ようこそエロゲーの教室へ   作:Monburan

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男を見せろ

 

 

『夢を見た』

 

 

 今見たばかりなのにもうほとんど覚えていない。

 だが覚えていることもある。

 俺がエロゲーの世界でたくさんの女に囲まれていた。そしてその中にはなずな先輩もいた。他にも顔は思い出せないが特徴的な事はうっすらと記憶に残ってる。

 杖をついた少女にアイドルのような女の子、キャンディを舐める少女と教壇に立つ先生……

 だが俺の意識はそこで途絶え、再び眠りについていた。そして次に目を覚ましたとき、夢の内容は全て覚えていなかった。

 

 

「……朝か」

 

 

 俺は名残惜しくもベッドから体を起こしカーテンを開ける。

 今日も晴れ。

 まさかエロゲーの世界だから天気が固定などという事はないだろうが、今日も今日とていい天気だ。

 顔を洗い制服に着替える。

 気持ちよく眠れたせいか朝の準備に使う時間の余裕はなく、携帯を持つとすぐに登校した。

 

「……メールは来てないか」

 

 確認するもなずな先輩からのメールはない。

 昨日南雲先輩から何かあればなずな先輩を頼れと言われたが……

 

「何かってなんだ?」

 

 今のところ主人公も見つかって交友も持てた。

 細かい事をあげ出せば切りがないが、後は攻略対象を探すのと、監視カメラの位置確認。まだ見ぬ寮長と、選択肢を色んなやつに試してみたいってくらいだ。とりあえず、なずな先輩にはしばらく待機していて貰おう。

 教室へつくと俺はさっそく行動に出た。待ってるだけでゲームは進まない。こちらから何かしらのアクションが必要だ。

 まずはあいつに声をかける。

 

「おはよう平田、いつも早いんだな」

「おはようエロくん。うん、今日から部活の見学で軽い朝練もあったからね。本格的に開始するのは来週からになりそうなんだ。エロくんは部活に入らないのかい?」

 

 そういえば昨日の放課後、部活の説明会に行くとか須藤が言ってたな。俺はなずな先輩の事に夢中ですぐ寮に帰ったが……

 

「いや、俺は運動が苦手でな。部活に入ることはないな」

「そうなんだね。もしサッカーに興味が出たら教えてよ、仲間と一緒にやった方が楽しいからね」

「ああ、その時はよろしく頼む」

 

 相変わらず爽やかな奴だ。

 部活をする時間があるならエロゲーをしたい。

『エロゲ部』とかあるなら入るが。

 俺が平田と部活について話してると、急に一人の女が割って入ってきた。

 

「平田くん今日の放課後遊びに行こうよ。カラオケとかどう?」

「うん、いいね。そうだ、エロくんもどうかな?」

「えっ、俺か?」 

「エロくん? 初めましてだよね、私は軽井沢恵。自己紹介の時いなかったよね? よろしく~」

 

 どこかなずな先輩に似たような雰囲気を持った軽井沢恵という女。入学してからここ数日、平田と軽井沢がクラスの中心としてグループを形成してるように感じる。仲良くなっておきたいところだが、カラオケは苦手だ……

 昔、一度だけ誘われて行った事がある。

 だが、あのデンモクと呼ばれる機械が目の前に置かれたとき、俺は履歴を見る事しかできなかった……

 

『まずは履歴を確認してからだ』

 

 いつの間にかそんな信念すら生まれていた。

 それに今日はエロゲーを買いに行きたい、やんわりと断ろう。

 

「軽井沢さんよろしく。あと悪いが平田、今日は放課後予定があるんだ。また今度誘ってくれないか?」

「予定があるなら仕方ないね。わかったよ、また今度一緒に行こう」

 

 俺は余計な追及をされる前にその場を離れ席へと戻る。その後、須藤が登校しバスケットボール部に入部した事を聞き授業を受けた。

 

「ここにXを代入してYが……」

 

 1時間目数学の授業。殆んどの生徒は携帯をいじるか寝ている。数人は遅刻なのか欠席なのか、まだ登校すらしていない。俺の友達でいうと山内がそれに当たる、朝から姿を見てない。かく言う俺も勉強は苦手だ、もう何年もしてないしな。

 もはや無法地帯とも言える教室の状況に、教師は何も言うことなく淡々と授業を進めていた。

 

