ネウロイ+デイリー建造   作:haguruma03

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完結


結②

元の姿に戻っている愛すべき妹

私に向けられた銃口

 

和やかで優しい夢にはふさわしくない状況。

 

私は私に向けられたそのライフルの銃口を、妹の表情を見つめるしかできない。

 

何を話せばいい?

どうすれば丸く収まる?

 

そんな考えが頭の中を駆け回る。

だが、いくら思考を働かせようがいい案を思い浮かべることができない。

 

それはそうだ、なぜなら今妹は夢の中での姿である幼年期の姿ではなく、成長した元の姿に戻っている。

そして彼女が慕っている姉の姿をしている私に銃口を向けているのだ。

 

なぜ元の姿に戻っているのか、なぜ銃を持っているのか、それはこの夢は私が見せているとはいえ、この夢自体が彼女の願望であり元々は彼女のものだからだ。

だから意思さえあれば、この夢は彼女の思い通りになる。

元の姿に戻ることも、武器を手にすることも。

 

現在の、慕っている存在に銃を向けているこの状況。

彼女が何らかの核心がなければそんなことはできない。

それは先ほど彼女が話した「上官殿の声が聞こえた」に起因するだろう。

 

夢の中まで声を届かせるなんて『あの人』はなんて野郎だ。

これだから規則外のウィッチは・・・・

 

まぁ今は、「あの人」のことよりも目の前のことだ。

 

 

私は銃口ではなく、妹に視線を合わせて口を開いた

 

「あら、随分と物騒なものを向けますね。いったいそれをどこから・・」

 

BANG!!

響く銃声。

弾け飛ぶソファーの一部。

 

視線を横に向ければ、私の真横に見えるソファーの背もたれに大きな穴ができていた。

 

「質問に答えてください。上官殿を知りませんか?」

 

 

・・・・・・うん

これはまずい

 

彼女の表情は、夢に揺蕩っていた時の天真爛漫の表情ではない。

無表情。

そう表情一つなくライフルの引き金を引いたのだ。

 

おそらく彼女の今の心境は何らかの激情が溢れている

 

なぜなら、当ててはいないとはいえ慕っていた姉に対して躊躇なくライフルをぶっ放したのだ。

 

確信はないが、彼女は分かっているのだろう。

私が『姉』ではないことを。

 

次、辺なことを口走ったら今度こそ脳天をライフル弾でぶち抜かれそうだ。

 

観念して話すとしよう

 

「知ってますよ『あの人』は今私の作ったネウロイもどきと戦っているところです」

 

「ネウロイもどき?」

 

「そう、私が作った小型のネウロイもどきですよ」

 

「ああ、『定期便』のことですか。」

 

ん?

『定期便』とはなんだろうか?

 

私はそう疑問に思ったことが表情に出ていたのか、妹が答えてくれた

 

「毎日、同じ時間に同じ方向から同じ形の同じ数のネウロイが来ることからそう名付けられたのですよ。」

 

「あぁ、なるほどなるほど」

 

確かにそれは『定期便』だ。

私が毎日のルーチンにしていた事からそんな名前が付けられるとは夢にも思わなかった。

だが、それにしてもだ、そう語る妹ちゃんの眼光の強さが増している気がする。

何故だろう?彼女らの言う『定期便』は正直、彼女たちにとっては瞬殺できる雑魚だったろうに?

 

 

「えーと、何か恨みがこもっているような視線を感じますが、あなたたちウィッチなら『定期便』ごとき楽に倒せたはずでは?」

 

BANG!

再び吼えるライフル。

吹き飛ぶソファーの一部

 

「どんなに弱くても毎日毎日襲撃されたのですよ?本気で言っていますか?」

そう語る妹の視線は冷え切っている。

 

・・・・うん、余計なことをまた言ってしまったようだ

額からたらりと冷や汗が流れるのがわかる。

今後は妹の質問に回答するだけにしよう。次余計なことを言ったら今度こそ頭が吹き飛ぶ気がする。

それにしても優しく可愛い妹は、随分とアグレッシブに育ったものだ。

 

「とりあえず、今の言い分で分かりました。お姉ちゃんが私たちの敵で『定期便』の親玉だったわけですね」

 

妹はそう確認しながら私の対面にあるソファーに座った。

もちろん銃口は私を向いたままである

 

夢だから死ぬことはないとはいえ、それでも銃口をぴったりと向けられることは恐ろしい。

 

