時空間に纏わる魔法を使える人は、問答無用でAランクになれるそうだけど、魔法を使えるわけではないから説明が難しい。まあ、条件(超ゆるゆる)次第では空間に歪みを発生させることが出来る、程度の説明で良いかな。
向こうが正直に答えてくれたので、こちらも正直に答える。エレシオンは嘘が嫌いだし、能力を借りている間は嘘をつきたくない。
あ、お金は合計で370万円を貰いました。全部現金でいただいたので、預金は20万円、手持ちは400万円です。奴隷の相場ってどれぐらいか分からないけど、1人ぐらいは買えそう?
ついでに昇級試験を受けたいと言うと、さっそく準備が行われるけど……試験監督、私が最初に殴り続けたせいで顔面が壊れたリーダー格の男じゃん。すっかり元通りになっているから、たぶん回復魔法とか使ったんだと思うけど、私と相対した瞬間に膝をブルブルと震わせて顔面蒼白になっている。どうやら精神までは回復しなかったみたい。
試験は攻撃、反撃をしないCランク~Dランクの冒険者に、攻撃を仕掛けて10分以内に参ったと言わせればFランクは合格らしい。随分と楽な試験だなと思っていたら、開始直後に土下座をして「参った」という男性。何この出来レース。
これで合格扱いしてくれるなら私はそれでも良いけど……受付嬢のイオーネさんが信じられないものを見るような視線をこちらに向けて来るし、勘弁して欲しい。その後、冒険者カードに書かれているランクがFになったことを確認。Eランクになるためには、討伐依頼を10件こなした後に昇級試験を受けないといけないとのこと。
この討伐依頼10件は、まとめてクリアすることも可能らしい。適当に、Fランク推奨の一角ウサギを30匹殺せば10件クリアでEランクの試験を受けられるのか。なるほど。
『姫様あああ!此度の遠征も大成功でございましたぞ!』
(ええ、また勝手に暴れたの?)
ギルドの昇級についての冊子を読んでいると、上級魔人のセバスが唐突に叫ぶ。言葉遣いは老紳士のそれなんだけど、行動は完全に脳筋という魔人で、魔界随一の実力者です。相手の心を読み取る能力もあり、私以外の命令はあまり聞かない下級悪魔達も、セバスの言うことなら聞く。
で、セバスはしょっちゅう下級悪魔や中級悪魔を引き連れ、魔界への侵攻をしている。そしてその度に、降した相手の悪魔を献上してくる。私が大量の下級悪魔と契約することになった一因でもあるし、たまにしっぱいしてかきゅうあくまをたいりょうにそうしつしたりするけど、きほんてきにはゆうのうだからつよくちゅういできない。エレシオンとは違って格安だし。
『此度の「姫様、異世界にご出立記念遠征」では、下級悪魔を3000万、中級悪魔7万、上級悪魔3人を降すことが出来ました。被害は下級悪魔が800万、中級悪魔が1万ほどです』
(ほへー。まだ容量大丈夫なの?)
『総計で月に10mlとのことでしたが、まだ半分以上容量はございますぞ。今回の上級悪魔の能力は「防爆」「吸血」「変色」です』
(吸血はこれで何十人目よ。変色持ちも被りまくってるし……今回の当たりは防爆だけ?防爆って、文字通りなら微妙過ぎるんだけど)
上級悪魔は、基本的に能力を持つ。だから上級悪魔を降した時にはその能力の報告もあるんだけど、今回はイマイチだったみたい。能力が乗算されることはないから、新規の能力が無ければ基本外れ。今回のように新規の能力でも、強くなければ外れ。
たまに「無能」とか「短命」を持っている上級悪魔もいるから、そういう時はすぐにキルラルドとかセバスに食べさせている。覚醒したら強いかもしれないけど、デメリットがある能力は基本的にいらないです。
お金に余裕があるし、お買い物でもしようかと外に出る。するとにわかに大通りの人達がざわついているので、早速セバスに読心させる。
(何かあったの?)
『これからあるそうですぞ。北の前線から、勇者が帰ってくると』
(へー。……勇者?)
『この国の王女が召喚した、勇者のようです。……ふむ、国の位置をまとめて姫様に送りますぞ』
セバスは顔だけ出し、私が透明化させる。セバスによると、勇者が帰って来るとかなんとか。補給部隊が壊滅的打撃を受け、補給が滞ったために一時的に攻勢が中断したらしい。そのため前線のいくつかの部隊が撤退することになった模様。
……いるんだ、勇者。つまんないの。
セバスからこの世界の大まかな地図が頭の中へ送られてくるけど、地球のヨーロッパと酷似している。このバーテック王国がフランスで、戦争中という帝国がドイツ。魔王のいる魔族領がイギリスとベネルクスだと考えれば大体現実のヨーロッパに近い。南西にスペイン、南東にイタリアっぽい国があるそうだし。
一際騒ぎが大きくなったと思ったら、勇者らしき人物が巨大な馬車に乗って運ばれているのを目にする。中央にいるのが勇者かな?勇者っぽい人の周囲に3人いるけど、全員女とか分かりやすいハーレムパーティーだ。