「もー! 勉強嫌ーっ!」
「千歌ちゃん、そんなこと言ったってどうにもならないよ」
「だってぇ……」
シャーペンをテーブルへと放り投げ、仰向けに寝転んだ千歌は近くにあったぬいぐるみを抱きしめて言い訳を始める。
そんな千歌の幼馴染である曜はまた始まったと苦笑いを浮かべ、自身も少し休憩を挟むべくシャーペンを置いてミカンへと手を伸ばす。
高校一年から二年へと進級した二人はいま、春休みの宿題を終わらせようと千歌の家に集まり、頑張っていたのだが。
あまり集中が続かない千歌によって結構な頻度で休憩が挟まれていた。
むしろ休憩がメインとなり、合間合間に宿題を進める形となっている。
曜はそれに気づいていながらもノンビリとミカンを口に運び、千歌の話に付き合っていた。
「どうしてこんなにも宿題があるのさ」
「確かに、そんなに多くない休みでこれは多いよね」
「寝て起きたら誰かが宿題をやってくれてたりしないかな?」
「小人の靴屋じゃないんだから」
そう口にしつつ、曜もそうだったらいいなと思うが、現実はそんなに甘くないかと飲み込み。
また一房、ミカンを口に運ぶ。
「おーう、ガキンチョども。しけたツラしてるなー」
「宿題の邪魔だからあっちいってよ、美渡姉」
「邪魔って……これ見て宿題やってるとよくもまあ言えたね」
「今はちょっとした休憩だもん!」
「ちょっとした休憩、ね」
「…………えへへ」
曜の近くに積まれたミカンの皮の量を見て、美渡は呆れたため息を漏らす。
実際に見た通りなので曜は何も言えず、笑みを浮かべてはぐらかすことに。
「まったく。女子高生二人が彼氏も作らずこうしているだなんて、お姉さんは悲しいよ」
「…………美渡姉だっていたこと無いのに」
「生意気言うはこの口かーっ!」
「いひゃいっ!」
ボソッと呟いた千歌のセリフを聞き逃すことはなく、美渡は頰を引っ張って制裁を加える。
「彼氏作らなくても優くんが貰ってくれるもん!」
「あんたみたいなポンコツを貰うわけないでしょうが」
そのまま言い合いを始めてしまった二人を他所に、曜は変わらずミカンを食べ進めながら先ほど名前の出た幼馴染の優について考えていた。
いつもニコニコと笑みを浮かべており、何を考えているのか時々分からず、勉強は平均以上にできる、普通とは少し違う感じのする男の子。
今は曜と千歌が女学院に通っているため学校は違うが、それでも変わらず集まって遊ぶことは多々あり。
小さい頃からずっと一緒にいて、側にいるのが当たり前と思っていたけれど。
「…………これからも、ってことは無いんだよね」
「ん? 曜ちゃん、何か言った?」
ポツリとこぼした曜のセリフは聞き取りこそできなかったものの、何か言っていたのは千歌に聞こえていたらしく。
そこで曜は二人の言い争いがいつの間にか終わっていたことに気がつき、なんとかそれっぽいことを口にする。
「これから先、恋人って出来るのかな……って」
「出来るよ! 曜ちゃん可愛いんだから!」
「…………そうかな?」
「うん! 曜ちゃんに好きな人できたら私、応援するよ!」
「ありがと、千歌ちゃん」
その後、二人はまた休憩メインの合間勉強へと戻るのだが。
完全に集中の切れた二人は二度とシャーペンを手に持つことは無かった。
リハビリも兼ねて書き始めたはいいものの、筆が進まない…
3話までは書いてあります