だが・・・うん・・やっぱり。

私は銃口を向けられているのにもかかわらず、私は妹に対して悪感情を抱いていない。

それどころか私の心はあいも変わらず『この子を守れ』と言い続けている。

 

これがなんでなのかはわからない。

だが、やはりこうやって彼女に私がネウロイだとバレていてもなお、私はこの子を守りたくて、そして戦わせたくない。

たとえ目の前の彼女がそれを望まなくてもだ。

 

ならば私がやるべきことは、彼女にこのまま眠ってもらうこと。

目を覚ませば否応がなく人類とネウロイとの戦争に妹は身を投じてしまうだろう。

だけど眠ってもらうためには、彼女を説得しなければならない。

 

すでに、ここが夢だと認識した彼女に再び甘い夢を見せ続けることは叶わないだろう。

 

さてどうやって説得するべきか・・・・

 

そう私が考えているのと同じように、目の前の妹も何かを考えている。

おそらくはこの夢からの脱出方法。

実はそれは簡単な方法だ。何故ならこの夢は彼女自身の夢。彼女が強く思えば目がさめるのだから。

だが彼女は目を覚ます様子が見えない、つまりなんらかの理由で目を覚まそうと彼女自身が思っているのだ。

説得の鍵はそこだ。

だが変にまた私から話を振ったらライフルが火を噴くだろう。うまく彼女からの質問に答えながら説得しなくては

 

そう私が確信し、次に妹の紡ぐ言葉を待つ。

少しすると妹も考え終わったのか口を開いた

 

ポツポツと雨の音が聞こえるリビングでその声は部屋に響いた。

 

 

 

 

 

「じゃあ、お姉ちゃん。上官殿との喧嘩やめて一緒に帰りましょう」

無表情から朗らかな笑顔に表情を変え、クスリと笑い私に言葉を告げる妹

 

 

・・・・

・・・・・・・・んぁ?

妹の突然の提案に私の思考が止まる。

いや・・・・何を言っているのだろうかこの子は?

 

「えっと・・・あなた。私が『定期便』を生み出していたって確認しましたよね?」

 

「そうですね」

 

「私が敵だったって確認したよね?」

 

「そうですね」

 

「それで?」

 

「上官殿との喧嘩をやめて一緒に帰りましょう」

 

 

・・・・・・・????

なにを・・言っている???

もしや、もしやと思うが、彼女は未だに私が『姉』の姿を偽っていることに気がついていないのか?

いや、それはない、なぜならば彼女は私が『定期便』を生み出したことを知っているし、こうやって元の姿に戻り私に銃口を向けている以上とらえられた時の記憶を持っているはずだ。そしてその記憶の中には私がいる孤島で私のコアを見た記憶もあるはず

 

私が混乱しているのがわかったのか妹は再び口を開いた。

 

「ああ、もしかしてお姉ちゃん、上官殿に謝るのが怖いのですか?安心してください。あたしも一緒に謝ってあげるから」

 

にこやかに笑い私にそう告げる妹。

 

・・・・いやそうじゃない。問題はそう言うことじゃない

私は深呼吸して息を整える。

可笑しい、現実世界では『あの人』と息がつまるような殺し合いをしているはずなのに、それ以上にこの夢のなかの状況に冷や汗が流れる。

なにか、マズイ気がする。

 

「いやいや、待ってください。仮に一緒に帰ったとしても殺し合いをしているのです。謝る謝らないで済むわけないでしょう」

 

「大丈夫ですよ?上官殿はわかってくれます」

 

だからそうじゃない。そこが問題なのではない。

そんなこと言ったら妹は軍から人類から異常者だと思われ、最悪裏切り者だと思われるだろう。それはいやだ。

そして、そもそも違うのだ。私と妹は種族が違うのだ

たまらず私は妹を諭そうと語りかける。

 

「わかっているのでしょう?私はあなたの『姉』の姿を作り出して、その皮を被っているだけのネウロイだって」

 

BANG!!

頬へのかすかな痛み。

視線を下ろすと、頬にかすかに裂けた傷ができている。

目の前には硝煙が漂うライフルと、笑いながらも瞳のハイライトが消えている妹・・・・・

 

ふぁ・・?え・・・怖い

 

呆然としている私を見ながら妹ちゃんは口を開く

 

「お姉ちゃんはお姉ちゃんですよ?」

 

「・・・・・・・え、あ」

 

「お姉ちゃんですよ?」

 

「あ、はい」

 

・・・・・あれ?

・・・もしかして私は何かやらかしてしまった?