「エロ、食堂いこうぜ」

「ああ、少し待ってくれ。誘ってみたいやつがいる」

 

 眠りから覚めると既に昼だった。

 食堂へと誘う須藤を引き止め、俺は兼ねてより目を付けていた男の娘に声をかけた。

 華奢な体つきにふわっとしたショートボブの青い髪。女子に免疫のない男子ならコロッと惚れてしまいそうな外見。

 

「ちょっといいか?」

「う、うん。どうしたの?」

「俺が誰だかわかるか?」

「……ご、ごめんね。名前まではちょっと」

「エロだ」

「……エロくん」

「よかったら一緒に食堂でも行かないか? 沖谷とは話してみたいと思ってたんだ」

「う、うん。……じゃぁ行こうかな」

 

 こいつ可愛いな……

 絶対女だろ、なんだこの小動物のような仕草は。

 俺は沖谷を連れて須藤たちの元へと戻った。

 

「エロおせえぞ、誰だそいつ?」

「おいエロ女か!? 抜け駆けはよくないぞ!」

「いや、池違うぞ、男だ。沖谷って言うんだ」

「お、沖谷京介です。よろしくお願いします」

「おう、俺は須藤。んでこっちが池だ!」

「池寛治だ、女と間違えて悪かったな。これから仲良くしようぜ」

 

 どうやらつつがなく自己紹介は済んだようだ。

 しかし池が間違えるのも無理はない。はやく男の娘なのか女の子なのか確かめたいな……

 

「待たせて悪かったな、さっそく食堂に行こう」

「おお、腹減ったぜ」

「う、うん」

「なあ沖谷、連絡先交換しようぜ!」

 

 おい、池ずるいぞ!? 俺も混ぜろ!! 

 俺たちは連絡先を交換して昼を済ませた。

 

「なあ、沖谷ちょっといいか?」

「なに? エロくん」

「今日の放課後、俺の部屋に来ないか?」

「えっ、いいの? 友達の部屋に行くなんて初めてだな……」

「緊張することはない。すぐに終わるからな」

「わ、わかったよ。じゃぁ一度部屋に戻ったらすぐ、いくね?」

「ああ、待ってるぞ沖谷」

 

 

 

『待ってるぞ、沖谷』

 

 

 

 そして放課後。俺はベットの四隅にティッシュ箱を配置することによりここを聖域とし、いつでも不足の事態に対処できる体勢を整え沖谷が来るのを待った。程なくしてインターホンが鳴り沖谷の到着を知らせる。

 

『ガチャ』

 

「よく来たな、沖谷」

「う、うん。お、お邪魔します?」

「ああ、入ってくれ」

 

 まるで初めて彼氏の部屋に訪れた彼女のような仕草。同じ部屋作りのはずなのに迷ってしまいそうなその歩き方は俺の鼓動と股間を大きくさせた。

 部屋に入ると、緊張した雰囲気に耐えられなくなったのか、立ったまま沖谷が口を開いた。

 

「え、えっと僕はなんで呼ばれたのかな?」

「深い意味なんかない、沖谷との交流を深めたかっただけだ」

「そ、そっか。交流を……」

 

 張り詰めた空気が少しだけ穏やかになる。

 俺はベッドの上に座り、その横を手で叩きながら沖谷に座るよう促す。

 俺の手の振動で四隅のティッシュが揺れる。

 

「入学して数日経つが沖谷は友達とかいるのか?」

「うぅん。僕は自分から話しかけるのも苦手だし、こんな見た目だから友達作るの苦手なんだ」

「そうか、悪いことを聞いたな」

 

 可愛い見た目を気にしてるのか? 

 過去にいじめられたことでもあるんだろうか……

 こういう時こそ選択肢の出番だな。

 

「沖谷、肩にゴミがついてるぞ。取ってやる」

「え、あ、ありがとう」

 

 俺の手が沖谷の肩に触れる。

 選択肢はまるで待ち構えていたかの如く、すぐ頭の中に現れた。

 

『ピコン』

 

『沖谷京介のいじめられていた過去を聞く』

『沖谷京介の過去を聞かない』

 

 ……なんだと? 

