いつも千歌の家にお邪魔するのは悪いからと、今回は優の家に集まって宿題をすることになったのだが。
いま来ているのは曜だけであり、千歌は先ほど用事ができて行けないとメールが届いていた。
「優くん、ここは?」
「そこもさっきと同じでこれをここに」
「あ、そっか」
珍しく千歌よりも宿題が進んでいない曜であるが、決して出来ないわけではなく。
けれどこうして優に教えてもらっているのは、曜曰く『出来る出来ないじゃなくて、ズルいズルくないの問題なの!』といった感じである。
つまづいたとしても少し手助けをするだけでいいため、優も予定より少し遅れ気味な自身の宿題を進めることができていた。
「そろそろお昼にしようか」
曜の集中が切れた頃を見計らい、優がそう声をかければ。
今、お腹が空いたことに気付いた曜のお腹から可愛らしい音が部屋に響き渡る。
恥ずかしそうに顔を赤くさせる曜だが、優はそれに触れることなく部屋を出てキッチンへと向かい。
その後を慌てて追っていく曜だが、優の反応から確実に聞かれていたことが分かり、耳まで真っ赤となっていた。
「あ、何も無い。……簡単なのでいい?」
「ご飯にふりかけでも大丈夫だよ」
「自分だけならいいけど、もう少しちゃんとしたの出すって」
苦笑しながらも何か調理する音が聞こえてくる中、曜はテレビをつけ出来上がるのを待つ。
眺めているだけの番組から内容など入ってこず、意識は自分のためにご飯を作ってくれている優へと向いていた。
「(恋人になったらこういうの、増えるのかな?)」
もし自分と優が恋仲になったらどうなるのだろう、と曜は想像を膨らませ。
きっと今みたいに特別な何かがあるわけじゃなく、何気ない日々が続いているのが見え、クスリと笑みが漏れる。
「お待たせ。何か面白いのでもやってた?」
「芸人さんのツッコミが少し面白くて」
なんでもない風にそれっぽい事を口にして誤魔化した曜がテーブルへと向かえば。
そこにはオムライスにコンソメスープ、サラダが並べてあった。
「いや、ケチャップにご飯、卵があればオムライスになるし、スープに至ってはお湯を注ぐだけだから」
曜の表情から何を言いたいのか察した優は、悪いことをしたわけでもないのに言い訳みたく口にする。
曜も怒っているわけではないので優の様子にふふっと笑い、それにつられて優も笑みをこぼす。
食事を終えた2人は優の部屋へと戻ってきていたが。
テーブルに広げたままの宿題には手をつけないで休憩と称し、ノンビリとしていた。
「優くんの家に来たの、久々な気がするな」
「そう?」
「うん。学校が別になってからは私の家か千歌ちゃんの家だったから」
久々と口にする割には異性のだというのにベッドの上で寝転がり、マンガを読むくつろぎっぷりである。
「ね、優くん」
「ん?」
「優くんは彼女作ったりとかしないの?」
読んでいたマンガをパタンと閉じた曜は上体を起こし、真っ直ぐに優を見据えながらそう問いかける。
脈絡などない、いきなりの質問に面食らう優だが、1つ深呼吸をして落ち着きを取り戻せば困ったような笑みを浮かべ。
「欲しいとは思ったりするけど、別に作らなくてもいいかなって」
「……それは私と千歌ちゃんが大切だから?」
「それもあるんだけど……いや、なんか恥ずかしいな。この話はここまでにして、続きを始めようか」
この流れはいけないと、優は話を切り上げてテーブルへと向かい、シャーペンを手に持つ。
今まで目を逸らしてきたものに期限が近づいていたのは優も薄々気付いていた。
それでもあと少し、もう少しだけと、先延ばししていたが。
「私ね、優くんのことが好き。幼馴染としてじゃない、1人の男の人として優くんが好きなの」
覚悟を決めた女の子を前に、そんなものは意味を成さなかった。
サクナヒメ、楽しい