家族を亡くし、家を亡くし、姉を亡くし、戦争に心を痛めていた彼女に、私は幸せな夢を見せた。

その結果、彼女の心境になんらかの、マズイ結果をもたらしてしまった?

 

私が生まれてからもっとも頭を混乱させている間に妹は、傍にライフルを置き、そっと私に近づいてくる。

すると妹の姿再び幼くなっていく。

 

「お姉ちゃんがネウロイなわけないよ。だってお姉ちゃん、敵対しているのにあたしを殺そうとしないでしょう」

 

まるで蛇のように伸ばされた妹の小さな両手が頬に触れる。

撫でるように触られる私の顔。

その感触にゾクゾクと震え、それと同時に背筋が泡立つ。

 

「それどころか、あたしを保護してこんな幸せな夢を見せてくれる」

 

頬を触れていた両手が、今度はがっしりと私の顔を持ち、瞳を合わせてくる。

妹の瞳の奥はあまりに暗かった。

 

これは・・・・マズイ

なんか・・・・マズイ

 

「いや、確かにあなたを助けようとは思いましたが、保護したわけではなく、洗脳して戦力にしようとしたからに過ぎなくて・・・・」

 

なぜか私の口から紡がれる自らの立場を悪くする言葉。

ここで妹に流されるとマズイと私の本能が告げていた

 

だからこそ彼女が好意的に見てくれた捕獲行為を自ら覆そうとした。

確かに私は彼女を見た時、『この子を助けなくては』とは思った。今もそれは変わらない。だけれどここでそれを認めるとなんかマズイ気がする。

だがどうやらそれは無駄だったらしい

 

「洗脳しようとしてまで、あたしに近くにいて欲しかったんだ。うれしいな。だから一緒に帰ろう?」

 

妹が嬉しそうに微笑む。

可愛らしいはずなのに恐怖が胸中に湧いてくる。

なぜこうなった?どうしてこうなった?

 

「な、なんでそんなに私に執着するのですか?」

あまりに気になってしまい、つい本人に聞いてしまう。

それを聞いた妹はじっと瞳を合わせ答えてくれた。

 

「同じだよ?」

 

「同じ・・?」

 

「そう、お姉ちゃんが私に執着したようにあたしもお姉ちゃんに執着しているだけ」

そう語る彼女はソファーに座る私の膝に跨るように膝立ちになる。

幼い姿となった妹は私よりも小さいはずなのに、ソファーに膝立ちとなり私の顔を両手で包んだ妹は私を覗き込むかのように顔を近づける

 

瞳のハイライトは相変わらず消え去っている。

 

「あたし、おねえちゃんがいなくなってとても寂しかった。パパやママだけじゃなくてお姉ちゃんも居なくなって、上官殿がいてくれたから頑張れた、だけれどそれでも寂しかった。でも頑張って寂しさに耐えたんだよ」

 

そう語る妹の表情が微笑みから悲しみに変わっていく。

それがとても寂しく悲しいものであったのが、容易に想像がつく。

その表情を見る私の胸中にも悲しみが広がってくる。

辛く、悲しかったのだろう。だけれどこの子は頑張ってきたのであろう。

そう私は彼女を哀れむ

 

だが、悲しみに暮れていた彼女の表情が徐々に変化する。

その表情は安堵?いや喜びに満ちていた。

 

彼女は喜びを口にする。

 

「でも、居なくなっていなかった。ここにお姉ちゃんはいたんだ。だから帰ろうお姉ちゃん。また上官殿と、准尉ちゃんと一緒の暮らしに戻ろう?」

 

・・・・なるほど、死んだと思った『姉』が帰ってきて、耐えていた寂しさが解放されたわけか。

それで、それが実は『夢』でしたと。そしてネウロイでしたと。

 

・・・・・うん

なんでそれで『一緒に帰ろう』という結論になる????

普通怒るのでは?

 

「えっと、ですから、私はあなたも見た通りに三角錐のコアでして・・」

 

「それがどうしたの?」

 

「どうしたって・・・・」

 

「おねえちゃんはお姉ちゃんだったよ、姿もお姉ちゃん、動く姿もその雰囲気も思考もお姉ちゃんは完全に私の知るお姉ちゃんだったよ。」

 

そう語る妹の瞳は純粋でその言葉に何一つ偽りがないのがわかる。

 

・・・ああ、なるほど。そう言うことか

私はこの『夢』で妹の記憶から『姉』の姿と記憶を模倣した。

そして、私の胸中に浮かんでいた『この子を守る』という思いの元に、この夢で行動した。

 

それが妹にとって、記憶の中の『姉』と完全に同じだったのだろう。

姿も記憶も思いも同じならばそれは本物であると妹は結論を出したのだろう

 

・・・

・・・・まじ?

