外村くんもプールの一件で嫌われてる。けど、一番は須藤くんね。なんか、コンビニでゴミ箱破壊したり喧嘩騒動みたいなこと起こしたとかでみんな恐がってるもん。まともなのは沖谷くんだけかな」

 

 

 何てことだ……

 俺に女が出来ないのはあいつらのせいだったのか。だが、それだと俺のせいではない気がする。

 なぜそのとばっちりを俺が受けてるんだ? 

 

「それって俺の好感度には関係なくないか?」

「それがあるのよ。須藤くんってあんたと居るときだけなんか大人しいのよね。須藤くんが大人しく言うこと聞いてる=あんたがヤバい奴って構図ね」

「とんだ勘違いだな。お前の力でどうにかならんのか?」

「無理かな~。言ったところで、そーなんだーってなって終わりだと思うし、そもそも何で私がそこまでしなくちゃいけないわけ?」

 

 これに関してはこいつの言う通りか……。寄生同盟はあくまで平田に寄生する為の同盟であり、個人の協力をするものではない。

 

「そうだな、悪かった。今の話が聞けただけで十分助かった。そろそろ男子の歌も終わるし俺は戻る」

「はいは~い」

 

 

 同じことを数回繰り返し、ようやく拷問のような時間が終わる。結局、軽井沢とばかり話すことになり桔梗とは全然話せなかった。そのまま帰宅する俺らだが、全員が寮生活の学校だ。必然的に帰り道も一緒になる。

 

「皆はもう学校には慣れたかな?」

 

 平田が話題を振ると、順々に答えが返ってくる。

 

「最初は戸惑ったけどもうバッチリだぜ。つか、夢の国すぎて一生卒業したくねー」

「あはは、池くんは学校生活を満喫してるって感じだね」

「私としてはもっとポイントが欲しいって感じるけどな。洋服とか化粧品とか買ってたらお金残んないしさ」

「松下さんはどのくらいポイントがあれば足りそうなんだい?」

「20万……30万ポイントくらい?」

 

 どこか育ちのいいお嬢様のような雰囲気を漂わせる松下という女。そんな松下の、30万という金額を聞いた山内が反応を見せる。

 

「高校生で30万もお小遣いもらったら異常じゃね?」

「そう? まぁ価値観って人それぞれだしねー」

「僕は少し怖いよ。このままの生活を続けていたら、卒業した時困るんじゃないかって……」

「それって、金銭感覚が狂うってことかなっ? それは、確かに怖いかもね……」

 

 平田の弱気な態度に桔梗が共感の意を示す。少し辛気臭い空気になったところで、平田が俺に意見を求めてきた。

 

「エロくんはどうかな? 毎月10万ポイントを貰える今の生活……」

「そうだな……。松下も言っていたが価値観は人それぞれだ。俺は10万じゃ足りない派の人間だが、平田の危惧している気持ちもわかる」

 

 何せ俺は毎月10万も使えるような贅沢な暮らしはしていなかったからな。金銭面に関しては今の方が間違いなくいい生活をしている。

 

「そうだね、結局人それぞれか……」

「ああ、だが平田。お前は大丈夫だろう。少なくともお前は10万程度の金で人生を狂わされるような男ではない。俺が認めた男なんだ、もっと自分に自信を持て」

「……エロくん。ありがとう」

「なんか、あんたがいうと妙な説得力があんのよね……」

「おい、エロ! 俺はどうなんだよ、俺は!」

「池は金に気を付けろ。あと女にも気を付けろ」

「ええええ、なんでだよ!?」

「あはは、池くんは気をつけなきゃだね!」

「く、櫛田ちゃんまでぇ……」

 

 

 寮への帰り道に俺たちの笑い声が通り抜ける。平穏な日常。エロゲーの攻略進歩はお世辞にも良いとは言えんし、彼女もセフレもいない。だが、ずっと閉じ込められた空間で生きてきた俺にとって、友人と何気ない会話をしながら過ごす日々はどこか新鮮で、悪いものではなかった……

 

 

「なあ、平田」

「ん? なにかな、エロくん」

「お前に一つ頼みがあるんだ……」

 

 

 その夜、俺はなずな先輩にメールを送った。いつものふざけたメールではなく、初めて送った重要なメール。それでも、返事はすぐに返ってきた。

 

 

 

「南雲先輩に話があります」

「前と同じ場所で20時」

 

 

 

 そして数日後、高度育成高等学校に革命が起きた。後に、彼の行った全ての革命を総称し『エロ革命』として語り継がれるその革命の始まりである事を、今は誰も知る由もない。

 

 

 

 





エロ「おい、沖谷。次回お前が大活躍するって話は本当なのか?」
沖谷「う、うん。そうみたいだよ。やっと男になれるんだよ!」
エロ「そうか、可愛いスカートを用意しておこう」

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