 俺は驚いた。

 こいつ、いつからこんな有能になったんだ……

 今まで散々役に立たない選択肢ばかりだったからな。今回の選択肢は沖谷がいじめられていた事実までわかる。せいぜい過去を聞く、聞かない、の二択だろうと思っていたが思わぬ収穫だ。

 そしてこの選択は迷うまでもない。

 

「沖谷は過去にいじめられていた事があるのか?」

 

『沖谷のいじめられていた過去を聞くルートへ進みます』

 

 頭の中にアナウンスが流れる。

 沖谷は悲しい気持ちを隠すように精一杯の明るさで答えた。

 

「うんっ、小さい頃にちょっとね。女の子みたいだって。本当はかっこいい、男の中の男になりたいんだけど。男友達がずっと出来ないのも寂しいし……」

「そうか、だが俺たちはもう友達だ。だから寂しがる事はない」

「エロくん……」

 

 胸に手を当てながら沖谷が俺を見つめる。

 そんな沖谷を俺も見つめ返して問う。

 

「だからこそ沖谷に聞きたい」

「う、うん。何かな? 僕に答えられることならなんでも……」

「お前は、本当に男なのか?」

「……え? 男だけど?」

 

 ふむ、さすがに女であることは隠すか。

 やむ終えん……

 俺は両手を沖谷の肩に乗せた。

 先程と同じなら女かどうかの答えも選択肢が教えてくれるはずだ。

 

『ピロン』

 

 

『男である証拠を求める』

『女でない証拠を求める』

 

 

 

 くそやろう……

 同じ意味じゃねえか。

 なんの役にも立たねえ上に証拠求める事だけ勝手に決めやがった、さっきの有能選択肢はどこいったんだ。

 だがこうなったら仕方ない、証拠を求めるか……

 

「沖谷、俺はお前を信じたい。だから男である証拠を見せてくれ」

「しょ、証拠ってどうしたらいいのかな?」

「脱げ」

「えっ?」

「脱いでくれ」

「そ、それは……」

「何かやましい事でもあるのか?」

「……ないけど」

「なら脱げるだろ、男を見せろ!」

「お、男を見せる……」

 

 沖谷は決意して立ち上がった。

 俺も勃ち上がる。

 ついに沖谷の裸が見れる、そして恐らく女。 

沖谷が恥じらいながらスボンのチャックを下ろす。

 

『そうか、最も露出の少ない方法を選んだか』

 

 小さな手をチャックの中に入れて、沖谷は決意した表情でそいつを取り出す。

 その怪物は窮屈そうに顔を出して俺にその存在を見せつけた。

 

 

 

『……でかい』

 

 

 

『男である証拠を求めるルートへ進みます』

 

 

 

「も、もういいかな?」

「ああ、ありがとう。お前は男だ」

 

 沖谷は急いでそいつを封印するとホッとした顔つきで俺の横に戻ってきた。

 

『こいつ男なのか……』

 

 俺は残念な気持ちを抱きながらもすぐに切り替える。つまり沖谷は男の娘として、この可愛い顔とあの怪物を持って女を犯していくキャラということだ。

 女と見間違える程の容姿だ、警戒されることなく女に近づける上、状況によっては女装も可能。

 かなりの高スペックキャラと言える。

 だが本人にその自覚がない。

 これから先、俺がこいつに男のなんたるかを教え込み上手く動かせば、必ず大きな力となるはずだ─

 

 

 

 沖谷との友好を深めた俺は夜の街に繰り出していた。夜とは言ってもまだ19時、健全な高校生であれば外にいてもおかしくない時間だ。

 学園敷地内は小さな街になっており、そこには当然のように様々な店が建ち並び何不自由なく生活できるように整えられていた。

 

「ここか」

 

『LOVE-N』

 

 俺の探してた店。

 中を見渡すと数多くの同人誌やゲームが並んでいた。そして奥には18禁コーナー。

 床には赤いテープが張られ容易には越えられない壁が立ちはだかる。どうやらこの先に俺の求める財宝が眠っているらしい。

このレッドラインを越えるにはどうすればいい? 

 年齢的には完全にアウト……

 周囲を見渡せば監視カメラと人の視線。

 ……やはりこの先に進むのはまだ早いのか? 