これは・・・もしや私は、『姉』という着ぐるみを建造したと思ったら、完璧な『姉』を建造してしまっていて。

しかも、その『姉』ごと私は、目の前の妹に確保されそうになっている・・・のか?

 

なんと言うことだろう、妹を優しい夢の中で保護しようとしたら、逆にその妹に保護されそうになっている。

いや保護か?目の前の妹の様子を見る限り誘拐または監禁されるのでは?

実際に妹を誘拐洗脳した私が言える台詞ではないがそれはマズイ。

 

たまらず私はその場から逃げようとあたりを見渡して気がついた。

 

扉がない。

それどころか窓もない。

いつのまにか部屋が密室に変化してしまっている。

 

まさかと思い、妹を見る。

妹は相変わらず私に笑いかけてくれる。

 

「逃げちゃダメだよ。もうこの夢は私の夢なんだから」

 

夢を掌握されてる。というか監禁された。

 

マズイ・・・・なんかもう、とにかくマズイ

 

このまま行けば、私は夢に監禁されてしまう

どうにかしなくては

 

「え、えっと・・・・わ、私にはネウロイの使命があるから人類と仲良くするわけにはいかないのよ」

 

とっさに出た言葉。

そう私にはネウロイの使命である人類打倒があるのだ。

そんな存在仲良くできるわけが・・・・

 

「それは、私と一緒にいるよりも大事?」

 

妹が頬を膨らませて聞いてくる。

可愛い。可愛いがその瞳は暗く澱んでおり、やっぱり怖い。

 

「いや、そう言うわけでは・・・・えっと・・・そうだ!これはしょうがないことなのです!この体になってから、私の心の中から湧き出てくる使命なので、しょうがないのです!」

 

「しょうがないの?」

 

「そう!しょうがないのです!だから毎日ネウロイもどきを建造していたのです!」

 

「じゃあ、これもしょうがないですよね」

 

ガチャン!

鉄出てきた何かがハマる音が聞こえる

 

ガチャン?

私はその音に嫌な予感を感じならが腕と足を確認する。

そこには手錠が、足枷がかかっていた。

いやそれだけではない。首に違和感を感じる

何か優しい力で締め付けられるような・・・・・・

もしやこれは、首輪・・・・

 

それを確認した後、私は恐る恐る再び妹の顔を見る

妹は笑っている

 

「こうやって捕まってしまったら、その湧き上がる使命を遂行できませんよね?その使命を諦めるしかありませんよね?しょうがないですよね?」

 

う・・・あ・・・・

 

「しょうがないですよね?」

 

妹は笑う。

可愛らしく笑う。

 

私は今、意識を持ってから一番の恐怖を味わっている。

 

妹は本気だ。本気でどんな手を使っても、ネウロイの私を捕まえようとしている。

それはネウロイへの怒りや探究心からの行動ではない、ただ純粋な家族愛からの真心のこもった行動。

 

夢を掌握されてしまっては、夢の中の私はもう動けない。

積みの状況。

だが、それは『夢』に限ってのこと

現実はそうはいかない。

 

私はそれを諭すために口を開く

 

「た、たとえこの夢の中で私を捕まえても現実の私を捕まえれるわけではありません!現実では私の有利です!だからこの枷を解放してくださ・・」

 

「本当にそう思ってるの?」

 

私の言葉が遮られる

遮った妹は、心底疑問に思っているような表情で私に問いかけてくる。

 

「いま現実で戦ってるのは上官殿だよ?本当に有利だと思ってるの?」

 

有利だ・・・有利に決まっている。

何故ならば現実の私の目の前には大量の輸送機の残骸があり、そこから生み出される大量のネウロイもどきたちがいる。

そしてそれに立ち向かうはたった一人のウィッチ。

多数対1。多勢に無勢。

現に、現実では大量のネウロイもどきに追い回されている『あの人』が見える。

確かに『あの人』の攻撃によりネウロイもどきたちは次々に撃墜されていっている。だが撃墜された数だけ私が建造したネウロイもどきたちが新たに補充されていく。

 

数は力なのだ。負けるわけがない。負けるわけがない・・・はずなのに。

 

何故私の心中には安心感がないのだろう?何故私の心中には不安があるのだろう?

