異世界村に着くと、1人の男性が出迎えてくれる。
「お、女の子だ!?それも2人!?レベルたかっ!?
ねえ!異世界人だよね!?」
「ええ。私は異世界人です。こっちは現地民ですけど」
出迎えてくれた男性は、
「なんもないところだけど、どうぞ」
「はい。お邪魔します」
上川さんのご自宅へ上がらせてもらうと、本当に何もない掘っ立て小屋みたいなところだった。その掘っ立て小屋の入り口には鍬や鎌が立てかけてあり、農業をしているんだなあということがよく分かる。
「あの……どうしてこの世界の言葉をしゃべれるんですか?」
「え?神様が異世界語を話せるようにしてくれたからじゃないの?」
「……神様?」
「トラックに轢かれた後、神様に会わなかったの?」
「あ、ああ。会いましたよ。でもあれ神様というより女神様じゃないですか?」
「うーん、神様の姿形は人によっても違うらしいけど、女神様かなあ?」
どうやら上川さんや、他にこの村に住んでいる異世界人は全員神様に会っているらしい。トラックに轢かれて神様と会って、この世界に転移したとか。なんかそういう話は聞いたことがあるかな。実際にあるとは思ってもいなかったけど。
そして上川さんは、異世界で農業をやりたいと願ったそうだ。そんな上川さんの願いを聞き入れ、神様は『絶対に壊れない農具一式』『色んな農作物の種』『絶対に枯れない井戸と拠点になる小屋』の3つをくれたらしい。結構手厚いサービスというか、これに加えて異世界語を話せるようにしてもらっているんだから随分と贅沢な話だね。
「でさ、初めて農業をやったんだけどさ、全然育たなかったんだよね」
「……は?」
「いや聞いて!大きくなる前に葉が黒ずんでどうしようもなくなったんだよ!肥料とか堆肥が良いことは知ってたけど、具体的にどんな成分が良いのか全く知識がなかったし……」
しかしこの上川さんや、その他の似たような願いをした村人たちは、思い通りの異世界スローライフ生活が過ごせなかった模様。農家って、きつい汚い危険の3kなお仕事だとは思っていたけど、この人達はそのことを覚悟で農家になったのでは……?
日本でも、病害で収入が0になったり台風のせいですべてが吹き飛んだりはするはず。そういう時のために保険とか様々なシステムがあるんだけど、ここは異世界だからそういうのは無いのかな。普通に考えれば異世界で農業をするのは日本でするよりキツイことが、ちょっと考えれば分かるよね?私でも分かったんだから、転移時に私より2歳も年上だったこの人が気付かないとは思いたくないなあ。
そして会話を続けるうちに、この人は肥料も要らず、種を植えて適当に水をやれば美味しい作物が出来る、そんな農業をしたいのだと分かった。だからダイレクトにそのことを聞いてみたら、既にそういう植物を願った村人がいるようで……その時は異世界の植生が変わってしまうから駄目だと言われたらしい。当たり前の話だね。どんな影響が出るかは、少し考えるだけで分かる。
あとこの異世界村には戦闘系の能力を願って、実際に戦闘してみて想像とは違ったから農業をやってる人とか、討伐依頼中に大怪我をした異世界人が住み着いている模様。この人達に共通しているのは、神様に会っているということ。その神様から、何らかの恩恵は受けていることの2点かな。
『随分と悪趣味な神様だ。恨まれないように恩恵は与えているが、上手く行かないことを見越しての恩恵であろう?』
(高まった本人のハードルからすれば、随分と低い恩恵っぽいね。そもそも何でそんなに期待してたのって話だけど)
キルラルドが悪趣味な神様と言うけど、絶対に枯れない井戸とか超便利じゃない?いやこれ、定住させる気満々なのか。そして周囲の村人も全員絶対枯れない井戸を持っているから、そんなに価値は無いという。絶対に壊れない農具も、使用範囲内での活用をしていれば絶対壊れないだけで、戦闘に使ったら壊れるとのこと。
(キルラルドには、どう見える?)
『物質硬化魔法、500年分といったところか。普通に使うだけであればこの者の一生どころか子孫代々使えそうな代物だ。しかし剣を受け止めたり、岩を斬ろうとする度に耐久力はガタ落ちするであろう』
種の方も、5年で尽きた模様。来年からは、今年の作物から得られる種で育てないとね。でも5年もやっていると、素人なりに農業が分かって来たらしく、今年は何とかなりそうとのこと。来年以降、台風や地震や火事や魔物や異世界人が襲わないと良いね。
緑色になっても青色になっても書き続ける予定ですが、低評価を入れるついでになろうの方で星1つでも評価して下さると作者としては嬉しいです。