 今先に進んだところで間違いなく捕まるだろう。そうなれば俺の歴史には何も成し遂げられなかった後悔しか残らない。

 あと約2年、自分を鍛え直し仲間と共に卒業してからでなければこの先に挑む資格すらないのかもしれない……

 俺は一時間ほど店内をうろつくと、結局何も買わず店をあとにした。そしてスーパーで大量のこんにゃくを購入し部屋へと戻るのだ。

 だが翌日の放課後、俺は職員室へ呼び出されることになる───

 

 

 

『1年Dクラスのエロ芸夢くん、エロ芸夢くん。担任の先生がお呼びです。職員室まで来てください』

 

「なんだ?」

 

 翌日の放課後。帰宅するため廊下を歩いていた俺は、その放送を聞き目的地を職員室へ変更した。

 程なくして職員室まで辿り着きノックをして中へと入る。

 

「すみません、1年Dクラスのエロ芸夢ですが……」

「来たかエロ。生徒指導室に移動する、ついてこい」

 

 俺は茶柱先生に言われるがまま後ろをついて歩き、椅子へ座るよう促され腰を下ろした。

 急な呼び出しで戸惑う俺の心を汲み取ったかのように先生は言葉を出した。

 

「本日呼び出した理由だが、ただの事実確認だ。そう気を張る必要はない」

「事実確認ですか? なんのでしょう」

「昨晩『LOVE-N』という店で、うちの制服を着た男子が18禁コーナー付近を不審にうろついているという報告を受けた」

 

 俺が何も言葉を出さずに聞いていると茶柱先生はそのまま続ける。

 

「報告を受けすぐに駆け付け監視カメラを確認したところ、エロ、お前であることが判明した。だが幸いにも18禁コーナーに入った形跡もなく、購入履歴を確認しても学生にとって相応しくない物の購入はなかった」

「では、なぜ俺は呼ばれたんですか?」

「学生にとって相応しくない物の購入は確かになかった、だが……」

「だが?」

「……なぜこんにゃくを30丁も購入した?」

 

 迂闊だった。

 まさか購入履歴を確認されるとは……

 少し考えれば気付けたはずだ。

 そしてこの流れ、おそらく茶柱先生はこんにゃくをオナホとして使用したと勘違いしている。

 俺は、俺はただ……

 

『こんにゃくが本当に好きなだけなんだ!』

 

 あの食べたときの食感が忘れられないんだ……

しかしこのままだとまずい。こんにゃくを使った変態野郎だと認識されてしまう、誤解は解いとこう。

 

「使用するためです」

(変態野郎が……)

 

「それは料理にということか?」

「はい、美味しくいただきました」

(……嘘だな。形式上聞いてはやったが、18禁コーナーをうろついた後のやつがただの食材としてこんにゃくを30丁も買うことなどありえん。何に使用したのかは明白だ。だがこれ以上の追及もまた不要、今後こいつの監視を強化しよう。問題を起こされて退学者など出しては私も困るからな……)

 

「そうか、話は終わりだ。以後不審な行動は慎むように」

「わかりました、気を付けます」

 

 どうやら誤解は解けたようだな。

 今度茶柱先生にもこんにゃくを分けてやろう。俺の手作りこんにゃく料理を振る舞えばきっと喜んでくれるはずだ───

 

 

 茶柱先生との会談を終えた俺は帰路につくため廊下を歩いていた。既に多くの生徒は下校し、それ以外の生徒は部活に励んでいる時間。

 廊下はとても静かで俺の足音が僅かに響いて聞こえた。

 

『カツン……カツン……カツン……カツン』

 

「……なんの音だ?」

 

 廊下の先に目を凝らすと杖をついた少女がこちらへゆっくり歩いてくる。足が不自由なのか? 

 俺の視界に少女の足が映る。

 

『攻略対象』

 

 一目見てわかった。

 ……圧倒的な個性。

 疑う余地すらなかった。

 自然と距離を詰め合い真横を通りすぎる。

 銀髪、片手に杖、そして不敵な笑み。

 目は合わなかった、顔さえ向けなかった。

 それでも笑っていると感じた。まるでこちらを見透かしたように……

 鳥肌がたつ、この世界に来て初めての経験。

 二人の距離は少しずつ離れていき、後ろから杖の音だけが響く。

 俺は我慢できず立ち止まり振り返った。俺が振り返るのをわかっていたかのように少女は足だけを止めた。

 俺は尋ねた。

 聞かねばなるまい。

 もはや選択肢は不要。

少女が振り返ると同時に俺の口は動き始めていた。

 

「なぜ、ガーターベルトをしている」

「お嫌いですか?」

「好きです」

 

 初めて目が合った。

 俺の内側を覗き込むような視線。

 やはり彼女は……

 

 

 

『笑っていた』

 

 

 

 

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