 

「思ってます!不可能です!数が違います!多数対1です!『あの人』の弾薬は有限でこちらのネウロイもどきは無限なのです!」

 

私はその不安を振り払うかのように叫ぶ。

すると、妹はまるで安心させるかのように私の頭をその胸に抱きしめてきた。

暖かく安心するような抱擁。

 

しかしそれもつかの間。その抱擁の締め付けはどんどん力を増していく。

 

「お姉ちゃん。それは本当に無限なの?」

 

妹の声が聞こえる。

確かに、確かに言う通り無限ではない。

だけれど

 

「確かに私のネウロイ建造は『資材がある限りという限定条件』がつきます。だがその資材は、輸送機の残骸はまだまだ目の前に大量にあるのには変わりありません!」

 

そうなのだ。まだまだ資材はある。この資材をいつかは使い切るだろう。だがそれよりも早く『あの人』の弾薬が切れるはずだ。

根くらべならばこちらが断然有利・・・・・

 

「じゃあその資材の補給速度は?」

 

・・・あ

 

「わからないと思った?お姉ちゃん、あたしのストライカーユニットを食べる時すごいゆっくりだったよね?相変わらず食べるのがゆっくりなのかな?」

 

抱擁している妹の声が耳元で聞こえる。

妹の表情は見えない。だがなんとなくわかる。

おそらく笑っている。

 

「それに、あたしのユニットを食べ終わった後も輸送機の残骸を食べる速度も遅かったよね。多分、コアによる補給速度は速くない、いやむしろ遅いのではないかな?」

 

そうだ、私の補給速度は遅い。

だから、補給速度と建造速度にズレが生じる。

『あの人』に撃墜される数とその数を補充するための建造速度。それは私の補給速度を圧倒的に上回っている。

だからいつかは、いや近いうちに限界がくる。

 

 

だが、それよりもだ

 

それよりも今妹はなんと言った?

 

なぜ、なんで

 

「な、なんでユニットを食べ終わった後のことを知覚しているんですか!?その時には洗脳は終わっていたはずなのに!」

 

そうだ、妹は私がユニットを食べ始めた時に洗脳されたはず。だから意識は夢の中で揺蕩い、現実を知覚できるはずがない

 

私の声が辺りに響く。

何故か妹の返答は来ない。

 

静かな時が過ぎる。

先ほどまで聞こえていた雨の音は聞こえない。

その静寂によって、1秒1秒が長く感じる。

 

すると声が聞こえた。

声を堪えるような笑い声。私の声ではない。

 

次の瞬間、抱擁は解かれ、再び私の顔が掴まれていた。

 

目の前に見えるのは妹の顔。その顔はまるでいたずらが成功したようなあどけない幼顔。

 

それを見て私は察する。

その理由を察してしまう。

 

妹の口が蠢く。

 

「ねぇ、おねえちゃん。いつあたしが洗脳されたっていったっけ?」

 

一言も妹は自信が洗脳されたとは言っていない

 

「ねぇ、おねえちゃん・いつ自分が洗脳能力を持っているって勘違いしたの?」

 

『巣』は私にウィッチを捕まえた時の利用法を教えてくれた。だがそれが私にできるとは一言も言ってなかった。

 

「ねぇ、おねえちゃん。なんで『あの人』がここに来れたか分からなかったの?」

 

ここは海にポツンと立つ孤島。明かり一つない夜の孤島。本来なら見つかるはずもない。

 

だれかが場所を教えなければ。

 

「あ、う・・・あ・・・・」

無為な声が私の口から漏れているのが聞こえる。

だが私にそれを止めることはできなかった。

 

 

最初から間違っていた。

私は彼女を洗脳して味方にしていると思っていた。だが違う

彼女はただ眠っていただけなのだ。眠った私が見せる夢を満喫していただけなのだ。

 

いや、眠っていただけではない。彼女は一つ行動を起こしている。

 

先ほどの『あの人』からの銃撃。

私が死ぬはずだった攻撃を守ってくれた。

だがそれもまた、私の洗脳による命令からきた行動ではない。自由意志による行動。

 

つまりは・・・・・

 

「ねぇ、おねえちゃん」

 

妹が抱きついてくる。

夢の中のソファーで。

 

 

そして現実で。

現実で見える、粉々になった『イカくん』

そして、軍服を着て月明かりを背にしながら私に笑いかける妹

 

「いつ、多数対1だと勘違いしたの?多数対2だよ?」

 

動くことができない、現実でも夢でも

私は目の前の妹を見ることしかできない。

 

夢の中の幼い妹と現実の妹の口が動く。

声が二重に聞こえる。

 

「お姉ちゃん。つかまえた」

 

う・・・・・あ・・・・・・・

うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 

 

 

 

 

**********************************

 

ガヤガヤと人々の声が聞こえる。

ここは駅のホーム。様々な人が今から来るであろう列車を待ちわびていた。

肌寒い風がホームを抜けていき、風に流されて来た枯葉がホームを舞う。

 

そんな中、一人の少女が鉄柱に背を預けて手に新聞を広げて読んでいた。

ハンチング帽を被り長めの茶色のコート着る姿はまだ若い少女にもかかわらず落ち着いており、着慣れている様子であった。

 

そんな彼女が見る新聞の一つの記事に先週起きた事件が書かれている。

 

ネウロイの突然の強襲。だがそれを迎撃するウィッチたち。

一週間前の深夜、夜中に大量の小型ネウロイが襲撃してきた。あわや大被害が引き起こされるとされたが、近隣の基地から4人のウィッチが果敢に迎撃し撃退。その活躍により、死傷者は0だったという。

 

そんな記事を、ハンチング帽をかぶる彼女は確認し、すぐに次の記事に目を向けた。

 

彼女は思う。

現実にはウィッチ7名、死者1名なんだけどなぁ

 

だが、それは表沙汰にされることはないと彼女は苦笑する。

 

その時彼女の肩に何かが当たる。

そちらに目を向けると、別の少女が同じ鉄柱に背持たれていた。この少女の体が当たったのだろう

その少女もコートを着ているがその下に見える服が軍服であることがわかる。

 

あたりは確かに人が多い。だがわざわざ同じ鉄柱に背持たれる必要があるほど人は多くはない。

 

疑問に思うべき行動。だがハンチング帽をかぶった少女はそのことを追求しない。

むしろ、彼女からさっと視線を反らせた。

 

ハンチング帽の少女の心境はたった一つ。

なんでここにいるんですか・・・・!?

 

そんな慌てた様子を軍服の少女は認識し、ニヤリと笑い声をかける

 

「随分と雰囲気が変わっているじゃないか曹長」

 

その声を聞いた曹長と呼ばれた少女は、いくつか思考する。

 

なぜここにいることがわかった?そう考えるとともに行くつかの候補が出てくる。

最後に会っていかないのか?と聞いて来た同僚の双子。

置き手紙ぐらいなら許そうといった上司。

 

そんなありがた迷惑を行うであろう容疑者たちの顔を脳裏に浮かべながら、犯人が誰であろうとこうなってしまったらしょうがないとハンチング帽の少女は観念して、呆れた視線を軍服の少女に向けて答えた

 

「曹長は一週間前の事件で死亡したはずですよ」

 

「お前があんなところで死ぬ奴か。私は死体を見ない限り死んだと信じないと決めている」

 

その答えを聞いてはハンチング帽をかぶった少女、曹長と呼ばれていた少女はため息を吐く

 

私が墜落死した工作を同僚に任せていたが。どうもその仕事が雑だったらしい。支部に帰ったら文句を言わなくては。

 

そんな恨みを同僚に向けながら元曹長は横の少女に目を合わせた。

 

そこには、どこか吹っ切れたかのような表情の元上司がいた。

王子様はさらわれた姫さまだけではなく、死んだと思われていた姫様も救ってきたのだ。そりゃ、こんな表情にもなる。

そんなことを思考しながら、元上司に元曹長は問いた。

 

「その死体を見ない限り死んだと信じないって今回の経験からですか?」

 

その問いに元上司は笑いながら答えた

「まぁ、そうだな」

 

 

一週間前、准尉がネウロイに誘拐され、基地に大量の『定期便』が襲撃して着た事件。

その事件は少尉による准尉救出によって終わりを告げた。

 

だが、事件は終れど、その後始末が大ごとであった。

少尉と准尉は一つの物を持って帰ってきたのだ。

それはひび割れた三角錐のネウロイのコア。

 

しかもただのネウロイのコアではない。そのコアの中には一人の少女が閉じ込められていた。

 

現場のウィッチたちは大混乱。

しかもその閉じ込められたウィッチはMIAになっていたウィッチであり、少尉の戦友で准尉の姉だという。

 

わけがわからない。混乱に次ぐ混乱。

この騒動を知った上層部はこの事件に箝口令を敷いた。

そもそもの始まりがトレヴァー・マロニーの派閥がウォーロックの実験場にしていたと思われる基地の捜査が始まりだ。

この事件を大事にしてしまうと、基地のことにまで話が広まり、下手をすると機密にしているウォーロックのことまで話が大々的に広まる可能性がある。

 

それはかなりまずいことである。

だからこそ、あの基地の事はなかったことにされ、あの基地に所属していた3人のウィッチもいなかったことにされている。

 

それに加え、3人のうち一人は秘密諜報部だったので此れ幸いと、死を偽装して彼女の存在もなかったことにした。

 

よって、この事件で活躍した彼女たち3人の活躍はなかったことにされ、そして秘密諜報部の一人と残る二人はもう会うこともない

 

はずだったのだが

結局、死を偽造された元曹長とその上司の少尉はこうやって駅で話す羽目になっている。

 

流石にこう安安と会える事はないはず。

だがこうやって会っていることから、この出会いはお目溢しなのだろう。

それが政治的理由なのか、活躍を葬られたことの謝罪なのかはわからない。

だが、そんなこと二人によってどうでもよかった。

 

 

「それで、久しぶりに出会った戦友の調子はどうですか」

 

元部下からの質問に少尉は答える

 

「コアから取り出されたあと、基本的に眠り続けているよ。起きている時も記憶が曖昧だ。ただ医者が言うには命に別条はないし、夢の中で合う限り元気なものだから安心だよ」

 

その答えを聞き、元曹長は助けられた彼女の経歴を頭の中で検索する。

 

「夢の中・・・固有魔法でしたっけ?」

 

「そうそう、あいつの固有魔法、近くにいる人の夢の中に入れるあまり使い道のないもの」

 

少尉は笑いながら答え、思考する。

他人の夢に入ることができるというネウロイの戦闘では全く使えない固有魔法。

だが対人類に対しては、かなり有用な固有魔法である。

他人の夢から秘密を抜くことができるのだ、組織によっては喉から手が出るほど欲しい固有魔法だろう。だからこそ戦友はこの固有魔法を種に自らをマロニー派に売り込んだのだ。一人で妹を守り育てるために。

 

本当にバカだ。俺に頼ってくれてもよかったのに。

まぁ同じバカをした俺が言えることではないが。

 

そんな思考をしているなんて思いもしない元曹長は問いを続けた。

 

「諜報部だと有用ですね。こちらに来ませんか?」

 

「もう裏方仕事はあいつも私も真っ平御免さ」

 

少尉は勘弁してくれた手を挙げた。

 

少尉とその戦友はトレヴァー・マロニーの元で動いていたウィッチたち。

本来ならばよくて拘束か除隊、悪くて死んでいるはずの人間。

 

こうやって、のんきに生きているのは彼女たちがマロニーの下で働きながら彼の罪の証拠を集めていたことに起因する。

だが、流石にお咎めがない事はありえなく、近いうちになんらかの罰が下るだろう。

だがそれは決して重くないものであるはずだ。

なぜならば、彼女たちはベテランのウィッチ、そんなウィッチを遊ばせていられるほど欧州の戦域は甘くない。

 

「そうですか」

 

断られた元曹長は視線を新聞に戻した。

 

それを見た少尉は少し目を見開いた後、ニヤニヤと笑いながら元曹長の肩を掴み引き寄せる。

 

「お、なんだ?残念だったか?」

 

「そんなわけないです」

 

そんな様子の少尉を呆れた表情をした曹長は煩わしそうに対応した。

だがその耳は赤らんでいるのがわかる。これは寒さのものではないだろう。

 

このままこの話を続けてもいじられるだけだと思った元曹長は話を変える。

 

「でもこんなところで暇を潰してていいんです?」

 

いぶかしんだ目を、元曹長は少尉に向ける

 

ネウロイのコアに長い間、閉じ込められていたウィッチ。

おそらくその間栄養供給などしていなかったはずなのに生存しており、取り込まれていた間、ネウロイの力を使えていたと話を聞く。

 

そんな未知の経歴のウィッチを国が放っておくわけがない。

下手をすれば研究所のモルモット行きだろう

 

 

そんなことを理解しているはずなのに少尉の余裕な表情は崩れない。

 

「ああ、それか。それは大丈夫だ」

 

「大丈夫?」

 

疑問に首をかしげる元曹長。

すると頭から帽子がずり落ちそうになり慌てて被り直す。

その様子に少尉は苦笑し口を開いた

 

「お前が言ったじゃないか。周りを信じろ。一人でやるなって。だから頼ったんだよ」

 

嫌な予感がする

そんな気楽な様子に元曹長は嫌な予感に襲われる。

だが、自らがアドバイスした手前聞かざるおえなかった。

 

「・・・・・誰に頼ったのです?」

 

「アドルフィーネ・ガランド少将」

 

「バカ!」

 

何をどうしたらそんな有名人に手を借りることができるんだ。

というかそんな繋がりMI6で確認できてないぞ!

そもそもその繋がりがあるのなら最初から頼っとけ!

というかあなたブリタニア軍なのになんでカールスラントに頼っているんですか!?

 

そんな様々な意味を含んだ元曹長の罵声。

そんな、思いの丈が詰まった罵声を聞いた少尉は、まるで心外だというようなジェスチャーをしながら答えた

 

「向こうから声をかけて来たんだ。少将の人となりを聞いていたから信用できると思ってな」

 

「だとしても他国の人間ですよ・・・」

 

「私にとってはそうだが、あいつもその妹の准尉も元々はカールスラント人だぞ」

 

「ああ、そういえばそうでしたね・・・・」

 

元カールスラント人の彼女たちがなぜブリタニア軍にいたのか。それを追い始めるとマロニー大将たちの政治的攻防に首を突っ込むことになるので考えたくもない。

 

そして、今後起こりうるネウロイのコアだった彼女をめぐる政治的抗争。彼女を手にいれたアドルフィーネ・ガランド少将の動きを監視する諜報部の戦い。

それらに思考を巡らした元曹長は頭を抱えた。

 

そんな思いを知らない少尉は頭を抱える元少尉の頭を帽子の上からぐしゃぐしゃと撫でる

 

「安心しろ、あいつや准尉、そしてお前に何かあれば、俺がまた救いだす」

 

少尉はそう語りかけ、歯を見せて笑いかける。

 

その無責任とも言える言葉。だがそれを実際にやり遂げたウィッチの言葉はどこか重く信用できるものであり。

そんな言葉を真正面から向けられた曹長は頬を赤らめ顔を少尉から逸らした。

 

そんな時ホームに甲高い音が響く。

汽笛の音である。

 

どうやらついに列車が来たらしい。

 

その音を聞いた元曹長は新聞を折りたたみ、鉄柱から背を話す。

 

「また会えるか曹長?」

 

元曹長の背中に少尉の声が聞こえる

元曹長はその声を背に聞きながら無視するように数歩歩いた後立ち止まる。

 

MI6に席を置く人間。

そうやすやすと会えはしない。

自らはネウロイと戦う彼女と違い、薄汚い政治抗争のために同じ人間と戦う人間。

住む世界が違う。今回はたまたま重なっただけ。

 

 

 

だけれど

 

元曹長は後ろを振り返らずに言う

「曹長は死んだのでもう会えません。ですが私に似た誰かとは合うかもしれませんね」

 

曹長だった少女はそれだけ呟くとまた歩き始める。

そんな自らの部下だったウィッチの背を見て少尉は笑い彼女を見送る。

 

また会える日があると確信して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、曹長!言うの忘れていた!准尉が『あなたもおねえちゃんや上官殿と同じ私の家族です』って言ってたぞ!!」

 

「勘弁してください!救出されて帰って来てからのあの人の瞳のハイライト、消えたままで怖いんですよ!!」

 

 

 

 




*おねえちゃん
父と母が死んだ事と国をネウロイによって追われ、そんな中妹がウィッチの才能を開花させてしまったため、妹を守り育てるためにいろいろがむしゃらに動いた結果いろいろとひどいことになった人。
輸送機の護衛任務中ネウロイと戦闘になり最後はネウロイに体当たりを仕掛けて相打ちになった。

だがネウロイも自身も半死状態で生きており、無意識にお互いが生き残るべく動いた結果コアに取り込まれ共存状態となった。

固有魔法は他人の夢への侵入。
ネウロイ状態でも使用でき、このせいで、できもしない洗脳が成功したと勘違いした。


*覚醒准尉ちゃん
家族大好き。逃さない


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初めて連載物完結できました。
これまで見ていただいた皆様に感謝します。

今回の作品は、二つの目的を持って書きました
①できるだけ短く終わる
②オリジナルキャラクターに名前をつけない。

これらの目的を元に書き終えることはできましたが、まだまだ執筆能力と物語の構成能力が未熟でもう少しうまく話を作ることができたなと、少々の後悔を持っています。

やはり短編を作るよりも長編は難しいと実感しました

ですが、それ以上に完結できたことにホッとしました。

そして来週は「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」の最終回。
どうなるか楽しみですね

では改めて、これまで読んでいただきましてありがとうございました。




あ、新作書き始めました。
今度は曹長ちゃんが主人公です。
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